金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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株式会社ヤマイチのコンサルティング事例(2016年3月号掲載)

株式会社ヤマイチのコンサルティング事例(2016年3月号掲載)

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筆者のコンサルティングは、主に金型メーカーやプレス加工メーカーを中心としているが、単工程としての機械加工業のコンサルティングをさせていただくことも多い。その中でも、比較的大きなロットサイズの旋盤加工を事業の中心とするメーカーも何社かお手伝いしている。こういった旋盤加工事業は、一見同じようなサイズ・形状の製品を加工していても、詳しく各社の経営内容を診てみると、実はその生産性は大きく異なっており興味深い。

 

その中でも、愛知県にある株式会社ヤマイチ(愛知県豊田市TEL 0565-28-1446)は、高サイクルの機械加工、自動化技術に強みを持ち、高い生産性を発揮しているメーカーである。本号では、同社のように高い生産性を発揮しているメーカーの技術面からのポイントについて、思うような生産性を発揮できていない会社との比較の観点で見ていくことにする。

 

中小メーカーにおける中~大ロット生産の問題点

中~大ロット生産を行う多くの中小メーカーは、次のような課題を抱えている。

  1. 非常に多くの生産品種を扱っているメーカーが多く、これにより、慢性的に段取り替えの負担増、管理コスト増に悩まされている。検査工程においても、全数検査が必要な製品が多く、女性パート社員を活用しながらも、検査人員コスト負担に悩まされている。
  2. 自動無人運転が難しい材料を扱っている。近年ますます工業用部品でアルミ材がよく使われることもあり、多くの旋盤加工メーカーを悩ませている。切り屑の巻き込み等により、加工トラブル、加工面の悪化などが発生するためで、他の軟素材においても、同様のトラブルを引き起こし、自動無人化を難しくさせている。
    実際、生産性を上げられないメーカーは、多品種の生産に追われながらも、自動無人化がうまくいかず、オペレーターは機械のサイクル停止ボタンに常に指をかけながら、切り屑の様子を伺い加工している。また、アルミや銅、真鍮などの軟素材は、突っ切りなどで切り落とした製品が機械の中で落下し、製品外周に打痕が付きやすい。こうした点についても、完全な対処が難しく、加工後に人海戦術による目視検査で仕分けしている状況である。

 

技術課題をクリアしている同社の強み

従業員20名の同社も中小メーカーであり、上記のような課題が常に取り巻いている。特に同社の主力事業である電気抵抗溶接の電極チップは、銅素材を加工して製造するため、切り屑の巻き込み、製品外観品質の管理の難しさがある(写真1)。

写真1 同社の主力製品である電気抵抗溶接の電極チップ

 

しかし同社は、市販のツール・工作機械に独自の改良を施すことにより対策している。切削加工についても、最適なサイクルタイムを発揮させながら、加工面を悪化させない切り込み条件、工具軌跡など、常に研究・改良を行っている。このように前工程の製造プロセスの工程能力を高めることで、後工程である検査の省人化をより進めることができるため、同社のこうした改善への取り組みは社内の好循環を生んでいる。

具体的な取り組みとして、コレットチャックやパーツフィーダー等に独自の改良を加えており、数百を超える多品種生産においても、段取り工数を積極的に減らし、稼働率を高める取り組みを行っている。特に旋盤加工は昔から段取り勝負と言われ、いかに多くの切り込み深さをかけ、高い送り量がかけられるような、剛性の高い段取りを短時間で構築できるかによって生産性は大きく異なってくる。

 

また同社は、生産面だけでなく製品検査についても徹底した効率化を行っている。多くの中小メーカーは、品質面に慎重に気を配りながらも、あまり多くの人的コストはかけたくないと考えている。やはりお金を生む製造設備にコストをかけたいものだ。

 

同社は、検査工程の省人化を図るため、自動化装置の開発を徹底して進めており、最近では、従来自動化が困難であったゲージを用いる検査についても、補助金を活用した自動検査装置の開発により、さらなる効率化を図っている(写真2)。ゲージを用いた寸法検査であるため、人が行うゲージの当て具合といった力加減を忠実に再現した装置であり、こうした取り組みによって、数百を超える多品種を扱っていても、不良の社外流出を発生させることなく高効率の品質保証を行うことができている。

写真2 補助金事業で開発したゲージ検査の自動装置

 

技術面で強みを持つ同社の課題と今後の取り組み

元々、不良の社外流出や顧客クレームが極めて少ない同社であるが、今後さらなる事業の拡大を図るため、客観的な品質保証体制の強化を進めている。

ISO9001に限らず「自社製品の品質を管理できている状態」とは、「良品が作れる根拠立て」を徹底することである。

例えば、社内で充分良品を作れてはいるが、その製品に使われている材料の物性について問題がないことはどう保証するのか、また仕入先との取引に問題がないことをどう保証するのか、または製品を機械加工するにあたり、担当する者に充分力量が備わっていることをどう保証するのか。これらの根拠を客観的に見える・分かる状態にしておくことが管理できている状態である。

同社は筆者と共に、この管理の見える化に取り組んでおり、従来から試行錯誤されてきた製造プロセスをより強固なものにしつつ、継続的に技術力アップ・コスト削減に取り組める体制の構築にも取り組んでいる。

 

さらに人事面の取り組みとして、同社の高い意欲の人材を定量的に評価できる制度の導入について筆者と共に取り組んでいる。具体的には、目標管理制度の導入であり、同社が重きを置く「チームワーク」「専門技術」「改善活動」「利益の追求」のテーマに基づき、各従業員には、経営者・直属上司から年の期初に目標が与えられる。また従業員からも、「利益貢献」「責任範囲の拡大」「スキルアップ」の3テーマについて次年度に取り組むことを自ら目標を設定する。これらの目標について、期中・期末にその達成度を評価するものである。

これであれば、多くの企業人事で問題となっている、いわゆる「後出しじゃんけん的」「評価基準が曖昧」といった問題を解消でき、かつ各従業員のスキル・経験などに合った目標を設定でき、達成度を測ることで公平な評価を行うことができる。

 

今後の同社への期待

先日同社は、自社技術について初めて展示会に出展したところ、高い評価を得ることができ、新たな取引拡大にも繋がった。今後も積極的な出展を図っていくとのことである。昨年末はホームページも刷新し、広い商圏に向けた積極的な外部発信にも取り組んでいく。

同社は単部品としての出荷供給だけではなく、溶接に関する広い知識・ノウハウを活かし、溶接設備一式の販売・据え付け工事などの受注も行っている。今後も西川社長を中心とするチームワークを活かした同社の幅広い事業拡大に向け、大きな期待をしている。

 

 

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