金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例(2017年3月号掲載)

ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例(2017年3月号掲載)

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本号で取り上げる金型メーカーは、本連載にて最初(第2回目)にご登場いただいたユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)である。

 

これまで同社は、高い職人技術で、金型製作から試作板金、部品加工まで幅広く手がけてきたが、今後はその職人技術の継承を確実に行っていくため、応用力を持つエンジニアを採用し育てていかなくてはならない必要性を感じている。

 

そこで筆者は、昨年の新卒者である守山竜平氏、ベトナム研修生であるグエン・ヴァン・ビン氏、チュオン・タイン・トゥン氏の3名の教育の機会を通じて、同社の教育カリキュラムを構築するお手伝いをした。

写真1 ベトナム研修生にSolidworksを指導する様子

今回、この取り組みを紹介するので、ぜひ参考にしていただきたい。

 

中小企業が活用できる支援制度

今回の支援においては一部、国や県の専門家派遣制度を利用している。この制度は、筆者のような中小企業診断士や他の士業など、色々な方面の専門家が国や県の機関から派遣され、その費用は国や県が支払ってくれるというもの。

 

これは、中小企業を支援するための制度なので、何か相談したいことや、同社のように何か取り組みたいテーマがあれば、ぜひ活用してみると良い。

 

筆者は拠点とする愛知県や、ミラサポといった中小企業庁の専門家派遣制度に登録しており、遠方の県外企業から申請をいただくこともある。こうした制度は、取引金融機関や地元商工会議所から詳しい情報を聞くことができる。

 

最近の金型業界の人材の課題

さて、金型業界や機械加工業では今、多能工や応用力のある若手人材が減っている。この点について筆者は、採用後のスタート教育が原因だと考えている。

 

例えば、多くの金型メーカーにて新規採用者は、設備償却費が高く、なるべく稼働率を高めたいマシニングセンターや、工具を選ぶ作業がなく、また年々操作が優しくなっているワイヤー放電加工機の担当者になることが多い。

 

そこではまた、早期に機械稼動率を高めるため、手順ありきの教育になってしまう場合が多い。こうした教育は、いかにその「手順」を早く多く覚えるかといったものになり、暗記的な意味合いが強くなる。学生時代の勉強のやり方の延長に近い。また、こうした定型的な勉強は今の若手は得意だ。

 

しかし、こうした仕事のままでは、本人の付加価値の上がる要素が少なく、本人にとっても会社にとっても不幸になりかねない。

 

技術者の付加価値とは

仕事でも勉強でも、単語(手順)をたくさん覚えることが重要なのではなく、覚えた知識をどう活かすかを考えられる能力を持つことが重要である。

 

それこそ、今は細かな知識を覚えていなくても、インターネットで簡単に調べられる時代であり、ちょっとした調べモノは、本で調べたり先輩・上司に質問しなくても、インターネットですぐに情報が手に入る。

 

だからこそ、技術者として、本当の価値の出し方が問われる時代になった。多くの経験をしてきたベテランも、それだけでは部下や後輩に尊敬してもらえる時代ではなくなった。知識だけでもいけない。知識と技能、両方を合わせ持った技術者が価値を持つ時代である。

 

また、かつては多く存在した勘コツの優れた技術者も、高齢化に伴い減少している。勘コツの基礎となるような、あれこれ試せる時間や予算の余裕が無くなったことも原因だ。このような時代だからこそ、きちんと根拠や理由から説明できる教育が必要である。

 

そうした事態になっていることを、水野社長は気づき、いつか自社の強みを継承していくエンジニアが減ってしまうことを危惧している。

 

そこで計画的に、金型エンジニアを育成していける自社なりの教育カリキュラムを作るため、筆者に声をかけたというわけである。

 

金型メーカー・機械加工業の人材教育方法

筆者は、金型メーカーや機械加工メーカーの教育のあり方について、3つで整理している。それは①知識、②技能、③手順の3つであり、これらは、それぞれ教育方法が異なるため、扱いに注意を要する。

 

①の「知識」は、③の「手順」と明確に扱いを分けることが重要で、「知識」は、「手順」のように作業の順番ではなく、加工技術の理屈についてしっかりと教える必要がある。

 

例えば、マシニング作業において、エンドミルの刃数の意義とそれをどう使い分けるのかなどが「知識」にあたる。ミーリングチャックへのエンドミルの取り付け方やその注意点などは、「手順」にあたる。

 

また②の「技能」は、手順を知ったとして急に出来るものではない作業を指す。いわゆる経験が必要になる技術で、例えば、マシニング作業においては、平行出しや基準位置決め、ドリル研ぎなどの作業が該当する。

 

ただし「知識」にあたる、正しい道具の使い方や操作方法など指導を受けなければ、自己流として間違った方法で覚えてしまう場合もある。「技能」を効果的に習得するコツは、正しい「知識」を覚えた後、いかに「反復効果」を効かせた練習ができるかに尽きる。

 

よく、この技能を覚えるには5年かかるとか、10年かかるといった比喩を聞くが、こと金型製作の技能においては、その限りではないと考えている。

 

結局、通常業務の中で習得していこうとすると、覚えようとする技能について、反復効果が表れるほど繰り返し実施する機会に恵まれず、5年や10年以上、会社で仕事をしていると、ようやく習得できるくらいその技能に触れる機会が出てくるという話であって、意図的に反復効果の効く練習方法をとれば、もっと効率的に習得することは充分に可能である。

 

こうしたトレーニングに有効なのが、昔、学校の勉強で使った「ドリル」である。ゴルフの練習でも、よくこの表現が使われる。ある体の動きを短期間で強制的に体に覚え込ませたいときに使われるトレーニングで、「この動きをこの順番で続けて行えば頭や体に覚えさせることができる」といったトレーニング方法を、作業ごとに作ることが有効である。

 

このようなポイントを押さえながら、今回、同社では、①CADの操作、②板金展開、③金型部品の作図、④SolidWorksを使った3次元モデリングなどの項目について、3名の教育を実施した。

 

今回の取り組みをきっかけに、今後同社の技術者が習得していくべき技術について、①知識、②技能、③手順の切り口に分け、教育カリキュラムを作っていくことができる。

 

今後の同社の取り組み

同社は、高い応用力を持つ金型エンジニアを増やしてくため、採用活動を強化している。多くの中小製造業で課題になっている人材の定着については、同社も重く受け止め、性別や年齢層を超えた、一体感のある社内の雰囲気づくりを心がけている。

 

昨今の短納期化・低コスト化により、殺伐とした雰囲気になりかけている金型業界であるが、それを払拭するべく、同社では水野社長を中心として、若者からベテランまで満足して働きやすい職場を作る取り組みを日々実践している。

 

その水野社長については、企業の新たな付加価値創出のため、継続した技術開発に余念がない。

写真2 韓国セチャン社と共同受賞した自動車向けマグネシウム合金ファン

写真は「平成28年度 名古屋市工業技術グランプリ」で「公益財団法人名古屋産業振興公社 奨励賞」を受賞したもの

 

国境を越えた金型エンジニア育成に意欲を燃やす同社の未来に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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