金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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日程計画

協和工業株式会社のコンサルティング事例(2018年10月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、協和工業株式会社(静岡県湖西市 TEL053-579-0931)である。同社はシート部品・ステアリングコラム部品などの自動車用部品を製造する量産プレスメーカーでありながら、自社でも高精度な金型を内製しているという特徴がある。

図1 同社の金型の一例

 

また、プレス能力800トン級までの厚板・高強度、複雑・精密形状のプレス品であるシート機構部品等を生産できる技術と設備能力を持っている。

図2 同社で生産されている製品の一例

 

同社の金型製造の特徴・強み

同社の金型製造における特徴と強みは次のような点である。

 

  1. 金型製造の全工程を3次元CADデータで扱う一貫体制を構築している。
  2. 安田工業(株)製の3軸・5軸マシニングなど、高度な工作機械を多数保有している。
  3. 量産部門で培った高い管理ノウハウを金型製造プロセスにも応用しており、社内・外販向けともに高品質の金型及び金型部品を製造している。

 

今回は、同社に対し筆者のコンサルティングで行った、3次元設計の有効活用法の一つであるコンカレントエンジニアリング導入の取り組みについて紹介していきたいと思う。

 

3次元設計のあるべき3つの活用法

プレス金型設計においては、まだ2次元の設計で行うメーカーも多いが、3次元による設計もすでに多くのメーカーで使われている。

 

しかしながら、想像線などによる図の省略が自由に効く2次元の作図と比べ、3次元設計は基本的にそこに存在するもの全てをモデリングしなければならないため、2次元設計よりも多く工数がかかる傾向にある。

 

そこで、設計工数そのものよりも、むしろ後工程での省力化により、3次元設計のメリットを発揮するという考え方が必要になる。

 

そのための有効活用法として3次元設計では次の3つに取り組むと良いとされている。

 

  • 解析技術(シミュレーション)
  • フィーチャー設計
  • コンカレントエンジニアリング

 

(ア)の解析技術は、3次元モデルを利用して強度計算や塑性加工シミュレーションなどを行うものである。

(イ)のフィーチャー設計は、例えばキャップボルトやノックピンを3次元モデルのプレート上に配置すると、プレートのモデルにタップやリーマ穴、ザグリ穴など加工属性が付与されるといった機能のことで、後工程のCAMオペレーターの作業が省力・自動化される技術である。

 

(ウ)のコンカレントエンジニアリングとは、例えば、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、各工程でそれぞれ一定程度作業が終わったところで、まとめて次工程に引き渡すといった順次方式ではなく、各工程を同時並行に進行させることで全体のリードタイム短縮を図る手法である。

 

従来の2次元設計では、金型の構造設計が完了してCAMデータ作成工程に引き渡す前に、まだ個々の部品図作成を行わなければいけない。さらに3次元CAM加工のある部品については、部品図を元に3次元モデリングも行わなければならない。

 

ところが3次元設計であれば、部品の設計も構造設計と同時に完了するため、速やかにCAMデータ作成工程に引き渡すことができる。そのため、3次元設計はコンカレントエンジニアリングに向いていると言われている。

特に短納期にこだわるメーカーでは、金型構造部の詳細設計の前に、パンチ・ダイなど意匠面部品などの3次元CADモデルを先に後工程に引き渡すといった同時並行作業をとる事例もある。

 

このコンカレントエンジニアリングの採用により同社は工作機械の稼働率を引き上げ、①金型全体の製造リードタイムの短縮により金型受注面数を増やす、②外販向け金型部品の受注売上を増やす、といった取り組みにより課題であった部門目標売上の達成を目指すこととなった。

 

同社が取り組んだコンカレントエンジニアリングの内容

前述した、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、筆者が同社の金型製造プロセスを診断したところ、③CAMデータ作成→④機械加工の工程間のリードタイムにまだ伸び代があると感じた。

 

これまで同社ではCAMオペレーターが一定数の部品のデータ作成を行った後、次工程に引き渡す「作り溜め方式」で行っていたため、設計後、機械加工がスタートするまでに一定の日数が経過していた。

 

そこで今回の改善では、設計後から機械加工開始までの期間を限界まで縮めるため、CAMオペレーターは早ければ、設計担当からモデルデータを受け取ったその日もしくはその翌日の夜間から、加工を開始できるようデータの作成、準備を行うこととした。

 

データ作成が一定量進んできた段階で、日中にも機械加工を入れていくが、まずは夜間と週末のスケジュールについて、1週間から2週間先まで優先して着手計画を埋める。

筆者はこれを新幹線のような「座席予約方式」と呼んでおり、計画的に夜間・週末の時間を有効に使い切るため必須の措置だと考えている。

 

同社のコンカレントエンジニアリング導入のポイント

今回のポイントになった点は、次の3つである。

 

  1. 緻密な着手計画を立てるため、個々の部品の加工工数を精度よく見積もること。
  2. 同社の金型は保全性を高めるための入れ子構造が多く、比較的小さな金型部品(以下「小パーツ」)が多い。小さな部品は加工時間が短いため、本来長時間の無人加工には向かないが、その対策を図ること。
  3. 機械オペレーターは、前工程への多能工化としてCAMデータ作成にも参画し機械稼働率を高める。さらに後工程への多能工化として、加工後部品の仕上げ・組み付けにも参画し、工程全体のリードタイム短縮にも貢献する。

 

着手計画の見積もりについては、量産プレスの管理で培った緻密な実績管理を行うことで見積もり精度を高め、CAMデータ担当者の協力も得ながら、着手計画の仕組みを作ることができた。

 

また小パーツの無人加工については、同社はパレットチェンジ仕様の横形・立形のマシニングなど、複数部品の無人加工に適した機械を設備しており、これを若手の機械オペレーターがプログラム改善などを行い、多数個の小パーツを長時間無人加工できる仕組みを作ることができた。

 

多能工化については、3次元CADデータを全工程で一貫して扱う同社においては、例えばプレートの穴あけのような平面的加工であっても、CAMは3次元仕様のソフトを使うことになり、一般的な2次元CAMよりも習得のハードルは高くなるが、同社の機械オペレーターは、高いチャレンジ意欲でこれを習得し多能工化を図っている。

 

コンサルティングの効果と今後の同社の取り組み

こうして同社では、コンカレントエンジニアリングの取り組みにより、機械加工工程は従来よりも早いスタートを切ることができるようになり、これまで稼働率が高くなかった設備についても目標稼働率を実現できるようになった。

 

同社は今、外販向けの金型及びパーツ品の受注拡大に取り組んでおり、設計・機械加工などの技術をさらに多くの顧客に向け提供していくことを考えている。

 

3次元CAD、パレチェン仕様のマシニング設備など高度な設備を、あるべき形でフル活用し、競争力を磨きあげていく同社に筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 エスティーのコンサルティング事例(11月号掲載)

多くの金型メーカーが直面している日程管理の課題

筆者のクライアント先であるいくつかの金型メーカーでは、技術面の課題もさることながら、日程管理に苦慮している企業が多い。これは、比較的長期に製造する新規の金型と、部品メンテナンスや試作品製作などの短期に対応する仕事がそれぞれ混在しているためであり、日々短期仕事の対応に追われ、長期の仕事については、納期遅れや外注対応が増えキャッシュアウトが増加する、といった問題が常時発生している。

日程管理の課題をどう克服するか

筆者が顧問先として支援している(株)エスティー(愛知県岡崎市 TEL 0564-28-3626)は、溶接製缶業者であるが、この短期と長期の仕事が混在した日程管理にうまく対応している。

彼らが使っている手法を、筆者が支援している金型メーカーにも応用しているので、今回はこれを紹介したい。

同社の強み

まず同社の事業内容であるが、産業機械や輸送機械のフレームなどを扱う溶接製缶業者である。10メートルを超える製品など、非常に大型の製品を高精度に製作している点が特徴で、中には10メートルを超える製品であっても、1~2ミリの寸法精度に仕上げているものもある。

さらに同業他社と比較して短納期で対応できる点も特徴で、このため同社には多くの引き合いが集中し、その受注対応に日々追われている状況である。

強みならではの課題をどう克服したか

このように、高精度の大型製品を求める顧客は、同社が立地する愛知県のみならず、関東をはじめとして県外他地域まで及び、従業員18名の同社は、納期を堅守するため、短納期の仕事が日々飛び込んでくる日程計画に苦慮していた。

筆者がかかわる多くの金型メーカーでは、長い納期の仕事と、短納期の仕事、それぞれの混合生産の管理に四苦八苦している。短納期の飛び込み仕事に振り回され、長期の仕事がどんどん後回しになってしまうためだ。

しかしながら同社は、大胆な前倒しの日程計画を機能させ、その課題を解決したことにより、徹底した納期厳守と外注に依存しない生産体制の構築に成功している。

写真1 同社が日程管理に使用している生産管理板

その方法は、「納期による管理ではなく、稼働率優先の管理を徹底すること」である。

稼働率優先の納期管理とは

稼働率優先で日程計画を立てると、極端な場合、来月着手すれば良い仕事であっても、材料がすでに入荷され、図面準備が揃っており、ちょうど空いた時間にピッタリ入るのならば、今月納期のものよりも先に着手することもある。このように、先の納期の仕事であっても、事前に着手できることは徹底して前倒しで生産する。

こうした稼働率優先の生産を行うことで、納期の直前に特急仕事が集中して飛び込んできても、事前に分散できる仕組みを作っている。

逆に納期優先で管理した場合、納期に間に合うよう日々順調に生産していても、多くの中小メーカーの受注の特徴である、短納期の特急仕事が、納期直前に飛び込んでくるために、事前に仕掛っていても結局、納期に間に合わなくなるといった事態に陥ることが多い。

稼働率優先の日程管理実行のポイント

稼働率優先の管理を実行するポイントとしては、徹底した前倒し生産に徹することにある。これには、現場担当者の理解と納得を得ることが必要で、前述したように、来月作れば良いものを、今わざわざ残業して作ることになるので、その意義を正しく理解しないと、「納期に間に合えばよい」と、個々で勝手に解釈し、たちまち計画どおりに生産する意欲が減退してしまう。

そのためにはまず、「標準時間」の設定が有効である。標準時間とは、ある部品等について、一定の技量を持った者が製作するために要する計画作業(加工)時間のことである。

この標準時間を設定することで、できる限り隙間なく、稼働率を最大限に高められる日程計画を事前にパズルのように立てやすくなる。

ただし、金型製造のような多品種一品生産において、標準時間を都度いちいち算定するのは手間がかかる。しかし会社の判断にもよるが、経営を長期にとらえ、改善によって生産性を高めていくのであれば、こうした標準時間のような「ものさし」をキチンと設定していくことは重要である。

標準時間を部品ごとに設定しておけば、日程計画をつくる時に有効であるし、加工後の予実管理を行い、改善に着手するターゲットを決める手掛かりにもなる。

多品種一品生産の山積み・山崩し

長期・短期の仕事が混在する金型メーカーにおいては、次のような計画の山積み・山崩しを行うことになる。

①部品・作業ごとの標準時間の設定(工数計画)、②その標準時間を使った1、2週間の日程計画の策定(山積み・山崩し)と実行、③特急品の飛び込みにより再び計画の山積み、④短期のみならず長期仕事の納期遵守もできる日程調整(山崩し)といったように、①~④を適宜行っていくことが、多品種一品生産の山積み・山崩しとなる。

当然、飛び込み仕事の量が多い時には、③④の山積み・山崩しを次々行っていくと、日々の負荷量は増加するため、どこまで内製化し、どこから外注対応するか・納期調整を依頼するかの線引きを考える必要がある。また、この負荷量をどう減らしていくかが次の取り組み目標である「生産性の向上」であり、時間あたりの仕事量を増やせる改善や設備投資を行うことで、個々の作業者や機械の負荷を下げていくことができる。

同社の現状は、山崩しした日々の負荷の高さが尋常ではなく、労務管理面でも規定内ギリギリで対応している点が今後の課題である。

今後の同社への期待

同社は、その高い技術力・短納期対応力などにより、強みを付加価値に転換できている。今後はこれまでの、図面を受け取りその図面どおりに製作するだけではなく、川上工程である設計からの受注取り込みを推進しており、本年度においては、徐々にその売上シェアを高め、収益率も高める経営戦略をおし進めている。

さらに同社は、強みである高精度の大型製缶品を製造する際に用いている自社製のオリジナル歪み修正装置を、今後外販していく計画もある。

写真2 同社が自社開発した歪み修正装置

昨年度末、同社で行った従業員アンケートの結果が印象的で、たしかに労務面で改善要望もゼロではなかったが、「会社に将来性は感じるか」の質問には、9割以上「はい」と答えていた。

中小製造業の受注条件は、必ずしも有利とはいえないものが多く、そのしわ寄せが集中するのは製造現場である。同社が行う前倒し生産は、納期遵守ができる反面、従業員への負担も大きい。

同社の経営者は、それを上回る将来ビジョンを随時従業員に伝えることで、その理解と納得を得る努力をしている。今後さらに、付加価値・生産性を高め、かつ負荷量の低い生産に改善していく同社に期待をすると共に、参考になる手法は金型メーカーに展開していきたいと考えている。

 

 

(株) 堀部セイコーのコンサルティング事例(9月号掲載)

 

今回取り上げるメーカーは、愛知県にある(株) 堀部セイコー(愛知県豊橋市 TEL 0532-62-2522)である。同社は、旋盤加工を中心にマシニングによるフライス加工や放電加工まで幅広く対応することで、機械部品や金型部品の製作を行っている従業員7名の部品加工メーカーである。

今回は、中小製造業に多い人事面の対策事例として紹介するのでぜひ参考にしていただきたい。

中小製造業に多い人事面の問題

筆者が対応させていただく企業のほとんどは人事制度がないことが多く、その理由は主に次の2つである。

1. 中途採用が多く新卒採用が少ない。年齢と技能が合致しないことが多く、給与設定が難しい。

2. 将来的に会社業績が不透明であるため、資金余力を蓄えておく必要があり、定期昇給に躊躇してしまう。

これらの理由によって中小製造業は人材の定着率も上がらないといった課題を慢性的に持っており、本来長い年月をかけ感覚的な技能を身につけていかなければならない金型技術者の育成と新陳代謝が進まないといった現状がある。

このような理由から、多くの中小製造業が採用した従業員の短期的成果を求めるようになり、ユーザーインタフェースが進化したNC機によりそれが可能になったが、応用力の伸び悩みに苦しんでいる企業が多い。

これにはネット社会が進んだことが背景としてある。例えば、ダイス鋼の切削加工をする際、最適な工具や加工条件などが、今では簡単にネット検索で調べることができる。非常に便利になった反面、「ちょっとやってみよう」「試してみよう」といったチャレンジをしない風潮になってしまった。これもネット検索ですぐに答えが手に入るためである。

しかし、ポケット切削加工一つとっても、正解と失敗といったイチゼロの考えではなく、例えば10通りの方法で削れば10通りの結果・事象があると考えるべきである。工具の折れ方もさまざまである。シャンクから折れるのか、刃先が磨耗するのか、刃先のどこが摩耗するのか、その結果から得たことが、次の方法や条件を考える際の自分のデータベースとなる。可能な限り、色々なチャレンジを自らの手で経験し、自分の引き出しを増やしていく方が良い。

堀部セイコーの強み

同社の強みとして、次のようなものがある。

1. 多くの機械を用いる多工程の加工を内製でワンストップ対応できる。

2. 多品種小ロット生産について特に短納期で対応できる。

3. 技術習得に意欲の高い若手技術者が揃っている。

4. 汎用旋盤など、NCに頼らない機械加工の経験豊富な堀部社長が丁寧に技能を教えており、各技術者は、品質・コストのバランスを考慮した最適な工法の選定ができる。

上記4.に、若手技術者の伸び悩み解決のヒントがある。前述したように、投資コストが大きいNC機の稼働率を優先するため、汎用機の操作経験がない機械オペレーターが多くなった。このため例えば、高精度が必要でない部品であっても、NCがないと切削や穴あけができないといった者も多くなった。

同社のものづくりは、汎用旋盤を基軸とする考え方が全ての技術者に浸透しており、コストと品質、リードタイムに見合った最適な工法を選定してものづくりを行うことができる。

技術者のモチベーションと労務費の問題

部品加工業の製造原価は、主に材料費、労務費、減価償却費、外注加工費等からなるが、このうち労務費について、特に金型や機械加工の仕事は、技術者の技能に依存しており、個々の技術者のスキルと給与とのバランスはインセンティブに繋がるため、慎重に決めるべきである。

実際に、技術者の労務費の問題として、筆者には次のような相談が多い。

  • 辞められては困る従業員の給与が過大になりがちである。
  • 従業員全員の労務費合計額が他社と比べて適正かどうかわからない。
  • 基本給を決める際の評価基準がよくわからない。
  • 一度、基本給を上げてしまうと業績が低迷した時が不安である。

同社については、年齢や経験年数等による給与基準や昇給制度がまだ明確に規定されておらず、今後労務費合計額と会社業績のバランスが取れなくなったとき、粗利益を圧迫してしまうのではないかという不安があった。
そこで労働分配率で経営分析したところ、問題はなくむしろ良好であったが、従業員が希望している給与額を支払っていくと、今後将来に向けて労務費を含む製造コストが釣り合わなくなるという懸念があった。

人事制度導入で従業員の意欲と労務費を管理

そこで、従業員の理解と労務費管理を両立するための人事制度導入を行った。具体的には①等級制度、②報酬制度、③評価制度の3つである(図1、図2)。

図1 制度導入で設定した同社の3年後のあるべき姿

図2 等級制度で設定した職位別の責任範囲

特にマネジメント職だけではなく、専門技術を極めていこうとする従業員についても、別ルートで評価される中小製造業向きの制度も導入した。
導入した制度のポイントは次のようなものである。

  • 将来に渡って定着率を高めるため、毎年の昇給額を「見える化」する。
  • 労務費合計額を肥大させないため、昇給額を計画的に長期管理する。
  • モチベーションを高めるため、従業員一人ひとり評価基準を期初に伝える。

また、管理職に向く従業員と専門職に向く従業員とタイプが分かれるが、注意したいのは、必ずしも腕の立つ職人が工場長に向くわけではないという点である。多くの中小製造業を見ていると、この工場長の考え方によって工場内の風景が全く異なっている。例えば、5Sが整っているかどうかという点である。

①ものづくりをするのか、②人づくり・会社づくりをするのか、工場長が①②どちらを重視するのかで大きく会社の方向性が違ってくる。

同社は、求める工場長のあるべき姿とその報酬額、また各等級とその報酬額を労務費合計額とのバランスまで考慮しながら設定していった。等級については、次のように行動規準を設定した。

  1. 見習い職レベル:指示を仰がないとまだ作業ができない。
  2. 一般職レベル:指示がなくとも自分の職務を全うできる。
  3. 主任レベル:技能面で担当業務の指導ができる。
  4. 係長レベル:QCDを考慮した生産の指示ができる。
  5. 課長レベル:購入品の決済など、支払い面の判断権限を持ち、主にコスト面の適正管理ができる。
  6. 部長レベル:利益面で判断権限を持ち、売上とコスト、両面で適正管理ができる。
  7. 工場長レベル:安全・環境など、経営資源の全面的管理を行い、経営者レベルで設備投資判断にも参加する。

企業のさらなる発展に向けて

人事制度導入により、従業員のモチベーションと労務費の適正管理を行っていくことができ、今後さらに個々の技術を高めていく下地ができた。同社は今年、さらなる戦力UPを図るため新型マシニングを導入している。

特にユーザーインターフェースの利便性の高いヤマザキマザック(株)製のマシンであるが、同社は機械によらない技術者教育を徹底しており、今後新たな採用を行っても応用力のある技術者を育てることができるだろう。管理・技能の両面で人事体制がとれた同社は、今後企業としての成長が楽しみである。

 

 

ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例【前編】(2月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、愛知県尾張旭市にあるプレス金型を扱うユーアイ精機(株)である。従業員は18名。主要製品は自動車・厨房部品の量産用金型、試作部品、金型用部品などである。

同社社長は経営にとても高い関心を持ち、本来受注生産である金型メーカーは能動的な計画は作りにくいと言われる中、同社は5年以上先の事業計画まで作ることができている。企業独自にユーアイ・ビジョンという方針を作り、ホームページを活用して広く社内外に発信している。

会社が強みとしているポイント
同社の強みは、試作鈑金から号口金型までワンストップで対応できることである。これにより部品の試作を依頼する顧客は、量産時のプレス工法(型方案・量産工程)まで検討してもらうことができる。例えば、絞りや曲げを伴う製品を依頼する場合、試作鈑金ならプレス後の3次元レーザーによる外形トリムが多いため変形が少なく手修正も可能であるが、量産プレスでは抜き反りや途中工程の変形も考慮した工程設計が必要となるため、同社は試作の段階でその先の量産まで踏み込んだ工程設計まで行うことで依頼部品のコストや形状の事前検討を併せて行うことができる。

筆者が知る限り20人規模の企業で、試作鈑金と号口金型の両方をとり扱っているメーカーは少ない。その理由はいろいろあると思うが、まずコスト面から考えて儲けるポイントが異なる。試作板金は、1個から数点といった小ロット生産であるため、曲げ・絞り・たたき工程に必要な道具や金型にコストを掛け過ぎないことが儲けるポイントとなる。逆に号口金型は、必要な耐久性を持ち不良の発生しない安定した生産ができる金型をいかに予算内でつくれるかが儲けるポイントである。

設備面からみても保有する機械は異なる。試作板金では3次元レーザーやブレーキプレス、プレス機は油圧式が多く、号口金型はマシニングやワイヤーカット放電加工機などで、トライ用プレス機は量産時と同じクランク式が多い。

したがって小規模企業において、1つの企業で同じ製造工程による両立となると難しいと考えられるのだが、同社はそれを実現し強みとしている。

また、同社はその試作ノウハウを活かし、マグネシウムやハイテン材など難加工材のプレス技術の開発を行っている(写真1参照)。

写真1:同社の技術開発によるマグネシウム材のプレス成形品

例えば、ハイテン材をレール状に長い形状に曲げる製品はスプリングバックや反りへの対応が課題になるが、それをうまく型構造の工夫によってコントロールしている。筆者も苦労した経験があるが、大きくR状に湾曲したハイテン材の反りは特に修正が難しいため、金型への細工が必要となる。
その他、980Mpaハイテン材を箱形に曲げる製品についても、スプリングバックをうまくコントロールして1工程で直角を出す型構造も考案している。試作・号口両方のノウハウを持つ経験豊富な同社工場長の技術をうまく経営に活かしている。

粗利益を下げてしまう要因となっていた課題
前述したように同社の事業の特徴は、試作と号口、さらに単品部品加工までを幅広く受注し、これらを同じ加工工程で混合生産していることであり、これが販路拡大にも寄与している。

しかしそのため、同社の製造現場では混乱が生じた。短期の試作鈑金や部品加工、長期で再加工の多い号口金型部品が混在した生産は管理が難しい。どうしても短期仕事が優先になり、長期の仕事や負荷オーバーした分は後回しまたは外注対応になる。そうなると残業による人件費や会社からのキャッシュアウトが増え、自社の粗利益が減少していくという悪循環に陥っていた。

管理が難しくなった原因は、①扱う品種・品番が激増し部品ごとの工程管理負担が増えた、②2、3日の短いサイクルで扱う部品も混在するため新規受注のたびに行う計画変更が負担になった、などである。

課題となっていた部分の改善
筆者の経験上、金型メーカーの生産管理は、下記のように段階的に細分化するのが理想だと考えている。

① 会社全体の受注品目を管理する日程計画
② それぞれの金型ごとの工程別に分けた日程計画(ガントチャートなど)
③ 金型を構成する部品ごとの日程計画
④ 社内で加工する部品全てを工程別に分けた日程計画
⑤ 製造工程全体を俯瞰できる機械・作業者への割り当て計画
⑥ 各作業者が見る小日程計画

同社は特に④の管理に問題があったため、加工する際に準備が間に合わず着手できない部品が多発した。例えば機械加工では、着手日に材料・図面・NCデータが揃っていないといった問題である。

そこで同社は、加工工程を整流化する管理の仕組みを導入した。具体的には、特に最初の工程になることが多くボトルネックの原因にもなっていたワイヤーカット放電加工の工程で生産管理ボードをつくり、毎日4台の機械で当日加工する部品の予定をつくり細かく一元管理するようにした。

これには次のような効果があった。①材料・図面・NCデータが準備できたかどうかの見える化、②各部品の加工予定を隙間なく1日の計画に当てはめることで稼働率を最大化できる、③複数の機械間で加工予定を入れ替える調整がしやすい、などである。これにより現在は、予定外の機械の空き時間や後工程の予定遅延を減らすことができ、ムダな残業や外注費を削減することができた。

同社は、生産面の評価指標として日中の機械稼働率を用いているが、経営面としては「労働分配率」という指標を活用している。労働分配率は人件費を企業の付加価値で除したものであり、売上から材料費や外注費など外部への支払いを差し引いた自社で生み出した価値と人件費のバランスを表す。この割合は企業ごとの方針によるが、同社は毎月の人件費や外注費が多くなり過ぎていないか、この指標を使いチェックしている(資料1参照)。

資料1:労働分配率についてどう考えるかについての資料

人件費や外注費などの製造原価の増加をできる限り抑え、そのうえで受注を増やし売上を高めることが粗利益の増加につながる。従来同社の高い従業員のモチベーションは、ただ忙しく仕事をさばくことに向けられていたが、現在は粗利益を高める行動にその意識は向けられている。

同社は自社を広く認知してもらうことで「呼び込む営業」に積極的に取り組んでいる。難易度の高いハイテン材やマグネシウムなどのプレス加工にこだわり、その高度な技術に取り組む企業姿勢をホームページや講演などで社外発信している。これにより製品開発をしたいという企業から共同開発依頼を受けるなど、お願い営業をすることなく事業拡大ができている。それに応える製造現場は従来以上に多様な部品を製造しているが、営業と技術、両面から粗利益を高めていく体制をつくることができた。

今後の企業としての発展

現在マグネシウム素材においては海外企業と共同製品開発を進めている。経営全体戦略としては、競争を意識した技術・営業戦略、受注平準化への取り組みを社長が先頭に立ちおし進めている。これらの取り組みは企業を永続させるためのものであり、更に生産体制の強化もできたことで今後ますます同社の発展が期待できる。