金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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有限会社 弥千代精機のコンサルティング事例(10月号掲載)

有限会社 弥千代精機のコンサルティング事例(10月号掲載)

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本号で紹介する金型部品の加工メーカーは、愛知県にある(有)弥千代精機(愛知県知多郡 TEL0562-84-2981)である。従業員は4名。主な事業は、金型のパンチやダイス、切削工具などのならい研削を行うことである。

今年の夏、筆者は経産省の中小企業支援策の一つ、特定下請連携事業計画認定制度の申請支援のため、4社の連携と書類作成をサポートした。

この制度は「特定下請け事業者」と定義される、特定の親事業者への依存度が高い2者以上の中小企業が連携することで、新たな取引先の開拓や特定親事業者以外の既存顧客の売上シェアを高めていく取り組みを国が認定するもので、認定された計画には各種支援策が用意されている。

この事業のポイントは、中小企業が連携することで、それぞれ個別企業が単体では実現できない新たな付加価値を創出し事業化することにある。

例えば、金型メーカーであれば、その上流や下流側の企業と連携し、他の同業者グループにはない低コスト化やリードタイム短縮ができる新たなプロセスを構築することも考えられる。

支援メニューのポイントは、法認定を受けた計画の中で、下請中小企業自立化基盤構築事業に採択されれば、補助金制度が活用できる点であり、補助上限は2,000万円、補助率は2/3である。

その申請準備のなかで、リーダー役を担当した本号でとりあげている弥千代精機の事業と連携を図ろうとした下請け依存度の高い他の2社とは、経営内容に大きな違いがあることがわかった。なお、弥千代精機は下請け依存でない模範企業という立場で参画している。

例えば、売値を決める際の時間単価の設定に違いがあった。そもそもこの「時間単価」の内訳は何か。この相談はここ最近筆者の事務所に多い相談でもある。

そこで本号では、時間あたりの売値と原価の考え方、そしてそれを踏まえた企業改善のあり方などを紹介していく。

特定の顧客への依存度が高い企業とそうでない企業との経営上の違いについて、まず財務面から見ていく。

「(1)売上-(2)製造コスト=粗利益」(式1)のうち、(1)の売上について、従業員一人あたり売上額を比較したところ、やはり顧客依存の高い2社は弥千代精機よりも大きく劣っていた。

(1)の売上の計算式は、個々の受注単価×数量であるが、弥千代精機のような賃加工業については「加工賃」が個々の受注単価を決定付けている場合が多い。

「加工賃=(3)時間単価×工数」(式2)のうち、仮にかかる工数が同じ仕事を扱ったとすると、(3)の時間単価に違いがあるということになる。その違いで考えられる理由は、顧客依存の高い企業は、ア)交渉力が弱い、イ)単価の良い仕事を選べない、などである。

さらに、(3)時間単価の内訳を見ていくと、「(3)時間単価=(4)時間あたり原価+管理費+(5)必要利益」(式3)となっており、さらに、(4)の時間あたり原価は、労務費÷作業時間または、機械償却費÷設備使用時間で計算される。

これらについて分母と分子、それぞれを見ていくと、分母の作業時間や設備使用時間を高めることで、時間あたり原価は下がる。また、労務費や機械償却費といった分子のコストを小さくするほど、同じく時間あたり原価は下がる。

したがい、a)生産性を下げることなく部門あたりの労働者数を減らす、b)機械設備の稼働率を高める等により、時間あたり原価を下げることが可能になる。

(式3)において、(5)の時間あたりの必要利益を少しでも多くするためには、(4)の時間あたり原価を下げるか、(3)の時間単価を上げることが必要であるが、依存度の高い2社は、(3)の時間単価を上げることが取引上困難であり、(式1)において粗利益を圧迫する状況に陥っていた。

図1 時間あたりの売値と原価の考え方

弥千代精機の強み

依存度の高い2社と比較し、弥千代精機は高い粗利益率を実現できているが、どのような強みにより実現できているのかを見ていく。

同社は、機械加工としてはリスクの高い後工程となる「ならい研削」を行っていることもあり、マシニングや旋盤加工等と比較すると、(3)の時間単価は高く設定できている。

最も付加価値の高い技術要素として、数ミクロン単位の精度を要する段取り技術がある。機械加工の企業間工程において、後工程を請け負う企業はその前工程のチャッキング精度を再現する必要があり、同社のような研削仕上げに要求されるのは、より精度の高い段取り技術である。

例えば、エンドミルやドリルなどの成形研削を行う場合、シャンク部の円筒研磨はすでに仕上がっており、研削する前の段取りにおいて、その振れ精度や同軸度をいかに前工程の状態に合わせセッティングできるかが勝負となる。

こうした点で、筆者が知る限り研磨を手掛ける事業者は全般的に単価設定が高く、こうした後工程ゆえの必要となる技術とリスクの高さを付加価値に転嫁できている。

同社は、拡大鏡からはみ出るような長尺部品なども扱っており、そういった自動化できない研削技術の高さもあるが、センタ穴とセンタ形状を踏まえた段取りといった基本も抑えたうえで、さまざまな仕様の段取りに対応できる点が同社の強みであり、同業者からも多くの相談を受けている。

写真 同社の研削加工と段取りの様子

逆に連携を図った他の2社は、厳しい顧客要求を価格に転嫁できない弱さがあり、それは粗利益の低下という形で明確に表れていた。

下請け企業がどのように改善していくのか、その具体的な改善ステップ

筆者の事務所では、下請け依存の高い企業に対し、次のようなステップによる改善を推奨している。

  • 地域商談会の活用や営業活動などにより、まずは引き合いを増やしていく。
  • 集まる引き合いに対応できる体制を作る。例えば、煩雑になる事務手続きや見積もり対応、外注手配などがある。
  • 多くの引き合いに対応できる体制ができれば、さらに顧客を増やす取り組みを行う。
  • 難易度は高いが単価の良い仕事に対応できる社内体制を中・長期的に整えていく。

このステップにより、筆者のクライアントでは5割を超える粗利益率を実現している事業者もいる。これはまさに、このステップにおける④のフェーズまでいくことで実現しており、今後さらなる成長も期待されている。

弥千代精機の今後の発展について

同社の事業は、職人技術を高い付加価値に転嫁している点に特徴があるが、エース級の職人の高齢化が進んでいるのも事実であり、今後はその技術継承が課題である。こうした地域に必要とされる技術をどう残していくかといった課題は同社に限ったことではなく、多くの中小企業に共通した課題でもある。

筆者は、職人技術を「知識」と「技能」に分け、継承していくコンサルティングを同社以外にも行っており、反復効果による練習でしか習得できない「技能」を、できる限り「知識」に置き換え、効率的に技術継承を進めていくコンサルティングを行っている。

今後同社はサプライチェーンに欠かせない企業として、その持てる技術の高度化と着実な技術継承ができていくことを期待している。

 

 

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