金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

TEL.0566-21-2054

〒448-0853 愛知県刈谷市高松町5-85-2

多能工化

協和工業株式会社のコンサルティング事例(2018年10月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、協和工業株式会社(静岡県湖西市 TEL053-579-0931)である。同社はシート部品・ステアリングコラム部品などの自動車用部品を製造する量産プレスメーカーでありながら、自社でも高精度な金型を内製しているという特徴がある。

図1 同社の金型の一例

 

また、プレス能力800トン級までの厚板・高強度、複雑・精密形状のプレス品であるシート機構部品等を生産できる技術と設備能力を持っている。

図2 同社で生産されている製品の一例

 

同社の金型製造の特徴・強み

同社の金型製造における特徴と強みは次のような点である。

 

  1. 金型製造の全工程を3次元CADデータで扱う一貫体制を構築している。
  2. 安田工業(株)製の3軸・5軸マシニングなど、高度な工作機械を多数保有している。
  3. 量産部門で培った高い管理ノウハウを金型製造プロセスにも応用しており、社内・外販向けともに高品質の金型及び金型部品を製造している。

 

今回は、同社に対し筆者のコンサルティングで行った、3次元設計の有効活用法の一つであるコンカレントエンジニアリング導入の取り組みについて紹介していきたいと思う。

 

3次元設計のあるべき3つの活用法

プレス金型設計においては、まだ2次元の設計で行うメーカーも多いが、3次元による設計もすでに多くのメーカーで使われている。

 

しかしながら、想像線などによる図の省略が自由に効く2次元の作図と比べ、3次元設計は基本的にそこに存在するもの全てをモデリングしなければならないため、2次元設計よりも多く工数がかかる傾向にある。

 

そこで、設計工数そのものよりも、むしろ後工程での省力化により、3次元設計のメリットを発揮するという考え方が必要になる。

 

そのための有効活用法として3次元設計では次の3つに取り組むと良いとされている。

 

  • 解析技術(シミュレーション)
  • フィーチャー設計
  • コンカレントエンジニアリング

 

(ア)の解析技術は、3次元モデルを利用して強度計算や塑性加工シミュレーションなどを行うものである。

(イ)のフィーチャー設計は、例えばキャップボルトやノックピンを3次元モデルのプレート上に配置すると、プレートのモデルにタップやリーマ穴、ザグリ穴など加工属性が付与されるといった機能のことで、後工程のCAMオペレーターの作業が省力・自動化される技術である。

 

(ウ)のコンカレントエンジニアリングとは、例えば、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、各工程でそれぞれ一定程度作業が終わったところで、まとめて次工程に引き渡すといった順次方式ではなく、各工程を同時並行に進行させることで全体のリードタイム短縮を図る手法である。

 

従来の2次元設計では、金型の構造設計が完了してCAMデータ作成工程に引き渡す前に、まだ個々の部品図作成を行わなければいけない。さらに3次元CAM加工のある部品については、部品図を元に3次元モデリングも行わなければならない。

 

ところが3次元設計であれば、部品の設計も構造設計と同時に完了するため、速やかにCAMデータ作成工程に引き渡すことができる。そのため、3次元設計はコンカレントエンジニアリングに向いていると言われている。

特に短納期にこだわるメーカーでは、金型構造部の詳細設計の前に、パンチ・ダイなど意匠面部品などの3次元CADモデルを先に後工程に引き渡すといった同時並行作業をとる事例もある。

 

このコンカレントエンジニアリングの採用により同社は工作機械の稼働率を引き上げ、①金型全体の製造リードタイムの短縮により金型受注面数を増やす、②外販向け金型部品の受注売上を増やす、といった取り組みにより課題であった部門目標売上の達成を目指すこととなった。

 

同社が取り組んだコンカレントエンジニアリングの内容

前述した、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、筆者が同社の金型製造プロセスを診断したところ、③CAMデータ作成→④機械加工の工程間のリードタイムにまだ伸び代があると感じた。

 

これまで同社ではCAMオペレーターが一定数の部品のデータ作成を行った後、次工程に引き渡す「作り溜め方式」で行っていたため、設計後、機械加工がスタートするまでに一定の日数が経過していた。

 

そこで今回の改善では、設計後から機械加工開始までの期間を限界まで縮めるため、CAMオペレーターは早ければ、設計担当からモデルデータを受け取ったその日もしくはその翌日の夜間から、加工を開始できるようデータの作成、準備を行うこととした。

 

データ作成が一定量進んできた段階で、日中にも機械加工を入れていくが、まずは夜間と週末のスケジュールについて、1週間から2週間先まで優先して着手計画を埋める。

筆者はこれを新幹線のような「座席予約方式」と呼んでおり、計画的に夜間・週末の時間を有効に使い切るため必須の措置だと考えている。

 

同社のコンカレントエンジニアリング導入のポイント

今回のポイントになった点は、次の3つである。

 

  1. 緻密な着手計画を立てるため、個々の部品の加工工数を精度よく見積もること。
  2. 同社の金型は保全性を高めるための入れ子構造が多く、比較的小さな金型部品(以下「小パーツ」)が多い。小さな部品は加工時間が短いため、本来長時間の無人加工には向かないが、その対策を図ること。
  3. 機械オペレーターは、前工程への多能工化としてCAMデータ作成にも参画し機械稼働率を高める。さらに後工程への多能工化として、加工後部品の仕上げ・組み付けにも参画し、工程全体のリードタイム短縮にも貢献する。

 

着手計画の見積もりについては、量産プレスの管理で培った緻密な実績管理を行うことで見積もり精度を高め、CAMデータ担当者の協力も得ながら、着手計画の仕組みを作ることができた。

 

また小パーツの無人加工については、同社はパレットチェンジ仕様の横形・立形のマシニングなど、複数部品の無人加工に適した機械を設備しており、これを若手の機械オペレーターがプログラム改善などを行い、多数個の小パーツを長時間無人加工できる仕組みを作ることができた。

 

多能工化については、3次元CADデータを全工程で一貫して扱う同社においては、例えばプレートの穴あけのような平面的加工であっても、CAMは3次元仕様のソフトを使うことになり、一般的な2次元CAMよりも習得のハードルは高くなるが、同社の機械オペレーターは、高いチャレンジ意欲でこれを習得し多能工化を図っている。

 

コンサルティングの効果と今後の同社の取り組み

こうして同社では、コンカレントエンジニアリングの取り組みにより、機械加工工程は従来よりも早いスタートを切ることができるようになり、これまで稼働率が高くなかった設備についても目標稼働率を実現できるようになった。

 

同社は今、外販向けの金型及びパーツ品の受注拡大に取り組んでおり、設計・機械加工などの技術をさらに多くの顧客に向け提供していくことを考えている。

 

3次元CAD、パレチェン仕様のマシニング設備など高度な設備を、あるべき形でフル活用し、競争力を磨きあげていく同社に筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社ハイレックスコーポレーションのコンサルティング事例(2016年10月号掲載)

 

本号では以前、ご登場いただいた株式会社ハイレックスコーポレーション三田西工場(兵庫県三田市 TEL079-568-2480)の金型課におけるコンサルティング事例の続きとして、特にマシニング加工の改善について取り上げる。

 

近年、CAD/CAMシステムの進化によって、機械オペレーターに習熟度のバラツキがあっても、その影響をなくして加工を行うことができる。筆者も現役の加工者だった頃は、CAMオペレーター専任として複数の機械オペレーター向けにNCプログラムを作成・提供していたことがあるが、ベテラン・若手、気にすることなくプログラム作成できたことは非常に便利だと感じた。

 

しかし、このソフトウェアの進化によって、多くの金型メーカーで将来性に関わる問題が発生している。例えば、機械オペレーターにおいては、加工技術を知らないまま、段取りだけを行う「段取りマン」にとどまってしまう、また設計者においては、過去に自社で取り扱った図面を元に、修正・編集ベースでしか設計できないといった応用力の乏しい技術者が増えている。

また、そうした技術者が年齢的に中間管理職になっていることもあり、次の若手技術者に根本的な技術の視点でOJTを行うことができていない。例えば、「なぜそうなるのか?」「なぜこの方法で行うのか?」といった質問に対し、「昔からウチはこうやっているから」といった曖昧な回答をしていることも多い。

こうなるともはや、ものづくりの手段としては、場当たり的に暗記的に覚えた対応しかできなくなり、応用力が問われたり、トラブルシューティングを行う場合、対応ができなくなる。実際こうした製造現場が増えている。

本号では、こうした点への対応についても触れているので、ぜひ参考にしてほしい。

 

同社の機械加工の強み

以前、射出成形金型を扱う同課の金型製造の特徴として、①完全な3次元設計を実現、②機械加工はCAM担当者と機械オペレーターの完全分業化を実現している点などを紹介した(写真1)。

写真1 同課のCAM作業風景

これについては、人的ミスや忘れなど、手戻りロスなどが削減でき、効率的な金型製造が可能になる反面、製造工数を冗長化させるリスクもあった。

そこで同社は、さらなる製造コスト削減に着手するため、最も工数のウェイトが高い機械加工、特にマシニング加工に注力した改善に着手した(写真2)。

写真2 マシニングの技術改善の様子(担当の梶村氏と筆者)

 

同社のマシニング加工の課題

CAM担当者と機械オペレーターが分業することにより、複数の機械オペレーターに習熟度の違いがあっても、加工品質がバラつかないメリットがある。しかし、部品の種類によっては、手動操作で加工できるシンプルな形状の場合、CAMによるデータ作成に加え、CAM担当者と機械オペレーターとの意思疎通を行うための加工指示書の作成まで行うことで過剰な工数が発生する。

また、機械オペレーターは「段取りマン」になりやすく、長期的に見た場合、スキル向上の機会を得ることが難しい。同課は、新規型の製作・量産型の修理のため、高い負荷が慢性的に続いており、個々のスキル向上になかなか対応できない状況である。

 

課題解決への方向性

そこで、マシニング加工を行う部品について、加工部位に要求される面粗さごとに、次の改善を図ることとした。

 

  • 面粗さ▽の部位

荒取り工具だけで完了させる。もし加工面粗さが原因のクラック発生が懸念されるならば、リューダで手仕上げする。Gコードプログラムを使わない直線的な部位は、手動操作(ジョグ送り)の加工で終わらせる。また、CAMデータ加工で使う工具は、必ずしも手動加工でも使いやすいとは言えないため、ラフィングエンドミルなど、別の工具に使い分ける。

 

  • 面粗さ▽▽の部位

荒取りの加工条件よりも、むしろ仕上げ加工の送り条件をUPさせる。工具カタログに記載してある推奨条件は、過酷な条件となる荒取り加工の条件をセールスポイントとして記載してあることが多い。逆に、荒取りほど負荷のかからない仕上げの加工条件は、加工者固有のスキルによるところが大きい。部位にもよるが、金型構造部の▽▽の面ならばRz値12.5~25zレベルでもよいため、理論面粗さ値の計算式から、許容される送り速度を計算し、できるだけ送り条件をUPさせる。

 

  • 面粗さ▽▽▽の部位

設計面からも見直し、本当に▽▽▽レベルが必要なのかを検証する。例えば、放電加工は▽▽か▽▽▽レベルの面粗さが得られるため、オペレーターのスキルには影響されないが、部品用途によっては過剰品質になる。

また、社内で部品図面を作図する金型メーカーに多いのが、図面によっては、寸法公差・面粗さを省略している場合、加工現場では過剰な品質で加工されていることもある。

 

デジタル加工からアナログにすることで、まだ工数の削減はできる

同課の設計図面は、製図スキルの観点からも高度に書けており、一見すでに改善の余地はないように見える。しかしもう一歩、設計者が加工ノウハウに踏み込むことで、手動操作の加工に都合の良い部品構造にすることもできる。この点については、設計・CAM・マシニング、各担当が分業化されており、その間に隔たりがあることが弊害であった。

 

例えば、金型をクランプするための溝を肩削りで行うような手動加工であれば、その部品図面に記載する寸法は、基準位置からの累進寸法よりも、端面からの幅寸法の方が、電卓を打つ手間が省けミスの可能性を減らせる。

こうした体制を作るためには、設計者が加工を知らないとできないため、これは設計者としての「伸びしろ」になる。また、多能工やオールラウンドプレーヤーが多い金型メーカーと、そうでない分業制のメーカーでは、こうした点で製造コストに差が出やすい。

 

今後の同社の取り組み

今後の同課の取り組みとして、短期的にはさらなる製造コストの削減、中長期的にはベテランから若手への技術継承がある。ただし前述したように、技術継承においては、多くの金型メーカーでは、「作業手順の引継ぎ」にとどまってしまうことが多く、製造現場の技術力低下を招いている。

技術スキルの習得については、まさに「ローマは一日にして成らず」の言葉どおり、コツコツ続けていき、気づけば高度に習得できていたというものも多い。ところが多くの金型メーカーでは、短納期対応に追われ、着実な技術習得に取り組む時間が取れないのが実情である。

 

同課の、課としての金型技術としては高度に確立している。また、最新の切削工具の採用なども積極的に行っており、効果の高い改善を高頻度で行っている。今後は、技術者としての「個」の技術を高めていくことで、「社」としての金型技術を高度化させることができる。そのためには、技術者の直属の上司のマネジメント能力を高めることで、高度な技術者を計画的に育成し、将来にわたってコスト競争力を高めていく同課に、筆者はさらなる期待をしている。

 

 

ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例【後編】(3月号掲載)

 

先月号から引き続き愛知県尾張旭市にあるプレス金型メーカー・ユーアイ精機㈱における特に長期的な対策となる改善事例を紹介する。筆者が企業の経営診断で作成する診断報告書は、①経営の現状、②課題、③改善策を提示するが、③の改善策については、明日からでも取り組める短期的対策、3か月から1年後、3年から5年後といった中・長期的に取り組む対策に分けて提案している。

例えば、短期的対策については、技術面や生産管理面など比較的効果が早期に出やすい改善を取り上げることが多く、長期的対策は、組織体制の見直し、人材採用の取り組み方の見直し、販路開拓、人材育成など、効果が出るまで時間のかかるテーマを取り上げている。本号は、ユーアイ精機における中・長期的な取り組み事例である。

会社が強みとしているポイント

先月号に引き続き同社の強みを見ていくと、経営者が技術と経営の両面に意欲的に関与している点が挙げられる。筆者が日々お会いする経営者の方々はどちらかに偏っている事が多い。本来、製造業の企業経営は、受注・生産・出荷などを行う「事業」の上に、ヒト・モノ・カネを運営するという「経営」がある。ところが多くの中小製造業が日々のめまぐるしい「事業」に追われ、「経営」まで手が回っていない。

その点、同社の水野社長は経営と事業をバランスよく行っている(大変だと思うが)。例えば、解析ソフトのセミナーに社長自らが参加し、トライや型設計効率化のため積極的に研究している。さらにプレス金型メーカーには珍しく3Dプリンターを導入し自社独自の活用方法を模索している。

そういった社長を支える製造部長の存在も同社の強みである。顧客との打ち合わせや外注手配、組付けやトライまで、内外何でもこなす製造部長の存在は同社のキーマンと言える。多くの中小企業経営者には、片腕とも言える参謀や番頭役の方がついておられるが、最近筆者に多い相談は、いずれ事業承継を迎える後継者を支える参謀役が見つからないというものである。技術面に加えマネジメントまで行う人材の存在は、会社の将来をも左右するポイントになる。

粗利益を下げてしまう要因となっていた課題

ところが同社の強みはウィークポイントにもなっていた。製造部長は上流・下流工程、両方の中核業務を兼任しているため、負荷が集中すると中間工程が滞り、会社全体の稼働率を低下させてしまう要因となっていた。例えば、製造部長がトライ作業に追われていると、上流であるCAMや機械加工への手配が遅れ、受注が溜まっていてもスタートが切れない、その後差し迫った納期対応に追われるといった状況が発生し、①新しく入った仕事の話を泣く泣く断る、②外注対応で急場をしのぐ、といったことが多くなっていた。これは、粗利益=売上-製造原価という観点で言えば、まさに粗利益を下げることにつながる(図1)。

図1 高負荷による粗利益減少の要因

図1 高負荷による粗利益減少の要因

製造部長に負荷が集中する原因は、設計や組付、トライといった、特に上流と下流工程を担当する人材の技術教育が思うように進んでいないという点である。そこには会社が抱えるジレンマもある。

工作機械は高価な設備でありその投資額は大きいため、経営者としてはまずその稼動率を高め投資回収期間を短縮したいと考え、マシニングなどの稼働を優先しがちになる。しかも最近のマシニングやワイヤーカット放電加工機は、ユーザーインターフェースやCAMの操作性が飛躍的に向上し、その習得期間については昔よりも随分短縮できるようになった。

そのため同社においても機械加工担当者が優先的に配備され、育成に長期の時間を要する設計やトライ作業の人材育成が停滞するといった状況になっていた(図2、図3)。

図2 ユーアイ精機の機械加工現場

図3 ユーアイ精機のトライ作業現場

特に設計やトライ作業は経験値がモノを言う仕事であるうえ、利益貢献度を算定しにくいため、多くの中小金型メーカーでは多能工化や設計人材育成に取り組めない悪循環を生んでいる。

課題となっていた部分の改善

そこで同社は、前号で紹介した6つの段階的な生産管理項目のうち、「製造工程全体を俯瞰できる機械・作業者への割り当て計画」を機能させ、この課題解決に取り組んだ。

各工作機械に加工計画を割り当てていくと、よほど受注が満タンで、かつ隙間なく納まるスケジューリングをしない限り、空き時間は出来るものである。この時間を教育時間として事前に計画する取り組みを行った。その空き時間についても、例えば1時間空く時もあれば半日空く時もある。

技術指導の経験のある方でしたらこう考えないだろうか、「半日あったらこの練習をやって欲しい」「1時間しかないならこの反復練習をやっておいて欲しい」など。同社はこれを事前に準備して加工計画の間に教育計画を落とし込む改善を行った。機械加工から取り組むことになったが、現在はウィークポイントであった順送型の設計人材育成をおし進める計画をしている。

もう一つ行った改善は多能工化である。これにより、機械担当者に設計やトライ作業などを習得させる狙いがある。これは指示書作りなど間接コストの削減ができる「ついでに」方式によって行った。

「ついでに」方式とは、筆者が金型技術者であった時に自ら実践した多能工化を行う方法である。後工程など自分以外の作業者に意志を伝えるためには指示書などを作成するが、すぐ後の工程の作業を自ら行うことでこの指示書を不要にする。

例えば、型設計及び部品図を作ったらそのまま自分でCAMデータまで作り、そのCAMデータを作ったらそのまま自分で機械加工まで行う。機械加工を自分でやったらそのまま自分で組み立てる。そうすることで形状や寸法以外の細かな指示を省くことができ、間接コストの圧縮ができる。

本来私が18歳で金型の世界に入った頃は当たり前だったやり方でもある。倣い加工から3次元CADの計算によるNCデータで型を削るようになり、習得に時間がかかるCAD/CAM作業者は専任になった。著しい短納期化と相まって多くの中小金型メーカーでは効率化のため、各作業工程の分業化が進んだように思う。そのため後工程に意図を伝える指示書が必要になった。

「ついでに」方式はその変遷を逆戻りする方法でもある。この方法により、3次元CAD設計後の寸法入れも省くことができる。

さらなる企業の発展へ

今後同社は、順送型設計の完全内製化によるさらなる外注費の削減に取り組み、粗利益の向上を図る。さらに計画的な人材教育と多能工を増やすことにより会社全体としての余剰時間を創出し、3Dプリンターの新たな付加価値の創出といった計画もある。

そのため、機械的な金型部品の3Dモデリングだけでなく、デザイン性の高いモデリング能力を持つ人材教育に取り組んでいる。こうした将来への投資を行うことは企業を永続させることにもつながる。

今年も国内金型メーカーを取り巻くマクロ環境の変化は、経営者にとって目の離せないところであるが、同社のような先を見据えた取り組みは、その経営環境変化に備えるものである。同社は本号で取り上げた中・長期的な改善で、より多彩な能力を持つ人材育成が可能な体制をつくることができた。今後企業としてのさらなる成長が楽しみである。