金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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株式会社 プロイストのコンサルティング事例(2016年7月号掲載)

株式会社 プロイストのコンサルティング事例(2016年7月号掲載)

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本号で取り上げる金型メーカーは、株式会社プロイスト(愛知県安城市  TEL  0566-91-6752)である。同社の事業はさまざまな面で、珍しい点が多い。

まず同社が製造する金型は、樹脂の成形金型であるが、熱可塑性樹脂ではなく、熱硬化性樹脂を成形する金型である。その生産量の割合は、熱可塑性樹脂が 9 割を占めるとも言われ、熱硬化性樹脂の成形金型を扱うメーカーの数はそう多くはないと考えられる。そうした点で、同社の事業はニッチな分野と言える。

 

また同社は、この 7 月で創業から 7 期目を迎えるという比較的若い会社である。よくニュース等で言われることであるが、ここ最近、製造業での創業は極めて少ない。

そこにはさまざまな理由が考えられる。まず、製造業は大きな初期投資を伴うことが多く、そのため事業リスクが大きい。特に金型事業は、機械加工用の工作機械、設計業務で使用するソフトウェアなど、金額負担の大きな投資を伴う。設備投資は、創業時から大きな固定費としてのしかかり、損益分岐点における黒字化までのハードルを高くさせてしまう。競争力・事業キャパと、投資額とのバランス判断がとても難しい。

 

また、金型業界においては分業化が進み、設計から加工、組立・トライまで全てこなすような技術者が減ったことも、創業社長がなかなか生まれない要因と考えている。さらに、新たな商流を作る点においても、ほとんどの分野ですでに固定されており、新規参入は難しい。

 

20 年、30 年、さらにもっと以前の中小企業の創業は、人脈を通じた特定顧客からの生産移管や技術指導などがあり、顧客との深い関係強化によって、着実な企業発展を行うこともできた。しかし最近は、そういった繋がりは希薄化し、価格や納期の競争など、ドライな取引関係が多くなってきている。それだけ国内だけに留まらず、海外を含めた競争が厳しい環境になっている。

 

そうした環境もあり、特に製造業での創業は、従来よりも格段に難しくなっている。しかもリーマンショックの直後、2010 年、業界全体が非常に不安定な中、当時 35 歳であった大島社長は、マシニングや 3D スキャナ導入など大きな設備投資も行いながら、同社を立ち上げている。しかも、ここまで順調な売上成長を遂げている同社の存在は、全国で見てもとても希少な存在であろう。

 

同社の強み(職人技術・完全 3D 設計)

創業から順調な成長を遂げている同社の一番の要因は、工作機械やソフトウェアの性能ではなく、高い職人技術であろう。大島社長をはじめ同社の技術者は、熱硬化性樹脂の成形において、金型製作だけでなく、成形のノウハウから包括的に持っており、樹脂製品メーカーからは、製品設計の段階から相談を受け、そのまま金型が発注されるというケースも多い。

 

これにより、同社で製作された金型においては、顧客への納入後、成形条件や仕様などの調整の手間が極めて少ないというメリットがある。 また、同社の得意技術として、TIG・MIG など各種溶接、金型の磨き仕上げ、複雑な水冷配管などがある(写真 1)。これはどれも自動化・標準化しづらい属人的な作業であり、顧客メーカーでも対応できる作業者が年々減っていると言う。今後ますます需要が高まる技術分野であろう。

写真1 溶接作業の様子

さらに同社の強みとして、職人によるアナログ技術だけでなく、CAD を活用した完全な3 次元の立体設計を実現している点もある(写真 2)。金型メーカーによっては、3D 加工を要する意匠面だけのモデリングに留めるメーカーも多いが、同社の設計担当の坂口氏は、構造部や周辺部品までを含めた、完全な 3 次元の設計を行っている。

写真2 同社で行う金型設計の様子

これは、顧客メーカーからの相談を受け、金型仕様を提案型で設計していく同社の受注スタイルにおいてとても理に適っており、立体で仕様を把握できることで、顧客とのコミュニケーションを円滑にしている。

また、同社現場に図面を提供する際には、側面図や断面図などの紙図面は作成しない。立体で形状を把握できる 3Dビューワで対応している。これにより、設計工数を削減することができ、同社の強みである短納期対応に寄与している。

 

事業拡大に伴う人材採用と新たな課題

ここまで職人技術を強みにしてこれたのは、大島社長の前職からの仲間で構成された少数精鋭の技術者集団で仕事をしてきたためだ。しかし今後の事業拡大にあたっては、新たな戦力の採用も必要である。ところが最近の労働者不足の折、今のようなプロ集団と同レベルの経験者の採用は難しい。そこで筆者が、今年同社が新規に採用した 3 名について、未経験者ではあるが、金型技術者として早期育成を図れるよう、大島社長と共に、技術研修を行うことにした。

 

未経験者に必要な教育

業界未経験者に必要な知識として、①金型を作る意義、②個別受注生産である金型の作り方の特徴、③製造工程の流れ、④各工程の作業の概要、⑤金型製造を取り巻く詳細な技術知識、などがある。

 

しかし、私自身も 25 年前に経験したが、これらは OJT、OFF-JT で教えられるはずが、昨今、短納期・低コスト製造が優先され、採用後の教育は、個々の作業オペレーションに留まってしまうことが多い。そうなると、そもそもものづくりへの興味も湧きづらくなってしまううえ、技術向上への伸び悩みを生んでしまう。

 

そこで筆者のコンサルティングでは、金型づくりを取り巻く周辺知識を体系的に教える研修を行っている。例えば、機械加工であれば、設計者向けの加工技術の本などを用いた研修を行っている。

こうした体系的な学習を行ったうえで、実際の金型製造で必要な知識として、ア)  機械加工の種類とその選定基準、イ)  金型で使われる材料種類と特性、適した加工方法、ウ)具体的な切削技術などの学習へ進んでいく。大まかな全体像から段階的に、これから自分が担当する作業がどのような位置づけなのか、なぜ必要なのか、何に留意するのか、などを最初に教えておく。今後技術者として、大きな目標を持とうとしても、まずは全体像がわからないと無理である。こうした長期の目標を個々の技術者に持たせるためにも、早めに体系的な学習を行うことは重要である。

 

同社は、NC 機から汎用機械まで、さまざまな設備を保有していることで、研修では実物を見ながらイメージ付けも行い、座学と実践の両方で効果的な研修を行っている。

 

今後の同社の取り組み

同社は、金型づくりだけではなく、成形のノウハウまで包括して持っている強みを活かし、顧客へ提案型サポートを行っている。今後はその強みを活かし、より多くのメーカーへサポートを広げていく方針である。また、小型の精密部品から大型のマシニング加工まで対応できる点も活かし、機械加工の受注も増やしていく。そこには、新たな戦力となる新規採用者が早期に習熟し、機械の性能を活かせる加工技術を身に付けていくことが必要である。

 

大島社長は、これまでの少数精鋭から、企業として着実な発展を遂げられるよう、組織体制や人事制度の整備を進めている。効果的な技術研修と企業組織の整備によって、今後さらなる事業拡大を実現させていく同社に大きな期待をしている。

 

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