金型・部品加工業専門コンサルティング

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絞り加工

株式会社 スズキプレス金型のコンサルティング事例(2018年6月号掲載)

 

本号で紹介するプレス金型メーカーは、以前にも登場したことのあるスズキプレス金型である(愛知県愛西市 TEL0567-25-6900)。同社は、自動車のシート部品などの絞り型などを手掛けるプレス金型メーカーであり、創業から64年に渡る長い歴史がある。

 

同社が今取り組んでいること

同社は、昨年から金型構造設計の3次元化に取り組んでいる。それに伴い、以前から外注で対応していた解析業務の内製化にも取り組んでいる。

 

今回同社は、自社で使用する3次元CADとしてシマトロンを導入している。2名のオペレーターに導入教育を受けさせ、6ヶ月間の実習期間を経て、今年から徐々に設計実務での活用をはじめている。

図1 シマトロンを用いた金型設計の様子

 

同社が選定したシマトロンは、パラメトリックという機能に特徴を持つ3次元CADであり、その他プレス金型設計の省力化をサポートする様々な機能が搭載されている。

 

本号では同社の設計3次元化の導入事例をとりあげ、プレス金型メーカーが自社の金型製作に応じた3次元CADの選定について、どのような視点で選ぶべきかを見ていきたいと思う。

 

プレス金型設計で使われている3次元CADの種類

金型の構造設計に用いる3次元CADは大別して2つの種類がある。①ヒストリー型と②ノンヒストリー型と呼ばれる方式である。

 

ヒストリー型のCADは、パラメトリック方式とも呼ばれ、設計していく過程が履歴として記録される。

 

これにより、はじめは大雑把に設計し、徐々に履歴の中にある細部の寸法や位置を微調整していくという設計手法をとる。

 

これによるメリットは、まずはイメージから形にしていくといった迅速な設計ができ、モデルを作り終わった後でも自由に編集ができ、パーツや構造を微調整し、のちに使いまわすといったリピート設計にも寄与する点である。

 

プレス金型設計で使われている代表的なヒストリー型3次元CADとしては、CATIAやNX、SolidWorks、シマトロンなどがある。

一方、ノンヒストリー型は、ヒストリー型の逆のような機能を持ち、設計操作の履歴を持たない。そのため、部品のサイズや位置を後から寸法要素で動かす操作はせず、ダイレクトに寸法を直接指定しながら部品要素をモデリングする。

 

これにより、部品を構成する要素間の依存関係を意識することなく、自由な操作でサクサクとモデリングを進めることができる。

 

したがって、同じような形状を繰り返しリピート設計する金型よりも、新しい構造や形状の金型を新たに設計する際には、軽快に作業を進めることができる。

 

プレス金型メーカーによく用いられている代表的なノンヒストリー型3次元CADとして、VisiやSpeedyMILLnextなどがある。

 

同社は今回導入したシマトロンに先駆け、以前からVisiを使っていたが、主に現場で用いるCAMデータ作成用として使っていた。

 

プレス金型における3次元CADの選び方

3次元設計をはじめる際のハードルとして、細かく表現する必要のない箇所まで詳細にモデリングする必要があり、そのため作業負担が重たくなるということがよく指摘される。

 

例えば、構造部に配置される市販部品などが例に挙げられる。そこでまずは、市販部品などの標準部品を簡単に呼び出して配置ができるかが最低限求められる機能となる。

 

また最近では、部品配置を行うと共に、ザグリ穴やタップ、リーマ穴などの機械加工定義まで合わせて付与するフィーチャー設計を行うことも一般的な作業手順になっている。

 

前述した各3次元CADについては、ヒストリー型、ノンヒストリー型問わず、フィーチャー設計が出来るシステムがある。

 

ではどのような視点で、3次元CADを選ぶべきか、それは自社が製作する金型が、ヒストリー型、ノンヒストリー型、どちらの長所が活かせるかで判断すべきである。

 

例えば、金型を用いて量産する製品が大抵決まっており、寸法は微妙に変わるが形状は大きく変わらないといった場合、製作する金型の構造やレイアウトは大きく変わらないとする。

 

その場合、部品サイズや配置、数量などを編集していく作業がメインになる。こうした場合は、リピート設計に強いヒストリー型の3次元CADが強い。

 

逆に、全く新しい形状の製品の金型を設計する場合、例えば、以前は5工程で成形していたものが、3工程になったり7工程に増えたりといったように工程設計から変更がかかり、個々の金型構造も全く新しい構造になることがある。

 

こうした構造設計を行う場合、以前作った部品ユニットを流用したり、部品同士の位置関係の計算式を流用することはかえって手間がかかり、設計工数が増加してしまうことも考えられる。

 

そのため、自社で製作する金型について、新しいパターンの構造をイチから設計していくことが多いといった金型メーカーは、ノンヒストリー型の3次元CADの方が適していると考えられる。

 

同社は、自動車のシート部品の金型を主に製作しているが、強みである絞り加工技術を活かした類似形状の金型を製作していることが多い。

図2 同社の金型で作られた製品

 

これであれば、以前導入したノンヒストリー型のVisiよりも、ヒストリー型のシマトロンの方が同社には適しており、今回はスムースに設計での活用が進んでいると思われる。

 

同社のコンサルティング前の課題

このように設計の3次元化を進めている同社であるが、会社組織としてはかつての同社の主力であったベテラン技術者の高齢化が進み、企業の新陳代謝促進が急務となっている。

 

そもそも金型製造は、設計や機械加工、組み立て、トライといったいくつもの専門職から成り立っているが、それぞれの工程において一人前の技術を得るには通常何年もかかる。

 

とりわけ設計職においては、製造現場のノウハウも知らなければ、適正品質・コストでの金型設計ができないため、一般的には一通り現場の仕事を経験してから入ることが多い。

 

同社ではこれまで、このようなジョブローテーションの仕組みがなく、主に社員の入退社をきっかけとした不定期なタイミングでの業務異動が多かった。

 

コンサルティングの内容

そこで同社では、個々の技術者が長期な視点でキャリア計画を持てるようにするため、入社から10年後までに一通り経験する仕事、またその後、自ら希望する業務について申請できるなど、中長期のキャリアプラン制度ともいうべき仕組みを、筆者と共に考案した。

 

これにより、金型技術者として自分の長所を活かしたり、出来る限り希望する業務を担当することについて、今後は会社の制度・仕組みとしてフォローしていくことができる。

 

今後の同社の狙い

今年の春、同社では新たに高校生の新卒社員を採用し、さっそく新たなジョブローテーションの制度を活用して本人のポテンシャルを引き出すと共に、長期的な視点で現代的な金型技術者を目指してもらうスタートをきっている。

 

同社では今回のコンサルティングに加え、技術面などの評価制度も整備しており、ますます難易度が上がっている自動車部品に対応できる技術者の育成・底上げを図ると共に、企業の新陳代謝を図っている。

 

金型製造の3次元化により、これまでのベテラン技術(アナログ)とデジタル技術の融合を急速に進める同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 スズキプレス金型のコンサルティング事例(2016年6月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、筆者の専門分野であるプレス板成形の金型製作の専門メーカー、スズキプレス金型(愛知県愛西市 TEL 0567-25-6900)である。

 

同社の強み

同社の強みは、次のような点である。

  1. 難易度の高い絞り加工品の金型受注が多い。多くの工程を経て成形される金型の製作を得意としており、長年蓄積された豊富なノウハウを持っている(写真1)。
  2. プレス知識・ノウハウが豊富な冨田副社長の存在。特にトライ作業の要であり、顧客や同業者からもよく相談を受けている。
  3. 順送プレス・トランスファー・単発プレスなど、多くの種類の金型を手掛けており、さまざまな種類の金型に対応できる設計ノウハウを持っている。
  4. プレス金型専門のメーカーとして、長谷川専務が牽引する強力な設計部門や、冨田副社長率いる製造現場により、多くの金型面数の受注をこなしている。
  5. マシニング加工は、不等リード・エンドミルなど、島岡常務を中心として、積極的に新しいツールを採用するなど、効率性や加工精度を高める改善を日々行っている。

写真1 同社で製作している順送金型の例

絞り加工の金型を多く扱う同社のマシニング工程は、構造部のプレートや曲げ・絞りのパンチやダイスに深い切削加工が多く、長い縦壁の仕上げ切削においてエンドミルのたわみ・ビビリを低減させる効果を持つ、不等リード・エンドミルの採用は、同社において大きな効果があった。

 

このように、従来の工具ではかなり苦労させられた加工形状や材質であっても、機能性の高い工具を使うことで、大きく作業性が改善させられることが多い。特に機械加工においてその効果は顕著であり、工具代理店などの言われるままではなく、最新工具の機能・効果を正しく把握し使い分けるよう注意したいものである。

 

同社の強み故の課題

前述したように、同社が製作する金型は、難易度の高い形状が多いため、試行錯誤を要する設計工程とトライ作業の負荷が高くなっている。特にトライ工程の負荷の高さは、その前工程である機械加工に影響を与え、トライプレス後に発生する金型意匠面などの追加修正加工は高い頻度で発生するため、トライ後の修正と新規型の部品加工が、マシニング工程に殺到してしまい、生産計画のやりくりが非常に難しくなっていた。

 

金型メーカーの生産計画

筆者が中小企業診断士の資格を取得した際、「運営管理」という科目で学んだが、そもそも製造業の生産計画は、①手順計画・②工数計画・③日程計画の順で決めるべきとされている。

例えば、金型製作において、金型構造図面が出来た後、各構成部品の生産計画を決める手順は、次のとおりである。

①手順計画:部品を製作するにあたり、形状や加工精度、金型全体の納期を考慮し、各部品に対し、何をいつまでにどのような手順でつくるかを決めること。

②工数計画:手順計画で決められた部品納期と手順に基づき、製作に必要となる人と機械の作業工数である「標準時間」を見積もること。

③日程計画:①②で決められた部品納期と標準時間、両方に基づき、作業者や工作機械に対し、1~2週間分などの計画表に、時間単位で各部品の着手予定を割り当てること。

 

ところが、まさしく金型製作という事業上の特徴であるのだが、多くの金型メーカーでは、金型そのものも各構成部品も、毎回異なるものを製作する個別受注生産であるため、前述した生産計画の手順のうち、②工数計画で行う「標準時間」の算定が疎かになってしまう。

標準時間とは、一定の技量を持った作業者や通常の手順で加工した際の、各部品の製作に要する作業見積もり時間である。

 

また、部品図面を見て工数を見積もることも一定技量を持っていないとできない作業であるため、加工経験のない管理担当者は、生産管理を立てるうえで、標準時間の算定が難しい面もある。

 

この標準時間の見積もりがなされていないと、各構成部品の日程管理は、後工程である「組み立て」開始までだけの納期管理になってしまい、何と何を同じ日に組み合わせて加工すると人や機械の稼働率が高くなるのかといった、稼働率優先の日程調整ができず、日々の稼働率はバラツキが生じやすくなる。

 

また、プレス成形、射出成形など、成形方法に限らず、金型構成部品は、熱処理・表面処理に伴う前加工・後加工、切削と研削加工・切削と放電加工の使い分け、内製と外製、それらに伴うリードタイムの調整など、一つひとつの部品の手順計画は、実はかなり複雑になる。

 

そのため各部品について、本来緻密な②工数計画、③日程計画を立てなければいけないはずが、どうしても疎かになりやすい。

 

解決に向けた取り組み

まさしく同社にも同じ問題が発生していた。同社の場合、③の日程計画は機能しているように見えたが、実は②の工数計画を経て見積もった標準時間による日程計画ではなく、部品納期によって日程管理を行っていた。

 

そうなると、例えば、新規金型の部品製作においては、数十点、百点以上の構成部品があっても、その納期は同じような日に集中したりする。しかも、各作業者には、その部品納期で作業指示が与えられるため、各部品の日程計画は、個々の作業者の裁量に委ねられる。そうした場合、経験年数の長い人、短い人、その視野の広さの違いなどにより、着手する計画の立て方にバラツキが生まれ、その結果、機械稼働率が伸びないなどの影響が出ていた。

 

特に、金型製作の中で最も工数割合が高いと言われる機械加工の中でも、同社のマシニング工程は煩雑さを極めていた。

 

そこで、鈴木社長、長谷川常務、島岡常務、マシニング担当者2名による、プロジェクトを組み、管理面・技術面、両面から改善に取り組んだ。

 

解決に向けた方策として、①前倒し計画の作成、②データ作成とオペレーターの役割分担などに着手した。具体的に「①前倒し計画の作成」では、以前の記事でも書いたが、部品納期で着手日程を管理するのではなく、見積もった標準時間を元に、機械稼働率を優先した着手計画をたてる。場合によっては、納期に近いものよりも先に着手する部品もでてくる。

 

「②データ作成とオペレーターの役割分担」は、CAMによる2次元・3次元それぞれのNCデータの作成を行う担当者と、そのデータを使ってマシニング加工担当者を分けるというものである(写真2)。そのメリットとして、ア)ベテラン加工者がCAMを担当することで、複数のマシニングがあっても、各機にそのノウハウを活かすことができる、イ)事前に先行してデータ作成することで外段取りを増やすことができる、などがある。

写真2 同社のマシニングとCAM作業の様子

同社は、こうした取り組みにより、事業面の成果として、金型リードタイムの短縮による受注面数の増加と、外注費削減などを図っている。

 

同社の今後の取り組み

今後同社は、3次元データのさらなる活用と解析技術の導入を検討しており、従来からの高度な絞り金型の生産性をさらに高め、多くの受注に応える体制を強化していく。

解析ソフトの導入は、ベテラン技術者の知識・ノウハウを共有・承継していく一助ともなり、ベテラン主体であった同社の金型製造についても、今後若手の活躍できるフィールドが広がる。ベテラン・若手、それぞれの能力をフル活用していこうと取り組む同社に大きな期待をしている。