金型・部品加工業専門コンサルティング

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5軸加工

協和工業株式会社のコンサルティング事例(2018年10月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、協和工業株式会社(静岡県湖西市 TEL053-579-0931)である。同社はシート部品・ステアリングコラム部品などの自動車用部品を製造する量産プレスメーカーでありながら、自社でも高精度な金型を内製しているという特徴がある。

図1 同社の金型の一例

 

また、プレス能力800トン級までの厚板・高強度、複雑・精密形状のプレス品であるシート機構部品等を生産できる技術と設備能力を持っている。

図2 同社で生産されている製品の一例

 

同社の金型製造の特徴・強み

同社の金型製造における特徴と強みは次のような点である。

 

  1. 金型製造の全工程を3次元CADデータで扱う一貫体制を構築している。
  2. 安田工業(株)製の3軸・5軸マシニングなど、高度な工作機械を多数保有している。
  3. 量産部門で培った高い管理ノウハウを金型製造プロセスにも応用しており、社内・外販向けともに高品質の金型及び金型部品を製造している。

 

今回は、同社に対し筆者のコンサルティングで行った、3次元設計の有効活用法の一つであるコンカレントエンジニアリング導入の取り組みについて紹介していきたいと思う。

 

3次元設計のあるべき3つの活用法

プレス金型設計においては、まだ2次元の設計で行うメーカーも多いが、3次元による設計もすでに多くのメーカーで使われている。

 

しかしながら、想像線などによる図の省略が自由に効く2次元の作図と比べ、3次元設計は基本的にそこに存在するもの全てをモデリングしなければならないため、2次元設計よりも多く工数がかかる傾向にある。

 

そこで、設計工数そのものよりも、むしろ後工程での省力化により、3次元設計のメリットを発揮するという考え方が必要になる。

 

そのための有効活用法として3次元設計では次の3つに取り組むと良いとされている。

 

  • 解析技術(シミュレーション)
  • フィーチャー設計
  • コンカレントエンジニアリング

 

(ア)の解析技術は、3次元モデルを利用して強度計算や塑性加工シミュレーションなどを行うものである。

(イ)のフィーチャー設計は、例えばキャップボルトやノックピンを3次元モデルのプレート上に配置すると、プレートのモデルにタップやリーマ穴、ザグリ穴など加工属性が付与されるといった機能のことで、後工程のCAMオペレーターの作業が省力・自動化される技術である。

 

(ウ)のコンカレントエンジニアリングとは、例えば、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、各工程でそれぞれ一定程度作業が終わったところで、まとめて次工程に引き渡すといった順次方式ではなく、各工程を同時並行に進行させることで全体のリードタイム短縮を図る手法である。

 

従来の2次元設計では、金型の構造設計が完了してCAMデータ作成工程に引き渡す前に、まだ個々の部品図作成を行わなければいけない。さらに3次元CAM加工のある部品については、部品図を元に3次元モデリングも行わなければならない。

 

ところが3次元設計であれば、部品の設計も構造設計と同時に完了するため、速やかにCAMデータ作成工程に引き渡すことができる。そのため、3次元設計はコンカレントエンジニアリングに向いていると言われている。

特に短納期にこだわるメーカーでは、金型構造部の詳細設計の前に、パンチ・ダイなど意匠面部品などの3次元CADモデルを先に後工程に引き渡すといった同時並行作業をとる事例もある。

 

このコンカレントエンジニアリングの採用により同社は工作機械の稼働率を引き上げ、①金型全体の製造リードタイムの短縮により金型受注面数を増やす、②外販向け金型部品の受注売上を増やす、といった取り組みにより課題であった部門目標売上の達成を目指すこととなった。

 

同社が取り組んだコンカレントエンジニアリングの内容

前述した、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、筆者が同社の金型製造プロセスを診断したところ、③CAMデータ作成→④機械加工の工程間のリードタイムにまだ伸び代があると感じた。

 

これまで同社ではCAMオペレーターが一定数の部品のデータ作成を行った後、次工程に引き渡す「作り溜め方式」で行っていたため、設計後、機械加工がスタートするまでに一定の日数が経過していた。

 

そこで今回の改善では、設計後から機械加工開始までの期間を限界まで縮めるため、CAMオペレーターは早ければ、設計担当からモデルデータを受け取ったその日もしくはその翌日の夜間から、加工を開始できるようデータの作成、準備を行うこととした。

 

データ作成が一定量進んできた段階で、日中にも機械加工を入れていくが、まずは夜間と週末のスケジュールについて、1週間から2週間先まで優先して着手計画を埋める。

筆者はこれを新幹線のような「座席予約方式」と呼んでおり、計画的に夜間・週末の時間を有効に使い切るため必須の措置だと考えている。

 

同社のコンカレントエンジニアリング導入のポイント

今回のポイントになった点は、次の3つである。

 

  1. 緻密な着手計画を立てるため、個々の部品の加工工数を精度よく見積もること。
  2. 同社の金型は保全性を高めるための入れ子構造が多く、比較的小さな金型部品(以下「小パーツ」)が多い。小さな部品は加工時間が短いため、本来長時間の無人加工には向かないが、その対策を図ること。
  3. 機械オペレーターは、前工程への多能工化としてCAMデータ作成にも参画し機械稼働率を高める。さらに後工程への多能工化として、加工後部品の仕上げ・組み付けにも参画し、工程全体のリードタイム短縮にも貢献する。

 

着手計画の見積もりについては、量産プレスの管理で培った緻密な実績管理を行うことで見積もり精度を高め、CAMデータ担当者の協力も得ながら、着手計画の仕組みを作ることができた。

 

また小パーツの無人加工については、同社はパレットチェンジ仕様の横形・立形のマシニングなど、複数部品の無人加工に適した機械を設備しており、これを若手の機械オペレーターがプログラム改善などを行い、多数個の小パーツを長時間無人加工できる仕組みを作ることができた。

 

多能工化については、3次元CADデータを全工程で一貫して扱う同社においては、例えばプレートの穴あけのような平面的加工であっても、CAMは3次元仕様のソフトを使うことになり、一般的な2次元CAMよりも習得のハードルは高くなるが、同社の機械オペレーターは、高いチャレンジ意欲でこれを習得し多能工化を図っている。

 

コンサルティングの効果と今後の同社の取り組み

こうして同社では、コンカレントエンジニアリングの取り組みにより、機械加工工程は従来よりも早いスタートを切ることができるようになり、これまで稼働率が高くなかった設備についても目標稼働率を実現できるようになった。

 

同社は今、外販向けの金型及びパーツ品の受注拡大に取り組んでおり、設計・機械加工などの技術をさらに多くの顧客に向け提供していくことを考えている。

 

3次元CAD、パレチェン仕様のマシニング設備など高度な設備を、あるべき形でフル活用し、競争力を磨きあげていく同社に筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社 新美利一鉄工所のコンサルティング事例(2018年5月号掲載)

 

本号で紹介する加工メーカーは、以前登場した溶接製缶メーカーの(株)新美利一鉄工所(愛知県岡崎市 TEL0564-46-2955)である。

 

同社は、図面で書き表せないような抽象的な形状の製品であっても柔軟な対応ができ、また同業他社が受注を断るような短納期の依頼であっても対応ができるといった技術力に強みを持つ。

 

そのような同社がここ最近力を入れているのが、フライス加工を中心とする機械加工である。同社の扱う製品は、CO2アーク溶接で組み立てた後、他部品と組み合わせるなどの用途のため、フライス加工やキリ穴、ねじ穴などを追加工する。

 

これまで同社の機械加工は、そのほとんどが外注対応であったが、従来を超える短納期対応や品質確保を目指すため、2年ほど前からその内製化を強化している。

 

そのためのフライス加工設備の充実を進めているが、その導入設備が溶接製缶業界では非常にユニークであるため、本号ではそのあたりの戦略などについて紹介をしていきたいと思う。

 

同社の機械加工の強み

他の機械加工メーカーと比較した同社の強みとして、前工程から一貫して社内対応できる点がある。

 

溶接製缶メーカーから見ると、フライス加工は全く異なるノウハウであるため、簡単な追加工程度であれば自社で行うが、大きな製品やある程度の精度を要する製品のフライス加工まで自社対応しているメーカーは少ない。

 

また、機械加工メーカーから見ると、溶接作業そのものは技能資格もありOFF-JTなどで習得することも可能であるが、仮付けによる組み立てから、熱変形・収縮まで考慮した本溶接までといった作業は、経験に裏付けされた実績がなければ一朝一夕にできる作業ではない。

 

こうした事情から多くの中小メーカーでは、両方を高いレベルで行っている企業は少ない。

 

同社は、2年前のマシニング加工技術に長けた小坂 伊佐三氏の入社をきっかけに、急速にフライス加工の生産体制を整備、拡大している。

 

また、溶接製缶業での同社の強みである、5台のレーザー加工設備をフライスの前工程に活かし、特に、溶断後にフライス加工を行うような製品については、同業他社には真似できない短納期化と低コストを実現している。

 

同社ならではの特殊機械の導入

そもそも溶接製缶品のフライス加工には、次のような難しさがある。

  • 段取り:6面フライスした鋼材のように、溶接製缶品にはバイスでしっかり挟める製品が少ない。溶接製缶品は10ミリ前後の板を箱状に組み合わせた筐体であるため、油圧バイスなどの段取りが不可能であり、しかも、いびつな形状の製品が多いため、加工そのものよりも段取りや冶具製作の方が難しい。
  • 加工ビビリ:板を張り合わせた製品が多いためワーク剛性が弱く、加工ビビリが起こりやすい。また前述したように、いびつな形状が多いため、しっかりとクランプできない場合にはやはり加工ビビリが起こりやすい。
  • 突き出しの長い工具:いびつな製品のフライス加工は、ワーク上面から深く入りくんだ場所への加工を余儀なくされることが多く、細く突き出しの長い工具で加工することも多い。突き出しの長い工具のフライス削りは、工具たわみや振れなどが起こりやすく、加工精度や面粗さを確保することが難しい。

 

こうした難しさがある溶接製缶品のフライス加工であるが、被削材の硬さとしては、そもそも炭素の多い鋼材は溶接自体が厳しくなるため、業界として硬い高炭素鋼はほとんど使われてこなかった。

しかし昨今は、硬い高マンガン鋼も使われることもあり、切削抵抗の高さという点においても、従来よりも難しさは増している。

 

溶接製缶品のフライス加工の難しさに対応した機械選び

こうした加工上の背景から同社は、溶接製缶を扱う同業他社では持っていない、ユニークな機械を導入している。

 

元々、NCフライス盤は持っていた同社であるが、自動機としてまず、一般的な立形マシニングセンターを導入した。そして次に導入したのが、横幅6,050ミリの極めて横長なテーブルを持つイワシタ社製の長尺NC加工機である。

図1 同社が導入した長尺NC加工機

この設備は、同社が得意としている長い角パイプ材の溶接品への対応に強く、またニッチなテーブルサイズを持つため、ピンポイントでこの機械でしか加工できない加工需要も多くあるはずである。

 

また今年新たに導入したのが、ヤマザキマザック社の5軸マシニングである。 同社が扱う製品に多いいびつな加工品に対応しやすく、フレキシブルなクランプのやりやすさ、多方面からの切削・穴加工など、溶接製缶品の加工でこの機械を使えるメリットは非常に大きい。

図2 同社が今年導入した5軸マシニングセンター

 

同社は、こうした同業他社や協力メーカーにはない設備を導入することで、短納期、難加工品への対応で差別化を図り、競争力アップを図っている。

 

同社のコンサルティング前の課題

こうした取り組みを行う同社であるが、経営上の課題として、こうした新事業の採算性や、人事面での評価・育成をどのように進めるべきかよくわからないといった悩みがあった。

 

同社はこれまで溶接製缶一本で事業を行ってきており、溶接技術であれば、事業性や従業員の技能も評価ができるが、これまで自社で経験がない機械加工については、業界相場の利益率や、技術者の基準となる技術とそれに伴う給与相場などがわからなかったため、事業拡大当初はこのまま進めていって良いものか不安をぬぐえなかった。

 

同社のコンサルティング内容

そこで同社のコンサルティングを行っている筆者は、①事業の採算性評価、②従業員の評価・育成、③新事業のPR戦略について、アドバイスを行った。

 

  • 事業の採算性評価:部門別で損益を評価する案をアドバイスした。機械加工で発生する主な変動費は、材料費や治具費、消耗工具などがあり、固定費は人件費や電力費、ツールホルダーなどの工具費がある。これらを月次で管理し、事業単体での採算性を評価する。
  • 従業員の評価・育成:要素技術ごとに分解した項目を使ってスキルマップ表を作るアドバイスをした。また、1年後、3年後、5年後などを想定した中期スキルマップ表を合わせて作ることで、教育計画を作ることができる。
  • 新事業のPR戦略:同社のユニークな機械設備を外部に発信する方法として、動画によるわかりやすいPRを行うアドバイスをした。なお、同社のホームページは筆者の事務所がサポートさせていただいている。

 

今後の同社の取り組み

同社の経営上の課題として、溶接技術者の新陳代謝の促進がある。同社の強みである、柔軟性の高い溶接技術は、個人技能への依存が大きく、一人前の技術者に習熟するまでに時間がかかる。

 

そうした事情からこれまで経験者を中途採用することが多かった同社であるが、本年度から初めて工業高校を卒業した新卒者(中根 聖氏)を採用する。

 

代表取締役である新美 剛一氏から高い期待をかけられている中根 聖氏であるが、素質があるとはいえ一人前になるには、長い年月をかけ積み重ねた実績が必要になるのも、溶接技術の大変なところであり、面白いところでもある。

 

大正15年からはじまった同社の歴史に、新たな流れを作ろうと取り組む同社に、筆者は大きな期待をしている。

株式会社タアフのコンサルティング事例(2018年4月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、富山県にある株式会社タアフ(富山県富山市 TEL076-429-6225)である。

同社は、総従業員数1200名を超え、国内7社・海外4社からなる立山科学グループの機械加工部門としてその一翼を担い、グループが行う電子部品・精密機器、FAシステム、その他多くの製造販売事業の一端を支えている。

 

同社は、5軸、門型マシニングセンターや、5面加工機など、多くの工作機械を駆使し、鉄系材料やアルミ合金などの切削加工を主力事業としている。

 

同社は当初、グループ企業で製造される、FAシステム、電子部品実装装置等の部品加工に特化し事業を行ってきたが、現代表取締役である高村 元二氏の方針は、今後ますます厳しくなる外部環境に打ち勝っていける技術力を持つためには、グループ内に供給する部品加工だけでなく、グループ外メーカーからの需要を取り込み、その競争の中で他社を凌駕する技術を得ていく必要があるという考えであった。

 

その同社が今注力しているターゲット市場が、航空機部品の加工事業である。

2014年5月に航空機メーカーと取引を開始、2015年5月にJISQ9100を取得し、これまで同社が培ってきた軽金属をはじめとした精密部品の加工技術と、高度な品質管理といった同社の強みが発揮できる分野でもある。

同社は今、この事業を収益の柱とするべく、さまざまな取り組みを行っているところである。

 

その取り組みの中、同社はさらなる競争力を得るために、より精度の高い原価管理の仕組みが必要だと考えていた。そこで、同社の多品種生産に特化した原価管理の仕組み構築について、筆者がサポートすることになった。

 

今回は、この同社へのサポートを取り上げ、多品種生産特有の原価管理について解説していきたい。

 

同社の強み

同社の強みとして、立形・横形・5軸加工機など、多彩なマシニングセンターの最新機を豊富に設備している点がある。これらの設備を2直体制でまわしており、高い生産性を実現している。

タアフ 図1-1

タアフ 図1-2

 

また、製造現場は高い改善意欲を持っており、2011年より開始した改善提案制度では、現在700件を超えた提案があがっている。そうした提案の中で生まれ、徹底した外段取りの一つに、工具長までセッティングしたマシニング用ツールと加工素材をセットにしたワゴンを、機械横に配膳する仕組みがある。

タアフ 図2-1

タアフ 図2-2

 

同社のオペレーターの役割分担として、機械オペレーターと冶具設計・CAMオペレーターは切り分けて担当している。

 

同社には24パレットの横形マシニングがあるが、こうした設備を高い稼働率でまわすためには、信頼性の高いCAMデータが欠かせない。同社ではこうした特殊設備の稼働を専任のオペレーターが支えている。

 

コンサルティング前の課題

こうした強みを発揮し、航空機事業を進めている同社であるが、盛んに行われている現場改善の効果と、企業の収益性との関連がはっきりと見えてこないという課題があった。

 

これは多品種生産でありながら、大量生産向きの原価管理だったことが原因の一つであった。大量生産式の原価集計は、製品ごとにかかる人件費を計算する際、出来高に対し一定割合でかかった工数を案分することが多い。

例えば、200時間かかる機械工数の製品であれば、一律に20%や30%などの人件費を見込んで計算するというものである。

 

しかし、この方法は実際の「作業者」の実績や、取り組んだ改善効果が見えてこない弊害がある。また、新規受注する際にも、製造現場の余力がどれだけあるのか、わからなくなってしまう。

 

機械加工業においては、どれだけ機械が空いていたとしても、機械を仕掛けるのは人間であり、原価の大半は機械加工が占めていても、仕掛ける作業者の余力もなければ稼働率を高めることはできない。

この作業者の工数を適正に把握できていない点が、同社の課題であった。

 

コンサルティングの内容

筆者と共に、同社が見える化したい指標を洗い出した結果、次のものが挙がった。

  • 製品ごとの収益性
  • 機械ごとの生産性
  • 作業者ごとの生産性
  • 部門ごとの収益性
  • リアルタイムな企業損益

 

これらを見える化するためのデータを横断的に集計していく方法として「追番管理方式」がある。追番管理方式とは、仮に同じ製品であっても、生産ロットごとに連番を振り分け、都度別々に管理していく方法である。

 

この方式のうえで、作業者の工数を負担にならない方法で集計していくこととした。これにより、ロット数や加工状況に応じたリアルな工数を集計することができるようになる。

 

また、同社の課題であった、企業損益と改善効果をどう関連付けるかという問題であるが、これは機械加工における利益構造の複雑さが根本原因である。

 

そもそも機械加工における製品ごとの原価には、材料費・工賃・購入品費・外注費などがあるが、この中で「工賃」の扱いが難しい。

 

工賃とは、人の作業や、機械加工でかかったコストであり、例えば年間にかかる総人件費を、どう製品ごとに案分するかという問題がある。

 

これについては、通常、マンレートやマシンレートと呼ばれる一時間や一分あたりの人件費や機械償却費を、製品ごとにかかった工数を乗じて計算する。

 

ところが、日々の改善効果によって、製品ごとの作業や機械加工の時間を削減できても、企業損益における費用の大半を占める人件費や機械償却費、リース費用などは固定費であって、これが減るわけではない。

これが、企業損益と改善効果がうまくリンクしない原因である。

 

製造原価における材料費・工賃・購入品費・外注費などのうち、工賃以外のコスト削減は、決算数値に直接現れる。例えば、高額な工具を、同等の性能を持つ安価な工具に置き換える改善などは直接、工具購入品費の削減として利益の増加に寄与する。

 

ところが「工賃」の削減についてだけは、直接損益に直結しない。例えば、ある製品の作業工数を半分にしたからといって人件費、つまり給与を減らせるということにはならないためだ。

 

そこで、生産余力の管理というのが重要になる。

 

作業工数・機械加工工数の削減によって生まれるのは生産余力であり、その余力に(A)新たな受注を取り込むか、(B)外注に出ている仕事を社内に取り込むしか、利益アップさせる方法はない。

 

今回筆者は、原価集計の具体的方法と、改善を利益に反映させる方策をアドバイスした。そして今後は筆者と共に、前述した①~⑤の見える化と、生産余力を適正に管理できる仕組みを構築していく。

 

同社の今後の取り組み

今後同社は、とりまとめた原価管理の仕組みをITシステムとして構築する。同社の属する立山科学グループは、システムソフトの外販も手掛けているため、同社の管理システムについても、すでに高度なソフトで運用している。

 

これから取り組むことは、意欲の高い技術者の改善効果を適正に見える化できるITシステムの高度化である。

また今年度は、高度な自動システムを取り入れた新工場を立ち上げる計画もある。

 

技術者のノウハウや先端設備の性能、そして高度なITシステムといった様々な方面からの強みを磨きあげている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、以前にも登場していただいた株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績があり、この分野の製品に多い、薄肉でありながら高い寸法精度を要するといった加工品を扱っており、加工技術については工具・加工法・材料・温度管理・品管技術など、様々な方面からの知見を持っている。

 

また、研究開発への意欲も高く、これまで経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の認定も経験している。

 

昨年に引き続き、筆者は同社の技術者研修を担当させていただいた。前回は、HSMWorksを使った5名による3次元加工の研修であったが、今回はHSMWorksを使った5軸加工の若手技術者研修を行った。

 

同社の5軸加工

同社は、5軸加工が可能な工作機械として、DMG森精機のDMU50や、MAZAKのINTEGREX300-Ⅳといったマシンを設備しており、航空機部品の加工には欠かせない存在となっている。

 

同社が行っている5軸加工は、いわゆる「割り出し位置決め5軸加工(以下、割り出し5軸加工)」と呼ばれるものである。

 

一般的に5軸加工には、「割り出し5軸加工」と「同時5軸加工」と呼ばれるものがあり、どちらもX・Y・Zの3軸に加え、A・B・Cのうちいずれか2つの軸を加え、真上からしか加工できない3軸加工から、自由な角度で側面方向に傾斜・回転させて加工するようなものを言う。

 

その5軸加工の中で、「同時5軸加工」は、XYZの3軸だけでなく4軸目、5軸目まで動かしながら加工するものを指す。これにより、よく5軸加工でとりあげられるインペラの羽根部の加工など、工具中心軸の角度を可変しながら加工しなければならないような形状においても対応が可能になる。

 

ただし、マシニングセンターなど工作機械を動かすNCプログラムについては、工具軌跡があまりにも複雑になるため、5軸加工が可能なCAD/CAMに軌跡を計算させることになる。人間が直接手入力でプログラムを組むことはほとんどない。

 

逆に、「割り出し5軸加工」は、工作機械の4軸目、5軸目、例えば、立形トラニオンタイプであれば、旋回テーブル(C軸)とチルトテーブル(A軸)といった組み合わせがあるが、C軸とA軸の動きは止めたうえで、XYZの3軸を動かす3次元加工を行ったり、穴あけやポケット加工などの2次元加工を行ったりする。

 

この使い分けとして、「同時5軸加工」は非常に複雑な形状の加工ができる反面、最大5つの軸を同時に動かすため、それぞれの軸の同期・タイミングが非常にシビアに要求され、工具軸が自由に動きながらその工具先端は位置精度を再現しなくてはならないため、どうしても加工精度の面では不利になる。

 

反面、「割り出し5軸加工」は、4軸目、5軸目を固定したまま、3軸加工を行うため、「同時5軸加工」に比べると、加工の自由度は減り、ホルダーの衝突を回避させながら最も工具突き出し長さが短くできる加工軌跡を探してくれるという利便性は出せなくなるが、加工精度を出すという点では、圧倒的に有利になる。

 

筆者も、自動車部品のプラスチック金型において、大型の傾斜コアやスライドコアの加工で、「割り出し5軸加工」を使った経験があるが、旋回テーブルとチルトテーブルを回転させ、多方向からの切削加工を行う際、球状の測定ゲージを使い、それぞれの方向での加工原点を測定し直すことで、10~20ミクロン単位の加工精度に対応できた経験がある。

 

まさしく同社の製品は、10ミクロン、製品によってはそれ以下の精度が要求される部品もあり、5軸加工については「割り出し5軸加工」が最適だと思われる。

 

使用しているCAM、HSMWorksについては、加工プロセスを定義(ジョブの定義)していく中で、常に途中でのワークの状態を認識させながら、加工パスを作成していけるため、色々な方面から5軸加工を行っても、加工パスを重複させずにデータ作成を行うことができる。まさしく同社の加工には適している。

 

5軸加工研修での課題

このように「割り出し5軸加工」は、真上(Z方向)からだけでなく、多方面からの工具軸の加工を高精度に行える反面、「同時5軸加工」とは違い、どの方向から加工を入れるかCAMオペレーターである人間が自分で考えなくてはならない。

 

また、同社が扱う薄肉形状の加工品は、途中プロセスにおいて、どこを残し、どこを先に削っていくかの判断が難しく、単に削れればよいということではなく、ワーク剛性が弱くなってくることでのビビリ発生などを考慮し、削り残り量のバランスをとりながら進めなくてはならない。

 

今回の研修課題は、CAMの操作よりもむしろ、加工順序を工夫しなければならないといった加工形状を採用している。

 

また、今回の5軸加工研修では、同社のDMU50を使った実加工までの実践を課題としているが、これはCAMデータを作成するだけでは、最も難しいテーマの一つである、期限内に要求品質を満たしつつ加工を終わらせるといった技術が身につかないためである。

 

加工時間を短くするためには、工具の送り速度を上げ、仕上げの送りピッチを粗くすればいい。荒取りについても、大きな工具を使い、送り速度を上げれば時間を短くすることは可能だ。

 

しかし今回の研修でも起こったが、送り速度を上げると加工ビビリが発生するし、送りピッチを粗くすれば仕上がり面も汚くなる。

5軸加工はそもそも高い剛性のワーククランプができない場合が多く、大きな荒取り工具を使用すると加工ビビリが発生したり、ひどければクランプが外れてしまう。

 

また、工具の突き出し長さをできるだけ短くするため、細かく多方面から加工を入れるようCAMデータを定義したが、やり過ぎるとCAMデータ作成時間がどんどん伸びる。確認しなければならない項目も増え、ミスのリスクも高くなる。

 

今回受講した入社2年目の小木曽 圭氏は、限られたCAMデータの作成時間と、DMU50を使った加工時間の制約に悩み苦しみながら課題を進めていった。

図1 CAM操作実習を行っている様子

図2 5軸加工機の操作実習を行っている様子

 

今回、小木曽氏の5軸加工の研修日数は、のべ5日である(日あたり7時間)。

 

彼はその日数の中で、課題形状の3DモデリングからCAMデータの作成、そのデータを使った5軸加工機の実加工まで期限内で見事課題をクリアすることができた。

 

まとめ

今回、若手社員の5軸研修と並行してベテラン社員の研修も行ったが、カリキュラムの一部として、HSMWorksと同じCAMエンジンを持つFUSION360を使ったモデリングとCAMデータ作成演習を行った。

 

クラウド型の3次元CAD/CAMであるFUSION360は、同社が扱うSOLIDWORKSと同じパラメトリック式のCADモデリングができ、割り出し5軸加工のデータ作成も可能であり、各種工作機械に対応したポスト処理もできる。

 

年間使用料4万円以下で使用できるCADとして注目されているが、同社においては慣れ親しんできたHSMWorksを扱う5軸エンジニアを増やすことに寄与すると思われる。

 

筆者はこれまで2年、同社をサポートさせていただいたが、高度なエンジニアを増やすことへの教育投資を惜しまない同社に筆者は大きな期待をしている。

 

有限会社ヤマヤス工業のコンサルティング事例【後編】(2017年2月号掲載)

 

先月号に引き続き、有限会社ヤマヤス工業(愛知県稲沢市  TEL 0587-32-3587 以下、「ヤマヤス工業」)における、金属切削加工業界への新規参入の取り組みを紹介する。

 

最近の金属加工業界は、下記の要因などにより、従来と比べ益々厳しくなっている。

  • エンドユーザーからの要求品質の高まり
  • 国内外含めた過度な価格競争
  • 総じて技術水準が上がり、難易度の高い加工品が増加

 

これが全てではないが、いわゆる生産管理用語でいうところの、QCDが強まっているということに他ならない。まさに新規参入を図る同社にとっては、いきなり高いハードルが立ちはだかっている。

 

コンサルティング前に抱えていた課題

ヤマヤス工業にとって大きな課題であったことは、①販路開拓のきっかけがない、②具体的な引き合い案件がなく技術者教育における実践の場が得られないことであった。

 

特に、技術者育成については、「知識」の習得と、「技能」のトレーニングの2つが必要となるが、基礎知識の習得は筆者からの教育により進めることができても、技能のトレーニングについては、今後受注していく加工案件を想定したものが、本来は望ましい。

 

しかしヤマヤス工業には、まだ具体的な加工案件も無かったため、何を実践し技能の訓練を積めばよいかわからなかった。

 

筆者のネットワークを活用し、企業連携により解決

そこで、筆者のネットワークを活用し、①技術者教育、②販路開拓、それぞれについて対応していくことにした。

 

技術者習得については、以前本連載に登場したユーアイ精機株式会社(以下、「ユーアイ精機」)と連携し、ヤマヤス工業の担当者がプレス金型の設計から加工までについて学ぶ。

また、販路開拓については、これも以前登場した株式会社プロイスト(以下、「プロイスト」)との連携により、ヤマヤス工業が導入した5軸加工を活かせる仕事の受注獲得を図る。

 

これについては、それぞれの会社にメリットがなければいけない。その点も含め、具体的な取り組み内容について見ていこう。

 

ユーアイ精機(株)との連携

以前紹介した通りユーアイ精機は、プレス金型の製作だけでなく、試作板金から単品部品加工なども請け負う幅広い対応を行う金型メーカーである。

 

これは今後、5軸マシニング(以下、5軸MC)を活かし、幅広く金属加工を受注していこうとするヤマヤス工業にとって、まさに良いお手本となる。

 

そこで、これまでプリント基板の穴あけ加工をメインに行なってきたヤマヤス工業であるが、今後短期間で金属加工を事業化させるため、担当者である佐古氏を1年間ユーアイ精機に出向させることにした。

 

またその出向と共に、ヤマヤス工業が導入した5軸MCは、同じく1年間、ユーアイ精機の工場に設置することとし、佐古氏と共にお世話になることになった。

 

ユーアイ精機(株)にとって課題となっていたことは、金型製作における設計担当者を計画的に育成することであった。

 

今回、ヤマヤス工業が3次元CAD/CAMを活用した5軸加工を進めていくにあたり、担当者の佐古氏の教育計画が必要になる。

そこで、3次元CAD/CAMの操作の習得をはじめ、ユーアイ精機の工場で仕事をするための金型設計ノウハウの習得などについて、一連の教育内容を体系化し、今後ユーアイ精機の社内でも使える教育資料としてまとめることにした。

 

これにより、今後ユーアイ精機としては、3次元設計ができる担当者を計画的に育成していく教育カリキュラムを作ることができる。

また、ヤマヤス工業としても、今後開拓する受注案件として、受け取った図面の加工だけでなく、金型及びその構成部品の加工について、設計から着手することで、請け負う仕事に付加価値を与えることができる。

 

この取り組みについて筆者も、佐古氏への金型設計の指導と、金型製作業務に適した作業要領書の作成についてサポートを行った。

 

金型製作の業務は、ルーチンワークではなく応用力が問われるため、作業の標準化も必要だが、KYT(危険予知訓練)に近いトレーニングが必要となる。

 

例えば、金型設計やその機械加工などにおいて、その腕の良し悪しは、どれだけ加工後に発生する諸問題を予測できるか、またその対処の引き出しをどれだけ持っているかで決まってくる。

 

そこで今回、ヤマヤス工業の佐古氏に指導した内容については、①正しい手順とそのやり方、②間違ったやり方、③起こりうる不具合・問題点の3つの切り口で要領書をまとめた。

 

例えば、マシニング加工におけるワークの段取り作業については、正しい手順、よくある失敗例までを指導する。さらにその失敗した段取りから金型におけるどのような不具合影響が起こるかを、まずは佐古氏自らが考える。そしてその事象の裏づけとなる知識まで指導を受け、それをまとめる。

写真1 ユーアイ精機の今本氏から指導を受ける佐古氏

 

出来上がった要領書は、ユーアイ精機にとっても財産となり、このWin-Winの関係こそが今回の連携の最大の目的であった。

 

(株)プロイストとの連携

次に、ヤマヤス工業とプロイストとの連携についてである。

プロイストは航空機部品などの仕事を請け負っていることもあり、5軸加工機が必要な受注案件を検討していた。そこで今回、筆者のネットワークを通じ、2社での共同受注を進めていくことにした。

 

この取り組みにより、プロイストは協力会社のリソースとして5軸加工を営業ツールとしていくことができ、またヤマヤス工業は5軸加工を必要とする受注案件に対応することで、例えば同時5軸加工を自社技術として蓄積していくきっかけにつながる。

写真2 同時5軸のサンプル加工データを作成している様子

 

また、プロイストは金型メーカーでありながら、鉄系材料やアルミなどの非鉄金属など、さまざまな材料の加工に対応しており、ヤマヤス工業はその加工ノウハウにも触れる絶好の機会である。

 

昨今、国内の金属加工業界においては、極めて短納期の対応に加えて、発注側企業の負担低減につながる、材料調達から加工、後処理までの多工程を全て請け負う、いわゆるワンストップ受注も求められている。

 

もちろんプロイストもこうした受注方法を進めている中で、ヤマヤス工業との連携により、より技術的付加価値の高い受注活動を進めていくことができる。このWin-Winの関係についても、まさに今回の連携の目的である。

 

ヤマヤス工業の今後の取り組み

今回3社の連携について取り上げたが、今後は筆者のネットワークを通じて、さらに連携する企業の数を拡大していく計画である。そこに必要とされるのは、個々の企業に不足しているリソースの相互補完であり、そこにWin-Winの関係が生まれる。

 

逆に頼るだけの依存性の高い関係を求める企業が参加することは、その関係崩壊になりかねない。そうした意味で、まず単工程としてより高い技術的付加価値を得ていくため、ヤマヤス工業は大学との連携により、同業他社よりも一歩さらに進んだ切削加工技術にチャレンジしている。

 

こうした様々な連携活動により、成熟の進んだ金属加工業界での早期の成功を目指すヤマヤス工業に、筆者は大きな期待をしている。