金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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株式会社ハイレックスコーポレーションのコンサルティング事例(2016年4月号掲載)

株式会社ハイレックスコーポレーションのコンサルティング事例(2016年4月号掲載)

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本号で紹介する金型メーカーは、兵庫県宝塚市に本社を置く株式会社ハイレックスコーポレーションの三田西工場、金型課(兵庫県三田市テクノパーク内)である。同課のスタッフは12名。扱う主要製品は、自動車部品が中心であり、製作している金型の種類としては、中型・小型の射出成形金型からダイカスト金型まで製造している(写真1)。

写真1 同課で製作した金型で成形した製品

 

筆者がお手伝いしているメーカーは中小企業だけではなく、大企業や中堅企業の金型部門も対象としている。また、筆者の専門はプレス金型であるが、マシニングやCAM作業などの機械加工が得意分野であるため、プレス成形以外の金型を扱う事業者さまからもご依頼をいただいている。

 

以前にも書いたが、射出成形やダイカスト金型、プレス金型の違いについても興味深い。工程設計や金型構造、機械加工、トライ作業の際の着眼点など、それぞれ共通するところもあれば大きく異なることもある。ただしトライ作業については、成形作業の知識を持たないといけない点は、どの金型を扱っても同じである。今回はその点について触れてみたい。

 

同社金型課の強み

同課の強みとして、次の点が挙げられる。

  1. 完全3次元設計の実現
  2. 機械加工の完全なデータ化
  3. 徹底した5Sの実現

 

多くの金型メーカーでは2次元CADによる設計が中心であるが、同課では意匠面だけでなく構造部まで完全に3次元CADによる設計が行われている(写真2)。

写真2 同課で行われている3次元金型設計の例

 

このメリットとして、スライドを複雑に使った金型であっても、設計者のみならず後工程の担当者まで、型構造・製品形状が理解しやすい点が大きい。また3次元に対応したCAMを使っていれば、フィーチャー機能などを活かすこともできる。

逆に留意点として、シンプルな構造部も立体で表現するため設計負荷は増える印象が強い。こうした負荷をいかに前後行程のメリットで相殺できるかがポイントである。また、公差情報などの言語情報が伝わりにくい点も以前から言われているところである。そのため、3次元モデルデータとは別に、公差図や単品の部品図を作成する場合も多い。

 

同課の強みとして、主にマシニング加工にあたり、完全なCAMによるデータ提供が行われている。このメリットは、①CAD図面の情報を読み違えなく加工データ作成に利用でき、ミスによるロスが減らせる、②加工履歴を残しやすく、金型メンテナンス時に効果を発揮する。

逆に留意点として、①データ作成者と機械オペレーターが異なる場合、加工指示書の作成工数など間接コストが増大する、②機械オペレーターの応用力育成が鈍化するなどがある。

 

さらに同課の強みとして、5Sの徹底がある。前述した完全なCAMデータ化も、こうした5Sや管理ルールの徹底があるからこそ成り立つ。例えば、作成したデータのツール番号と、実際にマシニングに取り付けられている刃具やツールホルダーが統一されているといった連携がなければかえって混乱を招く。同課はこうした点をクリアしており、ロスの少ない機械加工を行っている。

 

コンサルティング前の同課の課題

同課の金型製造の課題として、自社で使う金型を製造しているが遠方の客先メーカーで使う金型を製作することもあり、組み上げた金型は客先で成形トライすることが多く、立ち会いもままならないことが多い。そのためか、製品意匠部の寸法を追加切削する金型修正が頻発しており、また溶接補修も多いことから、金型完成までのリードタイムは冗長していた。そこで筆者と共に、機械加工の一部ハンドワーク化も含め、金型製造における総リードタイム短縮への改善を行った。

 

具体的な問題点

トライ作業の際、ショートショットや焼け、銀条といった外観不良は、成形メーカーのオペレーターが対策するため、同課2名の設計者による金型では、そこが大きな問題点となることは少ない。同課を悩ませていたのは、ソリや変形などによる微小な寸法不良である。

 

そのため、成形トライ後の修正方法として、金型を追加切削する寸法補正が高い頻度で発生していた。形状を盛る方向であれば、溶接肉盛りを伴い、溶接費用とリードタイムが余計にかさむ。もちろん溶接補修を避けるべく、ファーストトライ時は変形収縮方向を確認するため、切削の取りしろを余分に付け、変形の傾向を見るなどの対策はしていた。それでも、2回目、3回目のトライ時の成形サンプルを測定すると、傾向とは逆の動きに反るなど金型修正を繰り返す問題が頻発した。

もはやこうなると、遠方の成形メーカーと同課で、金型修正を繰り返しながら行ったり来たりである。どこで寸法が決まるのか読めない状況になってしまう。

 

取り組んだ改善

これまでのやり方を改善すべく、過去、寸法補正加工が多かった金型を事例として取り上げ、設計時の狙い・意図からどれだけの誤差が出るのか、トライ時にいくつかの調整値による成形サンプルをとり、どれだけの振れ幅の調整値によって、どれだけの寸法変化が出るのか、同課のスタッフが主導となって検証した。

 

同課の中で、射出成形の技能検定の受験経験のある佐川氏が中心となり検証を行った。その結果、例えば、射出速度をいくつか変えて成形したところ、見込んでいた傾向とは異なる寸法の結果が出たりもした。

冷却の遅い箇所の収縮が大きくなるなど、反りや変形は製品形状によるところも大きい。そのため、多段射出を行ったり、キャビティとコアの型温度を変えたり、保圧のタイミングを遅らせたりといった調整を行う場合があるが、こういったさまざまな影響要因が考えられるため、限定した調整値の見込みだけでは、寸法変化の傾向は読みきれないところが難しい。

 

そこで今後は、成形サンプルを複数とるにあたり、成形メーカーに対してトライに用いる成形調整値を、あらかじめ同課から指定して依頼することとした。ただしこのためには、成形オペレーションの知識が必要になる。まずはもっとも知識のある佐川氏が依頼する条件値を選定しているが、今後は、通常トライ立ち会いを担当している設計担当者の2名が、射出成形の技能検定を受けるなど、順次知識を得て行く計画である。

 

今後の同課への期待

同課はこれまで成形シュミレーションも活用してきたが、今後成形オペレーションの知識を増やしていくことで、さらに有効に活用していける。例えば、冷却水穴の位置・金型温度と、製品寸法の変形度合いなどを解析するなどである。

また、機械加工の完全なCAMデータ化は、加工内容によっては工数増加リスクがあるため、今後はマシニングオペレーターを中心に、CAMデータに頼らないマニュアル加工を習得する。これにより、CAMデータや指示書作成など間接コストの削減とリードタイム短縮が期待できる。

デジタルによるものづくりを徹底した同課において、今後は職人技術を高め、同業他社に負けない柔軟な金型づくりをしていけることを期待している。

 

 

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