金型・部品加工業専門コンサルティング

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マシニング

株式会社 建和のコンサルティング事例(2018年11月号掲載)

本号で紹介プレスメーカーは、以前登場した株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)である。同社は、自動車部品において60tプレスから300tまでのプレス量産加工を行い、最新のサーボプレスも有効に活用している。

 

同社で発生している問題とその発生原因

440Mpaから980Mpaといったハイテン材を扱う同社では、特にショット数の多い順送型などにおいて、メンテナンス頻度が従来よりも多く発生しているという問題が生じている。

図1 破損したパンチの事例

 

特に、社内で設計製作した金型よりも、協力メーカーの金型メーカーに設計製作を依頼した金型に多く問題が発生していた。

 

その原因の一つとして、プレスメーカーにて1万、10万ショット以上打った後の金型の状態を、金型メーカーが詳細に把握できておらず、必要な強度で金型を設計できていないためだと筆者は考えている。

 

金型メーカーでは、どこまでの強度の構造を持つ金型を設計すればよいか、どれだけの強度の金型材料を用いればよいか、考慮することが難しくなっていると考えられる。

 

また昨今は、金型にかけられる予算が限られており、厳しいコストで金型製作をしなくてはならないため、金型メーカーとしても過剰な品質の設計は避けたいところである。

 

とはいえ、金型メーカーの力量が劣ってきたとか低下しているということではなく、590Mpaを超えるハイテン材の順送プレスなど、大ロットのプレス加工において、未知なることがまだまだ多く、金型メーカーとしても情報を蓄えきれていないのが実情なのだと筆者は考えている。

 

具体的な問題事例

同社で発生している金型破損・故障の多くは、①応力集中・座屈、②金型材料の選定、に起因している。

 

例えば、応力集中を起因とする破損例として、抜きや曲げのパンチに多く発生している。

 

応力集中とは、パンチなどにある凹形状部において、ピン角やごく小さな凹R形状があると、プレス加工時にかかる負荷により、パンチにかかってくる荷重が分散されず、そのピン角部や小さなR部に集中して負荷がかかってくる現象である。

 

これにより、強度計算上、折れない太さ・長さのパンチであっても、応力集中がかかってくる部位で破損してしまう確率が非常に高くなってしまう。

 

こういった形状を持つパンチは、協力メーカーで製作された金型に多かった。この傾向は現場経験のある筆者もよく理解できるが、角部にわざわざ大きな凹Rをつけるためには、エクエアエンドミル加工にくわえ、ボールエンドミル加工も追加する手間が発生する。もしくは大きなR形状を持つラジアスエンドミルを使わなくてならず、加工形状によっては使えない場合も発生する。

さらに、せっかく5Rなど応力集中を緩和するための適切な大きさを持つ凹R部を、ボールエンドミルを使って加工しても、先行して加工しているスクエアエンドミルとの境界部に微小なピン角が残っているため、そこから破損しているという事例もみられた。

図2 ボールエンドミルとスクエアエンドミルとの境界部

 

またせっかくボールエンドミルにより、大きな凹R形状が加工されていても、その切削加工面が粗いと、その粗い面の凹凸が微小な凹形状となってしまい、そこへの応力集中によって破損が発生することもある。

 

もう一つ、②の金型材料の選定による故障も発生していた。

 

例えば、抜き加工を行う金型において、パンチを保持するパンチプレートの材料について、安価なSS400を使って製作する金型メーカーは多いが、1万ショットを超える量産に使った金型をメンテナンスのため分解すると、パンチを保持するインロー部がグラグラになってしまった状態をよく見かける。

 

これについては、ハイテン材ではない普通材や、薄板の小ロット生産であれば問題ないかもしれないが、ハイテン材や厚板の順送プレス加工においては、最低でもS50Cや焼入れ処理した硬いプレートを使わないと、前述したようなグラグラな、きちんと保持できない状態になってしまい、抜き加工時に発生する衝撃により一気にパンチの摩耗・破損が進んでしまう。

 

パンチの下にあるバッキングプレートに焼入れが入っておらず、やはりSS400が使われている金型も多く見かけるが、ハイテン材をプレスする金型においては、SK105を焼入れしたプレートを使うか、パンチの下に焼入れ処理した入れ子プレートを入れるなどの対応をとりたいところである。

 

こうしたハイテン材などの難加工材を扱ううえでの諸問題のデータベースは、今現在、金型メーカーよりもプレスメーカーの方に多く蓄えられており、プレスメーカーにとってこれは大きな財産であると言える。

 

プロジェクトの立ち上げとコンサルティングの取り組み内容

そこで、代表取締役である山本道典氏は「壊れない金型づくり」をテーマに、プロジェクトとして立ち上げ、筆者と共に、自社で扱う金型を根本的に見直していく取り組みを行った。

 

具体的な取り組みステップは、次のとおりである。

  1. 基礎学習
  2. 実践応用

 

まずは、設計と製造の主要スタッフが、金型に要求される強度や、金型が壊れるメカニズムなどの基礎知識を持つための研修を行うことから始めた。

 

例えば、金型で使われる主要パーツの強度はどのように計算するべきか、金型材料の特性の違いはどのようなことがあるのかなどを学習した。

 

実践応用のステップでは、実際に破損した金型やプレス製品を事例として取り上げ、学習した基礎知識と照らし合わせ、そもそも必要であった金型要件からどのようなギャップがあったのかという視点から原因を調査した。

 

とかく金型修理については、長時間プレス生産を止めることができないことから、早急な応急処置対策を取ることが多くなるが、本来あるべき金型構造・金型強度とのギャップ分析から金型改修を行うべきである。

 

そのためには、金型設計者だけではなく、保全に関わる者も、金型構造・金型強度に関する基礎知識を持っておくべきと筆者は考えている。

 

コンサルティングの効果と同社の今後の取り組み

今回のプロジェクトにより、同社の金型改修は、応急対策・恒久対策を切り分け、計画的に進めていく体制を作ることができ、今現在、筆者と共に着手している。

 

今後の同社の取り組みとして、前回登場の際、書かせていただいたように、以前はアウトソースしていた金型製作を3年前より内製化できる体制を構築しており、解析技術や全工程の3次元データ活用、自動スケジューラーなど、積極的に最新技術を導入している。

 

その最新技術の進化形である次なる取り組みとして、3次元設計の自動化・高効率化や、プレス解析の最適化技術などの活用も、大学やITベンダとも連携しながら進めている。

 

最新技術の導入に加え、プレスメーカーとして日々蓄えている実績・経験のビックデータを、ハイテン材プレス金型の質向上という形で新たな強みとし受注競争力UPを図っている。

 

ソフトウェアの最新技術のみならず、技術者の基礎・応用能力UPとの両面で、同業他社との競争力向上を図っている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

協和工業株式会社のコンサルティング事例(2018年10月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、協和工業株式会社(静岡県湖西市 TEL053-579-0931)である。同社はシート部品・ステアリングコラム部品などの自動車用部品を製造する量産プレスメーカーでありながら、自社でも高精度な金型を内製しているという特徴がある。

図1 同社の金型の一例

 

また、プレス能力800トン級までの厚板・高強度、複雑・精密形状のプレス品であるシート機構部品等を生産できる技術と設備能力を持っている。

図2 同社で生産されている製品の一例

 

同社の金型製造の特徴・強み

同社の金型製造における特徴と強みは次のような点である。

 

  1. 金型製造の全工程を3次元CADデータで扱う一貫体制を構築している。
  2. 安田工業(株)製の3軸・5軸マシニングなど、高度な工作機械を多数保有している。
  3. 量産部門で培った高い管理ノウハウを金型製造プロセスにも応用しており、社内・外販向けともに高品質の金型及び金型部品を製造している。

 

今回は、同社に対し筆者のコンサルティングで行った、3次元設計の有効活用法の一つであるコンカレントエンジニアリング導入の取り組みについて紹介していきたいと思う。

 

3次元設計のあるべき3つの活用法

プレス金型設計においては、まだ2次元の設計で行うメーカーも多いが、3次元による設計もすでに多くのメーカーで使われている。

 

しかしながら、想像線などによる図の省略が自由に効く2次元の作図と比べ、3次元設計は基本的にそこに存在するもの全てをモデリングしなければならないため、2次元設計よりも多く工数がかかる傾向にある。

 

そこで、設計工数そのものよりも、むしろ後工程での省力化により、3次元設計のメリットを発揮するという考え方が必要になる。

 

そのための有効活用法として3次元設計では次の3つに取り組むと良いとされている。

 

  • 解析技術(シミュレーション)
  • フィーチャー設計
  • コンカレントエンジニアリング

 

(ア)の解析技術は、3次元モデルを利用して強度計算や塑性加工シミュレーションなどを行うものである。

(イ)のフィーチャー設計は、例えばキャップボルトやノックピンを3次元モデルのプレート上に配置すると、プレートのモデルにタップやリーマ穴、ザグリ穴など加工属性が付与されるといった機能のことで、後工程のCAMオペレーターの作業が省力・自動化される技術である。

 

(ウ)のコンカレントエンジニアリングとは、例えば、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、各工程でそれぞれ一定程度作業が終わったところで、まとめて次工程に引き渡すといった順次方式ではなく、各工程を同時並行に進行させることで全体のリードタイム短縮を図る手法である。

 

従来の2次元設計では、金型の構造設計が完了してCAMデータ作成工程に引き渡す前に、まだ個々の部品図作成を行わなければいけない。さらに3次元CAM加工のある部品については、部品図を元に3次元モデリングも行わなければならない。

 

ところが3次元設計であれば、部品の設計も構造設計と同時に完了するため、速やかにCAMデータ作成工程に引き渡すことができる。そのため、3次元設計はコンカレントエンジニアリングに向いていると言われている。

特に短納期にこだわるメーカーでは、金型構造部の詳細設計の前に、パンチ・ダイなど意匠面部品などの3次元CADモデルを先に後工程に引き渡すといった同時並行作業をとる事例もある。

 

このコンカレントエンジニアリングの採用により同社は工作機械の稼働率を引き上げ、①金型全体の製造リードタイムの短縮により金型受注面数を増やす、②外販向け金型部品の受注売上を増やす、といった取り組みにより課題であった部門目標売上の達成を目指すこととなった。

 

同社が取り組んだコンカレントエンジニアリングの内容

前述した、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、筆者が同社の金型製造プロセスを診断したところ、③CAMデータ作成→④機械加工の工程間のリードタイムにまだ伸び代があると感じた。

 

これまで同社ではCAMオペレーターが一定数の部品のデータ作成を行った後、次工程に引き渡す「作り溜め方式」で行っていたため、設計後、機械加工がスタートするまでに一定の日数が経過していた。

 

そこで今回の改善では、設計後から機械加工開始までの期間を限界まで縮めるため、CAMオペレーターは早ければ、設計担当からモデルデータを受け取ったその日もしくはその翌日の夜間から、加工を開始できるようデータの作成、準備を行うこととした。

 

データ作成が一定量進んできた段階で、日中にも機械加工を入れていくが、まずは夜間と週末のスケジュールについて、1週間から2週間先まで優先して着手計画を埋める。

筆者はこれを新幹線のような「座席予約方式」と呼んでおり、計画的に夜間・週末の時間を有効に使い切るため必須の措置だと考えている。

 

同社のコンカレントエンジニアリング導入のポイント

今回のポイントになった点は、次の3つである。

 

  1. 緻密な着手計画を立てるため、個々の部品の加工工数を精度よく見積もること。
  2. 同社の金型は保全性を高めるための入れ子構造が多く、比較的小さな金型部品(以下「小パーツ」)が多い。小さな部品は加工時間が短いため、本来長時間の無人加工には向かないが、その対策を図ること。
  3. 機械オペレーターは、前工程への多能工化としてCAMデータ作成にも参画し機械稼働率を高める。さらに後工程への多能工化として、加工後部品の仕上げ・組み付けにも参画し、工程全体のリードタイム短縮にも貢献する。

 

着手計画の見積もりについては、量産プレスの管理で培った緻密な実績管理を行うことで見積もり精度を高め、CAMデータ担当者の協力も得ながら、着手計画の仕組みを作ることができた。

 

また小パーツの無人加工については、同社はパレットチェンジ仕様の横形・立形のマシニングなど、複数部品の無人加工に適した機械を設備しており、これを若手の機械オペレーターがプログラム改善などを行い、多数個の小パーツを長時間無人加工できる仕組みを作ることができた。

 

多能工化については、3次元CADデータを全工程で一貫して扱う同社においては、例えばプレートの穴あけのような平面的加工であっても、CAMは3次元仕様のソフトを使うことになり、一般的な2次元CAMよりも習得のハードルは高くなるが、同社の機械オペレーターは、高いチャレンジ意欲でこれを習得し多能工化を図っている。

 

コンサルティングの効果と今後の同社の取り組み

こうして同社では、コンカレントエンジニアリングの取り組みにより、機械加工工程は従来よりも早いスタートを切ることができるようになり、これまで稼働率が高くなかった設備についても目標稼働率を実現できるようになった。

 

同社は今、外販向けの金型及びパーツ品の受注拡大に取り組んでおり、設計・機械加工などの技術をさらに多くの顧客に向け提供していくことを考えている。

 

3次元CAD、パレチェン仕様のマシニング設備など高度な設備を、あるべき形でフル活用し、競争力を磨きあげていく同社に筆者は大きな期待をしている。

 

 

三幸プロダクツ株式会社のコンサルティング事例(2018年9月号掲載)

 

本号で紹介するプレス金型メーカーは、三幸プロダクツ株式会社(大阪府東大阪市本庄西3丁目1番21 TEL 06-6541-9331)である。

 

同社は、ブリキなどの薄板コイル材を扱う鋼板商社である三幸商事株式会社が、プレスメーカーの大西工業を買収したことで、平成29年度より三幸商事(株)のグループ会社として、新たにスタートすることになった企業である。

図1 同社で製作された金型

図2 同社の金型で製造された製品

 

同社への支援は、技術承継などの課題を持つ同社への技術面の支援として、プレス金型にまつわる様々な知識について、筆者が8か月間の講義を行ったものである。

 

筆者が支援する他のメーカーにおいても、営業・調達・経理・量産プレス・金型製造・金型保全など各部門において、持ちうる技術知識に格差があることで、様々な支障をきたしている。

 

今回の各部門が一堂に集まり受講する部門横断的な技術講義の取り組みは、前述した課題に対する有効的な対策であり、ぜひ他メーカーでも取り組んでいただきたく、本号ではその要所などを紹介したい。

 

同社の強みとコンサルティング前の課題

同社の強みは何といっても、旧大西工業の代表であった同社顧問が持つ技術ノウハウにある。

 

現在も、プレス工法やポンチ図の作成において、同社が得意とする0.2ミリや0.3ミリの薄板絞り加工の順送金型などを製作する生産技術の中心的役割を担っている。

 

しかしながら、この点が同社の強みでもある反面、同社のウィークポイントとなっている。今後の5年、10年先を見据えると、早急な技術承継が必要不可欠であった。

 

そこで、これまで属人的であった同社のコア技術を標準化し、チームによる製造力を強化していくため、各部門の主要メンバーが一堂に集まり、筆者の指導の元、金型製造にまつわる全般知識を、まずは習得していこうということになった。

 

コンサルティングの内容

実際の講義は、次のような7つのテーマで行った。

 

  1. プレス工程設計の基礎知識
  2. 金型構造と金型設計に必要な知識
  3. 金型で使われる金属材料の基礎と使いかた
  4. 金型製作で用いられる機械加工全般と使い分け
  5. 切削加工概論
  6. 2 次元・3 次元 CAD/CAM 研修
  7. 金型製作における工程管理と原価計算

 

以下、講義で扱った内容と共に、各部門が横断的に知識を持つことのメリットについても見ていきたい。

 

  1. プレス工程設計の基礎知識

この講義では、金型製造の全工程から、最初の工程であるプレス工程設計についての基礎講義を行った。また、抜き・曲げなどのプレス工程を設計するためには、種々のプレス工法や各種プレス機の特徴や使い分けなども知っておく必要があるため、それら周辺知識なども扱った。

同社製品に多い円筒絞り加工については、絞り率の計算なども受講者全員で実践を行った。

これらの研修により、各部門の全員がプレス工程とコスト・品質の関係を知ることができ、今後は最適な金型製作と量産プレスを行うための検討をチームとして行うことができる。

 

  1. 金型構造と金型設計に必要な知識

金型設計の3段階(工程設計・構造設計・部品設計)における構造設計・部品設計を取り扱った。

 

プレス加工は大きな力を要する加工であり、金型はそれに耐える充分な強度を持つ必要がある。また、金型は長く使うツールであり、製作直後のトライ時には出てこなかった問題も、長く使ううちに出てくるトラブルもある。

 

本講義では金型構造の基礎から、不十分な設計により発生するトラブルや故障などを扱っており、これらの知識を製造側と保全側、両面が持つことで、最適な金型製作を行っていくことができる。

 

また、過剰強度の部品材料や構造は、即コストアップにつながり、企業収益を圧迫する。こうした側面を営業・調達部門も知ることで、最適コストの金型調達を行っていくことができる。

 

  1. 金型で使われる金属材料の基礎と使いかた

同社で使われるパンチ・ダイは、SKD11といった冷間ダイス鋼が主に使われており、極めて薄い板の抜き加工を行う同社の金型では、必要強度のためハイス鋼や超硬合金が使われることもある。

 

近年は各鋼材メーカーより、様々な改良ダイス鋼が販売されており、こうした各鋼材は、その使い方によって長所短所がみられることがあり、その特徴がどのような成分根拠から現れるのかも知っておくことが望ましい。

 

今回の講義では、金型パーツごとに、強度不足により発生するトラブルと合わせて、鋼材に関する知識を学習した。

 

こうした知識は金型製作担当だけでなく、保全部門においても、発生した金型故障やトラブルが、強度不足によるものなのか、機構による問題なのか原因究明に役立つ知識となる。

 

また、営業・購買部門においても、金型強度とコストの関係を知ることができ、最適な金型の見積もりや調達を行うことにつながる。

 

  1. 金型製作で用いられる機械加工全般と使い分け

プレス金型製作で用いられる機械加工については主に、マシニング加工、ワイヤー放電加工、平面研磨加工、汎用加工(ラジアルボール盤、旋盤加工など)があり、これらを精度・コストに応じて正しく使い分ける必要がある。

 

金型製造部門はもちろんのこと、営業部門においては最適な金型の見積もり、また購買部門においても最適な金型外注仕入れコストなどを算定する根拠ともなり、全部門で知っておくべき知識と言える。

 

  1. 切削加工概論

主にエンドミル加工に焦点を当てた技術知識である。同社においては、ワイヤー放電加工が主力であるが、本講義により、同業他社の技術レベルを知る機会ともなり、内製する金型と外注から仕入れる金型、それぞれの標準単価を推し量るための基礎知識になる。

 

  1. 2 次元・3 次元 CAD/CAM 研修

同社の設計は2次元であるが、プレス金型業界全体では設計の3次元化が進んでいる。

 

今後、製品の企画提案から試作・金型製作・量産プレスといった一括受注を強化していこうとする同社においては、製品の見える化ができる3次元設計はまさに今後強みになる可能性がある。

 

今回の講義においては、3次元設計の3大メリット(解析・フィーチャー設計・コンカレントエンジニアリング)など、3次元CADの基礎や活用方法などを学習した。

 

  1. 金型製作における工程管理と原価計算

今回の講義では、金型原価積算と費目ごとのコストダウン指針について取り扱っている。

 

この内容については、まさに全部門の関係者が知っておくべきであり、永続的に企業が収益を上げていくための、技術面と並んで必要となる知識である。

 

コンサルティングの成果と今後の同社の戦略に向けた取り組み

今回の研修により、各部門が横断的に同じ水準の技術知識を習得する機会を得た。

 

親会社の三幸商事(株)については、鋼板商社ということで有利に材料を調達できる強みに加え、三幸プロダクツ(株)による金型内製機能と保全機能の強化というさらなる強みを武器として今後、企画提案型の需要を拡大していこうとしている。

 

技術者の底上げによる技術承継によって、新たな需要拡大を図る同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2018年5月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、以前登場した溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。

 

同社は、図面で書き表せないような抽象的な形状の製品であっても柔軟な対応ができ、また同業他社が受注を断るような短納期の依頼であっても対応ができるといった技術力に強みを持つ。

 

そのような同社がここ最近力を入れているのが、フライス加工を中心とする機械加工である。同社の扱う製品は、CO2アーク溶接で組み立てた後、他部品と組み合わせるなどの用途のため、フライス加工やキリ穴、ねじ穴などを追加工する。

 

これまで同社の機械加工は、そのほとんどが外注対応であったが、従来を超える短納期対応や品質確保を目指すため、2年ほど前からその内製化を強化している。

 

そのためのフライス加工設備の充実を進めているが、その導入設備が溶接製缶業界では非常にユニークであるため、本号ではそのあたりの戦略などについて紹介をしていきたいと思う。

 

同社の機械加工の強み

他の機械加工メーカーと比較した同社の強みとして、前工程から一貫して社内対応できる点がある。

 

溶接製缶メーカーから見ると、フライス加工は全く異なるノウハウであるため、簡単な追加工程度であれば自社で行うが、大きな製品やある程度の精度を要する製品のフライス加工まで自社対応しているメーカーは少ない。

 

また、機械加工メーカーから見ると、溶接作業そのものは技能資格もありOFF-JTなどで習得することも可能であるが、仮付けによる組み立てから、熱変形・収縮まで考慮した本溶接までといった作業は、経験に裏付けされた実績がなければ一朝一夕にできる作業ではない。

 

こうした事情から多くの中小メーカーでは、両方を高いレベルで行っている企業は少ない。

 

同社は、2年前のマシニング加工技術に長けた小坂 伊佐三氏の入社をきっかけに、急速にフライス加工の生産体制を整備、拡大している。

 

また、溶接製缶業での同社の強みである、5台のレーザー加工設備をフライスの前工程に活かし、特に、溶断後にフライス加工を行うような製品については、同業他社には真似できない短納期化と低コストを実現している。

 

同社ならではの特殊機械の導入

そもそも溶接製缶品のフライス加工には、次のような難しさがある。

  • 段取り:6面フライスした鋼材のように、溶接製缶品にはバイスでしっかり挟める製品が少ない。溶接製缶品は10ミリ前後の板を箱状に組み合わせた筐体であるため、油圧バイスなどの段取りが不可能であり、しかも、いびつな形状の製品が多いため、加工そのものよりも段取りや冶具製作の方が難しい。
  • 加工ビビリ:板を張り合わせた製品が多いためワーク剛性が弱く、加工ビビリが起こりやすい。また前述したように、いびつな形状が多いため、しっかりとクランプできない場合にはやはり加工ビビリが起こりやすい。
  • 突き出しの長い工具:いびつな製品のフライス加工は、ワーク上面から深く入りくんだ場所への加工を余儀なくされることが多く、細く突き出しの長い工具で加工することも多い。突き出しの長い工具のフライス削りは、工具たわみや振れなどが起こりやすく、加工精度や面粗さを確保することが難しい。

 

こうした難しさがある溶接製缶品のフライス加工であるが、被削材の硬さとしては、そもそも炭素の多い鋼材は溶接自体が厳しくなるため、業界として硬い高炭素鋼はほとんど使われてこなかった。

しかし昨今は、硬い高マンガン鋼も使われることもあり、切削抵抗の高さという点においても、従来よりも難しさは増している。

 

溶接製缶品のフライス加工の難しさに対応した機械選び

こうした加工上の背景から同社は、溶接製缶を扱う同業他社では持っていない、ユニークな機械を導入している。

 

元々、NCフライス盤は持っていた同社であるが、自動機としてまず、一般的な立形マシニングセンターを導入した。そして次に導入したのが、横幅6,050ミリの極めて横長なテーブルを持つイワシタ社製の長尺NC加工機である。

図1 同社が導入した長尺NC加工機

この設備は、同社が得意としている長い角パイプ材の溶接品への対応に強く、またニッチなテーブルサイズを持つため、ピンポイントでこの機械でしか加工できない加工需要も多くあるはずである。

 

また今年新たに導入したのが、ヤマザキマザック社の5軸マシニングである。 同社が扱う製品に多いいびつな加工品に対応しやすく、フレキシブルなクランプのやりやすさ、多方面からの切削・穴加工など、溶接製缶品の加工でこの機械を使えるメリットは非常に大きい。

図2 同社が今年導入した5軸マシニングセンター

 

同社は、こうした同業他社や協力メーカーにはない設備を導入することで、短納期、難加工品への対応で差別化を図り、競争力アップを図っている。

 

同社のコンサルティング前の課題

こうした取り組みを行う同社であるが、経営上の課題として、こうした新事業の採算性や、人事面での評価・育成をどのように進めるべきかよくわからないといった悩みがあった。

 

同社はこれまで溶接製缶一本で事業を行ってきており、溶接技術であれば、事業性や従業員の技能も評価ができるが、これまで自社で経験がない機械加工については、業界相場の利益率や、技術者の基準となる技術とそれに伴う給与相場などがわからなかったため、事業拡大当初はこのまま進めていって良いものか不安をぬぐえなかった。

 

同社のコンサルティング内容

そこで同社のコンサルティングを行っている筆者は、①事業の採算性評価、②従業員の評価・育成、③新事業のPR戦略について、アドバイスを行った。

 

  • 事業の採算性評価:部門別で損益を評価する案をアドバイスした。機械加工で発生する主な変動費は、材料費や治具費、消耗工具などがあり、固定費は人件費や電力費、ツールホルダーなどの工具費がある。これらを月次で管理し、事業単体での採算性を評価する。
  • 従業員の評価・育成:要素技術ごとに分解した項目を使ってスキルマップ表を作るアドバイスをした。また、1年後、3年後、5年後などを想定した中期スキルマップ表を合わせて作ることで、教育計画を作ることができる。
  • 新事業のPR戦略:同社のユニークな機械設備を外部に発信する方法として、動画によるわかりやすいPRを行うアドバイスをした。なお、同社のホームページは筆者の事務所がサポートさせていただいている。

 

今後の同社の取り組み

同社の経営上の課題として、溶接技術者の新陳代謝の促進がある。同社の強みである、柔軟性の高い溶接技術は、個人技能への依存が大きく、一人前の技術者に習熟するまでに時間がかかる。

 

そうした事情からこれまで経験者を中途採用することが多かった同社であるが、本年度から初めて工業高校を卒業した新卒者(中根 聖氏)を採用する。

 

代表取締役である新美 剛一氏から高い期待をかけられている中根 聖氏であるが、素質があるとはいえ一人前になるには、長い年月をかけ積み重ねた実績が必要になるのも、溶接技術の大変なところであり、面白いところでもある。

 

大正15年からはじまった同社の歴史に、新たな流れを作ろうと取り組む同社に、筆者は大きな期待をしている。

株式会社タアフのコンサルティング事例(2018年4月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、富山県にある株式会社タアフ(富山県富山市 TEL076-429-6225)である。

同社は、総従業員数1200名を超え、国内7社・海外4社からなる立山科学グループの機械加工部門としてその一翼を担い、グループが行う電子部品・精密機器、FAシステム、その他多くの製造販売事業の一端を支えている。

 

同社は、5軸、門型マシニングセンターや、5面加工機など、多くの工作機械を駆使し、鉄系材料やアルミ合金などの切削加工を主力事業としている。

 

同社は当初、グループ企業で製造される、FAシステム、電子部品実装装置等の部品加工に特化し事業を行ってきたが、現代表取締役である高村 元二氏の方針は、今後ますます厳しくなる外部環境に打ち勝っていける技術力を持つためには、グループ内に供給する部品加工だけでなく、グループ外メーカーからの需要を取り込み、その競争の中で他社を凌駕する技術を得ていく必要があるという考えであった。

 

その同社が今注力しているターゲット市場が、航空機部品の加工事業である。

2014年5月に航空機メーカーと取引を開始、2015年5月にJISQ9100を取得し、これまで同社が培ってきた軽金属をはじめとした精密部品の加工技術と、高度な品質管理といった同社の強みが発揮できる分野でもある。

同社は今、この事業を収益の柱とするべく、さまざまな取り組みを行っているところである。

 

その取り組みの中、同社はさらなる競争力を得るために、より精度の高い原価管理の仕組みが必要だと考えていた。そこで、同社の多品種生産に特化した原価管理の仕組み構築について、筆者がサポートすることになった。

 

今回は、この同社へのサポートを取り上げ、多品種生産特有の原価管理について解説していきたい。

 

同社の強み

同社の強みとして、立形・横形・5軸加工機など、多彩なマシニングセンターの最新機を豊富に設備している点がある。これらの設備を2直体制でまわしており、高い生産性を実現している。

タアフ 図1-1

タアフ 図1-2

 

また、製造現場は高い改善意欲を持っており、2011年より開始した改善提案制度では、現在700件を超えた提案があがっている。そうした提案の中で生まれ、徹底した外段取りの一つに、工具長までセッティングしたマシニング用ツールと加工素材をセットにしたワゴンを、機械横に配膳する仕組みがある。

タアフ 図2-1

タアフ 図2-2

 

同社のオペレーターの役割分担として、機械オペレーターと冶具設計・CAMオペレーターは切り分けて担当している。

 

同社には24パレットの横形マシニングがあるが、こうした設備を高い稼働率でまわすためには、信頼性の高いCAMデータが欠かせない。同社ではこうした特殊設備の稼働を専任のオペレーターが支えている。

 

コンサルティング前の課題

こうした強みを発揮し、航空機事業を進めている同社であるが、盛んに行われている現場改善の効果と、企業の収益性との関連がはっきりと見えてこないという課題があった。

 

これは多品種生産でありながら、大量生産向きの原価管理だったことが原因の一つであった。大量生産式の原価集計は、製品ごとにかかる人件費を計算する際、出来高に対し一定割合でかかった工数を案分することが多い。

例えば、200時間かかる機械工数の製品であれば、一律に20%や30%などの人件費を見込んで計算するというものである。

 

しかし、この方法は実際の「作業者」の実績や、取り組んだ改善効果が見えてこない弊害がある。また、新規受注する際にも、製造現場の余力がどれだけあるのか、わからなくなってしまう。

 

機械加工業においては、どれだけ機械が空いていたとしても、機械を仕掛けるのは人間であり、原価の大半は機械加工が占めていても、仕掛ける作業者の余力もなければ稼働率を高めることはできない。

この作業者の工数を適正に把握できていない点が、同社の課題であった。

 

コンサルティングの内容

筆者と共に、同社が見える化したい指標を洗い出した結果、次のものが挙がった。

  • 製品ごとの収益性
  • 機械ごとの生産性
  • 作業者ごとの生産性
  • 部門ごとの収益性
  • リアルタイムな企業損益

 

これらを見える化するためのデータを横断的に集計していく方法として「追番管理方式」がある。追番管理方式とは、仮に同じ製品であっても、生産ロットごとに連番を振り分け、都度別々に管理していく方法である。

 

この方式のうえで、作業者の工数を負担にならない方法で集計していくこととした。これにより、ロット数や加工状況に応じたリアルな工数を集計することができるようになる。

 

また、同社の課題であった、企業損益と改善効果をどう関連付けるかという問題であるが、これは機械加工における利益構造の複雑さが根本原因である。

 

そもそも機械加工における製品ごとの原価には、材料費・工賃・購入品費・外注費などがあるが、この中で「工賃」の扱いが難しい。

 

工賃とは、人の作業や、機械加工でかかったコストであり、例えば年間にかかる総人件費を、どう製品ごとに案分するかという問題がある。

 

これについては、通常、マンレートやマシンレートと呼ばれる一時間や一分あたりの人件費や機械償却費を、製品ごとにかかった工数を乗じて計算する。

 

ところが、日々の改善効果によって、製品ごとの作業や機械加工の時間を削減できても、企業損益における費用の大半を占める人件費や機械償却費、リース費用などは固定費であって、これが減るわけではない。

これが、企業損益と改善効果がうまくリンクしない原因である。

 

製造原価における材料費・工賃・購入品費・外注費などのうち、工賃以外のコスト削減は、決算数値に直接現れる。例えば、高額な工具を、同等の性能を持つ安価な工具に置き換える改善などは直接、工具購入品費の削減として利益の増加に寄与する。

 

ところが「工賃」の削減についてだけは、直接損益に直結しない。例えば、ある製品の作業工数を半分にしたからといって人件費、つまり給与を減らせるということにはならないためだ。

 

そこで、生産余力の管理というのが重要になる。

 

作業工数・機械加工工数の削減によって生まれるのは生産余力であり、その余力に(A)新たな受注を取り込むか、(B)外注に出ている仕事を社内に取り込むしか、利益アップさせる方法はない。

 

今回筆者は、原価集計の具体的方法と、改善を利益に反映させる方策をアドバイスした。そして今後は筆者と共に、前述した①~⑤の見える化と、生産余力を適正に管理できる仕組みを構築していく。

 

同社の今後の取り組み

今後同社は、とりまとめた原価管理の仕組みをITシステムとして構築する。同社の属する立山科学グループは、システムソフトの外販も手掛けているため、同社の管理システムについても、すでに高度なソフトで運用している。

 

これから取り組むことは、意欲の高い技術者の改善効果を適正に見える化できるITシステムの高度化である。

また今年度は、高度な自動システムを取り入れた新工場を立ち上げる計画もある。

 

技術者のノウハウや先端設備の性能、そして高度なITシステムといった様々な方面からの強みを磨きあげている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、以前にも登場していただいた株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績があり、この分野の製品に多い、薄肉でありながら高い寸法精度を要するといった加工品を扱っており、加工技術については工具・加工法・材料・温度管理・品管技術など、様々な方面からの知見を持っている。

 

また、研究開発への意欲も高く、これまで経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の認定も経験している。

 

昨年に引き続き、筆者は同社の技術者研修を担当させていただいた。前回は、HSMWorksを使った5名による3次元加工の研修であったが、今回はHSMWorksを使った5軸加工の若手技術者研修を行った。

 

同社の5軸加工

同社は、5軸加工が可能な工作機械として、DMG森精機のDMU50や、MAZAKのINTEGREX300-Ⅳといったマシンを設備しており、航空機部品の加工には欠かせない存在となっている。

 

同社が行っている5軸加工は、いわゆる「割り出し位置決め5軸加工(以下、割り出し5軸加工)」と呼ばれるものである。

 

一般的に5軸加工には、「割り出し5軸加工」と「同時5軸加工」と呼ばれるものがあり、どちらもX・Y・Zの3軸に加え、A・B・Cのうちいずれか2つの軸を加え、真上からしか加工できない3軸加工から、自由な角度で側面方向に傾斜・回転させて加工するようなものを言う。

 

その5軸加工の中で、「同時5軸加工」は、XYZの3軸だけでなく4軸目、5軸目まで動かしながら加工するものを指す。これにより、よく5軸加工でとりあげられるインペラの羽根部の加工など、工具中心軸の角度を可変しながら加工しなければならないような形状においても対応が可能になる。

 

ただし、マシニングセンターなど工作機械を動かすNCプログラムについては、工具軌跡があまりにも複雑になるため、5軸加工が可能なCAD/CAMに軌跡を計算させることになる。人間が直接手入力でプログラムを組むことはほとんどない。

 

逆に、「割り出し5軸加工」は、工作機械の4軸目、5軸目、例えば、立形トラニオンタイプであれば、旋回テーブル(C軸)とチルトテーブル(A軸)といった組み合わせがあるが、C軸とA軸の動きは止めたうえで、XYZの3軸を動かす3次元加工を行ったり、穴あけやポケット加工などの2次元加工を行ったりする。

 

この使い分けとして、「同時5軸加工」は非常に複雑な形状の加工ができる反面、最大5つの軸を同時に動かすため、それぞれの軸の同期・タイミングが非常にシビアに要求され、工具軸が自由に動きながらその工具先端は位置精度を再現しなくてはならないため、どうしても加工精度の面では不利になる。

 

反面、「割り出し5軸加工」は、4軸目、5軸目を固定したまま、3軸加工を行うため、「同時5軸加工」に比べると、加工の自由度は減り、ホルダーの衝突を回避させながら最も工具突き出し長さが短くできる加工軌跡を探してくれるという利便性は出せなくなるが、加工精度を出すという点では、圧倒的に有利になる。

 

筆者も、自動車部品のプラスチック金型において、大型の傾斜コアやスライドコアの加工で、「割り出し5軸加工」を使った経験があるが、旋回テーブルとチルトテーブルを回転させ、多方向からの切削加工を行う際、球状の測定ゲージを使い、それぞれの方向での加工原点を測定し直すことで、10~20ミクロン単位の加工精度に対応できた経験がある。

 

まさしく同社の製品は、10ミクロン、製品によってはそれ以下の精度が要求される部品もあり、5軸加工については「割り出し5軸加工」が最適だと思われる。

 

使用しているCAM、HSMWorksについては、加工プロセスを定義(ジョブの定義)していく中で、常に途中でのワークの状態を認識させながら、加工パスを作成していけるため、色々な方面から5軸加工を行っても、加工パスを重複させずにデータ作成を行うことができる。まさしく同社の加工には適している。

 

5軸加工研修での課題

このように「割り出し5軸加工」は、真上(Z方向)からだけでなく、多方面からの工具軸の加工を高精度に行える反面、「同時5軸加工」とは違い、どの方向から加工を入れるかCAMオペレーターである人間が自分で考えなくてはならない。

 

また、同社が扱う薄肉形状の加工品は、途中プロセスにおいて、どこを残し、どこを先に削っていくかの判断が難しく、単に削れればよいということではなく、ワーク剛性が弱くなってくることでのビビリ発生などを考慮し、削り残り量のバランスをとりながら進めなくてはならない。

 

今回の研修課題は、CAMの操作よりもむしろ、加工順序を工夫しなければならないといった加工形状を採用している。

 

また、今回の5軸加工研修では、同社のDMU50を使った実加工までの実践を課題としているが、これはCAMデータを作成するだけでは、最も難しいテーマの一つである、期限内に要求品質を満たしつつ加工を終わらせるといった技術が身につかないためである。

 

加工時間を短くするためには、工具の送り速度を上げ、仕上げの送りピッチを粗くすればいい。荒取りについても、大きな工具を使い、送り速度を上げれば時間を短くすることは可能だ。

 

しかし今回の研修でも起こったが、送り速度を上げると加工ビビリが発生するし、送りピッチを粗くすれば仕上がり面も汚くなる。

5軸加工はそもそも高い剛性のワーククランプができない場合が多く、大きな荒取り工具を使用すると加工ビビリが発生したり、ひどければクランプが外れてしまう。

 

また、工具の突き出し長さをできるだけ短くするため、細かく多方面から加工を入れるようCAMデータを定義したが、やり過ぎるとCAMデータ作成時間がどんどん伸びる。確認しなければならない項目も増え、ミスのリスクも高くなる。

 

今回受講した入社2年目の小木曽 圭氏は、限られたCAMデータの作成時間と、DMU50を使った加工時間の制約に悩み苦しみながら課題を進めていった。

図1 CAM操作実習を行っている様子

図2 5軸加工機の操作実習を行っている様子

 

今回、小木曽氏の5軸加工の研修日数は、のべ5日である(日あたり7時間)。

 

彼はその日数の中で、課題形状の3DモデリングからCAMデータの作成、そのデータを使った5軸加工機の実加工まで期限内で見事課題をクリアすることができた。

 

まとめ

今回、若手社員の5軸研修と並行してベテラン社員の研修も行ったが、カリキュラムの一部として、HSMWorksと同じCAMエンジンを持つFUSION360を使ったモデリングとCAMデータ作成演習を行った。

 

クラウド型の3次元CAD/CAMであるFUSION360は、同社が扱うSOLIDWORKSと同じパラメトリック式のCADモデリングができ、割り出し5軸加工のデータ作成も可能であり、各種工作機械に対応したポスト処理もできる。

 

年間使用料4万円以下で使用できるCADとして注目されているが、同社においては慣れ親しんできたHSMWorksを扱う5軸エンジニアを増やすことに寄与すると思われる。

 

筆者はこれまで2年、同社をサポートさせていただいたが、高度なエンジニアを増やすことへの教育投資を惜しまない同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社エスケイモールドのコンサルティング事例(2017年10月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、株式会社エスケイモールド(愛知県豊橋市 TEL0532-35-2007)である。同社は、PPやナイロン系の樹脂材料を成形素材とするモールド金型を製造するメーカーである。

 

筆者が同社をサポートすることになったきっかけは、金融機関から専門家派遣制度を活用した支援依頼があったためである。

 

同社の強み

支援内容としては、同社が自社を紹介するホームページを製作するにあたり、そのコンテンツとなるPRの内容について、自社だけでは相対的な特徴を洗い出すことが難しく、そのサポートをお願いしたいとのことであった。

 

金融機関の支援担当者と共に訪問し、代表取締役である鈴木 秀男氏からヒアリングを行ったところ、筆者は同社の事業について、次のような特徴を挙げた。

図1 構造設計・3Dモデリングを行っている様子

図2 同社の機械加工現場の様子

 

  1. 構造部・意匠面のモデリング、全てを社内設計できる体制が整っている。
  2. 新規の金型製作から納入後の修理・メンテナンスまで、全て一括で対応している。
  3. ワイヤー放電・型彫り放電、マシニング加工など、機械加工を全て内製化している。

 

これらの特徴から見出すことのできる同社の強みは、①短納期対応と②小回りの良さであろう。

 

これらを、同社の強みとして挙げたのは、モールド金型メーカーを筆者が経営診断させていただく際、本来モールド金型メーカーがコア技術とするべき業務を、ここ最近アウトソースしている傾向にあると感じたためである。

 

例えば、次のような傾向である。

  • 金型構造設計及び、キャビとコアの製品意匠面モデリング(パーティング面・勾配面のモデリングなど)を外注で対応し、CAMデータの作成から機械加工を社内で行う。
  • 機械加工の終わったキャビとコアの磨き作業を外注に依頼する。
  • 金型の組み付けは社内で行うが、トライ作業は客先にお任せする。

 

これらの傾向については、やはり年々短納期化する金型納期と、引き下げられる金型費への対応のためであると考えられる。

 

また、若手技術者の強みを活かせる分野として、CAMや機械加工といったマニュアル化・標準化しやすい作業を、今後もより内製化していく傾向になるものと思われる。

 

しかしながら、筆者のような中小企業診断士やいわゆる経営コンサルタント等は、SWOT分析などから、「強みを市場機会にぶつけ競争力の高い事業を行う」などと提案することが多いが、前述したように本来コア技術となるべき業務をアウトソースする金型メーカーについては、筆者も「強み」を洗い出すことに思わず悩んでしまうことも多い。

 

しかしながら、筆者が拠点とするここ中部地方では、まだまだ仕事量は飽和しており、どの金型メーカーも忙しく、受注についてはキャパオーバーとなっている。

 

そうしたなか、海外生産に主力を移しつつある金型メーカーも多くなってきており、今後の国内の技術・コストの競争力については、楽観視できないところもあると思われる。

 

同社の競争戦略

こうした業界事情の中、同社は同業他社との差別性を意識した戦略をとっている。

 

いかなる事業においても、企業が競争力を維持してために最も重要なこととして、「参入障壁」をいかに高くできるかだと考えている。

 

全くライバルが存在しない新しい事業というものは、このご時世なかなか無い。仮に、全く新たなプロダクト(商品)を開発できたとしても、インターネットなどによって情報が一瞬で行き渡るこの時代では、すぐに模倣品が現れ、コモディティ化してしまう。

 

ところが、金型製造という事業は、職人技術を要するために、各社これまで一定の事業領域を保ってビジネスを行ってくることが出来た。

 

それが皮肉にも、CAD/CAMや工作機械の進化により、一部の職人技術が機械システムに置き換わることで、限られた人にしか扱えない技術から、ソフトや機械を操作することで、誰にでも扱える技術に裾野が広がってきたという背景がある。

 

例えば、昨今の鏡面磨き加工がある。筆者も以前、高度ポリテクセンターにて鏡面磨きの研修を受講したことがあるが、受講生10名強の中で、最終課題である#8000の磨きの完了まで到達できた者はわずか4名ほどであった。

 

このように金型の鏡面磨きは、必要な体の動作を、一定のトレーニングにより時間をかけ段階的に習得していくものであり、やり方・方法を知識的に知ったところで、とたんに作業できるというものではない。

 

ところが、これを工作機械の加工で置き換えるとした場合、もちろんソフトや機械の操作、工具の特性・使い方など、覚えなくてはならないことは多岐に渡るが、人間がトレーニングをするといったものとは異なる技術の扱いになる。

 

一概には、どちらが覚えやすいか、覚えにくいかを明確に分けることは難しいが、前述した「参入障壁」という視点でみれば、習得に時間の掛かり、個人差が生まれやすいものほど、障壁は高いと言える。

 

また経営学で使われる用語に「経路依存性」というものがあり、これは過去に多くのさまざまな経験によって積み重ねられた技術や経験値は、他社から見ると複雑で、簡単には真似ができないといった強みを指す。これを模倣困難性と言う。

 

つまり金型業界で言えば、現時点の技術ではまだ機械に置き換えることができない人の技能や、多くの失敗・経験によって構築された金型ノウハウについては、同業他社に追従される可能性を低くできるということになる。

 

同社が内製化にこだわる、金型設計、金型の溶接補修などは、そうした経路依存性の高い技術だと言える。

 

また、他社が製作した金型についても、補修・メンテナンスを依頼されることが多く、こうした積み重ねが同社の設計において、さらなるノウハウの積み重ねとすることができる。

 

これにより、壊れない・トラブルを起こさない金型製作をより強化していくことができ、これが同社の模倣困難性をさらに高めていく。

 

今回、筆者は同社のホームページ製作をサポートするにあたり、金型を専門とするコンサルタントの目線から、中長期的な視点でこのような同社の競争力を見出すことができた。

 

同社の今後の取り組み

同社は、これまである程度決まった取引先から受注を請けてきたが、今後は事業の拡大と安定化のため、金融機関と協力した販路開拓にも取り組んでいく。

 

現在、中小企業に関わる支援策は、金融機関や公的機関を窓口に、多岐に渡って展開されているため、信用金庫など身近な金融機関などに適宜、課題を相談しながら、うまく活用することが経営の効率化にもつながる。

 

同社は事業拡大に伴い、設計対応力の強化を図るため、新たな技術者の採用に合わせてCADの拡充を検討しており、その際にはSolidWorksなどを活用した設計のオール3次元化も視野に入れている。

 

同社の強みである、長期間に渡り使用できる丈夫な金型を製作する設計ノウハウを、若手技術者に継承していくための仕組みづくりも今後必要になってくる。

 

人の持つ技術を最大限に活かした自社の競争力を高め、さらなる事業拡大を目指す同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2017年7月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、創立は大正15年から続く、老舗の溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。同社は、永年培った職人技術と、最新のレーザー切断やレーザー溶接などを駆使し、二百を超える多くの顧客の要望に応えるものづくりを行っている。

写真1 同社で製作している溶接板金製品の一例

写真2 昨年同社が導入した機械設備の一例

 

同社の強み

同社の強みは次のようなものがある。

  1. 図面で数値化されていないような、曖昧で漠然とした顧客の要望についても、形にできる柔軟なものづくり技術がある。
  2. 職人によるアナログ技術をベースとしながらも、その時々で近隣の同業他社がまだ導入していない加工設備を、常に先行して導入している。
  3. 極めて短納期の要望に応えていける体制を持っている。

 

上記3つに代表される同社の強みにより、同社を仕入先とする発注顧客の「困りごと」を解決するようなものづくりを日々行っている。

これは、先代社長である新美広治会長の理念でもある。

 

ところで筆者は、加工サプライヤーには、次の3つの戦略が必要だと考えている。

  1. 海の向こうの半分の値段で加工するメーカーに対抗できる強い顧客メリットを持つ。
    例えば、超がつく短納期対応など。
  2. 顧客の手配業務負担を軽減させるワンストップ受注を行う。例えば、材料手配から機械加工、熱処理、表面処理、塗装など、部品の完成まで一貫対応で受注する。
  3. できるだけ多くの顧客を持つ。需要の波の谷間を埋められる多くの受注窓口を持つ。

 

こうした方針がとれるかどうかで、筆者の拠点である中部地方では、仕事が集まる会社と、そうでない会社の2極化が起こっている。

 

この点、同社はまさに上記の全てを実行しており、顧客の数は実に二百を超えている。

 

事業承継による変革

平成28年9月、現社長である新美剛一氏へ事業承継が行われ、3代目の代表となった。

 

また、これまでフラットな組織で事業を行ってきたが、現在、従業員は27名と増え、納期管理など経営層が個々の全ての従業員までコントロールを行うには無理が出てきた。

 

そこで今年4月、2つの管理職を設け、日下石 智彦氏を工場長、兵藤 至氏を工長として任命、これまでのフラットな職人集団から、チームとしての成果を目指す企業体へと変革させている。

 

新たに管理職となった2名についても、プレーイングマネジャーとして、これまでのイチ職人としての技能だけなく、管理職としてのマネジメント能力も期待されるところである。

 

同社ならではの課題(コンサルティング前の課題)

同社のものづくりは、そのほとんどが一人完結方式であり、製造現場の個々の従業員は、自分が受け取る製品図面に基づき、材料の切断から溶接、最後の仕上げまで、全て自分で受け持つ。

 

作り手の従業員が直接、顧客の発注担当者と打ち合わせやクレーム対応をすることも珍しくない。こうした点にやりがいを感じている者も多い。

 

こうした点は、ここ最近、分業化が進む金型メーカーとは異なるところである。とかく金型の短納期・低コスト化に対応するため、積極的に効率化を図る金型メーカーとは、ある意味、相反するスタイルでもある。

 

しかし、金型メーカーが抱える悩みと同様、個々の従業員に求められる技術スキルが高いため、まともに一人前に仕事ができるようになるには多くの時間がかかる。

 

また、採用活動については地域性の問題もある。一般的に景気が良いとされるここ中部地方でも、三河地域は大手有力メーカーが多く存在し、営業活動には事欠かないものの、逆に採用活動については、企業の大小にかかわらず激戦区になってしまう。

 

そうした問題もあり、これまで同社は、採用・育成については計画的な活動を行うことができず、場当たり的になっていた。

 

コンサルティングで取り組んだこと

先代社長である広治会長は現役の職人としてプレーイングマネージャーの面があり、今も現場に立つことも多い。逆に、現社長の剛一氏は、日々のトップセールスに余念がない。

 

そのため同社は、その事業規模の割には、経営層が集まり会社運営について話し合うといった、いわゆる経営会議といえるような場はこれまでは無かった。

 

そこでまずは、筆者とともに毎月1回の経営会議の場をつくり、組織体制、採用者への安全教育・技術教育、管理職へのマネジメント教育などについて整備していくことにした。

 

特に採用者については、本来必要となる安全教育を行い、業務に必要な知識・技能については、スケジュールと内容を取り決めた計画に沿って習得させるべきである。

 

しかしながら、同社ではこれまで、短期的視点のOJTに留まっていた。

 

この点は多くの金型メーカーも同様で、新規採用者はマシニングなど機械加工の担当者になることが多いが、金型全体の製造スキルまで習得するのは一体いつになるのか、本人自体、全く把握していないことが多い。

 

こうした方針のうえでは、働く本人が長期的視野で、ものづくりに取り組むことができず、他の業種や、雇用条件の違いによって簡単に転職してしまうことも少なくない。

 

同社においても同様で、こうした課題に対応していくためには、これまでの職人集団としての風土を変革させ、会社組織として計画的に、採用・育成・定着の3活動を行っていく必要がある。

 

今年新たに管理者となった2名も同様で、「管理職」という役割の勘違いについて勘違いさせてはならない。

 

勘違いとは、人に命令できる、指示ができるといった、何か権限が与えられるものと勘違いしている場合があり、そもそもマネジメントというものを理解していないことが多い。

 

こうした勘違いは、生産性の低下や、部下のモチベーション低下・不満につながり、組織としての問題の一因になることが多い。

 

まるで部下を使い走りのように扱うような管理職はすでに過去のものであり、部下の1人あたりの生産性をいかに高めていくかのコントロールを行うことが本来の管理の在り方である。

 

同社で新しく管理職となった2名についても、これまでのプレイヤーとしてのスキルに加え、マネジメントに必要な心構えと知識が必要となる。この点についても同社は、筆者と共に計画的な管理者教育を行っていく。

 

また、従業員への技術教育についても、これまでのOJTに加え、OFF-JTも活用しながら、同社の強みである溶接職人の育成を図っていく。

 

これにより同社は、新人からベテラン、管理職まで幅広く、階層に応じた包括的な教育体制を構築することができ、同社で働く者は長期的な視野で、技術者としてのやりがいをもって働き続けることができる。

 

今後の同社の戦略

同社で作られている製品から、ソフト面である職人技術がクローズアップされがちであるが、経営層はハード面である機械設備も同じくらいにセールスポイントだと考えている。

 

同社は、近隣の製造業者の中でも、いち早く新しい設備を先行導入することにこだわっており、開発が積極的に行われているレーザー加工技術の動向を見定めながら、次の導入設備を検討している。

 

筆者との取り組みにより、ソフト・ハードの両面で、業界を先行して進もうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 瑞木製作所のコンサルティング事例(2017年6月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、フライス加工や旋盤加工などの機械加工を主力事業とする株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績を誇っており、扱っている加工部品のほとんどは、チタン合金やインコネルといったいわゆる難加工材である。その技術力の高さから平成19年には経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業にも認定されている。

写真1 同社に飾られているサンプル加工品とコンテスト等の受賞実績

 

同社の技術者育成の特徴

昨年、同社が使用している3次元CAD/CAMの技術者教育のため、研修講師を担当させていただいた。

 

通常、3次元CAD/CAMの技術者教育は、販売ベンダやそれを専門とする事業者を活用する企業も多いなか、個々の応用力を伸ばし自ら考える能力を養っていくといった、同社の育成方針に沿いつつ、3次元CAD/CAMを習得するということから、CAD/CAMや切削加工分野を専門とした中小企業診断士である筆者に声がかけられた。

 

今回の支援の特徴

今回、面白い取り組みがあるので紹介したい。3次元CAD/CAMシステムを5・6名でシェアして活用していく点である。

 

筆者がこれまで見てきた多くの製造現場では、3次元CAD/CAMはユーザーインターフェースが進化し使いやすさは向上したとはいえ、依然その専門性は高く、多くの金型メーカーや加工メーカーでは、専任のオペレーターが担当していることが圧倒的に多い。

 

しかし同社は今回、5名の機械オペレーターに研修を受講させ、同社が保有する2台の3次元CAD/CAMを、5人全員が利用できるようにと考えた。

 

同社が普段加工している製品形状には非常に多くの種類があり、その加工方法においては、手動による汎用加工、工作機械の対話式プログラム、2次元CAD/CAMの利用、そして3次元CAD/CAMを利用した方がよい場合など、効率性、加工精度・品質を考慮するとそれぞれに適したツールがある。

 

今後、加工を行う各作業者が、同社にある全てのツールを活用できるようになれば、多くの加工品を多能工化でき、機械稼働率を高めることができる。

また、担当する作業者に依存することなく、同社にとって最適なコスト・加工品質で、ものづくりを行う体制がより強化することになる。

 

研修の具体的内容

今回の研修を行う前、3次元データ作成作業は、限定された担当者に負荷が集中しており、そういった加工品が集中したときには、工程にボトルネックが発生していた。

 

そこで、その解決を図るべく、同社の鈴木会長の号令の元、この研修が開始された。

 

今回の研修にあたっては、これもぜひ読者企業の皆さんに参考にしていただきたい点がある。5名の受講者がそれぞれ決意表明として、特に取り組みたい点・どのような加工で活用したいかなど、一人ひとり研修開始時に発表していただいた。

 

これも鈴木会長の計らいであり、講師としては一人ひとりの現状スキルや取り組み姿勢などを知る良い機会となり、大変ありがたかった。各受講者としても、自分の力量・取り組み方を整理する良い機会ではなかったか。

 

研修に使用した3次元CAD/CAMは、オートデスク社のHSMワークスである。

 

普段、3次元CAD/CAMにhyperMILLを使用している筆者は、事前にHSMワークスの機能・操作を調査し準備したのだが、このソフトウェアは同社の加工にとって、また今回の研修にとっても、非常に適したシステムだと感じた。

 

まず加工に適した点だが、同社の事業である航空宇宙産業分野における加工品には、多くの薄肉加工部位が多い特徴がある。

 

これまで金型製作を主に加工をおこなってきた筆者にとって、例えば、高硬度材を切削する技術とは異なる、非常に繊細で、段取りから工具選定、切削手順まで幅広いテクニックを要する加工技術だと強く感じた。

 

筆者の経験上、こうした繊細で複雑な加工を行う場合、使用するCAMシステムには、工具の切削軌跡を調整するパラメーターが多ければ多いほど助かる。

 

特に、3次元CAMにおけるデータ作成の場合、その切削軌跡はコンピューターに委ねる部分が多いため、あまり人間の手で細かな調整を行うことは少ない。

 

こうした操作性はユーザーにとって、運用できるまでの時間を短縮させ、誰でも簡単にデータ作成がしやすくなった効果をもたらした点はあるが、加工面にわずかなにできるアプローチ痕の除去や、切削軌跡の違いによる美観の向上、局所的な加工負荷の抑制など、部分的に、人間のノウハウを入れ込みたい加工があっても、それができるソフトとそうでないソフトが存在する。

 

同社が使用しているHSMワークスは、こうした細かな調整が可能で、それが荒取りから仕上げ加工まで細かなパラメーターが用意されており、同社の繊細な加工の調整に応えることのできるソフトウェアであった。

 

また、今回の研修にも適していると感じた点として、このHSMワークスのように多くのパラメーターは逆にデメリットとして、ユーザビリティを低下させる一因となることも多い。

 

しかしながら、HSMワークスの場合は、デフォルト設定される各パラメーター値は、事前に登録されている固定値ではなく、都度、工具や条件に合わせた数値に自動計算され、特に必要がなければ、そのまま入力・編集しなくても支障ないように作られている。

 

前述したように、同社の技術者育成の方針は、応用性・創造性を養い伸ばす方針であり、これはまさに、オペレーターそれぞれの扱い方に応える適正なCAMである。

 

とかくCAMシステムに切削軌跡の作成を依存しがちな3次元CAMにおいて、自分のこだわりたい部分にこだわってデータ作成ができるシステムだということである。

 

このような研修方針において筆者は、HSMワークスがアドオンされているSolidWoksを用いた3次元モデリング研修、HSMワークスによるCAMデータ作成研修の最中、3D加工のセオリーや工具選定指針などの講義も織り交ぜながら、それぞれを計8回で行い、最後は各自、自由に題材を決め、実際にマシニングを使って加工を行うという演習までを行い、昨年の研修は終了した。

写真2 研修課題のモデリングとCAMデータ作成を行っている様子

 

支援の効果と今後の同社の取り組み

前述したように、同社が扱う加工品のほとんどは、チタン合金やインコネルといった耐熱合金であり、こうした素材の切削加工は、単にロックウェル硬度が高いから加工条件をどうするといった対処だけでは済まない。

 

「ねばい」ということでその切削抵抗は上がり、素材の熱伝導性から切削点や素材にこもる熱も考慮しなくてはいけない。

 

こうした特殊な切削性に対応していくためには、金属・非鉄金属に対する正しい知識や、切削メカニズム、工作機械などに関する幅広い知識が必要になる。

 

筆者は、今年度も新たなメンバーと研修プログラムで構成される講師を担当させていただくにあたり、単にCAD/CAMの操作だけではなく、包括的に同社の技術者の底上げにつながるサポートをしたいと考えている。

 

高度な成長分野を支える同社において、その基盤となる技術者を、独自の方針で育成を図り、また自社の持つ加工ツールを最大限に活かし、最善の効率化・高品質化を図る同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

有限会社ヤマヤス工業のコンサルティング事例【後編】(2017年2月号掲載)

 

先月号に引き続き、有限会社ヤマヤス工業(愛知県稲沢市  TEL 0587-32-3587 以下、「ヤマヤス工業」)における、金属切削加工業界への新規参入の取り組みを紹介する。

 

最近の金属加工業界は、下記の要因などにより、従来と比べ益々厳しくなっている。

  • エンドユーザーからの要求品質の高まり
  • 国内外含めた過度な価格競争
  • 総じて技術水準が上がり、難易度の高い加工品が増加

 

これが全てではないが、いわゆる生産管理用語でいうところの、QCDが強まっているということに他ならない。まさに新規参入を図る同社にとっては、いきなり高いハードルが立ちはだかっている。

 

コンサルティング前に抱えていた課題

ヤマヤス工業にとって大きな課題であったことは、①販路開拓のきっかけがない、②具体的な引き合い案件がなく技術者教育における実践の場が得られないことであった。

 

特に、技術者育成については、「知識」の習得と、「技能」のトレーニングの2つが必要となるが、基礎知識の習得は筆者からの教育により進めることができても、技能のトレーニングについては、今後受注していく加工案件を想定したものが、本来は望ましい。

 

しかしヤマヤス工業には、まだ具体的な加工案件も無かったため、何を実践し技能の訓練を積めばよいかわからなかった。

 

筆者のネットワークを活用し、企業連携により解決

そこで、筆者のネットワークを活用し、①技術者教育、②販路開拓、それぞれについて対応していくことにした。

 

技術者習得については、以前本連載に登場したユーアイ精機株式会社(以下、「ユーアイ精機」)と連携し、ヤマヤス工業の担当者がプレス金型の設計から加工までについて学ぶ。

また、販路開拓については、これも以前登場した株式会社プロイスト(以下、「プロイスト」)との連携により、ヤマヤス工業が導入した5軸加工を活かせる仕事の受注獲得を図る。

 

これについては、それぞれの会社にメリットがなければいけない。その点も含め、具体的な取り組み内容について見ていこう。

 

ユーアイ精機(株)との連携

以前紹介した通りユーアイ精機は、プレス金型の製作だけでなく、試作板金から単品部品加工なども請け負う幅広い対応を行う金型メーカーである。

 

これは今後、5軸マシニング(以下、5軸MC)を活かし、幅広く金属加工を受注していこうとするヤマヤス工業にとって、まさに良いお手本となる。

 

そこで、これまでプリント基板の穴あけ加工をメインに行なってきたヤマヤス工業であるが、今後短期間で金属加工を事業化させるため、担当者である佐古氏を1年間ユーアイ精機に出向させることにした。

 

またその出向と共に、ヤマヤス工業が導入した5軸MCは、同じく1年間、ユーアイ精機の工場に設置することとし、佐古氏と共にお世話になることになった。

 

ユーアイ精機(株)にとって課題となっていたことは、金型製作における設計担当者を計画的に育成することであった。

 

今回、ヤマヤス工業が3次元CAD/CAMを活用した5軸加工を進めていくにあたり、担当者の佐古氏の教育計画が必要になる。

そこで、3次元CAD/CAMの操作の習得をはじめ、ユーアイ精機の工場で仕事をするための金型設計ノウハウの習得などについて、一連の教育内容を体系化し、今後ユーアイ精機の社内でも使える教育資料としてまとめることにした。

 

これにより、今後ユーアイ精機としては、3次元設計ができる担当者を計画的に育成していく教育カリキュラムを作ることができる。

また、ヤマヤス工業としても、今後開拓する受注案件として、受け取った図面の加工だけでなく、金型及びその構成部品の加工について、設計から着手することで、請け負う仕事に付加価値を与えることができる。

 

この取り組みについて筆者も、佐古氏への金型設計の指導と、金型製作業務に適した作業要領書の作成についてサポートを行った。

 

金型製作の業務は、ルーチンワークではなく応用力が問われるため、作業の標準化も必要だが、KYT(危険予知訓練)に近いトレーニングが必要となる。

 

例えば、金型設計やその機械加工などにおいて、その腕の良し悪しは、どれだけ加工後に発生する諸問題を予測できるか、またその対処の引き出しをどれだけ持っているかで決まってくる。

 

そこで今回、ヤマヤス工業の佐古氏に指導した内容については、①正しい手順とそのやり方、②間違ったやり方、③起こりうる不具合・問題点の3つの切り口で要領書をまとめた。

 

例えば、マシニング加工におけるワークの段取り作業については、正しい手順、よくある失敗例までを指導する。さらにその失敗した段取りから金型におけるどのような不具合影響が起こるかを、まずは佐古氏自らが考える。そしてその事象の裏づけとなる知識まで指導を受け、それをまとめる。

写真1 ユーアイ精機の今本氏から指導を受ける佐古氏

 

出来上がった要領書は、ユーアイ精機にとっても財産となり、このWin-Winの関係こそが今回の連携の最大の目的であった。

 

(株)プロイストとの連携

次に、ヤマヤス工業とプロイストとの連携についてである。

プロイストは航空機部品などの仕事を請け負っていることもあり、5軸加工機が必要な受注案件を検討していた。そこで今回、筆者のネットワークを通じ、2社での共同受注を進めていくことにした。

 

この取り組みにより、プロイストは協力会社のリソースとして5軸加工を営業ツールとしていくことができ、またヤマヤス工業は5軸加工を必要とする受注案件に対応することで、例えば同時5軸加工を自社技術として蓄積していくきっかけにつながる。

写真2 同時5軸のサンプル加工データを作成している様子

 

また、プロイストは金型メーカーでありながら、鉄系材料やアルミなどの非鉄金属など、さまざまな材料の加工に対応しており、ヤマヤス工業はその加工ノウハウにも触れる絶好の機会である。

 

昨今、国内の金属加工業界においては、極めて短納期の対応に加えて、発注側企業の負担低減につながる、材料調達から加工、後処理までの多工程を全て請け負う、いわゆるワンストップ受注も求められている。

 

もちろんプロイストもこうした受注方法を進めている中で、ヤマヤス工業との連携により、より技術的付加価値の高い受注活動を進めていくことができる。このWin-Winの関係についても、まさに今回の連携の目的である。

 

ヤマヤス工業の今後の取り組み

今回3社の連携について取り上げたが、今後は筆者のネットワークを通じて、さらに連携する企業の数を拡大していく計画である。そこに必要とされるのは、個々の企業に不足しているリソースの相互補完であり、そこにWin-Winの関係が生まれる。

 

逆に頼るだけの依存性の高い関係を求める企業が参加することは、その関係崩壊になりかねない。そうした意味で、まず単工程としてより高い技術的付加価値を得ていくため、ヤマヤス工業は大学との連携により、同業他社よりも一歩さらに進んだ切削加工技術にチャレンジしている。

 

こうした様々な連携活動により、成熟の進んだ金属加工業界での早期の成功を目指すヤマヤス工業に、筆者は大きな期待をしている。