金型・部品加工業専門コンサルティング

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FAQ

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【今さら聞けない】部品加工メーカーのチャージ計算について

部品加工メーカーのチャージ計算について

 

さて、今回はこちらも事業者の規模によらず、当事務所に相談の多い、部品加工メーカーにおけるチャージ計算についてです。

チャージとは、時間あたりの加工賃を指します。

 

まず大前提として、加工メーカーで扱うチャージには、①原価ベースの原価チャージと、②見積もり価格で使う売値チャージの2つがあります。

  • 原価ベースの原価チャージ
  • 見積もり価格で使う売値チャージ

 

良く使われるのは、売値チャージの方です。

切削加工の業界では、4,000円とか、5,000円が使われますが、5軸マシニングや大型の門型マシニングなどでは、チャージ1万円と設定しているメーカーもあります。

 

では、この売値チャージはどのように計算するべきでしょうか。

 

よく原価管理の教科書では、労務費や減価償却費にその他の経費を加えたものを稼働時間で除算し、材料費や外注費などとは異なり、個別製品に直接按分できない費用は、時間(工数)を基準に按分するとありますが、これは売値チャージではなく、原価チャージになります。

 

正しい売値チャージの計算方法は、年度ごとに目標とする売上額から計算します。

 

具体的な手順は、まず目標とする年間の売上額から、材料費や外注費などを除き、加工賃による売上額を計算します。

加工賃だけを算出する

この計算は、材料費と外注費に中間マージンを乗せて計算しておくことがポイントです。

 

この加工賃による売上額を、実際の稼働時間で割ることで、自社が請求するべき売値チャージが計算できます。

 

実際の稼働時間とは、タイムカード時間に稼働率を乗じたものです。


  • 実際の稼働時間=タイムカード時間×稼働率

 

ここで稼働率は、直近の実績を使います。

段取り作業や仕上げ・検査などのハンドワークは作業者の稼働率を使い、マシニングやワイヤーカット放電加工機などは工作機械の稼働率を使います。

 

さて、売値チャージを計算することができたら、次にその評価を行います。

評価のポイントは「実際にその売値チャージで顧客に請求できるのか?」です。

 

例えば、年間の機械加工による加工賃の来年度の目標売上額を2億円とした場合、自社のマシニング台数が15台、1台あたり最大の稼働時間を3,500時間として、昨年のマシニングの平均稼働率は60%だったとします。

この事例の実績稼働時間は、15台×3,500時間×0.6となりますので、31,500時間です。

 

これを、来年度の目標加工賃売上の2億円から除算しますと、必要となる売値チャージは約6,349円となり、機械のサイズによりますが、業界相場で考えるとやや高い金額になると思います。

 

そこで、この計算された売値チャージの金額に対し、2つの視点で補正します。

  1. 目標とする来年度の加工賃売上の2億円は妥当か?目標として高過ぎるのではないか?
  2. 昨年のマシニングの平均稼働率60%を、来年度は改善によって70%にできないか?

 

実際もしマシニングの平均稼働率を来年度は70%にできれば、15台×3,500時間×0.7となりますので、実績稼働時間は36,750時間となり、売値チャージを再計算しますと、約5,442円となり、業界の相場に金額に近づいてきます。

 

また、設備投資により機械台数が増えることで、可能な最大の稼働時間を増やすことも考えられます。

(ただし、後述する損益分岐点が高くなることに注意が必要です)

 

さて、ここで、最初に挙がった原価チャージはどのように使うべきでしょうか。

計算は、作業者と工作機械の2つがあります。


  • 作業者の原価チャージ=労務費+製造経費÷タイムカード時間×作業者の稼働率
  • 機械の原価チャージ=減価償却費÷タイムカード時間×稼働率

 

この原価チャージは、加工案件ごとの採算性評価に使います。

 

例えば、ある製品の原価構成はシンプルに、材料費・外注費・加工賃であったとしますと、粗利益(限界利益)は、売価から材料費と外注費を差し引いたものになります。


  • 粗利益(限界利益)=売価-(材料費+外注費)

 

この粗利益(限界利益)を、実際にかかった工数で除算すると、実績のチャージが計算できます。


  • 実績チャージ=粗利益(限界利益)÷実際にかかった工数

 

この実績チャージと原価チャージを比較したとき、原価チャージは実績チャージの採算ライン(下限)と言え、もし実績チャージが原価チャージを下回っていたら原価割れという事になります。

 

利益管理をしっかりと行っている加工メーカーは、この実績チャージの評価を必ず行っています。

 

逆に、見積もり時に使った売値チャージを実績チャージが超えていることが理想で、そのときは見積もり時の工数よりも早く加工が終ったことを意味します。

これが、担当者や加工製造部門の評価になります。

(ただし、通常見積もり時に使う工数は、ゲタをはかせるのが一般的なので、売値チャージが実績チャージが超えているのは、ある意味当たり前と考えることもできます)

 

この実績チャージを、加工案件ごと、担当者がいつでも誰でも見えるようにしている加工メーカーもあります。

 

最後に、今回は売値チャージは、教科書どおりの製造原価からではなく、実は年間の目標売上額から計算するというお話しでしたが、そもそもの労務費、減価償却費などが適正かどうかは、年間の総額の変動費と固定費を使った損益分岐点分析によってチェックしておくことは言うまでもありません。

 

ぜひ加工メーカーの皆さんが儲かるご商売を続けていただくことを願ってやみません。

 

金型・部品加工業 専門コンサルティング【加工コンサル】

代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・プレス金型技術者)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

 

 

プレス金型設計者の人材育成手順と日程管理について

3つの設計工程

 

さて、今回のFAQコラムは相談を受ける機会がとても多い、プレス金型製造における設計人材の育成についてです。

 

その理由の一つに、既存のベテラン設計者と同等の能力を持った設計者をなかなか育てることができないと問題があります。

今回は、そんな悩みの多い「金型設計者の育成手順と日程管理の方法」についてみていきたいと思います。

 

まずは、育成の順番からみていきます。

これは、下図に示す(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計という設計工程のうち、最後の工程から順番をさかのぼっていく形で経験を積ませます。

3つの設計工程

 

つまり、設計人材の育成の手順としては、まず使用するCAD操作を習得したのち、設計工程の一番後である、(3)の部品設計から経験を積ませ、能力を向上させていくということになります。

具体的には、次のようになると思います。

  • 2次元設計であれば、ベテラン設計者が作成した金型組図から部品バラシ図や、3D加工用の3Dモデルをモデリングする。
  • 3次元設計であれば、ベテラン設計者の構想図面から、3D金型モデルをモデリングする。

などが、考えられます。

 

これは、心理学にある、①符号化、②貯蔵、③検索というモノを思い出すときの脳の思考プロセスに基づく考え方からきています。

人間の記憶には、短期記憶と長期記憶がありますが、特に長期記憶は、言葉や図、音、臭いなど、5感に基づく情報として、わかりやすい情報ほど頭の中に長く貯蔵され、また思い出しやすくなります(検索性)。

その記憶の中から必要なときに情報を取り出して(検索して)、目の前の行動に使われるということになります。

 

つまり、物覚えの良い人とは、ズバリ!この符号化の効率の高さということが言えます。

例えば、一度見たこと・聞いたことを、後で思い出しやすい状態で記憶していくということです。

 

私は、これを中小企業診断士の勉強の際に意識しました。

具体的には、モノを記憶する際、必ず相対的に覚えるということです。

 

例えば、初めて見るタイプのエンドミルがあれば、これと対になるものを必ずイメージします。

例えば、ドリルをイメージして価格の違いをイメージしたり、刃数の違うエンドミルをイメージして加工条件と効率の違いをイメージしたりなどです。

 

つまり、それ単体をシャカリキになって覚えようとせず(単なる暗記)、何と何の枠組みの中でそれが存在し、それぞれにどういった違いがあるのか、対象物と対になるものの違いと一緒にモノを覚えていく。これがいわゆる体系的にモノを覚えるということです。

ちなみに、私は本を読むときには、他との違いや体系図などをメモしながら読んだりします。

 

したがって、設計者育成のスタートとしては、まず(3)の部品設計の見習いから始め、金型部品の必要な機能や形状、材質などを体系的に覚えることを意識しながら場数を踏んでいき、いずれ担当する(2)の構造設計のための知識を、経験と共に積んでいきます。

 

ちなみに、この体系化の考えは、金型設計標準書でも使う考え方です。

単純に、市販部品やプレート類の指定だけを記載するよりも、各部品の選択肢とその選定・判断基準を決めて記載されている設計標準書は、かなりレベルの高い標準書です。

このような標準書が整備されているメーカーは、ノウハウや情報の統一・共有化のレベルが高い企業が多いです。

 

なお、こうした工程をさかのぼった経験を踏まずに、つまり前述した、①符号化、②貯蔵、③検索という思考プロセスによらない設計作業では、いわゆる試行錯誤により設計を行うことになります。

心理学にある試行錯誤とは、目の前に起きた問題解決のため、根拠のある無しは関係なく、思いつく方法を順番に試し、偶発的に問題が解決するまで続ける方法を指します。

いわゆる、なかなか満足のいく設計ができない、ベテラン設計者よりも多く時間がかかってしまう、何度もやり直しを繰り返す、など設計者の育成が進まないということになります。

 

さて、設計者の育成手順の話に戻りますが、(3)の部品設計を一定期間担当した次は、(2)の構造設計の見習いから経験させます。

この工程での能力向上の狙いは、(1)の工程設計に必要となる、何工程のプレス加工によれば安定的に製品を作れるかなどプレスの成形性などを考慮できる能力を養うということになります。

また、品質の良い製品ができる工程で設計できたとしても、量産がはじまると金型は何年にも渡り継続的に使うものであり、金型部品は摩耗したり消耗するため、金型が摩耗したら製品寸法はどうなるかなど、他に考慮することも多々あります。

 

したがって、単純に、金型組図を製図するだけでなく、「なぜそういった構造にしているのか」「なぜそういったプレスの工程分割をしているのか」を考えつつ、自分の頭の中の思考フローチャートに落とし込んでいく必要があります。

このフローチャート化が、①符号化、②貯蔵、③検索ができる脳への仕込みになります。

 

設計人材育成の最後の手順が、(1)の工程設計の見習いを始めるということになります。

この工程を担当するということは、社内の量産部門や顧客担当者など、自部門以外の関係者とも接することになり、このときには、プレス加工の知識や、後工程である機械加工、トライ作業の知識など、幅広い知識が必要になるため、やはり浅くとも体系的な知識が必要になることは言うまでもありません。

 

さて最後に、設計の日程管理についてですが、よく金型の大日程計画に記載されている設計工程そのものの進捗が、若手設計者ほど遅れていく傾向についてどうするかの視点でみていきたいと思います。

 

設計工程の日程管理を遅れなく進めていくためには、設計工程をできる限り細分化して進捗管理することが重要です。

まず前述した、(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計の3つに分けて日程計画を立てることは最低限必要ですが、さらにそれぞれの工程で細分化します。

 

例えば、(1)工程設計であれば、①曲げ・絞り工程の分割、②工程ごとの製品図作成、③展開ブランク図作成、④順送であればストリップレイアウト図作成、⑤寸法を入れて完成図とするなど、個々の工程に細分化し、それぞれに期限を付けます。

こうして細分化された個々の目標地点のことをマイルストーンと言います。

 

このマイルストーンの設定により、精度の高い工数の見積もりができます。ざっくりと作業をまとめた日程を立てるほど、計画日程は大まかになり、日数は安全をみて増えていきます。

逆に、「②の工程ごとの製品図作成」や、「⑤の寸法を入れて完成図とする」など、クリエイティブ性は高くない作業を洗い出すほど、工数は明確に見積もりしやすくなります。

 

このように設計工程を細分化し、それぞれのマイルストーンで上司や先輩設計者がフォローすることで、先ほど挙げた若手設計者が抱える「何度もやり直しを繰り返す」といった問題に対応することができます。

 

この問題の抱えるロスとして、間違った設計にわざわざ時間をかけて作図・モデリングしている、その時間をかけた図・モデルをまた時間をかけて修正するという、経営者が最も嫌がる悪循環を出来る限り最小化することができます。

 

つまり、個々のマイルストーンに期限を付けることで、正しい設計の順番を踏まえながら、大きな方向性の違いやミスにより大規模修正のリスクを避けつつ進捗管理ができるというわけです。

 

最後に、こうした人材育成を自社で行うか、私のようなコンサルタントを活用するかという視点ですが、そもそも人材に必要な知識・技能は、下図のような体系図になっていると考えています。

金型設計に必要なスキル

実務で使っている知識・技能は、実はそれぞれの専門分野が重ね合わさった中の限定されたものであり、企業ごとにベテラン社員さんが積み重ねて作ってきたものです。

しかしながら、たまたま上の図では、均等的にバランスよく重なっていますが、私が多くの企業を見た経験から言いますと、大抵かたよっているケースが多いです。

 

さて、設計実務で経験を積ませて育てるとこれまで書いてきましたが、上図の言うところの重なっているところを何回も経験しなければならないため、よく一人前になるには最低3年かかるとか、5年は必要など抽象的な表現がされますが、企業ごとに扱っている金型構造の種類の数も影響します。

毎回大きく異なる構造の金型を扱っていると、金型設計者の育成の観点では、反復効果が薄くなり、前述した、①符号化、②貯蔵、③検索の中の、①符号化と②貯蔵はなかなか進みません。

 

さて、コンサルタントは、上図で言うところのそれぞれの分野を体系的に順序よく教育していくためのカリキュラムを作るプロということになります。

これにより、多品種に対応できる(振り幅がある)応用力を身に付けることができます。

もちろん自社でカリキュラムを作ることができれば申し分ありません。それが本来あるべき姿です。

 

私の金型基礎セミナーもそのように、各専門分野を習得していただくような内容で構成しております。

金型基礎セミナー内容

 

私も金型設計に携わる一人の技術者として、あるべき手順で教育された金型エンジニアが一人でも多く育っていくことを願ってやみません。

 

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代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・プレス金型技術者)

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継続的に更新していく図面を、複数設計者で管理していく方法

データベースの運用

 

今回は、金型メーカーに限らず、機械装置製造メーカーなど、社内で継続的に、

同じか、アレンジした図面を継続的に使いまわしていく場合の管理方法について、まとめてみたいと思います。

 

ただし、前提条件として、複数の設計者で、管理・更新していく場合に限定します。

 

というのは、1人で管理していくのでしたら、他者に申し伝えることは必要ないので、自分のメモやWordかEXCELで管理するなど、自己管理だけで済むためです。

 

今回、ターゲットとしているのは、例えば、ある機械装置を、別々の顧客ユーザー向けに、さらに別々の設計者がアレンジして設計し、それをまた更にアレンジ設計して使いまわしていくようなケースです。

 

この場合、一見、アレンジ設計した図面は、それぞれ個人の管理のように見えますが、例えば、社内で締結方法を統一したいとか、市販部品の種類や購入先を統一し、購買部門の効率化・ムダ削減を図りたいなど、企業として本来考えていかなければならない統一ルールを共有していかなければならない場合において必要となる運用方法について、今回まとめてみました。

 

実際に運用していく方法としては、テンプレート方式と、データベース方式の2つがあります。

 

まずは、テンプレート方式からみていきたいと思います。

 

【テンプレート方式の場合】

テンプレート方式は、顧客ごとや、製品ごとで、図面の種類がさほど多くない場合に採用します。

逆に、後述するデータベース方式は、仕様により管理する図面の種類が多いときに採用します。

 

具体的には、金型や機械装置ごとに、アレンジ設計の基礎となるべき図面(これをテンプレートを言います)を定義し、サーバーなどに保存しておき、設計者はそこからコピーして再利用設計します。

 

運用上、必要となるルールとしては、新たに採用したサブアセンブリ部品や市販部品などがあれば、テンプレートに盛り込んで更新します。

ただし、それは誰でも好き勝手にやっていいというものではなく、社内でその作業が許されるテンプレートの管理責任者を選任することと、そのテンプレートを再利用する設計者それぞれに対する編集権限の管理が必要になります。

 

具体的にテンプレートを使って再利用設計する状況を考えてみますと、下図のようになると思います。

テンプレート運用についてのフローチャート

まず、テンプレートどおりで、そのまま流用できるのであれば、そのまま使いますし、例えば、その金型や機械装置の中で、以前よりもロット販売などで安くなった市販部品などがあれば、その時点で変更し、テンプレートを更新します。

もちろん、テンプレート図面の更新作業は許可制とし、権限がある設計者だけが行います。

 

次に、テンプレートどおりでは設計できない場合ですが、この場合はテンプレート図面を元に、アレンジして設計を行うことになりますが、これも好き勝手にアレンジして良いというわけではありません。

例えば、市販部品の使い方や、サブアセンブリ部品の寸法の決め方についても、一定のルールを設けなければ、自己流図面が社内にどんどん出来ていってしまいます。

 

そこで、上図に記されているように、「派生のやり方にルールが必要」となるわけで、ここで社内で統一された設計基準が必要になります。

通常、こうしたルールは、設計企画書とか設計標準書といった名称で、100ページとか200ページといったボリュームのものを各社作っております。

 

また、この設計標準書には、部品形状だけではなく、なぜそういった仕様を採用したのかについて説明が記載されている必要があります。いわゆる「設計意図」です。

これにより、アレンジ設計の意思ベクトルを統一することができます。

また、もし自社が外注設計を使っている場合には、この設計標準書を外注先にも横展開する必要があります。

 

 

では次に、データベース方式の方を見ていきたいと思います。

 

【データベース方式の場合】

データベース方式は、前述したように、顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多いときに採用します。

 

具体的には、下図の事例のような流れの中で、共有するべき情報を管理していく際に採用します。

データベース管理方式

 

具体的な運用方法としては、設計者が自分の設計が終った時点で、どの親品番の図面を使ったか、またどのような変更を行ったかをデータベースに登録していきます。

データベースの運用

例えば、上図では、新たに派生品Dから派生品Hの図面をアレンジ設計しています。

そのときに、他の派生品で発生した、不具合の修正や、顧客ユーザーや組立て現場から上がってきた仕様変更の要望などを盛り込まなければならない場合があります。

 

そうした情報を、残らず新規の設計に盛り込むため、各設計者は自分の設計が終った時点で、どのような変更・修正を行ったかをデータベースに登録していきます。

 

また、新たにアレンジ設計を行う際には、設計者は、過去にさかのぼって親品番とする派生品図面を検索し、その子や孫となる派生品図面に登録されている情報(修正・変更した内容)を参照しながら、最新の市販部品やサブアセンブリ部品を使って設計を行っていきます。

 

データベースは、このように活用しながら、複数の設計者で情報を共有していくために利用します。

 

この方式のメリットとして、図の一番上位にあるテンプレートというべき「マスター」図面について、基本的には、最新の状態に更新して管理していく必要がありません。

顧客ごとや、製品ごとの仕様により、管理・保存する図面の種類が多い場合には、テンプレート(マスター)を作っても、管理するべきテンプレート図面が多くなるだけで、せっかく更新しても、それぞれのテンプレートは使う頻度は少なく、手間をかけて管理するほどメリットがありません。

 

そこで、どの世代の派生品図面を使っても、最新の状態の情報を、別途データベースから参照することで、設計者全員が最新の情報を参照できる方法の方を採用します。

 

データベースのテーブル設計としては、次のような構成になると思います。

 

登録ID 品番 サブアセンブリ名称(番号) 部品名称(番号) 変更履歴番号 親図面名称(番号)

コピーor再利用

変更内容 変更内容の参照画像リンク先 図面ファイル保存先 担当者 更新日

 

留意すべき点としては、検索する設計者が正しい情報にたどり着けるなど、検索性の良いデータベース設計に配慮することでしょう。

 

実際に運用がはじまると、データベースへの登録など間接工数は増える傾向になりますが、後工程である加工や組立てで発見される設計ミスによる修正ロスなど、会社全体でのロス削減など、導入効果は全体最適で考えていくべきでしょう。

 

以上、複数設計者により、継続的に更新していく図面を社内で共有管理していく方法についてでした。

 

社内で、複数の設計者による自己流図面が増えすぎてお困りの企業さまは、ぜひお気軽にお問合せください。

 

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【業態別】金型設計における2次元設計、3次元設計、どちらが良いのか?

金型設計における2次元設計、3次元設計、どちらが良いのか?

 

こんにちは、金型・部品加工業専門コンサルティング代表の村上です。

 

私のクライアント先の金型メーカーさんでは、2次元で設計しているメーカーさんもあれば、3次元で設計しているメーカーもあり、本当に様々です。

 

そこで今回は、一体どちらがQCD(製造品質・コスト・納期)の視点で有利なのか、また、金型を扱うメーカーさんにも、様々な業態があり、どちらの設計方式が、どの業態に適しているのか、まとめてみたいと思います。

 

まずそもそも、3次元設計のシステムが普及する前は、もちろん2次元設計で行われていたわけで、古くは手書きのドラフターの設計からになります。

 

ただし、25年以上前に、私が金型業界に入ったときには、すでに2次元のCAD設計は行われており、ドラフターの手書きとCAD設計の優劣の議論はあまり意味がないと思われますので、ここでは割愛したいと思います。

 

さて、2次元設計は、今でも多くの金型メーカーで行われており、自動車部品をはじめとして、3次元曲面の意匠面を有する金型においても、3次元加工のためのモデリングは行いますが、構造部は2次元設計という手法は、まだまだ非常に多く使われております。

 

この方式のメリットは、やはり、作図自体の早さにあると思います。コンサルタントとなった私自身、今現在も金型メーカーさんのお手伝いということで、設計実務を行うこともあり、2次元設計も3次元設計いずれもやっておりますが、組図を作るところまでは、圧倒的に2次元設計の方が早いです。

 

あくまで組図の作成までだけなら感覚的に、3倍以上、早いイメージがあります。

 

また、上死点の状態や、可動部品の動き方や、言語によるコメント注記が入ることで、非常に設計意図を相手に伝えやすいといった利点もあります。

 

企業の事業として、例えば、プレスメーカーや成形メーカーに製造した金型を納める金型メーカーさんの場合、図面承認をとらなければならない場合が多く、その際はやはり3DデータよりもDXFデータや紙図面などの2次元図が使われる場合が多いです。

 

そのため、もし3次元で設計すると、承認のために、その3Dデータを投影した2次元図面を作成し、寸法や注記などを記入する作業が余分に発生するため、プレスメーカーや成形メーカーの内製金型の製造ではなく、金型を作って顧客に納める純然たる金型メーカーでは、まだまだ2次元設計が採用されているという理由の一つがここにあると思います。

 

ただし、2次元設計のウィークポイントは、構造設計後の後工程にあります。

 

そもそも、2次元図は、平面図や側面図、正面図から成っており、これを見て、立体的な形状として、イメージできなければいけません。

 

これは、昨今の技術者レベルとしては、初級~中級くらいに相当する技能だと私は思っており、金型製造に携わるスタッフ全員が理解するには厳しいと言えます。

 

そうなると、2次元図面を読み解ける人しか作業できなくなるうえ、図面レビューや後工程の機械加工や組立て工程にも支障をきたすかもしれません。

 

その点、3次元で設計された金型モデルは、立体的に回したり拡大して見ることで、ほぼ全ての人が構造や部品形状を理解することができます。

 

また、コンカレントエンジニアリング(全ての工程を同時進行させる手法)の一貫として、金型構造設計が完了した時点で、個々の部品もモデリングが完了しているので、そのまま加工データの作成及び、機械加工に入ることができます。

 

2次元設計の欠点がここにありまして、組図からそのまま加工データ作成及び、機械加工に入ることが難しいです。

 

多くの金型メーカーでは、プレート分解という、一点一点個々のプレート部品や、構成部品を作図する作業を行ったのち、CAM作業に入っています。

 

ですからまず、2次元設計と3次元設計の優劣を語るうえで、承認のための組図作成までのリードタイムについては、2次元設計の方が圧倒的に早いことが挙げられるでしょう。

 

また、2次元設計後のプレート分解作業を助けるツールとして、個々のプレート図を作らなくても、組図からそのまま、個々のプレートのCAMデータを作成できるCAMソフトが市販されていますので、2次元設計を行っている金型メーカーでしたら積極的に使っていくべきかと思います。

 

これにより、2次元設計と3次元設計の優劣を語るうえで、最も早いリードタイムで加工データ作成工程までの設計作業を行うことができると思われます。

 

それと、もう一つ重要な視点があります。設計ミスへの防止策です。

 

3次元設計は、部品同士のつながりや重なりを立体的に確認できますので、複雑な構造の金型ほど、ミスの事前発見の確率は高くなります。

 

特に、ヒストリー型と呼ばれるパラメトリック方式の3次元CADでは、干渉チェックという部品同士の重なりや穴のあけ忘れなどを発見する機能があるため、ミスの発見効果は高いです。

 

こうしたミスの発見は、後工程の手戻り・手離れに影響します。

 

また、金型設計において、今となっては無くてはならないくらい使用頻度が上がっているCAEソフトについても、そもそも3次元の型モデルがなくてはできません。これも3次元設計の大きなメリットの一つと言えます。

 

先ほども言いましたように、2次元設計と3次元設計の優劣においては、QCDの視点で、CDの要素の一つであるリードタイムについては、2次元設計に分があると思いますが、前述したように、立体で表現できることやミスの発見機能、CAEの活用などによって、Qの視点では逆に圧倒的に3次元設計に分があると言えます。これによって、Cの視点の優劣はつけ難いとも言えます。

 

したがいまして、プレスメーカーや成形メーカーの内製金型において、特に顧客承認のための2次元図面が不要な場合では、3次元設計の方がメリットを出せるかもしれません。

 

また、設計そのものの作業では、どうしても2次元設計の方が早いと思われますが、3次元設計の真髄としては、後工程でいかにメリットを出すかという点にあります。

 

CAEの活用もその一つです。従来は手離れの悪い作業であった、トライ作業による金型修正を、設計段階のCAD内でやってしまおうという試みです。

 

更に、3次元設計のメリットとしてフィーチャー設計があります。これは、個々の部品モデリングの際、機械加工の部位に、加工属性を付与しておくことで、CAMデータ作成負担を軽減させる機能のことです。

 

例えば、プレートの穴に、タップやリーマなどの加工種類を付与することで、後工程であるCAM作業では、わざわざオペレーターが定義しなくても、自動で加工プロセス、工具種類まで定義してくれます。

 

このように3次元設計は、①コンカレントエンジニアリング、②フィーチャー設計、③CAE活用といった3つの取り組みを行うことで、後工程を中心にリードタイムを削減することができます。

 

これに取り組むことができるのであれば、積極的に3次元設計を採用すべきかと思います。

 

そうでない場合、いくらミスの防止などにより金型製作上の品質が高くても、リードタイムや金型の価格面で、2次元設計を行うメーカーに負けてしまうかもしれません。

 

最後に、プレスメーカーや成形メーカーとして内製金型も製作するが、別のメーカーの金型も受注して納める外部販売用の金型も製作するといった、両方の事業を行うメーカーの場合では、2次元設計と3次元設計、どちらがよいのかということですが、

 

外部販売用の金型は特に、同業他社や海外メーカーとの価格勝負になることが多いため、社内工程でのQの視点よりも、CDの視点を重視すべきかと思います。

 

したがって、社内の金型スタッフが職人揃いであって、3角法による2次元の組図を理解できるのであれば、2次元設計及び、プレート分解機能を持ったCAMの活用のパターンが最も有利かもしれません。

 

ただし、内製金型の製作においては、進化を続ける3次元CADの恩恵を活かした3次元設計の方が将来的にもメリットを発揮していけると思われます。

 

したがって、私の見解としては、外部販売用の金型と、内製用の金型、それぞれによって、2次元設計と3次元設計を使い分けられるメーカーが最も競争力が高いと思われますが、今現在、私の知る限りでは、そういったメーカーは限りなく少ないと思います。

 

したがって、2次元設計と3次元設計、いずれにおいても、それぞれのメリットを最大限まで発揮できるまで、お持ちのCAD/CAMシステムを使いこなすことが、最善かと思われます。

 

また、それぞれの設計方法の欠点についても、真摯に向き合い、つぶしていく改善への取り組みが必要です。

 

例えば、2次元設計ではあれば、3次元設計に比べてどうしてもミスの発生確率が高くなります。

ミスの多くなるところとして例えば、平面図・正面図・側面図で共通して表現する部品や形状の干渉や矛盾などがあります。こういったところを重点的に、図面レビューでは確認すべきでしょう。

 

3次元設計の欠点としては、2次元設計では省略・簡略できる部位も、全て表現してモデリングしなくてはいけないなど、どうしても2次元設計よりも工数は多く掛かります。

そこで、市販部品の自動配置といった自動モデリング機能を積極的に活用するなど、後工程でのリードタイム削減のみならず、設計作業の中で工数削減を図る改善は、継続的に行うべきでしょう。

 

こうした日々の取り組みが、昨今ますます厳しくなる金型業界で、勝ち抜いていく競争力の源泉になります。

 

以上になります。参考になれば幸いです。

 

金型・部品加工業 専門コンサルティング【加工コンサル】

代表:村上 英樹(中小企業診断士、元・プレス金型技術者)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

型技術2018年3月臨時号コラム「金型加工用NCデータ作成における省力化のポイントと実例」

 

今回は金型製作における機械加工用NCデータ作成の省力化をテーマに執筆させていただいた。NCデータとは主に、NCフライス、マシニングセンター、ワイヤー放電加工機、型彫り放電加工機などを動かすための動作プログラムを指す。

 

このNCデータ作成作業においては、工作機械に直接人間が打ちこむ場合もあるが、近年CAD/CAMを使うことが多くなった。したがって今回、CAD/CAM作業を前提にした省力化を中心にまとめている。

 

今回、NCデータ作成の省力化にあたり、金型製作における様々なNCデータ作成の状況に応じ、どのようなアプローチで省力化を図っていくべきか、またそれを実現するソフトウェア技術にはどのようなものがあるかなど、実際に運用している企業の事例を織り交ぜながら紹介していきたい。

 

状況に応じたNCデータ作成作業のパターン

まずは、普段行われているNCデータ作成作業のパターンを整理してみよう。

 

パターン

ここ数年、多くの金型メーカーで取り組まれている3次元の金型設計も、かつては2次元設計であったことから、現場に提供されていたのは、紙仕様の金型図面や部品図であった。

 

これにより現場では、金型構造部を構成するプレート類の加工について、紙の図面を見ながら工作機械に直接プログラムを打つか、2次元用のCADデータであるDXFデータを設計担当からもらい、2次元用CAD/CAMにそのデータを取り込み、NCデータを作成していた。今も2次元設計が主体の金型メーカーは、このパターンで作業している。

 

パターン

また、金型構造部は2次元設計であっても、例えばプラスチック成形金型やダイカスト金型における製品意匠面の機械加工においては、立体的な自由曲面に対応できる3次元加工が必要になるため、意匠面のあるキャビ・コアの3Dモデリングを行い、3次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行う。それ以外の構造部(主にプレート類や小物部品)は、紙図面や2次元CAD/CAMを使ったNCデータ作成を行っている。

 

パターン③

近年、金型構造部においても設計の3次元化が普及してきたため、上記パターン①②とは異なり以下のような方法がとられている。

 

  • 金型全体設計は3次元で行うが、各部品については、加工現場で従来の手順が踏めるように2次元図面を作図するパターン。金型全体図は3次元データで現場に提供するか、もしくは紙図面で作図する。

    NCデータ作成作業については、前述したパターン①②とほとんど手順は変わらない。プレート類や小物部品については、従来の2次元加工の手順で行い、自由曲面が存在する金型意匠面についてのみ、3次元CAD/CAMを使ってNCデータを作成する。

  • 金型全体設計は3次元で行い、加工現場に対しても3次元データで提供するパターン。この場合、現場で扱うCAD/CAMは3次元に対応している必要がある。このパターンは、主に金型メーカーから、他の機械加工業者に加工依頼する場合にとられることが多い。

    この場合のNCデータ作成作業において加工現場は、2次元図面に変換するか、3次元モデルのまま扱うかで手順は異なる。

    2次元図面に変換した後の手順は、前述したパターン①②と同じである。しかし、3次元モデルのままNCデータを作成する場合では、Z方向の情報を人間が手入力しなくて済む。

  • 金型構造部の設計を行う際、設計者がボルトやノックピンなど標準部品を配置する場合に、穴加工や切削加工などの加工属性まで割り付ける「フィーチャー設計」を行うパターン。
    このパターンは、金型メーカーの社内プロセスにおいて、設計と加工現場で同じCAD/CAMを使用している場合にとられることが多い。

 

省力化で取り組むべきこと

ここまで色々なNCデータ作成のパターンをみてきたが、それぞれの作業パターンにおいて、省力化のために取り組むべきことを見ていこう。

 

パターン①(2次元の紙図面もしくは、2次元CADデータでNCデータ作成する場合)

このケースにおいては、目新しいソフトウェアの機能開発も少なくなってきているが、パターン③に出てきた3次元のフィーチャー設計は、2次元設計でも行うことができる。

具体的には金型構造設計の際に、キャップボルトやノックピンなどの標準部品を平面図に配置すると、例えばプレス金型であれば、ストリッパー、パンチプレート、バッキングプレートなど、各階層のプレートそれぞれに加工定義(タップやキリ穴、ザグリ穴など)が付与される。またその部品と加工に対応した断面図が、側面図や正面図などに自動作図される。

 

こうした機能を使うことで、改めて加工現場にてゼロからCAM定義を行うことなく、加工担当者は加工ワークの向き、加工原点の設定、加工定義の調整などで済む。

 

CAM上の加工定義においては、従来手作業で行っていた操作を可能な限りマクロ化することが望ましい。また、操作マクロや加工条件を担当者間でシェアすることで、全体の効率化につながる。

 

パターン②(プレートや小物部品は2次元加工、金型意匠面のみに3次元加工を行う場合)

プレートや小物部品に対する2次元加工の省力化の方向性は、上記のパターン①と同じである。

 

金型意匠面に行う3次元加工のCAM作業省力化については、まずはやはりマクロ化は必要である。

例えば、荒取り→部分荒取り→中仕上げ→仕上げ加工→狭小部の削り残り加工といったプロセス・使用工具・加工条件は、標準化できることが多く、データ作成の都度定義するのは時間の無駄と言える。

それぞれのCAMが実装している加工プロセスの保存と呼び出し機能をフル活用すると共に、最も安定したプロセス・条件を社内でシェアするべきである。

 

また、かつては3次元加工のCAM作業において、前工程で仕上がっている面に工具軌跡を触れさせたくない、凸のピン角形状にダレを発生させたくないといった理由から、本来の加工形状にはない、工具軌跡を制限するためだけの、通称ダミー面と呼ばれる一種の蓋のような役目をする形状を作成しながらNCデータ作成することもある。しかし近年、CAMによってはダミー面と同等の機能もあり、活用したいところである。

 

パターンケース(イ)(金型設計から3次元設計を行い、加工現場に3Dモデルで渡す場合)

この場合において、2次元CAMを使ってデータ作成を行う場合は、3次元モデルを一旦2次元の状態に変換しなければならない。NCデータ作成省力化のためには、こうした事前準備を迅速に行うことも重要である。

 

3次元に対応できるCAMを使って2次元加工を行う場合、CADモデルをCAMに取り込む際、フィーチャー設計に近い状態で取り込むことができれば、人の操作で行う加工定義を省力化することができる。

例えば、モデル上の各面の色で加工種類を認識する機能がある。穴であれば、タップ穴やリーマ穴の認識などがあり、ポケット加工などのエンドミル加工においては、▽の粗い加工面で良いのか、▽▽や▽▽▽の仕上がり面まで必要なのかの認識がある。

 

パターンケース(ウ)(金型設計で3次元のフィーチャー設計を行う場合)

この場合のプレート類の加工においては、最も省力化できる余地が大きい。

 

フィーチャー設計された部品のCADモデルを受け取った加工現場のCAM上では、各プレートをフィーチャー認識させると、例えば穴加工であれば、タップ穴やリーマ穴など穴種類をモデルから認識させることができ、センター穴→ドリル穴→タップ加工といった、連続した加工プロセスが自動で定義される。

こうした機能を使うことで工数削減はもちろん、現場での加工ミスや漏れを減らすことも可能になる。

 

取り組み指針に沿ったCAM機能の選び方

では、先ほどまで挙げてきた「省力化で取り組むべきこと」を実現するCAD/CAMの機能にはどのようなものがあるのか、具体的にみていこう。

 

2次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン①での対応)

2次元設計の効率性と3次元モデルの利便性を合わせ持ったシステムとして、(株)C&Gシステムズ社のEXCESS-HYBRIDⅡが知られている。こちらのCAD/CAMを使用することで2次元ベースのフィーチャー設計が可能になる。

その他には、キャムタス(株)社のSpeedy mill/winの「プレート分解」機能などが使われている。

 

フィーチャー設計の導入にあたり使用するCAD/CAMを選ぶ際には、運用までの立ち上がり期間をできる限り短縮できるソフトを選ぶべきである。

筆者が聞く限り、フィーチャー設計に取り組んだ全ての企業がうまくいっているわけではない。うまく立ち上がらずに、従来の方法に戻ってしまうことも少なくない。

失敗する理由の多くが、運用前のデータベース登録作業の大変さがあり、普段の金型業務と並行しながら行わなければならない場合が多い。

 

そこで、CAD/CAM選定にあたっては、①販売ベンダが深い金型の知見をもっていること、②ミスミ部品など初期設定で大半のデータベース登録が済んでいるといった要件を満たすシステムを選ぶべきである。

 

試作板金と量産用プレス金型の外販を両立し事業を行っているユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)では、EXCESS-HYBRIDⅡを駆使し、3次元でモデリングする製品意匠面と、2次元で加工する金型構造部をそれぞれ切り分け、効率的なNCデータ作成を行っている。協力メーカーに設計を外注する際も、同じEXCESS-HYBRIDⅡを持つ金型メーカーに依頼しデータベースを共有することで、フィーチャー設計システムを活かせる外注政策をとっている。

 

3次元CAMでの省力化(パターン②での対応)

  • 加工プロセスの保存・呼び出し

3次元CAMでの省力化においては、まず加工プロセスの保存・呼び出し機能は活用したいところである。筆者が使っているOPEN MIND社のhyperMILLにおいては保存した加工プロセスを呼び出すことで、加工対象のモデルを変えても、使用工具・加工条件・加工定義(等高線荒取り・走査線仕上げ加工など)を使いまわすことができ、迅速なCAM作業を行うことができる。

こうした機能を使い、被削材種、ワークサイズ・特徴、部品種類によって、保存プロセスを多数用意しておき、CAM作業者間でシェアすることが望ましい。

 

筆者がサポートさせていただいた(株)瑞木製作所(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)では、AUTODESK社のHSMWorksを使用しているが、このCAMは荒取り加工パスに定評があり、加工に関する細かなパラメーター調整ができる点も特徴である。

 

半面、部品によって細かく定義されたパラメーターや、同社が扱う航空機部品に多い薄肉形状の加工においては、膨大な数の加工プロセスになることも多いが、CAM作業の都度、新たに定義していては、加工条件のばらつきリスクはもちろん、作業時間のロスも大きい。

そこで同社は、HSMWorksのプロセス保存機能を活用し、効率的なNCデータ作成作業を行っている。

 

  • ダミー面作成作業を無くす

ダミー面の作成については、古くから当たり前の作業として行われてきたが、その作業を不要にできる機能がCAMに実装されている。 筆者の経験では、(株)牧野フライス製作所のFFCAMが持つ「パス作成補助機能」が便利であった。

 

例えば、加工するワークと同じサイズでモデリングされた3Dモデルを加工現場が受け取った場合、加工軌跡を若干はみ出させたいときがあり、こうした際に使えるパスの「延長」機能や、3Dマシニング加工の前工程、例えば研削加工などで仕上がっている面に触れさせないパスを「面から離す」機能などがある。

 

また、モデル上は凸のピン角になっていても、工具の加工軌跡が円を描き、ダレができてしまう部位においても、きれいなピン角が出せる加工軌跡が出力できる「等高線角だし・投影角だし」機能がある。

 

3次元設計データを他システムで扱う場合の省力化(パターン③ケース(イ)での対応)

2次元CAMを使用する加工現場において、3次元CADデータを受け取った場合、(A)三角法による2次元図面に変換する、(B)2次元図面に変換することなくCAMに取り込みデータ作成作業を行うといった方法があるが、やはり(B)の方法が省力化には望ましい。

 

筆者も使用している(株)エリジオン社の2次元CAD/CAMキャメストには、「3D活用エンジン」という機能があり、3次元CADモデルをDXFデータなど2次元用のCADデータに変換することなくそのまま取り込むことができ、CADモデルが持つ面の色情報、Z深さ情報などをダイレクトに加工定義に反映させ、CAM作業の大部分を省力化することができる。

 

また設計からのCADデータを、加工現場が3次元データで受け取り、3次元のCAMでNCデータ作成を行う場合、キャメストの3D活用エンジンのように、モデルの面の色情報、穴やポケットなどの深さ情報を、ダイレクトにCAMに反映させることができれば、作業の省人化につながる。

 

hyperMILLには、フィーチャー認識機能があり、マクロ機能と併用することで、3Dモデルを取り込んだ状態から、プレートに必要な加工定義を一気に自動で作らせることができる。現状の機能では、ポケット加工などエンドミル切削については、狙いの表面粗さに応じた加工手順まで完全に自動で反映させることは難しいが、穴加工については設定次第で、かなりの自動化を行うことができる。

図  hyperMILLによるフィーチャー機能を使用したところ

 

3次元設計でのフィーチャー設計機能(パターン③ケース(ウ)での対応)

3次元設計の本来のメリットを出すことは、設計作業単体だけでは難しく、後工程、特にデータ作成やトライ作業を設計段階に取り組むことで効果を発揮できる。

 

3次元のフィーチャー設計を行うことの加工現場でのメリットは、2次元のフィーチャー設計と同様に、加工定義が済んだ状態でCAM作業に入れる点である。残る加工現場の作業としては、実際に加工するワークの向き、加工原点、実際に使用する機械に応じた工具設定・加工定義の調整などで済む。

 

筆者がコンサルティングを行っている株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)では、ペーパーレスの3次元設計のメリットを最大限に活かしたフィーチャー設計を行っており、プレス金型において、特にリードタイム短縮にこだわった取り組みを行っている。

 

まとめ

ここまでNCデータ作成における省力化の例をみてきたが、CAM作業はいかに効率化できても、実際に加工した金型自体が必要品質を確保できてようやく要件を満たすことができる。

そのためには、被削材の種類や使用工具、加工に使う工作機械、加工形状・クランプ状態など、様々な要因がからみ、従来は加工技術者の判断なくしては対応ができなかった。

 

しかし一気に全部ではないが、それらのノウハウは徐々にデータ化され、標準化されてきている。例えば、Mashining cloudやcim sourceといったインターネットを介したサービスでは、加工形状、被削材、加工プロセスに応じた推奨工具と条件をダウンロードできる。

 

こうしたサービスによって、従来技術者の経験によって蓄積されてきた「引き出し」も、公開された情報として標準化されていくのかもしれない。

 

こうした知識・情報の標準化やCAMの機能向上によるNCデータ作成の省力化が進んでも、筆者も含め、加工技術者の個性は発揮できるよう切磋琢磨していきたいところである。

 

 

CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方

 

今回は、CAMを使い、ボールエンドミルによる自由曲面などの3次元加工を行う際に、工数に配慮したパスの作り方について書いて手順をまとめてみました。

なお、自由曲面などの3次元加工というのは、例えば、下図のようなボールエンドミルでないと加工できない形状を指します。

 

さっそく手順をみていきたいと思いますが、当事務所のクライアント企業さまには、5軸マシニングを使っている事業者さんもみえるので、

  • 3軸加工の場合
  • 5軸加工の場合

それぞれに分けてみていきたいと思います。

 

① 3軸加工の場合

  1. 突き出し長さ4Dで加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。
    φ10ボールエンドミルにおける工具突き出し長さ等高線加工における加工エリア

  2. 次に、突き出し長さ6Dを目安に、この長さで加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:ステップ1.の送り速度の10~20%減ていどで加工できるエリアを確保するため。
    工具突き出し長さ6Dの様子突き出し長さ6Dの加工エリア

  3. 突き出し長さ8D以上で加工する部位を抽出する。

    理由:残った部位を、やむなくステップ1.の30~50%以上減の速度で加工するため、出来る限り少ない範囲にしたい。
    工具突き出し長さ8Dの様子

 

② 5軸加工の場合

  1. 3軸加工と同じく突き出し長さ4Dで加工できる部位を抽出し、5軸機能は使わず、まず3軸加工における「等高線加工」を行う。

    理由①:5軸加工は便利である反面、主軸やテーブルなど、精度や各軸同期速度のベースとなる旋回軸・傾斜軸が同時に駆動する加工であるため、寸法確保・加工時間への影響が大きい。そこでまずは、出来る限り動かす軸が少ない加工を行い、加工品質・送り速度の安定を優先する(特に金型部品など)。

    理由②:3軸加工の仕上げ工法については、一般的に「等高線加工」と「走査線加工」があるが、品質優先のために「等高線加工」をまずは採用する。

    走査線加工」はXYZが同時に動くことが多いが、「等高線加工」は基本的にZ軸位置を決めたあと、XY軸のみで軌跡をつくる。そのため「走査線加工」よりも「等高線加工」の方が寸法精度を確保しやすいため。

    理由③:突き出し長さ4Dまでであれば、最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。

  2. 突き出し長さ4Dで加工できる部位を抽出し、5軸機能は使わず、3軸加工における「走査線加工」を行う。

    なお、「等高線加工」と「走査線加工」では、「等高線加工」が先で「走査線加工」は後に行う。これは「走査線加工」における壁面付近の安全を確保するためであり、「等高線加工」を先に行っておく。

  3. 突き出し長さ4Dの同じ工具のまま、5軸機能を使って干渉回避を使った加工を行う。

    5軸加工よりも3軸加工の方が加工精度が良いため、カタログ値に近い送り速度で出せる工具突き出し長さで加工できるエリアを、3軸加工で先に行っておき、その工具で届かないエリアを5軸加工で行うという手順をとる。
    5軸加工を使った加工エリア

  4. 突き出し長さ4Dの同じ工具で加工できるが、切削時の工具接触周長が多くなってしまう狭い凹部の加工が存在すれば、そこを抽出し、オープン形状部を加工する際の1/3ていどの送り速度を目安に、限定したエリアの加工を行う。

    なお、それにあたり、上記ステップ1.~3.において、当該エリアは除外しておき、ステップ1.~3.ではカタログ値の送り速度を出せるようにする。

    理由①:最もカタログ値に近い送り速度が出せるエリアを出来るだけ多く確保するため(あらかじめ狭い凹部を除外しておく)。

    理由②:削り残りが出やすくゼロカット再仕上げの頻度が多くなる部位を、あらかじめ分けておくため。

 

以上、CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方をまとめてみました。

加工目に配慮した加工パスの演算ができるようになった次は、やはりビジネスとして、加工時間に配慮したパスが出せるようステップアップしてみてはいかがでしょうか。

 

もし実際の加工モデルを見ながら、具体的なアドバイスが欲しいという場合は、お気軽にお問い合わせください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

金型・部品加工業専門コンサルティング

技術コンサルタントshoei

代表コンサルタント:村上 英樹

 

 

パンチ側のワイヤーカットにおけるつなぎ位置について

 

当事務所では、ワイヤーカット加工におけるスタート穴と、それに伴う軌跡終りのつなぎ位置について、どこでつなぐのが良いのか、よく相談を受けます。

 

そこで、次は今話題のクラウド系低価格3次元CADであるFUSION360を使って、定量的に確認してみることにしました。

 

なお、ダイ側については、歪むであろう量を見込んで荒取りを行ったのち、2ndカットおよび3rdカットで仕上げるのが良いと思います。

 

したがって今回は、パンチ側の形状で確認してみることにしました。

 

とりあげた事例は、次の2パターンです。

パターン①として

ワイヤーカット歪みとつなぎ位置_1

パターン②はこちら

ワイヤーカット歪みとつなぎ位置_2

 

形状の前提条件として、テーブルにクランプする側は、35ミリの残り代をつけており、そうでない外周側は、最小5ミリの残り代をつけています。

板厚は、プレス抜きパンチに多い60ミリにしています。

 

パターン①のコンセプトとして、段取りの際、水流を出しながら、上部ノズル位置をスタート穴中心に手動で移動させる際、ワーク外から見やすいので、よくこの外側の位置にスタート穴を設けることがあります。それを再現しました。

 

パターン②のコンセプトとしては、パターン①の反対側に持ってくることで、どのように強度が変わるのか見るために、この位置にしました。

 

なお、スタート穴を対角にしていないのは、今回特に、歪みを再現した際、ある程度大げさに変位させるためです。

 

結果は次のようになりました。

まずパターン①

ワイヤーカット歪みの結果1

 

次にパターン②

ワイヤーカット歪みの結果2

 

これを見ると結果は明らかな違いが出ました。

 

切り出したパンチ形状に、同じ数値の応力をかけているにもかかわらず、

パターン①の方は、外周部の残り代が5ミリしかない部位の変形の影響もあり、最大0.048ミリの変位が出ています。

パターン②の方は、クランプしている側、残り代35ミリある側のみで受けているので、最大変位量はわずか7ミクロンで済んでいます。

 

切り出した際、それだけの応力変形があるのかどうかということもありますが、そもそもつなぎ位置の違いによって、これだけ違いが出るという傾向を、今回は見ることができました。

 

今回の解析の結果から、もし高精度なパンチ形状を加工しなくてはならないときは、素材が応力変形の影響をうけない部位につなぎを、可能であれば複数個所設け、機械精度に応じて2ndカット、3rdカット、場合によっては、4thカットを行って仕上げるという手順が良いのではと思いました。

 

前回の検証でも書きましたが、素材の材種、板厚、熱処理の有無など、諸条件によって結果は異なってくると思います。

また、素材のサイズ、パンチの形状によっても、変形量は変わると思います。

 

ただ、金属の変形については、なかなか可視化できないため、イメージを持ちづらいとおっしゃる方が多いです。

世の中のツールが非常に早い速度で進化を遂げている昨今においては、今回のようにFUSION360などのソフトウェアを使って、傾向を確認してみるのもいいかもしれませんね。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

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代表コンサルタント:村上 英樹

ワイヤーカットを行うプレートにおける端面からインロー形状までの適正な距離について

ワイヤーカットの段取り状態

 

ここ最近、ワイヤーカット加工のインロー形状があるプレートについて、端面からインロー形状までの距離をどれだけとれば良いのかという相談をよく受けます。

いわゆる下図の寸法部位のことになります。

ワイヤーカットの段取り状態

 

実際のところ、プレートの材種、板厚、前加工の状態、熱処理の有無など、多くの影響因子を受けるため、一概には言えませんが、

ワイヤーカット機への段取りの都合上、つまり下ノズルの可動範囲を考慮して、各金型メーカーさんの状況を見ると、20ミリ~40ミリの範囲が多いです。

 

20ミリ以下になると、ワイヤーカットの段取りの都合上、やりにくくなりますし、40ミリを超えると、加工後の変形に対して安心感は増しますが、歩留まりが悪くなるので、材料コストが気になります。

 

そういったところから、20ミリ~40ミリの範囲というところになっているんだと思います。

 

では実際、20ミリと40ミリでは、どれだけ加工後の変形に影響が出るのでしょうか。

そこで、今話題のFUSION360のシュミレーション機能を使い、確かめてみました。

 

パンチプレートでありがちな、25ミリの板厚の炭素鋼の設定で、下図のようなメッシュを作り調べてみました。

ワイヤーカット残り代の解析のメッシュ状態

プレートサイズは300×200ミリ、インロー形状は100×50ミリです。

 

検証内容は、端面からの距離を変えることで、どれだけ変形量が変わるかです。

手順は、次のように行いました。

  1. まず変形はほぼ少ないと思われる、端面から50ミリ付ける設定で、プレートの外側から、3ミクロン以内の変形に収まる圧力を設定しました。
  2. その圧力をもって、端面からの距離を35ミリ、20ミリにしたとき、同じように力を加えるとどれだけ変形が起こるかを検証しました。
  3. また、板厚を変えると変化量は変わるのかを検証するため、プレートの板厚を50ミリ、100ミリに変化させて検証しました。

 

手順1.の結果が下図の状態です。

 

ワイヤーカット残り代の解析による検証_1

FUSION360による結果表示は、見えた目にイメージしやすいようオーバーに変形されます。

最大に変形している箇所は、4ミクロン変形しています。

 

手順2.の結果が下図の状態です。端面からの距離を35ミリにしました。

35ミリを選択した理由は、以前読んだワイヤーカットの高精度加工に関する論文に出てくる実験で、加工変形させないための充分な距離として35ミリを設定していたので、今回35ミリで検証してみました。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_2

結果の最大変形量は、約 6ミクロンなので、±0.01ミリの加工公差であれば、充分に収まる変形量になりました。

また、50ミリにした時と、変形量はほとんど変わってないとも言えます。

 

次は、端面からの距離を20ミリにしました。

ワイヤーカット段取り、材料コスト、両方を重視する金型メーカーさんでよくとられている距離です。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_3

最大の変形量は、約 13ミクロンでした。

以前、クライアント企業のワイヤーカット担当者さんが、±0.01ミリの寸法公差を要するプレートで、端面からの距離が20ミリでは変形が公差内で収まらなかったというお話がありましたが、この結果からすると、その厳しい寸法公差で加工しなければならない場合、やはり20ミリでは難しかったのかもしれません。

 

さて、ついでに、端面からの距離を5ミリでもやってみました。下図がそれです。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_4

最大の変形量は、0.28ミリです。やはりこれだけ歪むんですね。この薄肉の中にどれだけの応力があるのかという話もありますが。

ただ、これがパンチプレートではなく、在庫材からパンチをとるような場合、端面からの距離は捨て側になるので、よく5ミリにしたりしますが、加工経路には気を付けたいものです。

 

ではプレートの板厚を変えることで、変形量は変わるのかどうかを検証した結果ですが、

下図は手順2.の端面からの距離20ミリのものを、プレート板厚25ミリから50ミリに変えた状態のものです。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_7

結果は、約 13ミクロンの最大変形量で、プレートの板厚25ミリのときと、ほとんど変わりませんでした。

 

プレートの板厚を100ミリにした結果が下図です。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_8

最大変形量は、約 13ミクロンと、やはりほとんど変わりません。

 

ということで、今回の検証ではプレート厚を変えることで、加工変形を抑えることの効果は見られませんでした。

つまり、パンチプレートの厚さを、例えば25ミリから40ミリに厚くすると、ワイヤーカットの加工変形は抑えることができるのか、というと効果はよくわからない、無いかもしれないということです。

 

しかしながら、丸パンチや異形パンチをインローでホールドするようなパンチプレートにおいて、無理に板厚を薄くしたりすると、パンチの直角性が悪くなったり、プレス抜きを行った際に振動によってパンチの刃持ちが悪くなる恐れがあります。したがって、出来るだけプレート厚さは確保したいものです。

 

ちなみに、端面からの距離は同じ25ミリにしたまま、プレート厚を10ミリにしたところ、下図のようになりましたが、最大変形量は、やはり約 13ミクロンでした。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_9

 

 

今回私なりの結論ですが、以前読んだ論文の実験どおり、特に高精度に加工するのであれば、端面からの距離は35ミリあれば充分なのではないか、40ミリ以上は取り過ぎなのではないかと思いました。

 

ただし、前述したように、プレートの材種、板厚、前加工の状態、熱処理の有無など、諸条件によって結果は異なってくるはずです。

 

また、もちろんプレートのサイズ、インロー形状のサイズによっても、変形量は変わります。

設計の際には、今回のような方法で、一度検証してから決めるのもいいかもしれませんね。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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代表コンサルタント:村上 英樹

 

 

 

【マシニング加工のいまさら聞けないシリーズ】リーマの下穴加工について

 

普段当たり前に加工されているリーマの下穴加工ですが、いろんな会社さんを回っておりますと、実は皆さんバラバラな方法をとっていることが多いです。

 

そこで、今回は、リーマの下穴加工についてまとめてみたいと思います。

 

私の拠点であります、ここ中部地方の加工屋さんでは、主に下記の方法のいずれかで、リーマの下穴加工を行っているようです。

 

例えば、φ10リーマの下穴加工を例にとってみると、

 

  1. φ9.8ハイスドリル→φ10リーマ
  2. φ8ハイスドリル→φ9.8ハイスドリル→φ10リーマ
  3. φ8ハイスドリル→φ9.8エンドミル縦突き加工→φ10リーマ
  4. φ8ハイスドリル→φ9.8仕上げ狙いエンドミル輪郭加工→φ10リーマ

 

上記4.の方法までやっているところは稀ですが、何とか高い位置精度を出したいときに、苦肉の策でやっている会社さんを何社か見たことがあります。

 

やはり最も多いのは、上記1.のパターンではないでしょうか。

 

この方法で怖いのは、ハンドリーマよりも切削性の良いブローチリーマを使ったとき、しかも下穴ドリルの穴が曲がって加工されているときに、それに倣いリーマの位置精度がズレて加工されてしまうことです。

 

そのドリル穴の曲がりを矯正するために、上記2.や3.の方法がとられています。

実際に、それを行っている方から、そうした意図だと聞いたこともあります。

 

特に上記3.は、上記2.のように、矯正するためのφ9.8の穴加工を続けてドリルで行ってしまうと、曲がった穴がまっすぐ矯正されず、追従して曲がったまま追加工をするだけになってしまうことを懸念し、切削する機能を持つエンドミルを使って追加工するという意図があります。

 

では、下穴の矯正加工をドリルとエンドミルで行うことに違いはあるのでしょうか。

 

近所の公設試に確認したところ、ほとんど違いはないとのことでした。

ただし、ドリルよりもエンドミルの方が、芯の太さが太い分だけ、加工負荷による工具たわみが少なく、下穴曲がりが少なくなるのではないか、とのことでした。

 

実際には、ハイスドリルの場合118°の先端角があり、軸方向と回転方向の負荷をバランスしているドリルと、フラットエンドミルで縦突きして行う穴加工の場合では、切削負荷のかかり方も異なります。

 

直進的な穴加工について、フラットエンドミルによる穴加工は、ドリルよりも切削機能は劣ると思いますが、下穴曲がりの矯正という点においては、ドリルよりも縦方向(軸方向)の負荷(背分力)を中心に加工する分、先に加工されている下穴の曲がりに追従していくことは少なくなると思われます。

 

これは、旋盤の中ぐりにおいては、ワークの軸方向に直角な刃先形状で切削したほうが、バイトの倒れ・ビビリが少ないことと同様の考え方だと思います。

(外形旋削のように、45°形状の刃などを使うと、背分力が大きくなり、ワークやバイトのビビリが起きやすくなる)

 

 

できるだけ位置精度に配慮したリーマの下穴加工はどのように行うと良いのか、まとめてみますと、

 

  • まず、リーマ径よりも1ミリほど小さい径で、ドリル加工を行う。
  • 次に行う下穴曲がりの矯正のための追加工は、できるだけ芯の太いフラットエンドミルで穴加工を行う。この場合の工具径は、使用するリーマが推奨するものを使う(通常は直径でマイナス0.2~0.5ミリ)。

 

この上記②で使うフラットエンドミルは、2枚刃よりも4枚刃のエンドミルの方が、芯は太いので、切りくずの出方、刃が多くなることによる過度な切削抵抗の問題がなければ、下穴曲がりの矯正の点では、優れているということになります。

 

しかし、超硬のドリルがよく使用されるようになった現在、上記①と②の工程は、超硬ドリルを使用することで、②だけに集約することができると考えます。

 

超硬ドリルのヤング率、巧折力を考えると、ハイスドリルと比較して、圧倒的に下穴曲がりが少なくなると考えられるためです。

 

いきなり上記②の加工に入るということですので、φ10リーマの下穴ということなら、φ9.7もしくはφ9.8の超硬ドリルで良いということになります。

 

複数の工具を使わない分、加工時間、段取り時間、マシニングセンターのマガジン数の制約などについて、多くのメリットがあります。

 

 

リーマ加工の品質は、下穴で8割決まると言った工具メーカーの方もおられましたが、実際、特に位置精度については、下穴加工の影響は大きいと思われます。

 

そもそもリーマは、バニッシュ効果や、穴をきれいな形で仕上げる機能を重視しており、下穴の曲がりを切削で直しながら、ガシガシ切削していくものではありません。

 

ですので、下穴の加工の段階で、しっかり位置精度と穴形状を出しておくことは重要だと思います。

 

ぜひ一段上の技術者を目指す皆さんには、試行錯誤のための選定指針を持っていただきたいと思っております。もしよろしければ、参考にしてください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

金型・部品加工業専門コンサルティング

技術コンサルタントshoei

代表コンサルタント:村上 英樹

 

 

【CAM活用で起こる疑問】エンドミル仕上げの際のZ切り込み量はどう考えるべきか

 

ここ最近、マシニング加工においては、CAMや対話システムが当たり前のように使えるようになり、かつてGコードプログラムや手動操作では、わずらわしかった加工方法が、今では不自由なく、簡単に実現できるようになりました。

 

そういった加工の一つに、エンドミル切削における仕上げ加工の際、Z切り込み量を細かく分割して切削するという手法があります。

Z切り込みのイメージ

 

例えば、工具径の2倍を超えるような、そこそこ深い立ち壁の仕上げ加工の場合、一回でZ深さを加工してしまうと、切削抵抗のため、下図のように工具がたわみ、切削面の直角度が確保できないことがあります。

細いエンドミルで深い立壁を切削加工

そこで、手動のハンドル送りで加工したり、Gコードプログラムで加工する場合は、Z切り込み量を細かくして、Z深さを何回かに分けて最終深さまで切削するわけですが、

同じXY平面上動作のプログラムを何度もコピーしたり、サブプロを作って念入りに確認したりと、

何かと面倒なこともあり結局、送り速度を下げ、一回か2回くらいに分けて、何とか倒れを最小限にするよう心掛けながら、無理やり加工するといったことがよくありました。

 

しかし、CAMを使ったり、マシニングに付属している対話システムを使うことが当たり前になってきた昨今、Z切り込み量を細かく分割して、切削負荷をかけない立ち壁の仕上げ加工が簡単にできるようになりました。

 

さて、ここで出てくる疑問が、

「じゃあ、何ミリずつ切り込むのが正しいの?」です。

 

立ち壁を細かなZ切り込み量で切削加工

 

結論から申しますと、使う工具の種類ごとに異なります。

その「工具の種類」とは、工具径や刃数、リード角などによるものです。

 

では、今回のテーマであるエンドミル側面を使った仕上げ加工時において、Z切り込み量を何ミリにするかを考えるにあたり、何を考慮すべきか。

 

考慮すべきこととして、切削抵抗に影響を与える「同時切削刃数」があります。

 

同時切削刃数とは、2枚刃、4枚刃、6枚刃など、複数の刃を持つエンドミルを使い、壁の側面を仕上げる際、同時に切削面に接触するエンドミルの刃の枚数のことです。

 

ストレート刃でない限り、一般的に使われるエンドミルの多くは、下図のように、刃にリード角があるものです。

リード角とは、エンドミルの側面刃にある「ねじれ」のことです。これによって、切削抵抗が分散される効果があります。

側面切削

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/monoq/basic/detail/detail30.html

「ものづくりQ&A 基礎編 エンドミル加工 |  株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2017年9月27日)

 

下図のイラストを見ると、切削面には同時に2枚から3枚の刃が、当たっているように見えます。

同時切削刃

これが、側面仕上げ加工における「同時切削刃」です。

ざっくり言えば、この同時切削刃が多いほど、切削抵抗は大きくなり、ビビリなどの振動・エンドミルの倒れなどが起こりやすくなると言えます。

 

ですから、せっかくCAMや対話システムを使って、簡単にZ切り込み量を細かく分割できるのであれば

  • 同時切削刃をできるだけ少なくする。
  • ただし、細かくし過ぎて加工時間が長くならないようにする。

この2つが両立する、Z切り込み量を選定すべきではないでしょうか。

 

加工時間を短くしたいために、Z切り込み量を多くとれば、同時に接触する刃の数が多くなるのは、容易に想像できると思います。

では、同時切削刃が起こらない、つまり1枚の刃で切削できる最大のZ深さは、どのように計算すればよいのでしょうか。

 

その計算は、エンドミルの直径1周分を1枚の平面に引き伸ばして考えます。

まずは、1枚の刃だけで考えてみますが、リード角がありますので、その平面の状態は、下図のようになります。

エンドミルの周長とリード角

これを、2枚刃と4枚刃、それぞれの状態で見てみると、下図のようになります。2枚刃・4枚刃のエンドミルの周長とリード角による平面図

最近使われることも多い、不等分割エンドミルではなく、等分割エンドミルの場合の図になりますが、前述した1枚刃の状態の図と比較して、図の中に同じ角度の線がそれぞれ、刃の枚数に応じて追加されています。

 

この追加された斜めの線が、2枚刃・4枚刃、それぞれ増えた分の刃の線になります。

1枚刃の図にあった斜めの線のすぐ右横にある線が、エンドミルが回転している際、次に切削面に接触する刃になるわけですが、例えば、上図左の2枚刃の場合、27.19ミリよりも深いZ切り込み量で、立ち壁の仕上げ切削を行うと、縦の一点鎖線が示すように、同時に2枚の刃が接触することになります。

 

上図右の4枚刃の方は、2枚刃に比べると4枚の刃の間隔が狭いため、さらにZ切り込み量が浅くなり、13.6ミリよりも深くなると、同時に2枚の刃が接触します。

 

ここから読み取れることは、例えば、

  • ワークやクランプの剛性により、切削振動が起こりやすい。
  • BT30のツールホルダーを使用しているなど、機械剛性があまり強くない。

といったような場合において、仕上げ加工をよりデリケートに行いたい場合には、上で示したZ切り込み量よりも浅く切削し、できるだけ刃数の少ないエンドミルを使った方がよいということになります。

 

逆に、刃数の多いエンドミルは、

  • 芯厚が太い。
  • 送り速度を上げられる。

といったことにより、加工生産性を高めることができますので、剛性・精度上の問題がなければ、積極的に使っていきたいところです。

 

さて、では次に工具径の違いによる、Z切り込み量の違いを見た場合の状態が、下図のようになります。

工具径の違いによるZ切り込み量の違い

上図のそれぞれを見てみると、φ10よりも、φ6エンドミルの方が、同時切削になるまでのZ切り込み量が浅いです。

 

ここから読み取れることとして、

  • やはり、工具径が大きい方が、同時切削刃にならないZ切り込み量が深い。

 

ということですから、そもそも工具径が太い方が倒れに対する剛性が強いということもあり、加工生産性を考えても、少しでも太い工具を使った方が、精度・工数削減の観点からも良い結果が得られるようです。

少しでも太い工具を使った方が、精度・工数削減の観点からも良い結果が得られる

 

 

では最後に、エンドミルのリード角の違いによる、同時切削刃までのZ切り込み深さの違いを見ていきたいと思います。

エンドミルのリード角の違いによる同時切削刃までのZ切り込み深さの違い

これを見ると、まず上図の真ん中と左の図の違いとして、同じ径のエンドミルでも、リード角の違いによって、同時切削刃になるZ切り込み量が異なってきます。

 

ここから読み取れることとして、

  • リード角が大きい方が、同時切削刃になりやすく、許容されるZ切り込み深さが浅くなる。

ということになります。

 

そもそも、リード角を大きくすることで、切削面に対する接触面を斜めにずらして、負荷を分散する効果を目的としていますので、その分、Z切り込み量を多く取れるのではないかとも考えることができます。

 

これについては、工具ごとの切削性能に大きく影響を受けると思いますので、ここではあくまで、よりデリケートに仕上げたい場合の考え方として、

  • リード角の大きい工具を選ぶ。
  • 同時切削刃にならないZ切り込み量を選ぶ。

という方向性がよろしいのではないでしょうか。

 

さらに、上図の真ん中とその右の図を比較すると、リード角が大きくても、やはり刃の数が多い4枚刃の方が、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が浅くなります。

 

これを見ますと、一つの方向性として、

  • 切削抵抗の少ないリード角の大きなエンドミルを使う。
  • 送り速度を上げられる刃の数の多いエンドミルを積極的に使う。
  • その分、デリケートな仕上げ加工を行うならば、同時切削刃が少なくなるZ切り込み量を選定する。
  • ただし、Z切り込み量を細かくすると、同じ切削軌跡を加工する回数が増えるので、加工工数には充分に留意する。

ということが言えるでしょうか。

 

ただし、あくまでも、加工品質と加工工数は、相反するものですので、過剰品質にならないよう、充分にお気を付けください。

 

一歩先の加工技術者を目指す皆さんには、一つ一つの作業に「根拠」を持って取り組んでいただきたいと思っております。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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代表コンサルタント:村上 英樹