金型・部品加工業専門コンサルティング

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株式会社 建和【後編】のコンサルティング事例(2017年9月号掲載)

株式会社 建和【後編】のコンサルティング事例(2017年9月号掲載)

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先月号に引き続き、プレスメーカーである株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)が2年前から行っている金型製作内製化の取り組みについて紹介する。

 

同社の金型製作の特徴

金型製作を取り巻くツールは日々目覚ましい進化を続けており、同社はそうした最新設備や技術をどん欲に取り込み進めている点に特徴がある。具体的には、設計から機械加工、トライ業務といった全工程において、完全な3次元CAD/CAMの運用を実現しており、そのメリットを充分に活かしている。

 

3次元CAD/CAMを利用するメリットとして、①成形シュミレーションができる、②型構造設計時に機械加工情報を付与するフィーチャー設計ができる、③金型構造の強度計算が簡単にできる、などが挙げられる。

 

このうち同社は、自社設備であるサーボプレスと、最大20トンのダイクッションを利用した独自のプレス加工を確立するため、①の成形シュミレーション技術をうまく利用している。

 

同社の成形シュミレーション技術の特徴

同社が目指す、プレス工程最小化において、ダイクッションと成形シュミレーション技術はとても相性が良い。曲げや絞り加工の板押さえではコイルスプリングがよく使われるが、ダイクッションを利用することで、1トン単位で調整しながら、成形の挙動を色々と試すことができる。

 

中型や小型の製品を扱うことが多い同社のプレス製品において、できる限り絞り要素を減らし、曲げ加工に近い状態で成形することにこだわりがある。その結果、同社が設計する単発型は、「中パッド」と呼ばれる、成形品の外側ではなく、内側を高いクッション圧で押さえながら成形するといった構造が多い。

図1 中パッド構造の設計事例

 

その中で、スプリングバックをコントロールするため、市販書にも記載されている、①凹R部や凸R部を大きくしたり小さくするといった調整、②金型クリアランスを狭めてしごきを加える、などの金型形状による調整を行っている。

 

こうした金型形状やダイクッション圧の設定を何パターンも用意し、それを成形シュミレーションにかけ、その中から最良の結果が得られる設定を採用するという方法で行っている。特に同社のプレス製品は、440Mpaや590Mpaといったハイテン材が多いため、こうした金型設定の違いは、ブランク展開形状やスプリングバック量の違いとなって顕著に表れる。

 

同社で成形シュミレーション作業を行う代表取締役の山本道典氏は、こうした解析を多いものでは1製品で何十回と行うものもある。こうして繰り返すことで、成形中の板材の挙動を金型設定ごとに知ることができ、これは同社のノウハウとして蓄積していくことができる。

 

このように、さまざまな設定をいくつも試すことができるのが、成形シュミレーションの最も大きなメリットの一つである。これだけ多くの設定を、従来のように実際に金型を作って試すことは時間的にもコスト的にも不可能である。

 

同社の目指す方向性

こうした成形シュミレーション技術を最大限に使い、同社が今後目指していく方向性は、従来を超えるプレス工程の最小化である。これを山本社長は「1発金型」と呼び、サーボプレスと20トンのダイクッション機構を使った新たな金型構造を模索している。

 

これは、プレスメーカーにとって、金型内製化で得られる最も大きなメリットである。言い換えると、年々引き下げられる金型費に対する必要不可欠な取り組みとも言える。

 

ただし、完全な3次元システムの運用などは一朝一夕で実現するものではなく、例えば金型製作にかかわるスタッフのほとんどが3次元システムを扱えるスキルを持つ必要があり、覚悟と準備期間が必要になる。それをこの短期間で、初めて行う金型製作から実現しているあたりに、その強い覚悟がうかがえる。

 

コンサルティング前の課題

このように、自社独自のプレス工法の完成を目指し、成形シュミレーション技術をフル活用している同社であるが、それを実際の金型として設計していくには、機械加工での効率性や、必要な部品強度も考慮していく必要がある。

 

この点について、同社はノウハウが少なく、協力会社の金型メーカーから助言を受けたり、これまで使ってきた金型を教材としながら、試行錯誤によって対応してきた。

 

筆者のコンサルティング

そこで、筆者が現役の金型技術者であったときに、同社が扱うCADである同じVISIを使って設計を行っていたこともあり、同社で実際にCAD設計を行いながら、新しい金型構造の実現をサポートしている。

 

VISIは、オリジナルで作るマクロ機能が充実しており、同社の目指す金型製作の自動化には適したシステムである。VISIの中で「標準部品」と呼ばれるこの機能は、ACCESSデータベースとPythonというプログラム言語を利用して機能させている。

 

AIの運用も進めている山本社長にとって、こうしたIT技術を扱える技術スタッフを増やしていくことが今後必要だと考えている。基本情報技術者試験の国家資格も持っている山本社長の理想は、自社から一人でも多くのIT資格を持つ社員が表れてくれることである。

 

この点については、今後この製造業を取り巻くIT化に対応していくため、新たな教育制度や給与手当なども検討している。ちなみに、資格試験の学習に教育機関を利用する場合、ある程度費用もかかるが、教育訓練給付制度といった国の援助もあるので、こうした助成金制度は、特に中小企業はフルに活用したいところである。

 

筆者は中学生の頃からの趣味で、当時はポケットコンピューターのBASIC言語でプログラミングを行ってきたが、社会人になってからもその経験は大いに役に立っている。金型製作においては、NCプログラムやその中で使われるマクロ機能などでプログラム言語の理解力は役に立つし、VISIやFEATURECAMなど、APIが充実したCAD/CAMにおいては、オリジナルの機能を作ることもできる。

図2 ACCESSとpython言語で構成されるVISIのマクロ機能

 

今後ますますAIやIOTの利用が進むであろう金型分野も、そこで働くにあたり、必要となるスキルが変化していくことが考えられる。直接自分がそうしたシステムを構築することはないとしても、AIによって何ができるのか、そのロジックはどうなっているのかを知ることは、今後その技術の利用を考えるならば、必ず必要になる知識である。

そうした流れを考えると、山本社長の理想はまさに時流に沿った方向性と言える。

 

今後の同社の成長

金型製作を行うにあたっては、実際に金型を作るだけでなく、見積もり業務や、日程計画やその進捗管理など、さまざまな周辺業務もある。同社は、それらの業務まで含めた「自動化」を今後推進していく計画である。導入したソフトウェアや機械設備も、それが可能になるものを選定している。

 

同社の金型技術者は、日々金型を作るだけでなく、そのプロセスまで作っていくという意識が必要である。ITで何ができるのか、自動化とはコンピューターに何をさせるのかを考えることが重要である。

 

ITリテラシーと金型技術の両方を高めていくことで、未来の金型づくりに対応していこうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

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