金型・部品加工業専門コンサルティング

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有限会社 丸茂伊藤精密工業のコンサルティング事例(2017年4月号掲載)

有限会社 丸茂伊藤精密工業のコンサルティング事例(2017年4月号掲載)

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本号で紹介する部品加工メーカーは、㈲丸茂伊藤精密工業(愛知県津島市 TEL 0567-26-0300)である。同社は、NC旋盤を主とした機械加工を行っており、特に小型サイズの精密部品の加工を得意としている。

図1 同社が手がける精密部品の一例

 

筆者がお手伝いをしている加工メーカーは、元々筆者が金型技術者であったこともあり、金型製作のような多品種一品生産や小ロット生産を行う事業者が多い。しかし同社が扱っているのは、油圧部品などの中~大ロット生産であり、一品生産や小ロット生産を行う加工メーカーとは、管理や技術、使用する工作機械などの面で異なるところも多い。

 

同社の強み

同社は、小型の切削バイトを使わなければならないような微小な精密加工を得意としており、特に複雑な形状の内径加工を得意としている。これは、旋盤加工の中でも難易度の高い加工に位置づけられ、目視で確認できない、穴の中に隠れてしまう形状の切削加工を行うものである。

図2 同社が加工している内径加工の一例

 

こうした内径加工は、使用する工具のホルダーやシャンクサイズが、どうしても小さくなってしまうため、加工ビビリやシャンクから欠損してしまうようなトラブルを発生させない切削負荷抵抗の見極めが必要となる。

 

また、量産加工ならではの管理上の難しさもある。寸法計測しながら、試行錯誤によって段階的に加工を進めていける一品加工とは異なり、基本的には全てのロットについて、厳しい寸法公差・外観品質が確保できるよう、加工と管理の方法を確立しなければならない。

 

旋盤加工は、いかに切りくずのコントロールを行うかが重要なポイントである。外径加工であれば工具ブレーカーによる切りくずの分断などがポイントであり、内径加工であれば、穴の中で詰まらないよう、いかに切りくずを排出させるかが重要になる。

 

旋盤加工を行う各メーカーは、重篤なバリの発生や、切りくず詰まり・巻き込みトラブルが発生しないよう、独自の工夫を凝らして対応している。

 

特に、同社の扱う部品のように狭い内径穴を加工する場合、その穴の中から切りくずをどう排出させていくかのコントロールが難しいところであるが、45年と経験豊富な代表取締役の伊藤久夫氏による幅広い工具の知識や、同社がメインで使用している高松機械工業(株)製のNC旋盤を駆使することで、うまく対応している。

 

コンサルティング前の課題(経営上の課題と技術面の課題)

同社の事業分野としては、建機・農機で使用される油圧部品を扱っている。

 

ところで、これは、多くの中小製造業に言えることであるが、バブル期の頃までは、いかに特定の大手企業と取引しているか、その取引企業の業績が好調であるかが、中小製造業の自慢であった。

 

しかし、特にリーマンショック以降、この傾向は変わってきている。現在の中小企業の自慢と言えば、その経営の安定度を示す、いかに多くの取引先を持っているか、これが自慢話になった。

 

事実、大口や単発の取引を問わず、数十から数百の取引先を持つような中小企業の中には、リーマンショックの際にもダメージを受けることなく乗り越えてきたという企業がたくさんある。

 

同社においては、取引先の海外生産移転などにより、今後の発注見通しは不透明なところがあり、安定した経営を維持していくためには、取引先の新規開拓は経営上の重要なテーマである。

 

このような取り組みを行っていく中、これまでの同社のウィークポイントとして、一品加工を手がけるメーカーに比べると、試作品など新規部品について、加工までの準備に時間がかかってしまうという課題があった。

 

同社の扱う精密部品は、複雑な形状が多いが、こと量産加工においては、一品加工とは異なり、トライ&エラーによる試し削りを何度も行うことができるがゆえに、これが同社の加工プログラミング能力を高めることの阻害要因になっていた。

 

技術面の課題をどのような方策で改善したか

 そこで同社は、筆者も使用している2次元CAD/CAMの「キャメスト」を導入し、創業から3代目として次期経営者になる予定の、伊藤社長のご子息である佳浩氏が、このソフトの習得から手がけていくことになった。

 

元々、同社は価格が800万円ほどの3次元CAD/CAMを機械商社に薦められていたが、費用対効果などの問題から、導入には躊躇をしていた。

 

しかし、筆者がよく相談を受けるテーマであるが、何でもかんでも高価な3次元システムを使えば効果が出るというわけではない。

 

旋盤加工は基本的にXZ座標で加工されるため、基本的には2次元システムで充分対応が可能である。

 

旋盤加工において3次元CADCAMが必要になるケースは、①Y軸方向で穴や切削加工が多い、②5軸や4軸加工ができる複合旋盤を使用している、③複数の刃物台を使った複雑な工程の加工を行うため切削タイミングや周辺装置との干渉チェックを綿密に行いたい場合などである。

 

いずれにせよ、普通に運用できるまでに至るには、ある程度の準備期間を要するため、慎重な投資判断が必要である。

 

この点、2次元システムで充分な加工であれば、3次元システムの導入と比較し、操作の習得など、運用するまでの期間を短くすることができるため、今回、同社はキャメストの導入を選択した。

 

CAD/CAMの効果

 同社は、新たにCAD/CAMを活用することによって、新規の見込み顧客からの試作対応などにおいて、複雑な形状であっても、迅速な対応ができる体制を作ることができた。

 

また同社はこれまで、保有する2スピンドル仕様のNC旋盤2台について、他の単軸NC旋盤と比較して加工プログラムが複雑になるため、担当オペレーターがなかなか育たないという課題に悩んでいた。

 

しかし今後は、佳浩氏が同社にあるNC旋盤全ての加工プログラムを統括して作成し供給していくことで、機械オペレーターは複雑な加工プログラムの作成を行わなくてもよくなり、こうした外段取り化が進むことで、機械稼働率を高めていくことができる。

 

今後の同社の取り組み

今後同社は、積極的な販路拡大を図ると共に、生産能力の維持・拡大を図っていくための採用活動を強化していく必要がある。

 

他の加工メーカーにおいても、若手人材の確保は大変難しくなっており、同社のように職人技術を要するメーカーにとっては、益々厳しい状況が続くと思われる。

 

そうした中で、今回のようなCAD/CAM導入によって、従来の職人技術に依存した体制ではなく、生産技術と加工現場の分離を図っていくことで、それぞれの業務に適した人材を適材適所に採用していき、今の時代に合わせた進め方で、同社の技術を継承していくことができる。

 

また、同社のようなロット生産でありながら多くの品種を扱うメーカーは、生産管理を高度化していく必要もある。量産加工を行うほとんどの下請けメーカーが持つ課題である、日々の出荷に間に合わすための自転車操業生産になってしまう問題を、徐々にでも解決していかなければ、企業風土の面でも良くはなっていかないであろう。

 

創業から2代目の現・社長である久夫氏から、新たな変革に取り組もうとする次期3代目後継者の佳浩氏の今後の取り組みに、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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