金型・部品加工業専門コンサルティング

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有限会社ヤマヤス工業のコンサルティング事例【前編】(2017年1月号掲載)

有限会社ヤマヤス工業のコンサルティング事例【前編】(2017年1月号掲載)

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本号で紹介する機械加工メーカーは、有限会社ヤマヤス工業である(愛知県稲沢市 TEL 0587-32-3587)。同社は、プリント基板への微細穴あけ加工の事業において40年の歴史があり、その専門技術の高さにより、これまで安定した事業を行なってきた。しかしこの分野においては、レーザー加工技術の進化によってその加工方法は変化しており、同社を取り巻く事業構造も変化している。

そこで同社は、これまでに培ってきた微細加工技術を活かし、新たな事業分野を拡充しようとしている。

本号では、そういった同社の活動を取りあげ、特に商流が固定されていると言われる、筆者の活動拠点であるここ中部地方において、新事業を開拓していく一つのあり方を見ていこうと思う。

 

コンサル前に抱えていた課題

同社は、既存技術である微細穴あけ技術を活かした新事業展開を模索していたが、具体的にどのようなアクションをとればよいのかわからなかった。というのも、既存事業においては主要取引先がすでに決まっており、新規取引先を開拓するような営業の必要はなかったためである。

また、新規事業とはいえ、新たに売り物となる製品や加工技術が無ければ、営業をかけることもできない。そこで筆者と共に、新たに柱となる加工技術を導入するところからはじめることとなった。

 

コンサル後に得た成果

プリント基板の微細穴あけ加工で用いる要素技術をブレークダウンすると、工具の振れ精度など精密な段取り技術や、加工素材を複数重ね、バリを発生させずに加工するノウハウ、また毎日万を越えて加工する極小穴の品質管理技術などがある。

 

一方、金属加工の分野においても、微細加工や従来以上に高まる品質管理技術の需要が益々高まっていることはよく知られている。そこで同社は、強みである微細加工技術を、金属加工分野で効率よく行なうために、5軸マシニングセンター(以下、「5軸MC」)とそこで用いるCAD/CAMを合わせて導入し、金属加工分野への参入を果たした。

写真1 導入した5軸MCを操作している様子

 

今後、すでに成熟されているこの市場において、新たな顧客を開拓していくためには、汎用的にさまざまな加工に対応できる知識と技術が必要になる。そのため、切削加工だけではなく、他の加工方法も含めた周辺知識も必要となるが、その点について筆者と取り組んだ活動については、次号にて詳しく紹介する。

 

さて、中部地方で活発な自動車部品加工におけるサプライチェーンにおいて、昨今、特に価格競争は熾烈を極め、金属加工を営む中小サプライヤーは「短納期」と「ワンストップ対応」を強みとし、受注合戦を繰り広げている。この競争の中にどう参戦していくのか、今後同社が判断していくことの一つであるが、どのような業種においても、ビジネスを優位に行なっていくために必要なことは、「参入障壁」の高さである。

 

参入障壁とは、まさに文字通り、企業が異なる事業分野や市場に新規参入する際、ハードルとなる壁である。これが高ければ高いほど、自分の事業領域への他社からの参入を防ぎ、仕事を獲られることは少なくなるというわけである。

例えば、スケールメリットを必要とする・既存製品が差別化されている・巨額の投資が必要になる・流通ルートが決まっている・許認可が必要で参入制限があるといった理由から、新規企業の参入が妨げられるといった例がある。

 

金属加工の分野においては、独自性の高い製造技術やプロセス、管理技術を必要とするような製品を扱うことで、ライバル企業を減らしていくことができる。また、金属加工においては、高性能なソフトウェアや機械設備を導入すれば、良い製品が自動的に出来るということはなく、「経験曲線効果」と呼ばれる、永く蓄積された実績に伴って高くなる参入障壁もある。

 

同社が5軸MCに期待するもの

同社における新事業の担当者は、もちろん金属加工についてスタートラインについたばかりである。しかし筆者の経験上、精度の高い5軸MCを使うことで、次のような効果が期待でき、そのハンデを補うことができると考えている。

  1. 多面加工を行なう際、基準位置と直角精度を楽に確保できる。
  2. クランプが困難な、異形の形状の溶接製缶品や鋳造素材であっても、3軸マシニングよりも楽にクランプできる。
  3. 多面加工であっても、少ない段取り替えで加工できるため、加工工程を検討しやすい。

 

これらの例に挙げたようなメリットを活かすことで、3軸加工で行なう場合に必要となる職人技術の習得時間を、短縮できる効果がある。最近の傾向として、加工そのものについてはCAMの機能が向上したことで、オペレーターの技能によらず、ある程度の加工生産性は確保できる時代になった。

しかし、ワークの段取り方法や加工工程の検討は、CAMの機能に関係なく、個人差も発生し、いまだに属人的な要素の強い職人的な作業である。

 

展示会などで披露される、インペラ加工に代表されるような同時5軸加工は、従来技術と比較して、派手さがあり高度な加工である。しかし金属加工分野で行なわれている日常的な部品加工においては、割り出し5軸で行なうような多面加工を、3軸加工で行なっているケースが圧倒的に多い。こうした加工は、工程の順序やバイス・治具をいかに活用するかといったノウハウが必要になり、こうした場面でこそ5軸MCが効果を発揮する。

 

また、CAD/CAMは筆者も使っているhyperMILLを導入した。以前にも書いたが、このソフトは同時5軸加工で評価が高いが、金型の自由曲面の加工だけでなく、2次元加工を含む部品加工にも使いやすい汎用的な3次元CAD/CAMである。この点については、まさに今後の同社の事業展開にも適している。

 

こうした設備導入を行なった同社は、次号で詳しく紹介する企業連携により、さっそくプレス金型の設計と機械加工、航空機部品の5軸加工に着手している。

写真2 hyperMILLでプレス金型を設計している様子

これらの仕事は、穴加工やポケット・輪郭加工などの2次元加工、金型意匠面の3次元自由曲面の切削加工、アルミ合金素材への同時5軸加工を、一つのCAD/CAMで行なうため、まさに汎用3次元CAD/CAMの利便性が発揮されるところである。

 

今後の同社の展開

こうして同社は、新規に営業をかけていくための基盤技術を得るスタートをきったわけだが、まだその課題は山のようにある。金属加工業界の同業他社に対し後発となる同社は、その課題を早期に解決していくため、①パートナー企業との事業連携、②OFF-JTの活用、③産学連携による共同研究の3つの活動に着手している。

特に企業連携については、筆者のクライアント企業などのネットワークを活用して、人材育成と販路開拓の両面を行なっている。連携企業同士がWinWinとなることで、お互いにメリットを得たり、企業の成長につながることを狙っている。

それら3つの活動の詳細については、引き続き、次号で詳しく述べたい。新たな事業分野への開拓に意欲を燃やす同社に大きな期待をしている。

 

 

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