金型・部品加工業専門コンサルティング

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株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

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本号で紹介する機械加工メーカーは、以前にも登場していただいた株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績があり、この分野の製品に多い、薄肉でありながら高い寸法精度を要するといった加工品を扱っており、加工技術については工具・加工法・材料・温度管理・品管技術など、様々な方面からの知見を持っている。

 

また、研究開発への意欲も高く、これまで経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の認定も経験している。

 

昨年に引き続き、筆者は同社の技術者研修を担当させていただいた。前回は、HSMWorksを使った5名による3次元加工の研修であったが、今回はHSMWorksを使った5軸加工の若手技術者研修を行った。

 

同社の5軸加工

同社は、5軸加工が可能な工作機械として、DMG森精機のDMU50や、MAZAKのINTEGREX300-Ⅳといったマシンを設備しており、航空機部品の加工には欠かせない存在となっている。

 

同社が行っている5軸加工は、いわゆる「割り出し位置決め5軸加工(以下、割り出し5軸加工)」と呼ばれるものである。

 

一般的に5軸加工には、「割り出し5軸加工」と「同時5軸加工」と呼ばれるものがあり、どちらもX・Y・Zの3軸に加え、A・B・Cのうちいずれか2つの軸を加え、真上からしか加工できない3軸加工から、自由な角度で側面方向に傾斜・回転させて加工するようなものを言う。

 

その5軸加工の中で、「同時5軸加工」は、XYZの3軸だけでなく4軸目、5軸目まで動かしながら加工するものを指す。これにより、よく5軸加工でとりあげられるインペラの羽根部の加工など、工具中心軸の角度を可変しながら加工しなければならないような形状においても対応が可能になる。

 

ただし、マシニングセンターなど工作機械を動かすNCプログラムについては、工具軌跡があまりにも複雑になるため、5軸加工が可能なCAD/CAMに軌跡を計算させることになる。人間が直接手入力でプログラムを組むことはほとんどない。

 

逆に、「割り出し5軸加工」は、工作機械の4軸目、5軸目、例えば、立形トラニオンタイプであれば、旋回テーブル(C軸)とチルトテーブル(A軸)といった組み合わせがあるが、C軸とA軸の動きは止めたうえで、XYZの3軸を動かす3次元加工を行ったり、穴あけやポケット加工などの2次元加工を行ったりする。

 

この使い分けとして、「同時5軸加工」は非常に複雑な形状の加工ができる反面、最大5つの軸を同時に動かすため、それぞれの軸の同期・タイミングが非常にシビアに要求され、工具軸が自由に動きながらその工具先端は位置精度を再現しなくてはならないため、どうしても加工精度の面では不利になる。

 

反面、「割り出し5軸加工」は、4軸目、5軸目を固定したまま、3軸加工を行うため、「同時5軸加工」に比べると、加工の自由度は減り、ホルダーの衝突を回避させながら最も工具突き出し長さが短くできる加工軌跡を探してくれるという利便性は出せなくなるが、加工精度を出すという点では、圧倒的に有利になる。

 

筆者も、自動車部品のプラスチック金型において、大型の傾斜コアやスライドコアの加工で、「割り出し5軸加工」を使った経験があるが、旋回テーブルとチルトテーブルを回転させ、多方向からの切削加工を行う際、球状の測定ゲージを使い、それぞれの方向での加工原点を測定し直すことで、10~20ミクロン単位の加工精度に対応できた経験がある。

 

まさしく同社の製品は、10ミクロン、製品によってはそれ以下の精度が要求される部品もあり、5軸加工については「割り出し5軸加工」が最適だと思われる。

 

使用しているCAM、HSMWorksについては、加工プロセスを定義(ジョブの定義)していく中で、常に途中でのワークの状態を認識させながら、加工パスを作成していけるため、色々な方面から5軸加工を行っても、加工パスを重複させずにデータ作成を行うことができる。まさしく同社の加工には適している。

 

5軸加工研修での課題

このように「割り出し5軸加工」は、真上(Z方向)からだけでなく、多方面からの工具軸の加工を高精度に行える反面、「同時5軸加工」とは違い、どの方向から加工を入れるかCAMオペレーターである人間が自分で考えなくてはならない。

 

また、同社が扱う薄肉形状の加工品は、途中プロセスにおいて、どこを残し、どこを先に削っていくかの判断が難しく、単に削れればよいということではなく、ワーク剛性が弱くなってくることでのビビリ発生などを考慮し、削り残り量のバランスをとりながら進めなくてはならない。

 

今回の研修課題は、CAMの操作よりもむしろ、加工順序を工夫しなければならないといった加工形状を採用している。

 

また、今回の5軸加工研修では、同社のDMU50を使った実加工までの実践を課題としているが、これはCAMデータを作成するだけでは、最も難しいテーマの一つである、期限内に要求品質を満たしつつ加工を終わらせるといった技術が身につかないためである。

 

加工時間を短くするためには、工具の送り速度を上げ、仕上げの送りピッチを粗くすればいい。荒取りについても、大きな工具を使い、送り速度を上げれば時間を短くすることは可能だ。

 

しかし今回の研修でも起こったが、送り速度を上げると加工ビビリが発生するし、送りピッチを粗くすれば仕上がり面も汚くなる。

5軸加工はそもそも高い剛性のワーククランプができない場合が多く、大きな荒取り工具を使用すると加工ビビリが発生したり、ひどければクランプが外れてしまう。

 

また、工具の突き出し長さをできるだけ短くするため、細かく多方面から加工を入れるようCAMデータを定義したが、やり過ぎるとCAMデータ作成時間がどんどん伸びる。確認しなければならない項目も増え、ミスのリスクも高くなる。

 

今回受講した入社2年目の小木曽 圭氏は、限られたCAMデータの作成時間と、DMU50を使った加工時間の制約に悩み苦しみながら課題を進めていった。

図1 CAM操作実習を行っている様子

図2 5軸加工機の操作実習を行っている様子

 

今回、小木曽氏の5軸加工の研修日数は、のべ5日である(日あたり7時間)。

 

彼はその日数の中で、課題形状の3DモデリングからCAMデータの作成、そのデータを使った5軸加工機の実加工まで期限内で見事課題をクリアすることができた。

 

まとめ

今回、若手社員の5軸研修と並行してベテラン社員の研修も行ったが、カリキュラムの一部として、HSMWorksと同じCAMエンジンを持つFUSION360を使ったモデリングとCAMデータ作成演習を行った。

 

クラウド型の3次元CAD/CAMであるFUSION360は、同社が扱うSOLIDWORKSと同じパラメトリック式のCADモデリングができ、割り出し5軸加工のデータ作成も可能であり、各種工作機械に対応したポスト処理もできる。

 

年間使用料4万円以下で使用できるCADとして注目されているが、同社においては慣れ親しんできたHSMWorksを扱う5軸エンジニアを増やすことに寄与すると思われる。

 

筆者はこれまで2年、同社をサポートさせていただいたが、高度なエンジニアを増やすことへの教育投資を惜しまない同社に筆者は大きな期待をしている。

 

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