金型・部品加工業専門コンサルティング

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株式会社 大起鉄工所のコンサルティング事例(2017年5月号掲載)

株式会社 大起鉄工所のコンサルティング事例(2017年5月号掲載)

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本号で紹介する加工メーカーは、NC旋盤加工を主力事業にしている株式会社 大起鉄工所(愛知県豊川市 TEL0533-86-0374)である。同社は、鍛造や板成形加工されたプレス品の2次加工を主に行っており、それ以外にも様々な素材種類や用途の加工品を扱っている。

写真1 同社の扱うNC旋盤の一例

写真2 同社が扱っている加工品

 

同社の強み

同社の強みは、プレス加工された素材など、NC旋盤加工を行うにあたり、チャッキングや加工精度を出すことが難しく、多くの同業他社が受注を避けるような製品を多く扱っている点にある。

 

扱いが難しい理由として、次のような点がある。

  • 素材形状が歪(いびつ)であったり、薄肉であるため、チャッキングが難しい。
  • 要求品質として、加工歪みが極めて少ない状態で加工しなければいけない製品がある。
  • 上記①②の難易度でありながら、ロット生産であるため、不良を流出させない品質管理が必要であること。

 

同社はこのような、取り扱っている製品の特性による諸問題を、豊富な旋盤加工全般の知識と、川出社長の独自の発想によって解決し、それを自社の強み(競争力)としてきた。

 

筆者のコンサルティングを受ける前の課題

同社は先日公募のあった、平成28年度第2次補正予算「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」を申請するにあたり、どうすれば採択確率の高い申請を行うことができるかで悩んでいた。

前回の公募の際も、金融機関の手厚いサポートを受けながらも不採択になった経緯があるためだ。

 

そこで金融機関からの紹介により、後述する同社の事業拡大へのアドバイスの中で、同社の技術開発についても、筆者がサポートすることになった。

 

課題をどのような方策で改善したか

採択確率の高い申請書をつくるポイントは、次のような視点を盛り込むことである。

 

  1. 導入する機械設備は、生産性を上げるためではなく、生産性が上がる技術を開発するために使うというストーリーにすること。
  2. 開発する技術は、自社だけの課題を解決するためではなく、業界全体が抱える技術課題を解決する大きな使命を持っていること。

 

これらを、仮に技術がわからない方が読んだとしても、理解ができる文章にして申請書に書き込む必要がある。どうしてもこの作業が大きな負担と感じるため、ここ最近、その代筆をビジネスとしている事業者が増えているという実態もある。

 

川出社長は、外部の代筆事業者を頼ることなく、自社で申請書を書き上げることを決意したため、筆者は前述した申請上の重要ポイントをまとめていくサポートを行った。

 

具体的には、補助金を活用して導入する新型NC旋盤でしか出来ない、新たな加工技術の開発について、その個別課題と解決の方法を、川出社長と一緒に取りまとめていった。

 

今回、取り組もうとしているテーマは、自動車部品におけるハイテン材を使ったプレス部品の2次加工について、現在同社には、従来を超える強度のハイテン材を使用した部品の2次加工の引き合いが来ており、それに対応できる技術のための開発事業である。

 

対象となっている部品は、エンドユーザーから高い平面度が要求されているため、同社での旋盤加工の後、他メーカーで研削加工を行っている。

 

しかしながら、今後の生産工程では、従来を超える強度のハイテン材を使用しながら、旋盤加工後の研削工程を無くし、リードタイム短縮とコスト削減を図りたいというエンドユーザーの思惑がある。

そこで、高い旋盤加工の量産技術を持つ同社に、生産工程改善の相談が来ているのだが、現状の保有設備、加工技術では対応が不可能であった。

 

そこで同社が行っている、いくつかの独自の加工方法について、そのメカニズムを理論的な視点で掘り下げ、従来を超える高ハイテン材に活用できる、新たな加工技術に高度化させることを考えた。

 

例えば、筆者が加工現場を視察したり、川出社長からヒアリングを行ったところ、市販工具を特殊な方法に応用して切削加工を行っていたり、リーマ加工におけるバニシング効果を高める前加工に類似した、仕上げ切削プロセスなどを行っていた。

 

こうした技術は、これまで川出社長の創意工夫により構築されてきたものであったが、今回、専門書などに記載されている理論的な視点により、技術的な裏づけを明確にしたうえで、さらにそれを新型NC旋盤の機能を使って新たな技術として高度化させる。この開発の取り組みを、申請書に書き込んでいくことにした。

 

コンサルティングの効果

これまで筆者は、ものづくり補助金事業において20社を超える企業のサポートを行っており、全ての企業が採択されている。

 

その秘訣として、公募要領の審査項目にある「新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘)の革新的な開発となっているか」や「課題の解決方法が明確かつ妥当であり優位性が見込まれるか」などといった要件に対し、革新的で優位性のある開発を、業界全体の視野で俯瞰しながら企業と一緒になって考えている。

 

あとは、その開発が困難な理由や、どのように実現させるのか等を、わかりやすく記載していくことである。

 

逆に、不採択になった申請書を拝見させていただくと、新たに購入する機械設備の良さ・高機能性、またその機械を使って得られる生産性などを一生懸命説明する文章が多いが、機械設備を購入するだけで生産性が向上する内容の場合、同じ機械を購入する他の企業も同じメリットが得られてしまうため、これは機械そのものが革新的であっても、同業他社に対し優位性のある取り組みテーマとは言えない。

 

ところが高額な費用を支払って、代筆事業者を使っても、そういった記載内容も見受けられるため注意したいところである。

 

同社は今回のサポートにより、今後同社に必要になる技術について、新型機械を活かした高度で新規性のある開発テーマを考えることができた。

 

今後の同社の取り組み

川出社長の今後の取り組みとして、これまで培ってきた旋盤技術を、若手人材に継承していきたいと考えている。

同社に限らず、これまでの職人技術のように属人的な技術・技能は模倣が困難であり、それが参入障壁となり、競争力となる反面、事業拡大や技術承継の際には足かせになってしまう。

 

そこを打破し、効果的な若手人材の育成を行っていくためには、単なる作業手順書だけではなく、川出社長の頭の中にある思考プロセスを、知識と技能に分け、紐解きながら従業員に伝えていける仕組みが必要となる。

 

その仕組みを構築できれば、多品種小ロット生産や一品生産を行う加工現場に最も必要となる「応用力」を養っていくことができる。

 

今後、川出社長は採用計画と共に、技術者育成の仕組みを整え、エンドユーザーを支えるサプライヤー企業として何十年と続けていける「組織体制」を作り上げていく構想がある。

 

筆者は、そうした川出社長の取り組みに大きな期待をすると共に、同社のような実力ある地元企業の経営面・技術面のサポートを、金融機関等とも連携しながら行っていこうと思う。

 

 

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