三幸プロダクツ株式会社のコンサルティング事例(2018年9月号掲載)

目次

三幸プロダクツ株式会社のコンサルティング事例

本号で紹介するプレス金型メーカーは、三幸プロダクツ株式会社(大阪府東大阪市本庄西3丁目1番21 TEL 06-6541-9331)である。

同社は、ブリキなどの薄板コイル材を扱う鋼板商社である三幸商事株式会社が、プレスメーカーの大西工業を買収したことで、平成29年度より三幸商事(株)のグループ会社として、新たにスタートすることになった企業である。

図1 同社で製作された金型
図2 同社の金型で製造された製品

同社への支援は、技術承継などの課題を持つ同社への技術面の支援として、プレス金型にまつわる様々な知識について、筆者が8か月間の講義を行ったものである。

筆者が支援する他のメーカーにおいても、営業・調達・経理・量産プレス・金型製造・金型保全など各部門において、持ちうる技術知識に格差があることで、様々な支障をきたしている。

今回の各部門が一堂に集まり受講する部門横断的な技術講義の取り組みは、前述した課題に対する有効的な対策であり、ぜひ他メーカーでも取り組んでいただきたく、本号ではその要所などを紹介したい。

同社の強みとコンサルティング前の課題

同社の強みは何といっても、旧大西工業の代表であった同社顧問が持つ技術ノウハウにある。

現在も、プレス工法やポンチ図の作成において、同社が得意とする0.2ミリや0.3ミリの薄板絞り加工の順送金型などを製作する生産技術の中心的役割を担っている。

しかしながら、この点が同社の強みでもある反面、同社のウィークポイントとなっている。今後の5年、10年先を見据えると、早急な技術承継が必要不可欠であった。

そこで、これまで属人的であった同社のコア技術を標準化し、チームによる製造力を強化していくため、各部門の主要メンバーが一堂に集まり、筆者の指導の元、金型製造にまつわる全般知識を、まずは習得していこうということになった。

コンサルティングの内容

実際の講義は、次のような7つのテーマで行った。

  1. プレス工程設計の基礎知識
  2. 金型構造と金型設計に必要な知識
  3. 金型で使われる金属材料の基礎と使いかた
  4. 金型製作で用いられる機械加工全般と使い分け
  5. 切削加工概論
  6. 2 次元・3 次元 CAD/CAM 研修
  7. 金型製作における工程管理と原価計算

以下、講義で扱った内容と共に、各部門が横断的に知識を持つことのメリットについても見ていきたい。

1)プレス工程設計の基礎知識

この講義では、金型製造の全工程から、最初の工程であるプレス工程設計についての基礎講義を行った。また、抜き・曲げなどのプレス工程を設計するためには、種々のプレス工法や各種プレス機の特徴や使い分けなども知っておく必要があるため、それら周辺知識なども扱った。

同社製品に多い円筒絞り加工については、絞り率の計算なども受講者全員で実践を行った。

これらの研修により、各部門の全員がプレス工程とコスト・品質の関係を知ることができ、今後は最適な金型製作と量産プレスを行うための検討をチームとして行うことができる。

2)金型構造と金型設計に必要な知識

金型設計の3段階(工程設計・構造設計・部品設計)における構造設計・部品設計を取り扱った。

プレス加工は大きな力を要する加工であり、金型はそれに耐える充分な強度を持つ必要がある。また、金型は長く使うツールであり、製作直後のトライ時には出てこなかった問題も、長く使ううちに出てくるトラブルもある。

本講義では金型構造の基礎から、不十分な設計により発生するトラブルや故障などを扱っており、これらの知識を製造側と保全側、両面が持つことで、最適な金型製作を行っていくことができる。

また、過剰強度の部品材料や構造は、即コストアップにつながり、企業収益を圧迫する。こうした側面を営業・調達部門も知ることで、最適コストの金型調達を行っていくことができる。

3)金型で使われる金属材料の基礎と使いかた

同社で使われるパンチ・ダイは、SKD11といった冷間ダイス鋼が主に使われており、極めて薄い板の抜き加工を行う同社の金型では、必要強度のためハイス鋼や超硬合金が使われることもある。

近年は各鋼材メーカーより、様々な改良ダイス鋼が販売されており、こうした各鋼材は、その使い方によって長所短所がみられることがあり、その特徴がどのような成分根拠から現れるのかも知っておくことが望ましい。

今回の講義では、金型パーツごとに、強度不足により発生するトラブルと合わせて、鋼材に関する知識を学習した。

こうした知識は金型製作担当だけでなく、保全部門においても、発生した金型故障やトラブルが、強度不足によるものなのか、機構による問題なのか原因究明に役立つ知識となる。

また、営業・購買部門においても、金型強度とコストの関係を知ることができ、最適な金型の見積もりや調達を行うことにつながる。

4)金型製作で用いられる機械加工全般と使い分け

プレス金型製作で用いられる機械加工については主に、マシニング加工、ワイヤー放電加工、平面研磨加工、汎用加工(ラジアルボール盤、旋盤加工など)があり、これらを精度・コストに応じて正しく使い分ける必要がある。

金型製造部門はもちろんのこと、営業部門においては最適な金型の見積もり、また購買部門においても最適な金型外注仕入れコストなどを算定する根拠ともなり、全部門で知っておくべき知識と言える。

5)切削加工概論

主にエンドミル加工に焦点を当てた技術知識である。同社においては、ワイヤー放電加工が主力であるが、本講義により、同業他社の技術レベルを知る機会ともなり、内製する金型と外注から仕入れる金型、それぞれの標準単価を推し量るための基礎知識になる。

6)2 次元・3 次元 CAD/CAM 研修

同社の設計は2次元であるが、プレス金型業界全体では設計の3次元化が進んでいる。

今後、製品の企画提案から試作・金型製作・量産プレスといった一括受注を強化していこうとする同社においては、製品の見える化ができる3次元設計はまさに今後強みになる可能性がある。

今回の講義においては、3次元設計の3大メリット(解析・フィーチャー設計・コンカレントエンジニアリング)など、3次元CADの基礎や活用方法などを学習した。

7)金型製作における工程管理と原価計算

今回の講義では、金型原価積算と費目ごとのコストダウン指針について取り扱っている。

この内容については、まさに全部門の関係者が知っておくべきであり、永続的に企業が収益を上げていくための、技術面と並んで必要となる知識である。

コンサルティングの成果と今後の同社の戦略に向けた取り組み

今回の研修により、各部門が横断的に同じ水準の技術知識を習得する機会を得た。

親会社の三幸商事(株)については、鋼板商社ということで有利に材料を調達できる強みに加え、三幸プロダクツ(株)による金型内製機能と保全機能の強化というさらなる強みを武器として今後、企画提案型の需要を拡大していこうとしている。

技術者の底上げによる技術承継によって、新たな需要拡大を図る同社に筆者は大きな期待をしている。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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