「抜きの金型で、ダイス鋼で作ったパンチがどうしても折れてしまうので、ハイスか超硬のパンチに変えたけど、なかなか良い結果が出ません」
このように、クライアントさんから相談を受けました。
まず重要になるのが、折れたパンチが、引っ張られて折れたのか、それとも、つぶれて折れた、どちらなのか、という点です。
もし、引っ張られて折れた場合、それは、板材を抜いた後、板材の中に入り込んだパンチを引き剥がすときに折れた可能性が高いです。ちなみに、そのときにパンチにかかる荷重のことを、「かす取り力」と言います。
このかす取り力にパンチの強さが負けて、折れてしまった可能性が高いです。
ということは・・・
この「引っ張り」の荷重に苦手な金型材料を使うと裏目にでることがあります。
例えば、一般的に耐摩耗性に対し、非常に強いといわれる超微粒子系の超硬合金ですが、引っ張りの荷重に対して、苦手な種類のものもあります。
むしろ、微粒子系でない超硬合金の方が、引っ張りの荷重に強いものもあります。
ですから、「パンチが折れた→もっと硬い金型材料を使う」については、その金型材料が、ただ硬ければ良いというわけではありません。その種類について慎重に選定したほうが良いということです。
また、パンチがつぶれて折れた場合については、これは「降伏強さ」の高い金型材料を使いましょう、ということになります。
ただ、なぜ折れるほど抜き抵抗が高くなってしまったのか、という問題はありますよね。
よく折れたパンチをルーペを使って、しげしげと眺めてみましょう。
いや、できれば、折れる前に見ておきたいですよね。10倍に拡大できるルーペで充分です。
抜きパンチが折れてしまった場合、まずは「どういう原因で折れたのか」そこから調べましょう。
それによって、取るべき対策が変わってきます。
とは言いましても、短納期、短納期対応で、なかなかゆっくり調べてる時間もないですよね(^ ^;)
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技術コンサルタントshoei
代表コンサルタント:村上 英樹
※ 実際の加工においては、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の対処については、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。
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