金型・部品加工業専門コンサルティング

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坂本精工株式会社のコンサルティング事例(2018年1月号掲載)

坂本精工株式会社のコンサルティング事例(2018年1月号掲載)

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本号で紹介する企業は、穴あけ工具の製造販売を主な事業とする坂本精工株式会社(大阪府八尾市 TEL072-924-4872)である。筆者は、同社の販路開拓と営業社員教育をサポートさせていただいた。今回はこの取り組みを紹介すると共に、同社が扱うオーダーメイド工具という専門商材を扱う営業の難しさに触れていきたい。

 

同社は、超硬合金製の穴あけ工具、特に総型工具と呼ばれる、加工目的形状と同じ刃先の形を持つ切削工具のオーダーメイド製作を行っている。

図1 同社が製作する総型工具

 

筆者が知る限り、一品生産の多い金型部品加工で総型工具を使うことは少ないと思われるが、例えばキャップボルトのザグリ穴のような段付き穴加工において、複数のドリルやエンドミルを使って加工する場合、総型工具を使用することで、一本の工具で加工を済ますことができる。

 

同社は、顧客の細かな要望に応える技術対応力と、それを最短納期で仕上げる納期対応力を強みとし、これまで関西地区を拠点として事業を行ってきた。

 

新たな販路開拓構想と同社の課題

同社は昨年から、さらに商圏を広げ、筆者も拠点としている中部地区に支店を作り、得意としている穴あけ総型工具の受注活動を進めている。

 

同社が扱う工具には、総型工具の他にバニシングドリルやリーマがあるが、自動車部品加工メーカーから需要があり、徐々に注文を受けてきているが、想定していたよりも販路開拓が進まないという課題があった。

図2 同社が製作する刃先がφ1.0mm以下のバニシングドリル・ リーマ

 

中部地区に多い自動車部品メーカーは、縦横のつながりが強く、他の地区からの参入業者から見ると、マーケットとしては大きいものの新規参入が難しいとよく言われる。

 

また、同社は中部地区に支店を作るにあたり、新たに営業社員を採用したが、これまで営業活動を一手に引き受けていた代表取締役の坂本泰昭氏との営業スキルに違いがあるという問題もあった。

 

そこで今回、同社の販路開拓と営業社員教育、それぞれについて、筆者がコンサルティングを行うことになった。

 

販路開拓の課題

同社が中部地区で販路を開拓するうえの課題として、まず同業他社の存在があった。

 

同社が強みとしている、きめ細やかな対応力、短納期対応については、まさしく同業他社も同じように磨きをかけ、常にしのぎを削っている。

 

また、工具を使用する加工メーカーも、常に品質・コストの問題があるため、これまで使用し条件を出してきた工具をそう簡単に切り替えることはしないと思われる。現場の立場からするとなおさらである。

 

同社はこうした同業他社がいる中で、受注を新たに奪っていかなければならない。そのためには、顧客メーカーのスイッチングコスト(切り替えのために要する費用、物的コストだけでなく時間的、心的費用もある)を上回るメリットを提案していく必要がある。

 

営業社員教育の課題

同社は今回の販路開拓にあたり、前述したように同業他社を上回るメリットを提案していく必要があるが、切削工具という商材は提案自体にその難しさがあった。

 

その難しさとは、顧客である多くのユーザーは「加工のプロ」であり、「工具のプロ」ではない。加工でどうしたいこうしたいはあるものの、それがどういった刃先形状や工具材質で実現可能になるのか、そこまで知り尽くしているユーザーはそう多くはないという点である。

 

つまり、工具を使用するユーザーは、やりたい加工、解決したい課題を伝える際、それを工具の姿形として表現することが難しいのである。

 

したがって、加工で用いる切削工具を販売する営業社員には、顧客の要望を引き出すための、プラスアルファの知識が必要になる。

 

同社の営業社員に必要な知識とは、具体的に次のようなものである。

  • 自社商品・製造能力に関する知識
  • 「工具のプロ」として、切削工具に関する知識
  • 「加工」についての専門知識

 

これが例えば、一般家庭商材を扱う営業マンであれば、それは日々の生活の中で顧客が抱える課題の情報を得ることができるが、同社が扱うような工具という専門商材、しかもオーダーメイドの切削工具ともなれば、加工のプロである顧客ユーザーと渡り合い、工具を扱う加工の知識もある程度なければ、顧客が抱える課題を引き出していくことが難しい。

 

上記(ウ)の専門知識は、まさにこの「顧客が抱える課題」を引き出すためのものであり、今回のコンサルティングにおいて最も注力し指導させていただいた点である。

 

今回のコンサルティングで取り組んだこと

今回の営業社員教育では、穴加工で起こりうる加工の諸問題を取り上げながら、顧客の課題を引き出すロールプレイング形式の対面営業トレーニングを行った。

 

具体的には、同社の主力商品であるリーマ加工で起こる問題、例えば、

  • リーマの穴ピッチがずれる、ばらつく。
  • 穴の中の加工面が荒れる。
  • 穴の真円度が悪い。
  • 加工工数を削減したい。

 

こういった問題が考えられ、訪問営業の中でこういった声を引き出さなくてはいけない。

 

こうした問題を相談してもらえるようになるには、まず加工について信頼できる相談相手にならなくてはならない(課題A)。

 

その課題を引き出すことができれば、今度は「工具のプロ」として、どういった刃先・工具形状をもってその問題を解決するか、自社商品を用いた解決案を提案する(課題B)。

 

コンサルティングの成果

今回のコンサルティングにより、次のようなPR資料を作成した。

  • 訪問先で、深い加工の知識を持ち、信頼のおける相談相手だと認識してもらうため、穴加工に関する自作のトラブルシューティング集を作成した。
  • 同社がこれまでの販売で解決してきた加工事例集。

 

①は、採用した営業社員が自らの知識を整理すると共に、前述した課題Aに対応する営業ツールである。また②は課題Bに対応する、顧客へ提案する際に用いる営業ツールである。

 

今回作成した営業ツールは、大阪府にある本社の従業員教育にも使えるものであり、今後は加工知識まで併せ持った「工具のプロ」になるために、ぜひ社内で共有して使っていただきたい。

 

今後同社が目指すべきこと

今回教育指導させていただいた営業社員が専門知識を持ちはじめたこともあってか、徐々に注文が取れているようである。

 

コスト要求が厳しい多くの製造現場においては、消耗品である切削工具はコスト削減対象になりやすく、やはり何らかインパクトのあるメリットが得られなければ、新しい工具への切り替えや積極的な購入に踏み切ってもらえないと思われる。

 

そうした中、同社に必要になる考えとして、単なる製造販売から「サービスを売る」という発想への転換がある。モノを作って売るのではなく、「顧客の課題解決」を売るという発想である。

 

そのためには、顧客が抱えている真の課題を引き出さなくてはいけない。また、信頼のおける相手でなくては、忙しい時間を割いてまで課題は話さないものである。

 

まさにオーダーメイド工具の販売に必要になる「サービス化」という転換を武器に、新たな販路の開拓を進める同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

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