金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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株式会社 建和のコンサルティング事例(2018年11月号掲載)

本号で紹介プレスメーカーは、以前登場した株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)である。同社は、自動車部品において60tプレスから300tまでのプレス量産加工を行い、最新のサーボプレスも有効に活用している。

 

同社で発生している問題とその発生原因

440Mpaから980Mpaといったハイテン材を扱う同社では、特にショット数の多い順送型などにおいて、メンテナンス頻度が従来よりも多く発生しているという問題が生じている。

図1 破損したパンチの事例

 

特に、社内で設計製作した金型よりも、協力メーカーの金型メーカーに設計製作を依頼した金型に多く問題が発生していた。

 

その原因の一つとして、プレスメーカーにて1万、10万ショット以上打った後の金型の状態を、金型メーカーが詳細に把握できておらず、必要な強度で金型を設計できていないためだと筆者は考えている。

 

金型メーカーでは、どこまでの強度の構造を持つ金型を設計すればよいか、どれだけの強度の金型材料を用いればよいか、考慮することが難しくなっていると考えられる。

 

また昨今は、金型にかけられる予算が限られており、厳しいコストで金型製作をしなくてはならないため、金型メーカーとしても過剰な品質の設計は避けたいところである。

 

とはいえ、金型メーカーの力量が劣ってきたとか低下しているということではなく、590Mpaを超えるハイテン材の順送プレスなど、大ロットのプレス加工において、未知なることがまだまだ多く、金型メーカーとしても情報を蓄えきれていないのが実情なのだと筆者は考えている。

 

具体的な問題事例

同社で発生している金型破損・故障の多くは、①応力集中・座屈、②金型材料の選定、に起因している。

 

例えば、応力集中を起因とする破損例として、抜きや曲げのパンチに多く発生している。

 

応力集中とは、パンチなどにある凹形状部において、ピン角やごく小さな凹R形状があると、プレス加工時にかかる負荷により、パンチにかかってくる荷重が分散されず、そのピン角部や小さなR部に集中して負荷がかかってくる現象である。

 

これにより、強度計算上、折れない太さ・長さのパンチであっても、応力集中がかかってくる部位で破損してしまう確率が非常に高くなってしまう。

 

こういった形状を持つパンチは、協力メーカーで製作された金型に多かった。この傾向は現場経験のある筆者もよく理解できるが、角部にわざわざ大きな凹Rをつけるためには、エクエアエンドミル加工にくわえ、ボールエンドミル加工も追加する手間が発生する。もしくは大きなR形状を持つラジアスエンドミルを使わなくてならず、加工形状によっては使えない場合も発生する。

さらに、せっかく5Rなど応力集中を緩和するための適切な大きさを持つ凹R部を、ボールエンドミルを使って加工しても、先行して加工しているスクエアエンドミルとの境界部に微小なピン角が残っているため、そこから破損しているという事例もみられた。

図2 ボールエンドミルとスクエアエンドミルとの境界部

 

またせっかくボールエンドミルにより、大きな凹R形状が加工されていても、その切削加工面が粗いと、その粗い面の凹凸が微小な凹形状となってしまい、そこへの応力集中によって破損が発生することもある。

 

もう一つ、②の金型材料の選定による故障も発生していた。

 

例えば、抜き加工を行う金型において、パンチを保持するパンチプレートの材料について、安価なSS400を使って製作する金型メーカーは多いが、1万ショットを超える量産に使った金型をメンテナンスのため分解すると、パンチを保持するインロー部がグラグラになってしまった状態をよく見かける。

 

これについては、ハイテン材ではない普通材や、薄板の小ロット生産であれば問題ないかもしれないが、ハイテン材や厚板の順送プレス加工においては、最低でもS50Cや焼入れ処理した硬いプレートを使わないと、前述したようなグラグラな、きちんと保持できない状態になってしまい、抜き加工時に発生する衝撃により一気にパンチの摩耗・破損が進んでしまう。

 

パンチの下にあるバッキングプレートに焼入れが入っておらず、やはりSS400が使われている金型も多く見かけるが、ハイテン材をプレスする金型においては、SK105を焼入れしたプレートを使うか、パンチの下に焼入れ処理した入れ子プレートを入れるなどの対応をとりたいところである。

 

こうしたハイテン材などの難加工材を扱ううえでの諸問題のデータベースは、今現在、金型メーカーよりもプレスメーカーの方に多く蓄えられており、プレスメーカーにとってこれは大きな財産であると言える。

 

プロジェクトの立ち上げとコンサルティングの取り組み内容

そこで、代表取締役である山本道典氏は「壊れない金型づくり」をテーマに、プロジェクトとして立ち上げ、筆者と共に、自社で扱う金型を根本的に見直していく取り組みを行った。

 

具体的な取り組みステップは、次のとおりである。

  1. 基礎学習
  2. 実践応用

 

まずは、設計と製造の主要スタッフが、金型に要求される強度や、金型が壊れるメカニズムなどの基礎知識を持つための研修を行うことから始めた。

 

例えば、金型で使われる主要パーツの強度はどのように計算するべきか、金型材料の特性の違いはどのようなことがあるのかなどを学習した。

 

実践応用のステップでは、実際に破損した金型やプレス製品を事例として取り上げ、学習した基礎知識と照らし合わせ、そもそも必要であった金型要件からどのようなギャップがあったのかという視点から原因を調査した。

 

とかく金型修理については、長時間プレス生産を止めることができないことから、早急な応急処置対策を取ることが多くなるが、本来あるべき金型構造・金型強度とのギャップ分析から金型改修を行うべきである。

 

そのためには、金型設計者だけではなく、保全に関わる者も、金型構造・金型強度に関する基礎知識を持っておくべきと筆者は考えている。

 

コンサルティングの効果と同社の今後の取り組み

今回のプロジェクトにより、同社の金型改修は、応急対策・恒久対策を切り分け、計画的に進めていく体制を作ることができ、今現在、筆者と共に着手している。

 

今後の同社の取り組みとして、前回登場の際、書かせていただいたように、以前はアウトソースしていた金型製作を3年前より内製化できる体制を構築しており、解析技術や全工程の3次元データ活用、自動スケジューラーなど、積極的に最新技術を導入している。

 

その最新技術の進化形である次なる取り組みとして、3次元設計の自動化・高効率化や、プレス解析の最適化技術などの活用も、大学やITベンダとも連携しながら進めている。

 

最新技術の導入に加え、プレスメーカーとして日々蓄えている実績・経験のビックデータを、ハイテン材プレス金型の質向上という形で新たな強みとし受注競争力UPを図っている。

 

ソフトウェアの最新技術のみならず、技術者の基礎・応用能力UPとの両面で、同業他社との競争力向上を図っている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 スズキプレス金型のコンサルティング事例(2018年6月号掲載)

 

本号で紹介するプレス金型メーカーは、以前にも登場したことのあるスズキプレス金型である(愛知県愛西市 TEL0567-25-6900)。同社は、自動車のシート部品などの絞り型などを手掛けるプレス金型メーカーであり、創業から64年に渡る長い歴史がある。

 

同社が今取り組んでいること

同社は、昨年から金型構造設計の3次元化に取り組んでいる。それに伴い、以前から外注で対応していた解析業務の内製化にも取り組んでいる。

 

今回同社は、自社で使用する3次元CADとしてシマトロンを導入している。2名のオペレーターに導入教育を受けさせ、6ヶ月間の実習期間を経て、今年から徐々に設計実務での活用をはじめている。

図1 シマトロンを用いた金型設計の様子

 

同社が選定したシマトロンは、パラメトリックという機能に特徴を持つ3次元CADであり、その他プレス金型設計の省力化をサポートする様々な機能が搭載されている。

 

本号では同社の設計3次元化の導入事例をとりあげ、プレス金型メーカーが自社の金型製作に応じた3次元CADの選定について、どのような視点で選ぶべきかを見ていきたいと思う。

 

プレス金型設計で使われている3次元CADの種類

金型の構造設計に用いる3次元CADは大別して2つの種類がある。①ヒストリー型と②ノンヒストリー型と呼ばれる方式である。

 

ヒストリー型のCADは、パラメトリック方式とも呼ばれ、設計していく過程が履歴として記録される。

 

これにより、はじめは大雑把に設計し、徐々に履歴の中にある細部の寸法や位置を微調整していくという設計手法をとる。

 

これによるメリットは、まずはイメージから形にしていくといった迅速な設計ができ、モデルを作り終わった後でも自由に編集ができ、パーツや構造を微調整し、のちに使いまわすといったリピート設計にも寄与する点である。

 

プレス金型設計で使われている代表的なヒストリー型3次元CADとしては、CATIAやNX、SolidWorks、シマトロンなどがある。

一方、ノンヒストリー型は、ヒストリー型の逆のような機能を持ち、設計操作の履歴を持たない。そのため、部品のサイズや位置を後から寸法要素で動かす操作はせず、ダイレクトに寸法を直接指定しながら部品要素をモデリングする。

 

これにより、部品を構成する要素間の依存関係を意識することなく、自由な操作でサクサクとモデリングを進めることができる。

 

したがって、同じような形状を繰り返しリピート設計する金型よりも、新しい構造や形状の金型を新たに設計する際には、軽快に作業を進めることができる。

 

プレス金型メーカーによく用いられている代表的なノンヒストリー型3次元CADとして、VisiやSpeedyMILLnextなどがある。

 

同社は今回導入したシマトロンに先駆け、以前からVisiを使っていたが、主に現場で用いるCAMデータ作成用として使っていた。

 

プレス金型における3次元CADの選び方

3次元設計をはじめる際のハードルとして、細かく表現する必要のない箇所まで詳細にモデリングする必要があり、そのため作業負担が重たくなるということがよく指摘される。

 

例えば、構造部に配置される市販部品などが例に挙げられる。そこでまずは、市販部品などの標準部品を簡単に呼び出して配置ができるかが最低限求められる機能となる。

 

また最近では、部品配置を行うと共に、ザグリ穴やタップ、リーマ穴などの機械加工定義まで合わせて付与するフィーチャー設計を行うことも一般的な作業手順になっている。

 

前述した各3次元CADについては、ヒストリー型、ノンヒストリー型問わず、フィーチャー設計が出来るシステムがある。

 

ではどのような視点で、3次元CADを選ぶべきか、それは自社が製作する金型が、ヒストリー型、ノンヒストリー型、どちらの長所が活かせるかで判断すべきである。

 

例えば、金型を用いて量産する製品が大抵決まっており、寸法は微妙に変わるが形状は大きく変わらないといった場合、製作する金型の構造やレイアウトは大きく変わらないとする。

 

その場合、部品サイズや配置、数量などを編集していく作業がメインになる。こうした場合は、リピート設計に強いヒストリー型の3次元CADが強い。

 

逆に、全く新しい形状の製品の金型を設計する場合、例えば、以前は5工程で成形していたものが、3工程になったり7工程に増えたりといったように工程設計から変更がかかり、個々の金型構造も全く新しい構造になることがある。

 

こうした構造設計を行う場合、以前作った部品ユニットを流用したり、部品同士の位置関係の計算式を流用することはかえって手間がかかり、設計工数が増加してしまうことも考えられる。

 

そのため、自社で製作する金型について、新しいパターンの構造をイチから設計していくことが多いといった金型メーカーは、ノンヒストリー型の3次元CADの方が適していると考えられる。

 

同社は、自動車のシート部品の金型を主に製作しているが、強みである絞り加工技術を活かした類似形状の金型を製作していることが多い。

図2 同社の金型で作られた製品

 

これであれば、以前導入したノンヒストリー型のVisiよりも、ヒストリー型のシマトロンの方が同社には適しており、今回はスムースに設計での活用が進んでいると思われる。

 

同社のコンサルティング前の課題

このように設計の3次元化を進めている同社であるが、会社組織としてはかつての同社の主力であったベテラン技術者の高齢化が進み、企業の新陳代謝促進が急務となっている。

 

そもそも金型製造は、設計や機械加工、組み立て、トライといったいくつもの専門職から成り立っているが、それぞれの工程において一人前の技術を得るには通常何年もかかる。

 

とりわけ設計職においては、製造現場のノウハウも知らなければ、適正品質・コストでの金型設計ができないため、一般的には一通り現場の仕事を経験してから入ることが多い。

 

同社ではこれまで、このようなジョブローテーションの仕組みがなく、主に社員の入退社をきっかけとした不定期なタイミングでの業務異動が多かった。

 

コンサルティングの内容

そこで同社では、個々の技術者が長期な視点でキャリア計画を持てるようにするため、入社から10年後までに一通り経験する仕事、またその後、自ら希望する業務について申請できるなど、中長期のキャリアプラン制度ともいうべき仕組みを、筆者と共に考案した。

 

これにより、金型技術者として自分の長所を活かしたり、出来る限り希望する業務を担当することについて、今後は会社の制度・仕組みとしてフォローしていくことができる。

 

今後の同社の狙い

今年の春、同社では新たに高校生の新卒社員を採用し、さっそく新たなジョブローテーションの制度を活用して本人のポテンシャルを引き出すと共に、長期的な視点で現代的な金型技術者を目指してもらうスタートをきっている。

 

同社では今回のコンサルティングに加え、技術面などの評価制度も整備しており、ますます難易度が上がっている自動車部品に対応できる技術者の育成・底上げを図ると共に、企業の新陳代謝を図っている。

 

金型製造の3次元化により、これまでのベテラン技術(アナログ)とデジタル技術の融合を急速に進める同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2018年5月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、以前登場した溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。

 

同社は、図面で書き表せないような抽象的な形状の製品であっても柔軟な対応ができ、また同業他社が受注を断るような短納期の依頼であっても対応ができるといった技術力に強みを持つ。

 

そのような同社がここ最近力を入れているのが、フライス加工を中心とする機械加工である。同社の扱う製品は、CO2アーク溶接で組み立てた後、他部品と組み合わせるなどの用途のため、フライス加工やキリ穴、ねじ穴などを追加工する。

 

これまで同社の機械加工は、そのほとんどが外注対応であったが、従来を超える短納期対応や品質確保を目指すため、2年ほど前からその内製化を強化している。

 

そのためのフライス加工設備の充実を進めているが、その導入設備が溶接製缶業界では非常にユニークであるため、本号ではそのあたりの戦略などについて紹介をしていきたいと思う。

 

同社の機械加工の強み

他の機械加工メーカーと比較した同社の強みとして、前工程から一貫して社内対応できる点がある。

 

溶接製缶メーカーから見ると、フライス加工は全く異なるノウハウであるため、簡単な追加工程度であれば自社で行うが、大きな製品やある程度の精度を要する製品のフライス加工まで自社対応しているメーカーは少ない。

 

また、機械加工メーカーから見ると、溶接作業そのものは技能資格もありOFF-JTなどで習得することも可能であるが、仮付けによる組み立てから、熱変形・収縮まで考慮した本溶接までといった作業は、経験に裏付けされた実績がなければ一朝一夕にできる作業ではない。

 

こうした事情から多くの中小メーカーでは、両方を高いレベルで行っている企業は少ない。

 

同社は、2年前のマシニング加工技術に長けた小坂 伊佐三氏の入社をきっかけに、急速にフライス加工の生産体制を整備、拡大している。

 

また、溶接製缶業での同社の強みである、5台のレーザー加工設備をフライスの前工程に活かし、特に、溶断後にフライス加工を行うような製品については、同業他社には真似できない短納期化と低コストを実現している。

 

同社ならではの特殊機械の導入

そもそも溶接製缶品のフライス加工には、次のような難しさがある。

  • 段取り:6面フライスした鋼材のように、溶接製缶品にはバイスでしっかり挟める製品が少ない。溶接製缶品は10ミリ前後の板を箱状に組み合わせた筐体であるため、油圧バイスなどの段取りが不可能であり、しかも、いびつな形状の製品が多いため、加工そのものよりも段取りや冶具製作の方が難しい。
  • 加工ビビリ:板を張り合わせた製品が多いためワーク剛性が弱く、加工ビビリが起こりやすい。また前述したように、いびつな形状が多いため、しっかりとクランプできない場合にはやはり加工ビビリが起こりやすい。
  • 突き出しの長い工具:いびつな製品のフライス加工は、ワーク上面から深く入りくんだ場所への加工を余儀なくされることが多く、細く突き出しの長い工具で加工することも多い。突き出しの長い工具のフライス削りは、工具たわみや振れなどが起こりやすく、加工精度や面粗さを確保することが難しい。

 

こうした難しさがある溶接製缶品のフライス加工であるが、被削材の硬さとしては、そもそも炭素の多い鋼材は溶接自体が厳しくなるため、業界として硬い高炭素鋼はほとんど使われてこなかった。

しかし昨今は、硬い高マンガン鋼も使われることもあり、切削抵抗の高さという点においても、従来よりも難しさは増している。

 

溶接製缶品のフライス加工の難しさに対応した機械選び

こうした加工上の背景から同社は、溶接製缶を扱う同業他社では持っていない、ユニークな機械を導入している。

 

元々、NCフライス盤は持っていた同社であるが、自動機としてまず、一般的な立形マシニングセンターを導入した。そして次に導入したのが、横幅6,050ミリの極めて横長なテーブルを持つイワシタ社製の長尺NC加工機である。

図1 同社が導入した長尺NC加工機

この設備は、同社が得意としている長い角パイプ材の溶接品への対応に強く、またニッチなテーブルサイズを持つため、ピンポイントでこの機械でしか加工できない加工需要も多くあるはずである。

 

また今年新たに導入したのが、ヤマザキマザック社の5軸マシニングである。 同社が扱う製品に多いいびつな加工品に対応しやすく、フレキシブルなクランプのやりやすさ、多方面からの切削・穴加工など、溶接製缶品の加工でこの機械を使えるメリットは非常に大きい。

図2 同社が今年導入した5軸マシニングセンター

 

同社は、こうした同業他社や協力メーカーにはない設備を導入することで、短納期、難加工品への対応で差別化を図り、競争力アップを図っている。

 

同社のコンサルティング前の課題

こうした取り組みを行う同社であるが、経営上の課題として、こうした新事業の採算性や、人事面での評価・育成をどのように進めるべきかよくわからないといった悩みがあった。

 

同社はこれまで溶接製缶一本で事業を行ってきており、溶接技術であれば、事業性や従業員の技能も評価ができるが、これまで自社で経験がない機械加工については、業界相場の利益率や、技術者の基準となる技術とそれに伴う給与相場などがわからなかったため、事業拡大当初はこのまま進めていって良いものか不安をぬぐえなかった。

 

同社のコンサルティング内容

そこで同社のコンサルティングを行っている筆者は、①事業の採算性評価、②従業員の評価・育成、③新事業のPR戦略について、アドバイスを行った。

 

  • 事業の採算性評価:部門別で損益を評価する案をアドバイスした。機械加工で発生する主な変動費は、材料費や治具費、消耗工具などがあり、固定費は人件費や電力費、ツールホルダーなどの工具費がある。これらを月次で管理し、事業単体での採算性を評価する。
  • 従業員の評価・育成:要素技術ごとに分解した項目を使ってスキルマップ表を作るアドバイスをした。また、1年後、3年後、5年後などを想定した中期スキルマップ表を合わせて作ることで、教育計画を作ることができる。
  • 新事業のPR戦略:同社のユニークな機械設備を外部に発信する方法として、動画によるわかりやすいPRを行うアドバイスをした。なお、同社のホームページは筆者の事務所がサポートさせていただいている。

 

今後の同社の取り組み

同社の経営上の課題として、溶接技術者の新陳代謝の促進がある。同社の強みである、柔軟性の高い溶接技術は、個人技能への依存が大きく、一人前の技術者に習熟するまでに時間がかかる。

 

そうした事情からこれまで経験者を中途採用することが多かった同社であるが、本年度から初めて工業高校を卒業した新卒者(中根 聖氏)を採用する。

 

代表取締役である新美 剛一氏から高い期待をかけられている中根 聖氏であるが、素質があるとはいえ一人前になるには、長い年月をかけ積み重ねた実績が必要になるのも、溶接技術の大変なところであり、面白いところでもある。

 

大正15年からはじまった同社の歴史に、新たな流れを作ろうと取り組む同社に、筆者は大きな期待をしている。

株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、以前にも登場していただいた株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績があり、この分野の製品に多い、薄肉でありながら高い寸法精度を要するといった加工品を扱っており、加工技術については工具・加工法・材料・温度管理・品管技術など、様々な方面からの知見を持っている。

 

また、研究開発への意欲も高く、これまで経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の認定も経験している。

 

昨年に引き続き、筆者は同社の技術者研修を担当させていただいた。前回は、HSMWorksを使った5名による3次元加工の研修であったが、今回はHSMWorksを使った5軸加工の若手技術者研修を行った。

 

同社の5軸加工

同社は、5軸加工が可能な工作機械として、DMG森精機のDMU50や、MAZAKのINTEGREX300-Ⅳといったマシンを設備しており、航空機部品の加工には欠かせない存在となっている。

 

同社が行っている5軸加工は、いわゆる「割り出し位置決め5軸加工(以下、割り出し5軸加工)」と呼ばれるものである。

 

一般的に5軸加工には、「割り出し5軸加工」と「同時5軸加工」と呼ばれるものがあり、どちらもX・Y・Zの3軸に加え、A・B・Cのうちいずれか2つの軸を加え、真上からしか加工できない3軸加工から、自由な角度で側面方向に傾斜・回転させて加工するようなものを言う。

 

その5軸加工の中で、「同時5軸加工」は、XYZの3軸だけでなく4軸目、5軸目まで動かしながら加工するものを指す。これにより、よく5軸加工でとりあげられるインペラの羽根部の加工など、工具中心軸の角度を可変しながら加工しなければならないような形状においても対応が可能になる。

 

ただし、マシニングセンターなど工作機械を動かすNCプログラムについては、工具軌跡があまりにも複雑になるため、5軸加工が可能なCAD/CAMに軌跡を計算させることになる。人間が直接手入力でプログラムを組むことはほとんどない。

 

逆に、「割り出し5軸加工」は、工作機械の4軸目、5軸目、例えば、立形トラニオンタイプであれば、旋回テーブル(C軸)とチルトテーブル(A軸)といった組み合わせがあるが、C軸とA軸の動きは止めたうえで、XYZの3軸を動かす3次元加工を行ったり、穴あけやポケット加工などの2次元加工を行ったりする。

 

この使い分けとして、「同時5軸加工」は非常に複雑な形状の加工ができる反面、最大5つの軸を同時に動かすため、それぞれの軸の同期・タイミングが非常にシビアに要求され、工具軸が自由に動きながらその工具先端は位置精度を再現しなくてはならないため、どうしても加工精度の面では不利になる。

 

反面、「割り出し5軸加工」は、4軸目、5軸目を固定したまま、3軸加工を行うため、「同時5軸加工」に比べると、加工の自由度は減り、ホルダーの衝突を回避させながら最も工具突き出し長さが短くできる加工軌跡を探してくれるという利便性は出せなくなるが、加工精度を出すという点では、圧倒的に有利になる。

 

筆者も、自動車部品のプラスチック金型において、大型の傾斜コアやスライドコアの加工で、「割り出し5軸加工」を使った経験があるが、旋回テーブルとチルトテーブルを回転させ、多方向からの切削加工を行う際、球状の測定ゲージを使い、それぞれの方向での加工原点を測定し直すことで、10~20ミクロン単位の加工精度に対応できた経験がある。

 

まさしく同社の製品は、10ミクロン、製品によってはそれ以下の精度が要求される部品もあり、5軸加工については「割り出し5軸加工」が最適だと思われる。

 

使用しているCAM、HSMWorksについては、加工プロセスを定義(ジョブの定義)していく中で、常に途中でのワークの状態を認識させながら、加工パスを作成していけるため、色々な方面から5軸加工を行っても、加工パスを重複させずにデータ作成を行うことができる。まさしく同社の加工には適している。

 

5軸加工研修での課題

このように「割り出し5軸加工」は、真上(Z方向)からだけでなく、多方面からの工具軸の加工を高精度に行える反面、「同時5軸加工」とは違い、どの方向から加工を入れるかCAMオペレーターである人間が自分で考えなくてはならない。

 

また、同社が扱う薄肉形状の加工品は、途中プロセスにおいて、どこを残し、どこを先に削っていくかの判断が難しく、単に削れればよいということではなく、ワーク剛性が弱くなってくることでのビビリ発生などを考慮し、削り残り量のバランスをとりながら進めなくてはならない。

 

今回の研修課題は、CAMの操作よりもむしろ、加工順序を工夫しなければならないといった加工形状を採用している。

 

また、今回の5軸加工研修では、同社のDMU50を使った実加工までの実践を課題としているが、これはCAMデータを作成するだけでは、最も難しいテーマの一つである、期限内に要求品質を満たしつつ加工を終わらせるといった技術が身につかないためである。

 

加工時間を短くするためには、工具の送り速度を上げ、仕上げの送りピッチを粗くすればいい。荒取りについても、大きな工具を使い、送り速度を上げれば時間を短くすることは可能だ。

 

しかし今回の研修でも起こったが、送り速度を上げると加工ビビリが発生するし、送りピッチを粗くすれば仕上がり面も汚くなる。

5軸加工はそもそも高い剛性のワーククランプができない場合が多く、大きな荒取り工具を使用すると加工ビビリが発生したり、ひどければクランプが外れてしまう。

 

また、工具の突き出し長さをできるだけ短くするため、細かく多方面から加工を入れるようCAMデータを定義したが、やり過ぎるとCAMデータ作成時間がどんどん伸びる。確認しなければならない項目も増え、ミスのリスクも高くなる。

 

今回受講した入社2年目の小木曽 圭氏は、限られたCAMデータの作成時間と、DMU50を使った加工時間の制約に悩み苦しみながら課題を進めていった。

図1 CAM操作実習を行っている様子

図2 5軸加工機の操作実習を行っている様子

 

今回、小木曽氏の5軸加工の研修日数は、のべ5日である(日あたり7時間)。

 

彼はその日数の中で、課題形状の3DモデリングからCAMデータの作成、そのデータを使った5軸加工機の実加工まで期限内で見事課題をクリアすることができた。

 

まとめ

今回、若手社員の5軸研修と並行してベテラン社員の研修も行ったが、カリキュラムの一部として、HSMWorksと同じCAMエンジンを持つFUSION360を使ったモデリングとCAMデータ作成演習を行った。

 

クラウド型の3次元CAD/CAMであるFUSION360は、同社が扱うSOLIDWORKSと同じパラメトリック式のCADモデリングができ、割り出し5軸加工のデータ作成も可能であり、各種工作機械に対応したポスト処理もできる。

 

年間使用料4万円以下で使用できるCADとして注目されているが、同社においては慣れ親しんできたHSMWorksを扱う5軸エンジニアを増やすことに寄与すると思われる。

 

筆者はこれまで2年、同社をサポートさせていただいたが、高度なエンジニアを増やすことへの教育投資を惜しまない同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社エスケイモールドのコンサルティング事例(2017年10月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、株式会社エスケイモールド(愛知県豊橋市 TEL0532-35-2007)である。同社は、PPやナイロン系の樹脂材料を成形素材とするモールド金型を製造するメーカーである。

 

筆者が同社をサポートすることになったきっかけは、金融機関から専門家派遣制度を活用した支援依頼があったためである。

 

同社の強み

支援内容としては、同社が自社を紹介するホームページを製作するにあたり、そのコンテンツとなるPRの内容について、自社だけでは相対的な特徴を洗い出すことが難しく、そのサポートをお願いしたいとのことであった。

 

金融機関の支援担当者と共に訪問し、代表取締役である鈴木 秀男氏からヒアリングを行ったところ、筆者は同社の事業について、次のような特徴を挙げた。

図1 構造設計・3Dモデリングを行っている様子

図2 同社の機械加工現場の様子

 

  1. 構造部・意匠面のモデリング、全てを社内設計できる体制が整っている。
  2. 新規の金型製作から納入後の修理・メンテナンスまで、全て一括で対応している。
  3. ワイヤー放電・型彫り放電、マシニング加工など、機械加工を全て内製化している。

 

これらの特徴から見出すことのできる同社の強みは、①短納期対応と②小回りの良さであろう。

 

これらを、同社の強みとして挙げたのは、モールド金型メーカーを筆者が経営診断させていただく際、本来モールド金型メーカーがコア技術とするべき業務を、ここ最近アウトソースしている傾向にあると感じたためである。

 

例えば、次のような傾向である。

  • 金型構造設計及び、キャビとコアの製品意匠面モデリング(パーティング面・勾配面のモデリングなど)を外注で対応し、CAMデータの作成から機械加工を社内で行う。
  • 機械加工の終わったキャビとコアの磨き作業を外注に依頼する。
  • 金型の組み付けは社内で行うが、トライ作業は客先にお任せする。

 

これらの傾向については、やはり年々短納期化する金型納期と、引き下げられる金型費への対応のためであると考えられる。

 

また、若手技術者の強みを活かせる分野として、CAMや機械加工といったマニュアル化・標準化しやすい作業を、今後もより内製化していく傾向になるものと思われる。

 

しかしながら、筆者のような中小企業診断士やいわゆる経営コンサルタント等は、SWOT分析などから、「強みを市場機会にぶつけ競争力の高い事業を行う」などと提案することが多いが、前述したように本来コア技術となるべき業務をアウトソースする金型メーカーについては、筆者も「強み」を洗い出すことに思わず悩んでしまうことも多い。

 

しかしながら、筆者が拠点とするここ中部地方では、まだまだ仕事量は飽和しており、どの金型メーカーも忙しく、受注についてはキャパオーバーとなっている。

 

そうしたなか、海外生産に主力を移しつつある金型メーカーも多くなってきており、今後の国内の技術・コストの競争力については、楽観視できないところもあると思われる。

 

同社の競争戦略

こうした業界事情の中、同社は同業他社との差別性を意識した戦略をとっている。

 

いかなる事業においても、企業が競争力を維持してために最も重要なこととして、「参入障壁」をいかに高くできるかだと考えている。

 

全くライバルが存在しない新しい事業というものは、このご時世なかなか無い。仮に、全く新たなプロダクト(商品)を開発できたとしても、インターネットなどによって情報が一瞬で行き渡るこの時代では、すぐに模倣品が現れ、コモディティ化してしまう。

 

ところが、金型製造という事業は、職人技術を要するために、各社これまで一定の事業領域を保ってビジネスを行ってくることが出来た。

 

それが皮肉にも、CAD/CAMや工作機械の進化により、一部の職人技術が機械システムに置き換わることで、限られた人にしか扱えない技術から、ソフトや機械を操作することで、誰にでも扱える技術に裾野が広がってきたという背景がある。

 

例えば、昨今の鏡面磨き加工がある。筆者も以前、高度ポリテクセンターにて鏡面磨きの研修を受講したことがあるが、受講生10名強の中で、最終課題である#8000の磨きの完了まで到達できた者はわずか4名ほどであった。

 

このように金型の鏡面磨きは、必要な体の動作を、一定のトレーニングにより時間をかけ段階的に習得していくものであり、やり方・方法を知識的に知ったところで、とたんに作業できるというものではない。

 

ところが、これを工作機械の加工で置き換えるとした場合、もちろんソフトや機械の操作、工具の特性・使い方など、覚えなくてはならないことは多岐に渡るが、人間がトレーニングをするといったものとは異なる技術の扱いになる。

 

一概には、どちらが覚えやすいか、覚えにくいかを明確に分けることは難しいが、前述した「参入障壁」という視点でみれば、習得に時間の掛かり、個人差が生まれやすいものほど、障壁は高いと言える。

 

また経営学で使われる用語に「経路依存性」というものがあり、これは過去に多くのさまざまな経験によって積み重ねられた技術や経験値は、他社から見ると複雑で、簡単には真似ができないといった強みを指す。これを模倣困難性と言う。

 

つまり金型業界で言えば、現時点の技術ではまだ機械に置き換えることができない人の技能や、多くの失敗・経験によって構築された金型ノウハウについては、同業他社に追従される可能性を低くできるということになる。

 

同社が内製化にこだわる、金型設計、金型の溶接補修などは、そうした経路依存性の高い技術だと言える。

 

また、他社が製作した金型についても、補修・メンテナンスを依頼されることが多く、こうした積み重ねが同社の設計において、さらなるノウハウの積み重ねとすることができる。

 

これにより、壊れない・トラブルを起こさない金型製作をより強化していくことができ、これが同社の模倣困難性をさらに高めていく。

 

今回、筆者は同社のホームページ製作をサポートするにあたり、金型を専門とするコンサルタントの目線から、中長期的な視点でこのような同社の競争力を見出すことができた。

 

同社の今後の取り組み

同社は、これまである程度決まった取引先から受注を請けてきたが、今後は事業の拡大と安定化のため、金融機関と協力した販路開拓にも取り組んでいく。

 

現在、中小企業に関わる支援策は、金融機関や公的機関を窓口に、多岐に渡って展開されているため、信用金庫など身近な金融機関などに適宜、課題を相談しながら、うまく活用することが経営の効率化にもつながる。

 

同社は事業拡大に伴い、設計対応力の強化を図るため、新たな技術者の採用に合わせてCADの拡充を検討しており、その際にはSolidWorksなどを活用した設計のオール3次元化も視野に入れている。

 

同社の強みである、長期間に渡り使用できる丈夫な金型を製作する設計ノウハウを、若手技術者に継承していくための仕組みづくりも今後必要になってくる。

 

人の持つ技術を最大限に活かした自社の競争力を高め、さらなる事業拡大を目指す同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 大起鉄工所のコンサルティング事例(2017年5月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、NC旋盤加工を主力事業にしている株式会社 大起鉄工所(愛知県豊川市 TEL0533-86-0374)である。同社は、鍛造や板成形加工されたプレス品の2次加工を主に行っており、それ以外にも様々な素材種類や用途の加工品を扱っている。

写真1 同社の扱うNC旋盤の一例

写真2 同社が扱っている加工品

 

同社の強み

同社の強みは、プレス加工された素材など、NC旋盤加工を行うにあたり、チャッキングや加工精度を出すことが難しく、多くの同業他社が受注を避けるような製品を多く扱っている点にある。

 

扱いが難しい理由として、次のような点がある。

  • 素材形状が歪(いびつ)であったり、薄肉であるため、チャッキングが難しい。
  • 要求品質として、加工歪みが極めて少ない状態で加工しなければいけない製品がある。
  • 上記①②の難易度でありながら、ロット生産であるため、不良を流出させない品質管理が必要であること。

 

同社はこのような、取り扱っている製品の特性による諸問題を、豊富な旋盤加工全般の知識と、川出社長の独自の発想によって解決し、それを自社の強み(競争力)としてきた。

 

筆者のコンサルティングを受ける前の課題

同社は先日公募のあった、平成28年度第2次補正予算「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」を申請するにあたり、どうすれば採択確率の高い申請を行うことができるかで悩んでいた。

前回の公募の際も、金融機関の手厚いサポートを受けながらも不採択になった経緯があるためだ。

 

そこで金融機関からの紹介により、後述する同社の事業拡大へのアドバイスの中で、同社の技術開発についても、筆者がサポートすることになった。

 

課題をどのような方策で改善したか

採択確率の高い申請書をつくるポイントは、次のような視点を盛り込むことである。

 

  1. 導入する機械設備は、生産性を上げるためではなく、生産性が上がる技術を開発するために使うというストーリーにすること。
  2. 開発する技術は、自社だけの課題を解決するためではなく、業界全体が抱える技術課題を解決する大きな使命を持っていること。

 

これらを、仮に技術がわからない方が読んだとしても、理解ができる文章にして申請書に書き込む必要がある。どうしてもこの作業が大きな負担と感じるため、ここ最近、その代筆をビジネスとしている事業者が増えているという実態もある。

 

川出社長は、外部の代筆事業者を頼ることなく、自社で申請書を書き上げることを決意したため、筆者は前述した申請上の重要ポイントをまとめていくサポートを行った。

 

具体的には、補助金を活用して導入する新型NC旋盤でしか出来ない、新たな加工技術の開発について、その個別課題と解決の方法を、川出社長と一緒に取りまとめていった。

 

今回、取り組もうとしているテーマは、自動車部品におけるハイテン材を使ったプレス部品の2次加工について、現在同社には、従来を超える強度のハイテン材を使用した部品の2次加工の引き合いが来ており、それに対応できる技術のための開発事業である。

 

対象となっている部品は、エンドユーザーから高い平面度が要求されているため、同社での旋盤加工の後、他メーカーで研削加工を行っている。

 

しかしながら、今後の生産工程では、従来を超える強度のハイテン材を使用しながら、旋盤加工後の研削工程を無くし、リードタイム短縮とコスト削減を図りたいというエンドユーザーの思惑がある。

そこで、高い旋盤加工の量産技術を持つ同社に、生産工程改善の相談が来ているのだが、現状の保有設備、加工技術では対応が不可能であった。

 

そこで同社が行っている、いくつかの独自の加工方法について、そのメカニズムを理論的な視点で掘り下げ、従来を超える高ハイテン材に活用できる、新たな加工技術に高度化させることを考えた。

 

例えば、筆者が加工現場を視察したり、川出社長からヒアリングを行ったところ、市販工具を特殊な方法に応用して切削加工を行っていたり、リーマ加工におけるバニシング効果を高める前加工に類似した、仕上げ切削プロセスなどを行っていた。

 

こうした技術は、これまで川出社長の創意工夫により構築されてきたものであったが、今回、専門書などに記載されている理論的な視点により、技術的な裏づけを明確にしたうえで、さらにそれを新型NC旋盤の機能を使って新たな技術として高度化させる。この開発の取り組みを、申請書に書き込んでいくことにした。

 

コンサルティングの効果

これまで筆者は、ものづくり補助金事業において20社を超える企業のサポートを行っており、全ての企業が採択されている。

 

その秘訣として、公募要領の審査項目にある「新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘)の革新的な開発となっているか」や「課題の解決方法が明確かつ妥当であり優位性が見込まれるか」などといった要件に対し、革新的で優位性のある開発を、業界全体の視野で俯瞰しながら企業と一緒になって考えている。

 

あとは、その開発が困難な理由や、どのように実現させるのか等を、わかりやすく記載していくことである。

 

逆に、不採択になった申請書を拝見させていただくと、新たに購入する機械設備の良さ・高機能性、またその機械を使って得られる生産性などを一生懸命説明する文章が多いが、機械設備を購入するだけで生産性が向上する内容の場合、同じ機械を購入する他の企業も同じメリットが得られてしまうため、これは機械そのものが革新的であっても、同業他社に対し優位性のある取り組みテーマとは言えない。

 

ところが高額な費用を支払って、代筆事業者を使っても、そういった記載内容も見受けられるため注意したいところである。

 

同社は今回のサポートにより、今後同社に必要になる技術について、新型機械を活かした高度で新規性のある開発テーマを考えることができた。

 

今後の同社の取り組み

川出社長の今後の取り組みとして、これまで培ってきた旋盤技術を、若手人材に継承していきたいと考えている。

同社に限らず、これまでの職人技術のように属人的な技術・技能は模倣が困難であり、それが参入障壁となり、競争力となる反面、事業拡大や技術承継の際には足かせになってしまう。

 

そこを打破し、効果的な若手人材の育成を行っていくためには、単なる作業手順書だけではなく、川出社長の頭の中にある思考プロセスを、知識と技能に分け、紐解きながら従業員に伝えていける仕組みが必要となる。

 

その仕組みを構築できれば、多品種小ロット生産や一品生産を行う加工現場に最も必要となる「応用力」を養っていくことができる。

 

今後、川出社長は採用計画と共に、技術者育成の仕組みを整え、エンドユーザーを支えるサプライヤー企業として何十年と続けていける「組織体制」を作り上げていく構想がある。

 

筆者は、そうした川出社長の取り組みに大きな期待をすると共に、同社のような実力ある地元企業の経営面・技術面のサポートを、金融機関等とも連携しながら行っていこうと思う。

 

 

株式会社 建和【後編】のコンサルティング事例(2017年9月号掲載)

 

先月号に引き続き、プレスメーカーである株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)が2年前から行っている金型製作内製化の取り組みについて紹介する。

 

同社の金型製作の特徴

金型製作を取り巻くツールは日々目覚ましい進化を続けており、同社はそうした最新設備や技術をどん欲に取り込み進めている点に特徴がある。具体的には、設計から機械加工、トライ業務といった全工程において、完全な3次元CAD/CAMの運用を実現しており、そのメリットを充分に活かしている。

 

3次元CAD/CAMを利用するメリットとして、①成形シュミレーションができる、②型構造設計時に機械加工情報を付与するフィーチャー設計ができる、③金型構造の強度計算が簡単にできる、などが挙げられる。

 

このうち同社は、自社設備であるサーボプレスと、最大20トンのダイクッションを利用した独自のプレス加工を確立するため、①の成形シュミレーション技術をうまく利用している。

 

同社の成形シュミレーション技術の特徴

同社が目指す、プレス工程最小化において、ダイクッションと成形シュミレーション技術はとても相性が良い。曲げや絞り加工の板押さえではコイルスプリングがよく使われるが、ダイクッションを利用することで、1トン単位で調整しながら、成形の挙動を色々と試すことができる。

 

中型や小型の製品を扱うことが多い同社のプレス製品において、できる限り絞り要素を減らし、曲げ加工に近い状態で成形することにこだわりがある。その結果、同社が設計する単発型は、「中パッド」と呼ばれる、成形品の外側ではなく、内側を高いクッション圧で押さえながら成形するといった構造が多い。

図1 中パッド構造の設計事例

 

その中で、スプリングバックをコントロールするため、市販書にも記載されている、①凹R部や凸R部を大きくしたり小さくするといった調整、②金型クリアランスを狭めてしごきを加える、などの金型形状による調整を行っている。

 

こうした金型形状やダイクッション圧の設定を何パターンも用意し、それを成形シュミレーションにかけ、その中から最良の結果が得られる設定を採用するという方法で行っている。特に同社のプレス製品は、440Mpaや590Mpaといったハイテン材が多いため、こうした金型設定の違いは、ブランク展開形状やスプリングバック量の違いとなって顕著に表れる。

 

同社で成形シュミレーション作業を行う代表取締役の山本道典氏は、こうした解析を多いものでは1製品で何十回と行うものもある。こうして繰り返すことで、成形中の板材の挙動を金型設定ごとに知ることができ、これは同社のノウハウとして蓄積していくことができる。

 

このように、さまざまな設定をいくつも試すことができるのが、成形シュミレーションの最も大きなメリットの一つである。これだけ多くの設定を、従来のように実際に金型を作って試すことは時間的にもコスト的にも不可能である。

 

同社の目指す方向性

こうした成形シュミレーション技術を最大限に使い、同社が今後目指していく方向性は、従来を超えるプレス工程の最小化である。これを山本社長は「1発金型」と呼び、サーボプレスと20トンのダイクッション機構を使った新たな金型構造を模索している。

 

これは、プレスメーカーにとって、金型内製化で得られる最も大きなメリットである。言い換えると、年々引き下げられる金型費に対する必要不可欠な取り組みとも言える。

 

ただし、完全な3次元システムの運用などは一朝一夕で実現するものではなく、例えば金型製作にかかわるスタッフのほとんどが3次元システムを扱えるスキルを持つ必要があり、覚悟と準備期間が必要になる。それをこの短期間で、初めて行う金型製作から実現しているあたりに、その強い覚悟がうかがえる。

 

コンサルティング前の課題

このように、自社独自のプレス工法の完成を目指し、成形シュミレーション技術をフル活用している同社であるが、それを実際の金型として設計していくには、機械加工での効率性や、必要な部品強度も考慮していく必要がある。

 

この点について、同社はノウハウが少なく、協力会社の金型メーカーから助言を受けたり、これまで使ってきた金型を教材としながら、試行錯誤によって対応してきた。

 

筆者のコンサルティング

そこで、筆者が現役の金型技術者であったときに、同社が扱うCADである同じVISIを使って設計を行っていたこともあり、同社で実際にCAD設計を行いながら、新しい金型構造の実現をサポートしている。

 

VISIは、オリジナルで作るマクロ機能が充実しており、同社の目指す金型製作の自動化には適したシステムである。VISIの中で「標準部品」と呼ばれるこの機能は、ACCESSデータベースとPythonというプログラム言語を利用して機能させている。

 

AIの運用も進めている山本社長にとって、こうしたIT技術を扱える技術スタッフを増やしていくことが今後必要だと考えている。基本情報技術者試験の国家資格も持っている山本社長の理想は、自社から一人でも多くのIT資格を持つ社員が表れてくれることである。

 

この点については、今後この製造業を取り巻くIT化に対応していくため、新たな教育制度や給与手当なども検討している。ちなみに、資格試験の学習に教育機関を利用する場合、ある程度費用もかかるが、教育訓練給付制度といった国の援助もあるので、こうした助成金制度は、特に中小企業はフルに活用したいところである。

 

筆者は中学生の頃からの趣味で、当時はポケットコンピューターのBASIC言語でプログラミングを行ってきたが、社会人になってからもその経験は大いに役に立っている。金型製作においては、NCプログラムやその中で使われるマクロ機能などでプログラム言語の理解力は役に立つし、VISIやFEATURECAMなど、APIが充実したCAD/CAMにおいては、オリジナルの機能を作ることもできる。

図2 ACCESSとpython言語で構成されるVISIのマクロ機能

 

今後ますますAIやIOTの利用が進むであろう金型分野も、そこで働くにあたり、必要となるスキルが変化していくことが考えられる。直接自分がそうしたシステムを構築することはないとしても、AIによって何ができるのか、そのロジックはどうなっているのかを知ることは、今後その技術の利用を考えるならば、必ず必要になる知識である。

そうした流れを考えると、山本社長の理想はまさに時流に沿った方向性と言える。

 

今後の同社の成長

金型製作を行うにあたっては、実際に金型を作るだけでなく、見積もり業務や、日程計画やその進捗管理など、さまざまな周辺業務もある。同社は、それらの業務まで含めた「自動化」を今後推進していく計画である。導入したソフトウェアや機械設備も、それが可能になるものを選定している。

 

同社の金型技術者は、日々金型を作るだけでなく、そのプロセスまで作っていくという意識が必要である。ITで何ができるのか、自動化とはコンピューターに何をさせるのかを考えることが重要である。

 

ITリテラシーと金型技術の両方を高めていくことで、未来の金型づくりに対応していこうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 建和【前編】のコンサルティング事例(2017年8月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)である。同社は、主に自動車部品のプレス量産加工を行っており、60tプレスから300tまでの単発・順送型いずれも対応しており、サーボプレスも有効に活用している。プレス板材についても、普通材からハイテンまで幅広く対応している。

 

同社の強みと事業上の課題

同社のプレス加工は、前述したように自動車部品分野において幅広い対応ができるなかで、特に安定した順送プレス加工に強みがある。この安定感により高い操業度・稼働率を生み出している。筆者も同社工場内に滞在しているときは、その途切れないプレス機械の稼働音に、生産の高い安定度を感じる。

 

こうした生産を行ううえで、金型品質はもちろん重要になってくるわけだが、同社にとって全く問題がなかったかといえば、そういうわけではない。

 

これは同社だけに限ったことではないが、総じてプレス単価が下落していることにより、その製品に用いる金型の製作費も下げざるを得なくなっている。言い方を変えれば、プレスメーカーとして、充分な金型費をかけられないということになる。

そのため例えば、本来強度的に必要な金型鋼材が使えなかったり、プレス成形精度に必要な工程と型数で製作できなかったりといった問題が起こる。

 

そうした影響を最も受けるのは、その金型を使う立場にあるプレスメーカーである。もちろん同社とて例外ではない。

 

事業上の課題に対する同社の取り組み

そこで同社は、これまで自社で経験のなかった金型設計と製作を自ら行うことを決意した。これには金型設計システムの進化や、補助金の活用などもその背景にある。

同社はこうしたプレスメーカーにとってのチャンスを見逃さず、新たな事業に打って出たのである。

 

同社の取り組みの特徴は、単に金型メーカーが従来行ってきた方法を後追いするのではなく、最新のソフトウェア・機械設備も活用したうえで、競争力のある金型製造技術を追求している点である。

 

具体的には、次の3つである。

  1. 徹底したシュミレーション技術の活用による自社独自のプレス工法の確立
  2. 3次元システムによるフィーチャー設計の活用
  3. システムのカスタマイズによる自動化の追及

 

これらの取り組みについて、具体的にみていく。

 

シュミレーション技術による独自プレス工法の確立

同社は、自社で金型設計を行うにあたり、3次元で設計することにこだわった。その理由として、成形シュミレーションとフィーチャー設計により、同業他社よりも金型製造リードタイムを縮めたいという狙いがあるためだ。

 

成形シュミレーションを活用する効果として、同社が狙っているのは、①プレス工程数を減らすこと、②トライ回数を1回で済ますこと、である。

 

プレス工程数を極限まで減らす試みについては、同社が保有するダイクッション圧・最大20トンのプレス機を、シュミレーション技術と合わせて活用することで、従来のプレス工程とは異なる新たな成形方法を考案している。この技術については、別の機会で改めて紹介させてもらいたい。

 

同社のシュミレーション業務については、代表取締役である山本道典氏が自ら行い、これまで調達してきた金型にはない新たな工法を日々模索している。

 

3次元システムによるフィーチャー設計の活用

3次元設計を行うにあたり、同社はCAD/CAMとしてVISIを使っている。このVISIの持つフィーチャー機能を活用し、設計工程以降のリードタイム短縮を狙っている。

写真 VISIを使った3次元設計事例

 

ここでいうフィーチャー設計とは、金型を3次元で設計する際に、加工情報まで合わせて定義していくことをいう。例えば、金型に締結のためのキャップボルトを配置すると、金型を構成するプレートごとに、ザグリやタップなどの加工が定義される。

 

これは従来の金型メーカーの工程である、金型の組図を設計担当が製図し、バラシ担当がプレート図面や部品図を作図し、それを現場に提供し、現場の機械担当者がプレート図面や部品図を見ながら加工データを作成するといった工程と比較すると、加工用の図面作成や加工データの作成工数を省くことが可能になる。

 

また、複雑な金型の2次元組図については、それを「読める」熟練者も昨今は減ってきている。その点、3次元設計された金型構造は、若手技術者も構造を把握しやすく、熟練者も忙しい時間の中、すぐに構造を把握できるメリットがある。

ただしこのメリットは、同じシステムで構成される社内プロセスでのみ活かされる。したがって外注製作する場合には、VISIの設計データに定義された加工データは展開できない。

 

そこで同社は、3次元設計した金型データから、外注用の加工図面の出力を自動化することで、対応を図っている。

 

こうした「自動化」こそが、同社が考える独自の金型製造システムの本当のキーワードになる。

 

システムのカスタマイズによる自動化の追及

同社は、スケジューラーソフトも導入しており、徹底してムダのない効率化した製造プロセスを模索している。

 

スケジューラーソフトについても、ここ最近多くのシステムが販売されているが、同社の選定指針は「オリジナルカスタマイズができること」であった。

 

この指針は、設計システムや現場設備であっても同様である。それは、同社が考える「他社よりも短いリードタイムの金型製造プロセスの構築」の次ステップが、「徹底した自動化」にあるためである。

 

多くの中小製造業では、少子化のあおりを受け、優秀な人材の確保が年々厳しくなっている。同社も人材確保の厳しさは例外ではない。そこで、今後益々厳しくなる状況に対し、山本社長が考えた道筋が、金型製造の徹底した「自動化」である。

 

同社が現在進めている3次元システムを最大限利用した金型製造プロセスは、将来の「自動化」のための前準備である。

 

筆者のコンサルティング

このように同社は、昨今の設計システムの進化や補助金の活用といった、プレスメーカーにとってのチャンスを最大限利用し、自社に大きな変革を起こそうとしている。

 

ただし、他の金型メーカーと比較して、やはりあくまでも新規参入企業であり、当然、金型製作については、積み上げてきた歴史というものがない。

 

そこで筆者は、同社が考える中長期の新たな事業構想に対し、23年のプレス金型や機械加工の経験をもとに、金型メーカーや機械加工メーカーが積み重ねてきた成功や失敗を踏まえ、きちんと「地に足の着いた」イノベーションを実現させるべくサポートを行っている。

 

まずは同社における川上工程の、シュミレーション→フィーチャー設計→社内・外注への最適展開、といった流れにおいては、他社に負けないリードタイムの体制を確立させることができた。

 

次は、設計システムのさらなる自動化や、川下工程である機械加工の技術力UPと自動化といった技術テーマに取り組んでいく計画である。

 

今後の同社の取り組み

今後同社は、本格的な金型製造における自動化に向け、ロボット導入のための補助金なども活用しながら、着々と進めていく構想である。

 

従来のプレスメーカーが抱える事業課題の解決を図り、自社独自のプレス技術を見据えながら、中小製造業全体が抱える問題にも「自動化」という答えで解決させようとしている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2017年7月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、創立は大正15年から続く、老舗の溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。同社は、永年培った職人技術と、最新のレーザー切断やレーザー溶接などを駆使し、二百を超える多くの顧客の要望に応えるものづくりを行っている。

写真1 同社で製作している溶接板金製品の一例

写真2 昨年同社が導入した機械設備の一例

 

同社の強み

同社の強みは次のようなものがある。

  1. 図面で数値化されていないような、曖昧で漠然とした顧客の要望についても、形にできる柔軟なものづくり技術がある。
  2. 職人によるアナログ技術をベースとしながらも、その時々で近隣の同業他社がまだ導入していない加工設備を、常に先行して導入している。
  3. 極めて短納期の要望に応えていける体制を持っている。

 

上記3つに代表される同社の強みにより、同社を仕入先とする発注顧客の「困りごと」を解決するようなものづくりを日々行っている。

これは、先代社長である新美広治会長の理念でもある。

 

ところで筆者は、加工サプライヤーには、次の3つの戦略が必要だと考えている。

  1. 海の向こうの半分の値段で加工するメーカーに対抗できる強い顧客メリットを持つ。
    例えば、超がつく短納期対応など。
  2. 顧客の手配業務負担を軽減させるワンストップ受注を行う。例えば、材料手配から機械加工、熱処理、表面処理、塗装など、部品の完成まで一貫対応で受注する。
  3. できるだけ多くの顧客を持つ。需要の波の谷間を埋められる多くの受注窓口を持つ。

 

こうした方針がとれるかどうかで、筆者の拠点である中部地方では、仕事が集まる会社と、そうでない会社の2極化が起こっている。

 

この点、同社はまさに上記の全てを実行しており、顧客の数は実に二百を超えている。

 

事業承継による変革

平成28年9月、現社長である新美剛一氏へ事業承継が行われ、3代目の代表となった。

 

また、これまでフラットな組織で事業を行ってきたが、現在、従業員は27名と増え、納期管理など経営層が個々の全ての従業員までコントロールを行うには無理が出てきた。

 

そこで今年4月、2つの管理職を設け、日下石 智彦氏を工場長、兵藤 至氏を工長として任命、これまでのフラットな職人集団から、チームとしての成果を目指す企業体へと変革させている。

 

新たに管理職となった2名についても、プレーイングマネジャーとして、これまでのイチ職人としての技能だけなく、管理職としてのマネジメント能力も期待されるところである。

 

同社ならではの課題(コンサルティング前の課題)

同社のものづくりは、そのほとんどが一人完結方式であり、製造現場の個々の従業員は、自分が受け取る製品図面に基づき、材料の切断から溶接、最後の仕上げまで、全て自分で受け持つ。

 

作り手の従業員が直接、顧客の発注担当者と打ち合わせやクレーム対応をすることも珍しくない。こうした点にやりがいを感じている者も多い。

 

こうした点は、ここ最近、分業化が進む金型メーカーとは異なるところである。とかく金型の短納期・低コスト化に対応するため、積極的に効率化を図る金型メーカーとは、ある意味、相反するスタイルでもある。

 

しかし、金型メーカーが抱える悩みと同様、個々の従業員に求められる技術スキルが高いため、まともに一人前に仕事ができるようになるには多くの時間がかかる。

 

また、採用活動については地域性の問題もある。一般的に景気が良いとされるここ中部地方でも、三河地域は大手有力メーカーが多く存在し、営業活動には事欠かないものの、逆に採用活動については、企業の大小にかかわらず激戦区になってしまう。

 

そうした問題もあり、これまで同社は、採用・育成については計画的な活動を行うことができず、場当たり的になっていた。

 

コンサルティングで取り組んだこと

先代社長である広治会長は現役の職人としてプレーイングマネージャーの面があり、今も現場に立つことも多い。逆に、現社長の剛一氏は、日々のトップセールスに余念がない。

 

そのため同社は、その事業規模の割には、経営層が集まり会社運営について話し合うといった、いわゆる経営会議といえるような場はこれまでは無かった。

 

そこでまずは、筆者とともに毎月1回の経営会議の場をつくり、組織体制、採用者への安全教育・技術教育、管理職へのマネジメント教育などについて整備していくことにした。

 

特に採用者については、本来必要となる安全教育を行い、業務に必要な知識・技能については、スケジュールと内容を取り決めた計画に沿って習得させるべきである。

 

しかしながら、同社ではこれまで、短期的視点のOJTに留まっていた。

 

この点は多くの金型メーカーも同様で、新規採用者はマシニングなど機械加工の担当者になることが多いが、金型全体の製造スキルまで習得するのは一体いつになるのか、本人自体、全く把握していないことが多い。

 

こうした方針のうえでは、働く本人が長期的視野で、ものづくりに取り組むことができず、他の業種や、雇用条件の違いによって簡単に転職してしまうことも少なくない。

 

同社においても同様で、こうした課題に対応していくためには、これまでの職人集団としての風土を変革させ、会社組織として計画的に、採用・育成・定着の3活動を行っていく必要がある。

 

今年新たに管理者となった2名も同様で、「管理職」という役割の勘違いについて勘違いさせてはならない。

 

勘違いとは、人に命令できる、指示ができるといった、何か権限が与えられるものと勘違いしている場合があり、そもそもマネジメントというものを理解していないことが多い。

 

こうした勘違いは、生産性の低下や、部下のモチベーション低下・不満につながり、組織としての問題の一因になることが多い。

 

まるで部下を使い走りのように扱うような管理職はすでに過去のものであり、部下の1人あたりの生産性をいかに高めていくかのコントロールを行うことが本来の管理の在り方である。

 

同社で新しく管理職となった2名についても、これまでのプレイヤーとしてのスキルに加え、マネジメントに必要な心構えと知識が必要となる。この点についても同社は、筆者と共に計画的な管理者教育を行っていく。

 

また、従業員への技術教育についても、これまでのOJTに加え、OFF-JTも活用しながら、同社の強みである溶接職人の育成を図っていく。

 

これにより同社は、新人からベテラン、管理職まで幅広く、階層に応じた包括的な教育体制を構築することができ、同社で働く者は長期的な視野で、技術者としてのやりがいをもって働き続けることができる。

 

今後の同社の戦略

同社で作られている製品から、ソフト面である職人技術がクローズアップされがちであるが、経営層はハード面である機械設備も同じくらいにセールスポイントだと考えている。

 

同社は、近隣の製造業者の中でも、いち早く新しい設備を先行導入することにこだわっており、開発が積極的に行われているレーザー加工技術の動向を見定めながら、次の導入設備を検討している。

 

筆者との取り組みにより、ソフト・ハードの両面で、業界を先行して進もうとする同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 瑞木製作所のコンサルティング事例(2017年6月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、フライス加工や旋盤加工などの機械加工を主力事業とする株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績を誇っており、扱っている加工部品のほとんどは、チタン合金やインコネルといったいわゆる難加工材である。その技術力の高さから平成19年には経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業にも認定されている。

写真1 同社に飾られているサンプル加工品とコンテスト等の受賞実績

 

同社の技術者育成の特徴

昨年、同社が使用している3次元CAD/CAMの技術者教育のため、研修講師を担当させていただいた。

 

通常、3次元CAD/CAMの技術者教育は、販売ベンダやそれを専門とする事業者を活用する企業も多いなか、個々の応用力を伸ばし自ら考える能力を養っていくといった、同社の育成方針に沿いつつ、3次元CAD/CAMを習得するということから、CAD/CAMや切削加工分野を専門とした中小企業診断士である筆者に声がかけられた。

 

今回の支援の特徴

今回、面白い取り組みがあるので紹介したい。3次元CAD/CAMシステムを5・6名でシェアして活用していく点である。

 

筆者がこれまで見てきた多くの製造現場では、3次元CAD/CAMはユーザーインターフェースが進化し使いやすさは向上したとはいえ、依然その専門性は高く、多くの金型メーカーや加工メーカーでは、専任のオペレーターが担当していることが圧倒的に多い。

 

しかし同社は今回、5名の機械オペレーターに研修を受講させ、同社が保有する2台の3次元CAD/CAMを、5人全員が利用できるようにと考えた。

 

同社が普段加工している製品形状には非常に多くの種類があり、その加工方法においては、手動による汎用加工、工作機械の対話式プログラム、2次元CAD/CAMの利用、そして3次元CAD/CAMを利用した方がよい場合など、効率性、加工精度・品質を考慮するとそれぞれに適したツールがある。

 

今後、加工を行う各作業者が、同社にある全てのツールを活用できるようになれば、多くの加工品を多能工化でき、機械稼働率を高めることができる。

また、担当する作業者に依存することなく、同社にとって最適なコスト・加工品質で、ものづくりを行う体制がより強化することになる。

 

研修の具体的内容

今回の研修を行う前、3次元データ作成作業は、限定された担当者に負荷が集中しており、そういった加工品が集中したときには、工程にボトルネックが発生していた。

 

そこで、その解決を図るべく、同社の鈴木会長の号令の元、この研修が開始された。

 

今回の研修にあたっては、これもぜひ読者企業の皆さんに参考にしていただきたい点がある。5名の受講者がそれぞれ決意表明として、特に取り組みたい点・どのような加工で活用したいかなど、一人ひとり研修開始時に発表していただいた。

 

これも鈴木会長の計らいであり、講師としては一人ひとりの現状スキルや取り組み姿勢などを知る良い機会となり、大変ありがたかった。各受講者としても、自分の力量・取り組み方を整理する良い機会ではなかったか。

 

研修に使用した3次元CAD/CAMは、オートデスク社のHSMワークスである。

 

普段、3次元CAD/CAMにhyperMILLを使用している筆者は、事前にHSMワークスの機能・操作を調査し準備したのだが、このソフトウェアは同社の加工にとって、また今回の研修にとっても、非常に適したシステムだと感じた。

 

まず加工に適した点だが、同社の事業である航空宇宙産業分野における加工品には、多くの薄肉加工部位が多い特徴がある。

 

これまで金型製作を主に加工をおこなってきた筆者にとって、例えば、高硬度材を切削する技術とは異なる、非常に繊細で、段取りから工具選定、切削手順まで幅広いテクニックを要する加工技術だと強く感じた。

 

筆者の経験上、こうした繊細で複雑な加工を行う場合、使用するCAMシステムには、工具の切削軌跡を調整するパラメーターが多ければ多いほど助かる。

 

特に、3次元CAMにおけるデータ作成の場合、その切削軌跡はコンピューターに委ねる部分が多いため、あまり人間の手で細かな調整を行うことは少ない。

 

こうした操作性はユーザーにとって、運用できるまでの時間を短縮させ、誰でも簡単にデータ作成がしやすくなった効果をもたらした点はあるが、加工面にわずかなにできるアプローチ痕の除去や、切削軌跡の違いによる美観の向上、局所的な加工負荷の抑制など、部分的に、人間のノウハウを入れ込みたい加工があっても、それができるソフトとそうでないソフトが存在する。

 

同社が使用しているHSMワークスは、こうした細かな調整が可能で、それが荒取りから仕上げ加工まで細かなパラメーターが用意されており、同社の繊細な加工の調整に応えることのできるソフトウェアであった。

 

また、今回の研修にも適していると感じた点として、このHSMワークスのように多くのパラメーターは逆にデメリットとして、ユーザビリティを低下させる一因となることも多い。

 

しかしながら、HSMワークスの場合は、デフォルト設定される各パラメーター値は、事前に登録されている固定値ではなく、都度、工具や条件に合わせた数値に自動計算され、特に必要がなければ、そのまま入力・編集しなくても支障ないように作られている。

 

前述したように、同社の技術者育成の方針は、応用性・創造性を養い伸ばす方針であり、これはまさに、オペレーターそれぞれの扱い方に応える適正なCAMである。

 

とかくCAMシステムに切削軌跡の作成を依存しがちな3次元CAMにおいて、自分のこだわりたい部分にこだわってデータ作成ができるシステムだということである。

 

このような研修方針において筆者は、HSMワークスがアドオンされているSolidWoksを用いた3次元モデリング研修、HSMワークスによるCAMデータ作成研修の最中、3D加工のセオリーや工具選定指針などの講義も織り交ぜながら、それぞれを計8回で行い、最後は各自、自由に題材を決め、実際にマシニングを使って加工を行うという演習までを行い、昨年の研修は終了した。

写真2 研修課題のモデリングとCAMデータ作成を行っている様子

 

支援の効果と今後の同社の取り組み

前述したように、同社が扱う加工品のほとんどは、チタン合金やインコネルといった耐熱合金であり、こうした素材の切削加工は、単にロックウェル硬度が高いから加工条件をどうするといった対処だけでは済まない。

 

「ねばい」ということでその切削抵抗は上がり、素材の熱伝導性から切削点や素材にこもる熱も考慮しなくてはいけない。

 

こうした特殊な切削性に対応していくためには、金属・非鉄金属に対する正しい知識や、切削メカニズム、工作機械などに関する幅広い知識が必要になる。

 

筆者は、今年度も新たなメンバーと研修プログラムで構成される講師を担当させていただくにあたり、単にCAD/CAMの操作だけではなく、包括的に同社の技術者の底上げにつながるサポートをしたいと考えている。

 

高度な成長分野を支える同社において、その基盤となる技術者を、独自の方針で育成を図り、また自社の持つ加工ツールを最大限に活かし、最善の効率化・高品質化を図る同社に、筆者は大きな期待をしている。