金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

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CAD/CAM

協和工業株式会社のコンサルティング事例(2018年10月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、協和工業株式会社(静岡県湖西市 TEL053-579-0931)である。同社はシート部品・ステアリングコラム部品などの自動車用部品を製造する量産プレスメーカーでありながら、自社でも高精度な金型を内製しているという特徴がある。

図1 同社の金型の一例

 

また、プレス能力800トン級までの厚板・高強度、複雑・精密形状のプレス品であるシート機構部品等を生産できる技術と設備能力を持っている。

図2 同社で生産されている製品の一例

 

同社の金型製造の特徴・強み

同社の金型製造における特徴と強みは次のような点である。

 

  1. 金型製造の全工程を3次元CADデータで扱う一貫体制を構築している。
  2. 安田工業(株)製の3軸・5軸マシニングなど、高度な工作機械を多数保有している。
  3. 量産部門で培った高い管理ノウハウを金型製造プロセスにも応用しており、社内・外販向けともに高品質の金型及び金型部品を製造している。

 

今回は、同社に対し筆者のコンサルティングで行った、3次元設計の有効活用法の一つであるコンカレントエンジニアリング導入の取り組みについて紹介していきたいと思う。

 

3次元設計のあるべき3つの活用法

プレス金型設計においては、まだ2次元の設計で行うメーカーも多いが、3次元による設計もすでに多くのメーカーで使われている。

 

しかしながら、想像線などによる図の省略が自由に効く2次元の作図と比べ、3次元設計は基本的にそこに存在するもの全てをモデリングしなければならないため、2次元設計よりも多く工数がかかる傾向にある。

 

そこで、設計工数そのものよりも、むしろ後工程での省力化により、3次元設計のメリットを発揮するという考え方が必要になる。

 

そのための有効活用法として3次元設計では次の3つに取り組むと良いとされている。

 

  • 解析技術(シミュレーション)
  • フィーチャー設計
  • コンカレントエンジニアリング

 

(ア)の解析技術は、3次元モデルを利用して強度計算や塑性加工シミュレーションなどを行うものである。

(イ)のフィーチャー設計は、例えばキャップボルトやノックピンを3次元モデルのプレート上に配置すると、プレートのモデルにタップやリーマ穴、ザグリ穴など加工属性が付与されるといった機能のことで、後工程のCAMオペレーターの作業が省力・自動化される技術である。

 

(ウ)のコンカレントエンジニアリングとは、例えば、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、各工程でそれぞれ一定程度作業が終わったところで、まとめて次工程に引き渡すといった順次方式ではなく、各工程を同時並行に進行させることで全体のリードタイム短縮を図る手法である。

 

従来の2次元設計では、金型の構造設計が完了してCAMデータ作成工程に引き渡す前に、まだ個々の部品図作成を行わなければいけない。さらに3次元CAM加工のある部品については、部品図を元に3次元モデリングも行わなければならない。

 

ところが3次元設計であれば、部品の設計も構造設計と同時に完了するため、速やかにCAMデータ作成工程に引き渡すことができる。そのため、3次元設計はコンカレントエンジニアリングに向いていると言われている。

特に短納期にこだわるメーカーでは、金型構造部の詳細設計の前に、パンチ・ダイなど意匠面部品などの3次元CADモデルを先に後工程に引き渡すといった同時並行作業をとる事例もある。

 

このコンカレントエンジニアリングの採用により同社は工作機械の稼働率を引き上げ、①金型全体の製造リードタイムの短縮により金型受注面数を増やす、②外販向け金型部品の受注売上を増やす、といった取り組みにより課題であった部門目標売上の達成を目指すこととなった。

 

同社が取り組んだコンカレントエンジニアリングの内容

前述した、①金型構造設計→②部品図作成→③CAMデータ作成→④機械加工→⑤仕上げ→⑥組付け→⑦トライといった工程において、筆者が同社の金型製造プロセスを診断したところ、③CAMデータ作成→④機械加工の工程間のリードタイムにまだ伸び代があると感じた。

 

これまで同社ではCAMオペレーターが一定数の部品のデータ作成を行った後、次工程に引き渡す「作り溜め方式」で行っていたため、設計後、機械加工がスタートするまでに一定の日数が経過していた。

 

そこで今回の改善では、設計後から機械加工開始までの期間を限界まで縮めるため、CAMオペレーターは早ければ、設計担当からモデルデータを受け取ったその日もしくはその翌日の夜間から、加工を開始できるようデータの作成、準備を行うこととした。

 

データ作成が一定量進んできた段階で、日中にも機械加工を入れていくが、まずは夜間と週末のスケジュールについて、1週間から2週間先まで優先して着手計画を埋める。

筆者はこれを新幹線のような「座席予約方式」と呼んでおり、計画的に夜間・週末の時間を有効に使い切るため必須の措置だと考えている。

 

同社のコンカレントエンジニアリング導入のポイント

今回のポイントになった点は、次の3つである。

 

  1. 緻密な着手計画を立てるため、個々の部品の加工工数を精度よく見積もること。
  2. 同社の金型は保全性を高めるための入れ子構造が多く、比較的小さな金型部品(以下「小パーツ」)が多い。小さな部品は加工時間が短いため、本来長時間の無人加工には向かないが、その対策を図ること。
  3. 機械オペレーターは、前工程への多能工化としてCAMデータ作成にも参画し機械稼働率を高める。さらに後工程への多能工化として、加工後部品の仕上げ・組み付けにも参画し、工程全体のリードタイム短縮にも貢献する。

 

着手計画の見積もりについては、量産プレスの管理で培った緻密な実績管理を行うことで見積もり精度を高め、CAMデータ担当者の協力も得ながら、着手計画の仕組みを作ることができた。

 

また小パーツの無人加工については、同社はパレットチェンジ仕様の横形・立形のマシニングなど、複数部品の無人加工に適した機械を設備しており、これを若手の機械オペレーターがプログラム改善などを行い、多数個の小パーツを長時間無人加工できる仕組みを作ることができた。

 

多能工化については、3次元CADデータを全工程で一貫して扱う同社においては、例えばプレートの穴あけのような平面的加工であっても、CAMは3次元仕様のソフトを使うことになり、一般的な2次元CAMよりも習得のハードルは高くなるが、同社の機械オペレーターは、高いチャレンジ意欲でこれを習得し多能工化を図っている。

 

コンサルティングの効果と今後の同社の取り組み

こうして同社では、コンカレントエンジニアリングの取り組みにより、機械加工工程は従来よりも早いスタートを切ることができるようになり、これまで稼働率が高くなかった設備についても目標稼働率を実現できるようになった。

 

同社は今、外販向けの金型及びパーツ品の受注拡大に取り組んでおり、設計・機械加工などの技術をさらに多くの顧客に向け提供していくことを考えている。

 

3次元CAD、パレチェン仕様のマシニング設備など高度な設備を、あるべき形でフル活用し、競争力を磨きあげていく同社に筆者は大きな期待をしている。

 

 

三幸プロダクツ株式会社のコンサルティング事例(2018年9月号掲載)

 

本号で紹介するプレス金型メーカーは、三幸プロダクツ株式会社(大阪府東大阪市本庄西3丁目1番21 TEL 06-6541-9331)である。

 

同社は、ブリキなどの薄板コイル材を扱う鋼板商社である三幸商事株式会社が、プレスメーカーの大西工業を買収したことで、平成29年度より三幸商事(株)のグループ会社として、新たにスタートすることになった企業である。

図1 同社で製作された金型

図2 同社の金型で製造された製品

 

同社への支援は、技術承継などの課題を持つ同社への技術面の支援として、プレス金型にまつわる様々な知識について、筆者が8か月間の講義を行ったものである。

 

筆者が支援する他のメーカーにおいても、営業・調達・経理・量産プレス・金型製造・金型保全など各部門において、持ちうる技術知識に格差があることで、様々な支障をきたしている。

 

今回の各部門が一堂に集まり受講する部門横断的な技術講義の取り組みは、前述した課題に対する有効的な対策であり、ぜひ他メーカーでも取り組んでいただきたく、本号ではその要所などを紹介したい。

 

同社の強みとコンサルティング前の課題

同社の強みは何といっても、旧大西工業の代表であった同社顧問が持つ技術ノウハウにある。

 

現在も、プレス工法やポンチ図の作成において、同社が得意とする0.2ミリや0.3ミリの薄板絞り加工の順送金型などを製作する生産技術の中心的役割を担っている。

 

しかしながら、この点が同社の強みでもある反面、同社のウィークポイントとなっている。今後の5年、10年先を見据えると、早急な技術承継が必要不可欠であった。

 

そこで、これまで属人的であった同社のコア技術を標準化し、チームによる製造力を強化していくため、各部門の主要メンバーが一堂に集まり、筆者の指導の元、金型製造にまつわる全般知識を、まずは習得していこうということになった。

 

コンサルティングの内容

実際の講義は、次のような7つのテーマで行った。

 

  1. プレス工程設計の基礎知識
  2. 金型構造と金型設計に必要な知識
  3. 金型で使われる金属材料の基礎と使いかた
  4. 金型製作で用いられる機械加工全般と使い分け
  5. 切削加工概論
  6. 2 次元・3 次元 CAD/CAM 研修
  7. 金型製作における工程管理と原価計算

 

以下、講義で扱った内容と共に、各部門が横断的に知識を持つことのメリットについても見ていきたい。

 

  1. プレス工程設計の基礎知識

この講義では、金型製造の全工程から、最初の工程であるプレス工程設計についての基礎講義を行った。また、抜き・曲げなどのプレス工程を設計するためには、種々のプレス工法や各種プレス機の特徴や使い分けなども知っておく必要があるため、それら周辺知識なども扱った。

同社製品に多い円筒絞り加工については、絞り率の計算なども受講者全員で実践を行った。

これらの研修により、各部門の全員がプレス工程とコスト・品質の関係を知ることができ、今後は最適な金型製作と量産プレスを行うための検討をチームとして行うことができる。

 

  1. 金型構造と金型設計に必要な知識

金型設計の3段階(工程設計・構造設計・部品設計)における構造設計・部品設計を取り扱った。

 

プレス加工は大きな力を要する加工であり、金型はそれに耐える充分な強度を持つ必要がある。また、金型は長く使うツールであり、製作直後のトライ時には出てこなかった問題も、長く使ううちに出てくるトラブルもある。

 

本講義では金型構造の基礎から、不十分な設計により発生するトラブルや故障などを扱っており、これらの知識を製造側と保全側、両面が持つことで、最適な金型製作を行っていくことができる。

 

また、過剰強度の部品材料や構造は、即コストアップにつながり、企業収益を圧迫する。こうした側面を営業・調達部門も知ることで、最適コストの金型調達を行っていくことができる。

 

  1. 金型で使われる金属材料の基礎と使いかた

同社で使われるパンチ・ダイは、SKD11といった冷間ダイス鋼が主に使われており、極めて薄い板の抜き加工を行う同社の金型では、必要強度のためハイス鋼や超硬合金が使われることもある。

 

近年は各鋼材メーカーより、様々な改良ダイス鋼が販売されており、こうした各鋼材は、その使い方によって長所短所がみられることがあり、その特徴がどのような成分根拠から現れるのかも知っておくことが望ましい。

 

今回の講義では、金型パーツごとに、強度不足により発生するトラブルと合わせて、鋼材に関する知識を学習した。

 

こうした知識は金型製作担当だけでなく、保全部門においても、発生した金型故障やトラブルが、強度不足によるものなのか、機構による問題なのか原因究明に役立つ知識となる。

 

また、営業・購買部門においても、金型強度とコストの関係を知ることができ、最適な金型の見積もりや調達を行うことにつながる。

 

  1. 金型製作で用いられる機械加工全般と使い分け

プレス金型製作で用いられる機械加工については主に、マシニング加工、ワイヤー放電加工、平面研磨加工、汎用加工(ラジアルボール盤、旋盤加工など)があり、これらを精度・コストに応じて正しく使い分ける必要がある。

 

金型製造部門はもちろんのこと、営業部門においては最適な金型の見積もり、また購買部門においても最適な金型外注仕入れコストなどを算定する根拠ともなり、全部門で知っておくべき知識と言える。

 

  1. 切削加工概論

主にエンドミル加工に焦点を当てた技術知識である。同社においては、ワイヤー放電加工が主力であるが、本講義により、同業他社の技術レベルを知る機会ともなり、内製する金型と外注から仕入れる金型、それぞれの標準単価を推し量るための基礎知識になる。

 

  1. 2 次元・3 次元 CAD/CAM 研修

同社の設計は2次元であるが、プレス金型業界全体では設計の3次元化が進んでいる。

 

今後、製品の企画提案から試作・金型製作・量産プレスといった一括受注を強化していこうとする同社においては、製品の見える化ができる3次元設計はまさに今後強みになる可能性がある。

 

今回の講義においては、3次元設計の3大メリット(解析・フィーチャー設計・コンカレントエンジニアリング)など、3次元CADの基礎や活用方法などを学習した。

 

  1. 金型製作における工程管理と原価計算

今回の講義では、金型原価積算と費目ごとのコストダウン指針について取り扱っている。

 

この内容については、まさに全部門の関係者が知っておくべきであり、永続的に企業が収益を上げていくための、技術面と並んで必要となる知識である。

 

コンサルティングの成果と今後の同社の戦略に向けた取り組み

今回の研修により、各部門が横断的に同じ水準の技術知識を習得する機会を得た。

 

親会社の三幸商事(株)については、鋼板商社ということで有利に材料を調達できる強みに加え、三幸プロダクツ(株)による金型内製機能と保全機能の強化というさらなる強みを武器として今後、企画提案型の需要を拡大していこうとしている。

 

技術者の底上げによる技術承継によって、新たな需要拡大を図る同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 スズキプレス金型のコンサルティング事例(2018年6月号掲載)

 

本号で紹介するプレス金型メーカーは、以前にも登場したことのあるスズキプレス金型である(愛知県愛西市 TEL0567-25-6900)。同社は、自動車のシート部品などの絞り型などを手掛けるプレス金型メーカーであり、創業から64年に渡る長い歴史がある。

 

同社が今取り組んでいること

同社は、昨年から金型構造設計の3次元化に取り組んでいる。それに伴い、以前から外注で対応していた解析業務の内製化にも取り組んでいる。

 

今回同社は、自社で使用する3次元CADとしてシマトロンを導入している。2名のオペレーターに導入教育を受けさせ、6ヶ月間の実習期間を経て、今年から徐々に設計実務での活用をはじめている。

図1 シマトロンを用いた金型設計の様子

 

同社が選定したシマトロンは、パラメトリックという機能に特徴を持つ3次元CADであり、その他プレス金型設計の省力化をサポートする様々な機能が搭載されている。

 

本号では同社の設計3次元化の導入事例をとりあげ、プレス金型メーカーが自社の金型製作に応じた3次元CADの選定について、どのような視点で選ぶべきかを見ていきたいと思う。

 

プレス金型設計で使われている3次元CADの種類

金型の構造設計に用いる3次元CADは大別して2つの種類がある。①ヒストリー型と②ノンヒストリー型と呼ばれる方式である。

 

ヒストリー型のCADは、パラメトリック方式とも呼ばれ、設計していく過程が履歴として記録される。

 

これにより、はじめは大雑把に設計し、徐々に履歴の中にある細部の寸法や位置を微調整していくという設計手法をとる。

 

これによるメリットは、まずはイメージから形にしていくといった迅速な設計ができ、モデルを作り終わった後でも自由に編集ができ、パーツや構造を微調整し、のちに使いまわすといったリピート設計にも寄与する点である。

 

プレス金型設計で使われている代表的なヒストリー型3次元CADとしては、CATIAやNX、SolidWorks、シマトロンなどがある。

一方、ノンヒストリー型は、ヒストリー型の逆のような機能を持ち、設計操作の履歴を持たない。そのため、部品のサイズや位置を後から寸法要素で動かす操作はせず、ダイレクトに寸法を直接指定しながら部品要素をモデリングする。

 

これにより、部品を構成する要素間の依存関係を意識することなく、自由な操作でサクサクとモデリングを進めることができる。

 

したがって、同じような形状を繰り返しリピート設計する金型よりも、新しい構造や形状の金型を新たに設計する際には、軽快に作業を進めることができる。

 

プレス金型メーカーによく用いられている代表的なノンヒストリー型3次元CADとして、VisiやSpeedyMILLnextなどがある。

 

同社は今回導入したシマトロンに先駆け、以前からVisiを使っていたが、主に現場で用いるCAMデータ作成用として使っていた。

 

プレス金型における3次元CADの選び方

3次元設計をはじめる際のハードルとして、細かく表現する必要のない箇所まで詳細にモデリングする必要があり、そのため作業負担が重たくなるということがよく指摘される。

 

例えば、構造部に配置される市販部品などが例に挙げられる。そこでまずは、市販部品などの標準部品を簡単に呼び出して配置ができるかが最低限求められる機能となる。

 

また最近では、部品配置を行うと共に、ザグリ穴やタップ、リーマ穴などの機械加工定義まで合わせて付与するフィーチャー設計を行うことも一般的な作業手順になっている。

 

前述した各3次元CADについては、ヒストリー型、ノンヒストリー型問わず、フィーチャー設計が出来るシステムがある。

 

ではどのような視点で、3次元CADを選ぶべきか、それは自社が製作する金型が、ヒストリー型、ノンヒストリー型、どちらの長所が活かせるかで判断すべきである。

 

例えば、金型を用いて量産する製品が大抵決まっており、寸法は微妙に変わるが形状は大きく変わらないといった場合、製作する金型の構造やレイアウトは大きく変わらないとする。

 

その場合、部品サイズや配置、数量などを編集していく作業がメインになる。こうした場合は、リピート設計に強いヒストリー型の3次元CADが強い。

 

逆に、全く新しい形状の製品の金型を設計する場合、例えば、以前は5工程で成形していたものが、3工程になったり7工程に増えたりといったように工程設計から変更がかかり、個々の金型構造も全く新しい構造になることがある。

 

こうした構造設計を行う場合、以前作った部品ユニットを流用したり、部品同士の位置関係の計算式を流用することはかえって手間がかかり、設計工数が増加してしまうことも考えられる。

 

そのため、自社で製作する金型について、新しいパターンの構造をイチから設計していくことが多いといった金型メーカーは、ノンヒストリー型の3次元CADの方が適していると考えられる。

 

同社は、自動車のシート部品の金型を主に製作しているが、強みである絞り加工技術を活かした類似形状の金型を製作していることが多い。

図2 同社の金型で作られた製品

 

これであれば、以前導入したノンヒストリー型のVisiよりも、ヒストリー型のシマトロンの方が同社には適しており、今回はスムースに設計での活用が進んでいると思われる。

 

同社のコンサルティング前の課題

このように設計の3次元化を進めている同社であるが、会社組織としてはかつての同社の主力であったベテラン技術者の高齢化が進み、企業の新陳代謝促進が急務となっている。

 

そもそも金型製造は、設計や機械加工、組み立て、トライといったいくつもの専門職から成り立っているが、それぞれの工程において一人前の技術を得るには通常何年もかかる。

 

とりわけ設計職においては、製造現場のノウハウも知らなければ、適正品質・コストでの金型設計ができないため、一般的には一通り現場の仕事を経験してから入ることが多い。

 

同社ではこれまで、このようなジョブローテーションの仕組みがなく、主に社員の入退社をきっかけとした不定期なタイミングでの業務異動が多かった。

 

コンサルティングの内容

そこで同社では、個々の技術者が長期な視点でキャリア計画を持てるようにするため、入社から10年後までに一通り経験する仕事、またその後、自ら希望する業務について申請できるなど、中長期のキャリアプラン制度ともいうべき仕組みを、筆者と共に考案した。

 

これにより、金型技術者として自分の長所を活かしたり、出来る限り希望する業務を担当することについて、今後は会社の制度・仕組みとしてフォローしていくことができる。

 

今後の同社の狙い

今年の春、同社では新たに高校生の新卒社員を採用し、さっそく新たなジョブローテーションの制度を活用して本人のポテンシャルを引き出すと共に、長期的な視点で現代的な金型技術者を目指してもらうスタートをきっている。

 

同社では今回のコンサルティングに加え、技術面などの評価制度も整備しており、ますます難易度が上がっている自動車部品に対応できる技術者の育成・底上げを図ると共に、企業の新陳代謝を図っている。

 

金型製造の3次元化により、これまでのベテラン技術(アナログ)とデジタル技術の融合を急速に進める同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社タアフのコンサルティング事例(2018年4月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、富山県にある株式会社タアフ(富山県富山市 TEL076-429-6225)である。

同社は、総従業員数1200名を超え、国内7社・海外4社からなる立山科学グループの機械加工部門としてその一翼を担い、グループが行う電子部品・精密機器、FAシステム、その他多くの製造販売事業の一端を支えている。

 

同社は、5軸、門型マシニングセンターや、5面加工機など、多くの工作機械を駆使し、鉄系材料やアルミ合金などの切削加工を主力事業としている。

 

同社は当初、グループ企業で製造される、FAシステム、電子部品実装装置等の部品加工に特化し事業を行ってきたが、現代表取締役である高村 元二氏の方針は、今後ますます厳しくなる外部環境に打ち勝っていける技術力を持つためには、グループ内に供給する部品加工だけでなく、グループ外メーカーからの需要を取り込み、その競争の中で他社を凌駕する技術を得ていく必要があるという考えであった。

 

その同社が今注力しているターゲット市場が、航空機部品の加工事業である。

2014年5月に航空機メーカーと取引を開始、2015年5月にJISQ9100を取得し、これまで同社が培ってきた軽金属をはじめとした精密部品の加工技術と、高度な品質管理といった同社の強みが発揮できる分野でもある。

同社は今、この事業を収益の柱とするべく、さまざまな取り組みを行っているところである。

 

その取り組みの中、同社はさらなる競争力を得るために、より精度の高い原価管理の仕組みが必要だと考えていた。そこで、同社の多品種生産に特化した原価管理の仕組み構築について、筆者がサポートすることになった。

 

今回は、この同社へのサポートを取り上げ、多品種生産特有の原価管理について解説していきたい。

 

同社の強み

同社の強みとして、立形・横形・5軸加工機など、多彩なマシニングセンターの最新機を豊富に設備している点がある。これらの設備を2直体制でまわしており、高い生産性を実現している。

タアフ 図1-1

タアフ 図1-2

 

また、製造現場は高い改善意欲を持っており、2011年より開始した改善提案制度では、現在700件を超えた提案があがっている。そうした提案の中で生まれ、徹底した外段取りの一つに、工具長までセッティングしたマシニング用ツールと加工素材をセットにしたワゴンを、機械横に配膳する仕組みがある。

タアフ 図2-1

タアフ 図2-2

 

同社のオペレーターの役割分担として、機械オペレーターと冶具設計・CAMオペレーターは切り分けて担当している。

 

同社には24パレットの横形マシニングがあるが、こうした設備を高い稼働率でまわすためには、信頼性の高いCAMデータが欠かせない。同社ではこうした特殊設備の稼働を専任のオペレーターが支えている。

 

コンサルティング前の課題

こうした強みを発揮し、航空機事業を進めている同社であるが、盛んに行われている現場改善の効果と、企業の収益性との関連がはっきりと見えてこないという課題があった。

 

これは多品種生産でありながら、大量生産向きの原価管理だったことが原因の一つであった。大量生産式の原価集計は、製品ごとにかかる人件費を計算する際、出来高に対し一定割合でかかった工数を案分することが多い。

例えば、200時間かかる機械工数の製品であれば、一律に20%や30%などの人件費を見込んで計算するというものである。

 

しかし、この方法は実際の「作業者」の実績や、取り組んだ改善効果が見えてこない弊害がある。また、新規受注する際にも、製造現場の余力がどれだけあるのか、わからなくなってしまう。

 

機械加工業においては、どれだけ機械が空いていたとしても、機械を仕掛けるのは人間であり、原価の大半は機械加工が占めていても、仕掛ける作業者の余力もなければ稼働率を高めることはできない。

この作業者の工数を適正に把握できていない点が、同社の課題であった。

 

コンサルティングの内容

筆者と共に、同社が見える化したい指標を洗い出した結果、次のものが挙がった。

  • 製品ごとの収益性
  • 機械ごとの生産性
  • 作業者ごとの生産性
  • 部門ごとの収益性
  • リアルタイムな企業損益

 

これらを見える化するためのデータを横断的に集計していく方法として「追番管理方式」がある。追番管理方式とは、仮に同じ製品であっても、生産ロットごとに連番を振り分け、都度別々に管理していく方法である。

 

この方式のうえで、作業者の工数を負担にならない方法で集計していくこととした。これにより、ロット数や加工状況に応じたリアルな工数を集計することができるようになる。

 

また、同社の課題であった、企業損益と改善効果をどう関連付けるかという問題であるが、これは機械加工における利益構造の複雑さが根本原因である。

 

そもそも機械加工における製品ごとの原価には、材料費・工賃・購入品費・外注費などがあるが、この中で「工賃」の扱いが難しい。

 

工賃とは、人の作業や、機械加工でかかったコストであり、例えば年間にかかる総人件費を、どう製品ごとに案分するかという問題がある。

 

これについては、通常、マンレートやマシンレートと呼ばれる一時間や一分あたりの人件費や機械償却費を、製品ごとにかかった工数を乗じて計算する。

 

ところが、日々の改善効果によって、製品ごとの作業や機械加工の時間を削減できても、企業損益における費用の大半を占める人件費や機械償却費、リース費用などは固定費であって、これが減るわけではない。

これが、企業損益と改善効果がうまくリンクしない原因である。

 

製造原価における材料費・工賃・購入品費・外注費などのうち、工賃以外のコスト削減は、決算数値に直接現れる。例えば、高額な工具を、同等の性能を持つ安価な工具に置き換える改善などは直接、工具購入品費の削減として利益の増加に寄与する。

 

ところが「工賃」の削減についてだけは、直接損益に直結しない。例えば、ある製品の作業工数を半分にしたからといって人件費、つまり給与を減らせるということにはならないためだ。

 

そこで、生産余力の管理というのが重要になる。

 

作業工数・機械加工工数の削減によって生まれるのは生産余力であり、その余力に(A)新たな受注を取り込むか、(B)外注に出ている仕事を社内に取り込むしか、利益アップさせる方法はない。

 

今回筆者は、原価集計の具体的方法と、改善を利益に反映させる方策をアドバイスした。そして今後は筆者と共に、前述した①~⑤の見える化と、生産余力を適正に管理できる仕組みを構築していく。

 

同社の今後の取り組み

今後同社は、とりまとめた原価管理の仕組みをITシステムとして構築する。同社の属する立山科学グループは、システムソフトの外販も手掛けているため、同社の管理システムについても、すでに高度なソフトで運用している。

 

これから取り組むことは、意欲の高い技術者の改善効果を適正に見える化できるITシステムの高度化である。

また今年度は、高度な自動システムを取り入れた新工場を立ち上げる計画もある。

 

技術者のノウハウや先端設備の性能、そして高度なITシステムといった様々な方面からの強みを磨きあげている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

株式会社瑞木製作所のコンサルティング事例(2018年2月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、以前にも登場していただいた株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績があり、この分野の製品に多い、薄肉でありながら高い寸法精度を要するといった加工品を扱っており、加工技術については工具・加工法・材料・温度管理・品管技術など、様々な方面からの知見を持っている。

 

また、研究開発への意欲も高く、これまで経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の認定も経験している。

 

昨年に引き続き、筆者は同社の技術者研修を担当させていただいた。前回は、HSMWorksを使った5名による3次元加工の研修であったが、今回はHSMWorksを使った5軸加工の若手技術者研修を行った。

 

同社の5軸加工

同社は、5軸加工が可能な工作機械として、DMG森精機のDMU50や、MAZAKのINTEGREX300-Ⅳといったマシンを設備しており、航空機部品の加工には欠かせない存在となっている。

 

同社が行っている5軸加工は、いわゆる「割り出し位置決め5軸加工(以下、割り出し5軸加工)」と呼ばれるものである。

 

一般的に5軸加工には、「割り出し5軸加工」と「同時5軸加工」と呼ばれるものがあり、どちらもX・Y・Zの3軸に加え、A・B・Cのうちいずれか2つの軸を加え、真上からしか加工できない3軸加工から、自由な角度で側面方向に傾斜・回転させて加工するようなものを言う。

 

その5軸加工の中で、「同時5軸加工」は、XYZの3軸だけでなく4軸目、5軸目まで動かしながら加工するものを指す。これにより、よく5軸加工でとりあげられるインペラの羽根部の加工など、工具中心軸の角度を可変しながら加工しなければならないような形状においても対応が可能になる。

 

ただし、マシニングセンターなど工作機械を動かすNCプログラムについては、工具軌跡があまりにも複雑になるため、5軸加工が可能なCAD/CAMに軌跡を計算させることになる。人間が直接手入力でプログラムを組むことはほとんどない。

 

逆に、「割り出し5軸加工」は、工作機械の4軸目、5軸目、例えば、立形トラニオンタイプであれば、旋回テーブル(C軸)とチルトテーブル(A軸)といった組み合わせがあるが、C軸とA軸の動きは止めたうえで、XYZの3軸を動かす3次元加工を行ったり、穴あけやポケット加工などの2次元加工を行ったりする。

 

この使い分けとして、「同時5軸加工」は非常に複雑な形状の加工ができる反面、最大5つの軸を同時に動かすため、それぞれの軸の同期・タイミングが非常にシビアに要求され、工具軸が自由に動きながらその工具先端は位置精度を再現しなくてはならないため、どうしても加工精度の面では不利になる。

 

反面、「割り出し5軸加工」は、4軸目、5軸目を固定したまま、3軸加工を行うため、「同時5軸加工」に比べると、加工の自由度は減り、ホルダーの衝突を回避させながら最も工具突き出し長さが短くできる加工軌跡を探してくれるという利便性は出せなくなるが、加工精度を出すという点では、圧倒的に有利になる。

 

筆者も、自動車部品のプラスチック金型において、大型の傾斜コアやスライドコアの加工で、「割り出し5軸加工」を使った経験があるが、旋回テーブルとチルトテーブルを回転させ、多方向からの切削加工を行う際、球状の測定ゲージを使い、それぞれの方向での加工原点を測定し直すことで、10~20ミクロン単位の加工精度に対応できた経験がある。

 

まさしく同社の製品は、10ミクロン、製品によってはそれ以下の精度が要求される部品もあり、5軸加工については「割り出し5軸加工」が最適だと思われる。

 

使用しているCAM、HSMWorksについては、加工プロセスを定義(ジョブの定義)していく中で、常に途中でのワークの状態を認識させながら、加工パスを作成していけるため、色々な方面から5軸加工を行っても、加工パスを重複させずにデータ作成を行うことができる。まさしく同社の加工には適している。

 

5軸加工研修での課題

このように「割り出し5軸加工」は、真上(Z方向)からだけでなく、多方面からの工具軸の加工を高精度に行える反面、「同時5軸加工」とは違い、どの方向から加工を入れるかCAMオペレーターである人間が自分で考えなくてはならない。

 

また、同社が扱う薄肉形状の加工品は、途中プロセスにおいて、どこを残し、どこを先に削っていくかの判断が難しく、単に削れればよいということではなく、ワーク剛性が弱くなってくることでのビビリ発生などを考慮し、削り残り量のバランスをとりながら進めなくてはならない。

 

今回の研修課題は、CAMの操作よりもむしろ、加工順序を工夫しなければならないといった加工形状を採用している。

 

また、今回の5軸加工研修では、同社のDMU50を使った実加工までの実践を課題としているが、これはCAMデータを作成するだけでは、最も難しいテーマの一つである、期限内に要求品質を満たしつつ加工を終わらせるといった技術が身につかないためである。

 

加工時間を短くするためには、工具の送り速度を上げ、仕上げの送りピッチを粗くすればいい。荒取りについても、大きな工具を使い、送り速度を上げれば時間を短くすることは可能だ。

 

しかし今回の研修でも起こったが、送り速度を上げると加工ビビリが発生するし、送りピッチを粗くすれば仕上がり面も汚くなる。

5軸加工はそもそも高い剛性のワーククランプができない場合が多く、大きな荒取り工具を使用すると加工ビビリが発生したり、ひどければクランプが外れてしまう。

 

また、工具の突き出し長さをできるだけ短くするため、細かく多方面から加工を入れるようCAMデータを定義したが、やり過ぎるとCAMデータ作成時間がどんどん伸びる。確認しなければならない項目も増え、ミスのリスクも高くなる。

 

今回受講した入社2年目の小木曽 圭氏は、限られたCAMデータの作成時間と、DMU50を使った加工時間の制約に悩み苦しみながら課題を進めていった。

図1 CAM操作実習を行っている様子

図2 5軸加工機の操作実習を行っている様子

 

今回、小木曽氏の5軸加工の研修日数は、のべ5日である(日あたり7時間)。

 

彼はその日数の中で、課題形状の3DモデリングからCAMデータの作成、そのデータを使った5軸加工機の実加工まで期限内で見事課題をクリアすることができた。

 

まとめ

今回、若手社員の5軸研修と並行してベテラン社員の研修も行ったが、カリキュラムの一部として、HSMWorksと同じCAMエンジンを持つFUSION360を使ったモデリングとCAMデータ作成演習を行った。

 

クラウド型の3次元CAD/CAMであるFUSION360は、同社が扱うSOLIDWORKSと同じパラメトリック式のCADモデリングができ、割り出し5軸加工のデータ作成も可能であり、各種工作機械に対応したポスト処理もできる。

 

年間使用料4万円以下で使用できるCADとして注目されているが、同社においては慣れ親しんできたHSMWorksを扱う5軸エンジニアを増やすことに寄与すると思われる。

 

筆者はこれまで2年、同社をサポートさせていただいたが、高度なエンジニアを増やすことへの教育投資を惜しまない同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社エスケイモールドのコンサルティング事例(2017年10月号掲載)

 

本号で紹介する金型メーカーは、株式会社エスケイモールド(愛知県豊橋市 TEL0532-35-2007)である。同社は、PPやナイロン系の樹脂材料を成形素材とするモールド金型を製造するメーカーである。

 

筆者が同社をサポートすることになったきっかけは、金融機関から専門家派遣制度を活用した支援依頼があったためである。

 

同社の強み

支援内容としては、同社が自社を紹介するホームページを製作するにあたり、そのコンテンツとなるPRの内容について、自社だけでは相対的な特徴を洗い出すことが難しく、そのサポートをお願いしたいとのことであった。

 

金融機関の支援担当者と共に訪問し、代表取締役である鈴木 秀男氏からヒアリングを行ったところ、筆者は同社の事業について、次のような特徴を挙げた。

図1 構造設計・3Dモデリングを行っている様子

図2 同社の機械加工現場の様子

 

  1. 構造部・意匠面のモデリング、全てを社内設計できる体制が整っている。
  2. 新規の金型製作から納入後の修理・メンテナンスまで、全て一括で対応している。
  3. ワイヤー放電・型彫り放電、マシニング加工など、機械加工を全て内製化している。

 

これらの特徴から見出すことのできる同社の強みは、①短納期対応と②小回りの良さであろう。

 

これらを、同社の強みとして挙げたのは、モールド金型メーカーを筆者が経営診断させていただく際、本来モールド金型メーカーがコア技術とするべき業務を、ここ最近アウトソースしている傾向にあると感じたためである。

 

例えば、次のような傾向である。

  • 金型構造設計及び、キャビとコアの製品意匠面モデリング(パーティング面・勾配面のモデリングなど)を外注で対応し、CAMデータの作成から機械加工を社内で行う。
  • 機械加工の終わったキャビとコアの磨き作業を外注に依頼する。
  • 金型の組み付けは社内で行うが、トライ作業は客先にお任せする。

 

これらの傾向については、やはり年々短納期化する金型納期と、引き下げられる金型費への対応のためであると考えられる。

 

また、若手技術者の強みを活かせる分野として、CAMや機械加工といったマニュアル化・標準化しやすい作業を、今後もより内製化していく傾向になるものと思われる。

 

しかしながら、筆者のような中小企業診断士やいわゆる経営コンサルタント等は、SWOT分析などから、「強みを市場機会にぶつけ競争力の高い事業を行う」などと提案することが多いが、前述したように本来コア技術となるべき業務をアウトソースする金型メーカーについては、筆者も「強み」を洗い出すことに思わず悩んでしまうことも多い。

 

しかしながら、筆者が拠点とするここ中部地方では、まだまだ仕事量は飽和しており、どの金型メーカーも忙しく、受注についてはキャパオーバーとなっている。

 

そうしたなか、海外生産に主力を移しつつある金型メーカーも多くなってきており、今後の国内の技術・コストの競争力については、楽観視できないところもあると思われる。

 

同社の競争戦略

こうした業界事情の中、同社は同業他社との差別性を意識した戦略をとっている。

 

いかなる事業においても、企業が競争力を維持してために最も重要なこととして、「参入障壁」をいかに高くできるかだと考えている。

 

全くライバルが存在しない新しい事業というものは、このご時世なかなか無い。仮に、全く新たなプロダクト(商品)を開発できたとしても、インターネットなどによって情報が一瞬で行き渡るこの時代では、すぐに模倣品が現れ、コモディティ化してしまう。

 

ところが、金型製造という事業は、職人技術を要するために、各社これまで一定の事業領域を保ってビジネスを行ってくることが出来た。

 

それが皮肉にも、CAD/CAMや工作機械の進化により、一部の職人技術が機械システムに置き換わることで、限られた人にしか扱えない技術から、ソフトや機械を操作することで、誰にでも扱える技術に裾野が広がってきたという背景がある。

 

例えば、昨今の鏡面磨き加工がある。筆者も以前、高度ポリテクセンターにて鏡面磨きの研修を受講したことがあるが、受講生10名強の中で、最終課題である#8000の磨きの完了まで到達できた者はわずか4名ほどであった。

 

このように金型の鏡面磨きは、必要な体の動作を、一定のトレーニングにより時間をかけ段階的に習得していくものであり、やり方・方法を知識的に知ったところで、とたんに作業できるというものではない。

 

ところが、これを工作機械の加工で置き換えるとした場合、もちろんソフトや機械の操作、工具の特性・使い方など、覚えなくてはならないことは多岐に渡るが、人間がトレーニングをするといったものとは異なる技術の扱いになる。

 

一概には、どちらが覚えやすいか、覚えにくいかを明確に分けることは難しいが、前述した「参入障壁」という視点でみれば、習得に時間の掛かり、個人差が生まれやすいものほど、障壁は高いと言える。

 

また経営学で使われる用語に「経路依存性」というものがあり、これは過去に多くのさまざまな経験によって積み重ねられた技術や経験値は、他社から見ると複雑で、簡単には真似ができないといった強みを指す。これを模倣困難性と言う。

 

つまり金型業界で言えば、現時点の技術ではまだ機械に置き換えることができない人の技能や、多くの失敗・経験によって構築された金型ノウハウについては、同業他社に追従される可能性を低くできるということになる。

 

同社が内製化にこだわる、金型設計、金型の溶接補修などは、そうした経路依存性の高い技術だと言える。

 

また、他社が製作した金型についても、補修・メンテナンスを依頼されることが多く、こうした積み重ねが同社の設計において、さらなるノウハウの積み重ねとすることができる。

 

これにより、壊れない・トラブルを起こさない金型製作をより強化していくことができ、これが同社の模倣困難性をさらに高めていく。

 

今回、筆者は同社のホームページ製作をサポートするにあたり、金型を専門とするコンサルタントの目線から、中長期的な視点でこのような同社の競争力を見出すことができた。

 

同社の今後の取り組み

同社は、これまである程度決まった取引先から受注を請けてきたが、今後は事業の拡大と安定化のため、金融機関と協力した販路開拓にも取り組んでいく。

 

現在、中小企業に関わる支援策は、金融機関や公的機関を窓口に、多岐に渡って展開されているため、信用金庫など身近な金融機関などに適宜、課題を相談しながら、うまく活用することが経営の効率化にもつながる。

 

同社は事業拡大に伴い、設計対応力の強化を図るため、新たな技術者の採用に合わせてCADの拡充を検討しており、その際にはSolidWorksなどを活用した設計のオール3次元化も視野に入れている。

 

同社の強みである、長期間に渡り使用できる丈夫な金型を製作する設計ノウハウを、若手技術者に継承していくための仕組みづくりも今後必要になってくる。

 

人の持つ技術を最大限に活かした自社の競争力を高め、さらなる事業拡大を目指す同社に筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 建和【前編】のコンサルティング事例(2017年8月号掲載)

 

本号で紹介するプレスメーカーは、株式会社 建和(愛知県安城市 TEL 0566-92-6295)である。同社は、主に自動車部品のプレス量産加工を行っており、60tプレスから300tまでの単発・順送型いずれも対応しており、サーボプレスも有効に活用している。プレス板材についても、普通材からハイテンまで幅広く対応している。

 

同社の強みと事業上の課題

同社のプレス加工は、前述したように自動車部品分野において幅広い対応ができるなかで、特に安定した順送プレス加工に強みがある。この安定感により高い操業度・稼働率を生み出している。筆者も同社工場内に滞在しているときは、その途切れないプレス機械の稼働音に、生産の高い安定度を感じる。

 

こうした生産を行ううえで、金型品質はもちろん重要になってくるわけだが、同社にとって全く問題がなかったかといえば、そういうわけではない。

 

これは同社だけに限ったことではないが、総じてプレス単価が下落していることにより、その製品に用いる金型の製作費も下げざるを得なくなっている。言い方を変えれば、プレスメーカーとして、充分な金型費をかけられないということになる。

そのため例えば、本来強度的に必要な金型鋼材が使えなかったり、プレス成形精度に必要な工程と型数で製作できなかったりといった問題が起こる。

 

そうした影響を最も受けるのは、その金型を使う立場にあるプレスメーカーである。もちろん同社とて例外ではない。

 

事業上の課題に対する同社の取り組み

そこで同社は、これまで自社で経験のなかった金型設計と製作を自ら行うことを決意した。これには金型設計システムの進化や、補助金の活用などもその背景にある。

同社はこうしたプレスメーカーにとってのチャンスを見逃さず、新たな事業に打って出たのである。

 

同社の取り組みの特徴は、単に金型メーカーが従来行ってきた方法を後追いするのではなく、最新のソフトウェア・機械設備も活用したうえで、競争力のある金型製造技術を追求している点である。

 

具体的には、次の3つである。

  1. 徹底したシュミレーション技術の活用による自社独自のプレス工法の確立
  2. 3次元システムによるフィーチャー設計の活用
  3. システムのカスタマイズによる自動化の追及

 

これらの取り組みについて、具体的にみていく。

 

シュミレーション技術による独自プレス工法の確立

同社は、自社で金型設計を行うにあたり、3次元で設計することにこだわった。その理由として、成形シュミレーションとフィーチャー設計により、同業他社よりも金型製造リードタイムを縮めたいという狙いがあるためだ。

 

成形シュミレーションを活用する効果として、同社が狙っているのは、①プレス工程数を減らすこと、②トライ回数を1回で済ますこと、である。

 

プレス工程数を極限まで減らす試みについては、同社が保有するダイクッション圧・最大20トンのプレス機を、シュミレーション技術と合わせて活用することで、従来のプレス工程とは異なる新たな成形方法を考案している。この技術については、別の機会で改めて紹介させてもらいたい。

 

同社のシュミレーション業務については、代表取締役である山本道典氏が自ら行い、これまで調達してきた金型にはない新たな工法を日々模索している。

 

3次元システムによるフィーチャー設計の活用

3次元設計を行うにあたり、同社はCAD/CAMとしてVISIを使っている。このVISIの持つフィーチャー機能を活用し、設計工程以降のリードタイム短縮を狙っている。

写真 VISIを使った3次元設計事例

 

ここでいうフィーチャー設計とは、金型を3次元で設計する際に、加工情報まで合わせて定義していくことをいう。例えば、金型に締結のためのキャップボルトを配置すると、金型を構成するプレートごとに、ザグリやタップなどの加工が定義される。

 

これは従来の金型メーカーの工程である、金型の組図を設計担当が製図し、バラシ担当がプレート図面や部品図を作図し、それを現場に提供し、現場の機械担当者がプレート図面や部品図を見ながら加工データを作成するといった工程と比較すると、加工用の図面作成や加工データの作成工数を省くことが可能になる。

 

また、複雑な金型の2次元組図については、それを「読める」熟練者も昨今は減ってきている。その点、3次元設計された金型構造は、若手技術者も構造を把握しやすく、熟練者も忙しい時間の中、すぐに構造を把握できるメリットがある。

ただしこのメリットは、同じシステムで構成される社内プロセスでのみ活かされる。したがって外注製作する場合には、VISIの設計データに定義された加工データは展開できない。

 

そこで同社は、3次元設計した金型データから、外注用の加工図面の出力を自動化することで、対応を図っている。

 

こうした「自動化」こそが、同社が考える独自の金型製造システムの本当のキーワードになる。

 

システムのカスタマイズによる自動化の追及

同社は、スケジューラーソフトも導入しており、徹底してムダのない効率化した製造プロセスを模索している。

 

スケジューラーソフトについても、ここ最近多くのシステムが販売されているが、同社の選定指針は「オリジナルカスタマイズができること」であった。

 

この指針は、設計システムや現場設備であっても同様である。それは、同社が考える「他社よりも短いリードタイムの金型製造プロセスの構築」の次ステップが、「徹底した自動化」にあるためである。

 

多くの中小製造業では、少子化のあおりを受け、優秀な人材の確保が年々厳しくなっている。同社も人材確保の厳しさは例外ではない。そこで、今後益々厳しくなる状況に対し、山本社長が考えた道筋が、金型製造の徹底した「自動化」である。

 

同社が現在進めている3次元システムを最大限利用した金型製造プロセスは、将来の「自動化」のための前準備である。

 

筆者のコンサルティング

このように同社は、昨今の設計システムの進化や補助金の活用といった、プレスメーカーにとってのチャンスを最大限利用し、自社に大きな変革を起こそうとしている。

 

ただし、他の金型メーカーと比較して、やはりあくまでも新規参入企業であり、当然、金型製作については、積み上げてきた歴史というものがない。

 

そこで筆者は、同社が考える中長期の新たな事業構想に対し、23年のプレス金型や機械加工の経験をもとに、金型メーカーや機械加工メーカーが積み重ねてきた成功や失敗を踏まえ、きちんと「地に足の着いた」イノベーションを実現させるべくサポートを行っている。

 

まずは同社における川上工程の、シュミレーション→フィーチャー設計→社内・外注への最適展開、といった流れにおいては、他社に負けないリードタイムの体制を確立させることができた。

 

次は、設計システムのさらなる自動化や、川下工程である機械加工の技術力UPと自動化といった技術テーマに取り組んでいく計画である。

 

今後の同社の取り組み

今後同社は、本格的な金型製造における自動化に向け、ロボット導入のための補助金なども活用しながら、着々と進めていく構想である。

 

従来のプレスメーカーが抱える事業課題の解決を図り、自社独自のプレス技術を見据えながら、中小製造業全体が抱える問題にも「自動化」という答えで解決させようとしている同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

株式会社 瑞木製作所のコンサルティング事例(2017年6月号掲載)

 

本号で紹介する機械加工メーカーは、フライス加工や旋盤加工などの機械加工を主力事業とする株式会社瑞木製作所である(愛知県尾張旭市 TEL 052-771-8410)。

 

同社は、航空宇宙産業分野で高い実績を誇っており、扱っている加工部品のほとんどは、チタン合金やインコネルといったいわゆる難加工材である。その技術力の高さから平成19年には経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業にも認定されている。

写真1 同社に飾られているサンプル加工品とコンテスト等の受賞実績

 

同社の技術者育成の特徴

昨年、同社が使用している3次元CAD/CAMの技術者教育のため、研修講師を担当させていただいた。

 

通常、3次元CAD/CAMの技術者教育は、販売ベンダやそれを専門とする事業者を活用する企業も多いなか、個々の応用力を伸ばし自ら考える能力を養っていくといった、同社の育成方針に沿いつつ、3次元CAD/CAMを習得するということから、CAD/CAMや切削加工分野を専門とした中小企業診断士である筆者に声がかけられた。

 

今回の支援の特徴

今回、面白い取り組みがあるので紹介したい。3次元CAD/CAMシステムを5・6名でシェアして活用していく点である。

 

筆者がこれまで見てきた多くの製造現場では、3次元CAD/CAMはユーザーインターフェースが進化し使いやすさは向上したとはいえ、依然その専門性は高く、多くの金型メーカーや加工メーカーでは、専任のオペレーターが担当していることが圧倒的に多い。

 

しかし同社は今回、5名の機械オペレーターに研修を受講させ、同社が保有する2台の3次元CAD/CAMを、5人全員が利用できるようにと考えた。

 

同社が普段加工している製品形状には非常に多くの種類があり、その加工方法においては、手動による汎用加工、工作機械の対話式プログラム、2次元CAD/CAMの利用、そして3次元CAD/CAMを利用した方がよい場合など、効率性、加工精度・品質を考慮するとそれぞれに適したツールがある。

 

今後、加工を行う各作業者が、同社にある全てのツールを活用できるようになれば、多くの加工品を多能工化でき、機械稼働率を高めることができる。

また、担当する作業者に依存することなく、同社にとって最適なコスト・加工品質で、ものづくりを行う体制がより強化することになる。

 

研修の具体的内容

今回の研修を行う前、3次元データ作成作業は、限定された担当者に負荷が集中しており、そういった加工品が集中したときには、工程にボトルネックが発生していた。

 

そこで、その解決を図るべく、同社の鈴木会長の号令の元、この研修が開始された。

 

今回の研修にあたっては、これもぜひ読者企業の皆さんに参考にしていただきたい点がある。5名の受講者がそれぞれ決意表明として、特に取り組みたい点・どのような加工で活用したいかなど、一人ひとり研修開始時に発表していただいた。

 

これも鈴木会長の計らいであり、講師としては一人ひとりの現状スキルや取り組み姿勢などを知る良い機会となり、大変ありがたかった。各受講者としても、自分の力量・取り組み方を整理する良い機会ではなかったか。

 

研修に使用した3次元CAD/CAMは、オートデスク社のHSMワークスである。

 

普段、3次元CAD/CAMにhyperMILLを使用している筆者は、事前にHSMワークスの機能・操作を調査し準備したのだが、このソフトウェアは同社の加工にとって、また今回の研修にとっても、非常に適したシステムだと感じた。

 

まず加工に適した点だが、同社の事業である航空宇宙産業分野における加工品には、多くの薄肉加工部位が多い特徴がある。

 

これまで金型製作を主に加工をおこなってきた筆者にとって、例えば、高硬度材を切削する技術とは異なる、非常に繊細で、段取りから工具選定、切削手順まで幅広いテクニックを要する加工技術だと強く感じた。

 

筆者の経験上、こうした繊細で複雑な加工を行う場合、使用するCAMシステムには、工具の切削軌跡を調整するパラメーターが多ければ多いほど助かる。

 

特に、3次元CAMにおけるデータ作成の場合、その切削軌跡はコンピューターに委ねる部分が多いため、あまり人間の手で細かな調整を行うことは少ない。

 

こうした操作性はユーザーにとって、運用できるまでの時間を短縮させ、誰でも簡単にデータ作成がしやすくなった効果をもたらした点はあるが、加工面にわずかなにできるアプローチ痕の除去や、切削軌跡の違いによる美観の向上、局所的な加工負荷の抑制など、部分的に、人間のノウハウを入れ込みたい加工があっても、それができるソフトとそうでないソフトが存在する。

 

同社が使用しているHSMワークスは、こうした細かな調整が可能で、それが荒取りから仕上げ加工まで細かなパラメーターが用意されており、同社の繊細な加工の調整に応えることのできるソフトウェアであった。

 

また、今回の研修にも適していると感じた点として、このHSMワークスのように多くのパラメーターは逆にデメリットとして、ユーザビリティを低下させる一因となることも多い。

 

しかしながら、HSMワークスの場合は、デフォルト設定される各パラメーター値は、事前に登録されている固定値ではなく、都度、工具や条件に合わせた数値に自動計算され、特に必要がなければ、そのまま入力・編集しなくても支障ないように作られている。

 

前述したように、同社の技術者育成の方針は、応用性・創造性を養い伸ばす方針であり、これはまさに、オペレーターそれぞれの扱い方に応える適正なCAMである。

 

とかくCAMシステムに切削軌跡の作成を依存しがちな3次元CAMにおいて、自分のこだわりたい部分にこだわってデータ作成ができるシステムだということである。

 

このような研修方針において筆者は、HSMワークスがアドオンされているSolidWoksを用いた3次元モデリング研修、HSMワークスによるCAMデータ作成研修の最中、3D加工のセオリーや工具選定指針などの講義も織り交ぜながら、それぞれを計8回で行い、最後は各自、自由に題材を決め、実際にマシニングを使って加工を行うという演習までを行い、昨年の研修は終了した。

写真2 研修課題のモデリングとCAMデータ作成を行っている様子

 

支援の効果と今後の同社の取り組み

前述したように、同社が扱う加工品のほとんどは、チタン合金やインコネルといった耐熱合金であり、こうした素材の切削加工は、単にロックウェル硬度が高いから加工条件をどうするといった対処だけでは済まない。

 

「ねばい」ということでその切削抵抗は上がり、素材の熱伝導性から切削点や素材にこもる熱も考慮しなくてはいけない。

 

こうした特殊な切削性に対応していくためには、金属・非鉄金属に対する正しい知識や、切削メカニズム、工作機械などに関する幅広い知識が必要になる。

 

筆者は、今年度も新たなメンバーと研修プログラムで構成される講師を担当させていただくにあたり、単にCAD/CAMの操作だけではなく、包括的に同社の技術者の底上げにつながるサポートをしたいと考えている。

 

高度な成長分野を支える同社において、その基盤となる技術者を、独自の方針で育成を図り、また自社の持つ加工ツールを最大限に活かし、最善の効率化・高品質化を図る同社に、筆者は大きな期待をしている。

 

 

有限会社 丸茂伊藤精密工業のコンサルティング事例(2017年4月号掲載)

 

本号で紹介する部品加工メーカーは、㈲丸茂伊藤精密工業(愛知県津島市 TEL 0567-26-0300)である。同社は、NC旋盤を主とした機械加工を行っており、特に小型サイズの精密部品の加工を得意としている。

図1 同社が手がける精密部品の一例

 

筆者がお手伝いをしている加工メーカーは、元々筆者が金型技術者であったこともあり、金型製作のような多品種一品生産や小ロット生産を行う事業者が多い。しかし同社が扱っているのは、油圧部品などの中~大ロット生産であり、一品生産や小ロット生産を行う加工メーカーとは、管理や技術、使用する工作機械などの面で異なるところも多い。

 

同社の強み

同社は、小型の切削バイトを使わなければならないような微小な精密加工を得意としており、特に複雑な形状の内径加工を得意としている。これは、旋盤加工の中でも難易度の高い加工に位置づけられ、目視で確認できない、穴の中に隠れてしまう形状の切削加工を行うものである。

図2 同社が加工している内径加工の一例

 

こうした内径加工は、使用する工具のホルダーやシャンクサイズが、どうしても小さくなってしまうため、加工ビビリやシャンクから欠損してしまうようなトラブルを発生させない切削負荷抵抗の見極めが必要となる。

 

また、量産加工ならではの管理上の難しさもある。寸法計測しながら、試行錯誤によって段階的に加工を進めていける一品加工とは異なり、基本的には全てのロットについて、厳しい寸法公差・外観品質が確保できるよう、加工と管理の方法を確立しなければならない。

 

旋盤加工は、いかに切りくずのコントロールを行うかが重要なポイントである。外径加工であれば工具ブレーカーによる切りくずの分断などがポイントであり、内径加工であれば、穴の中で詰まらないよう、いかに切りくずを排出させるかが重要になる。

 

旋盤加工を行う各メーカーは、重篤なバリの発生や、切りくず詰まり・巻き込みトラブルが発生しないよう、独自の工夫を凝らして対応している。

 

特に、同社の扱う部品のように狭い内径穴を加工する場合、その穴の中から切りくずをどう排出させていくかのコントロールが難しいところであるが、45年と経験豊富な代表取締役の伊藤久夫氏による幅広い工具の知識や、同社がメインで使用している高松機械工業(株)製のNC旋盤を駆使することで、うまく対応している。

 

コンサルティング前の課題(経営上の課題と技術面の課題)

同社の事業分野としては、建機・農機で使用される油圧部品を扱っている。

 

ところで、これは、多くの中小製造業に言えることであるが、バブル期の頃までは、いかに特定の大手企業と取引しているか、その取引企業の業績が好調であるかが、中小製造業の自慢であった。

 

しかし、特にリーマンショック以降、この傾向は変わってきている。現在の中小企業の自慢と言えば、その経営の安定度を示す、いかに多くの取引先を持っているか、これが自慢話になった。

 

事実、大口や単発の取引を問わず、数十から数百の取引先を持つような中小企業の中には、リーマンショックの際にもダメージを受けることなく乗り越えてきたという企業がたくさんある。

 

同社においては、取引先の海外生産移転などにより、今後の発注見通しは不透明なところがあり、安定した経営を維持していくためには、取引先の新規開拓は経営上の重要なテーマである。

 

このような取り組みを行っていく中、これまでの同社のウィークポイントとして、一品加工を手がけるメーカーに比べると、試作品など新規部品について、加工までの準備に時間がかかってしまうという課題があった。

 

同社の扱う精密部品は、複雑な形状が多いが、こと量産加工においては、一品加工とは異なり、トライ&エラーによる試し削りを何度も行うことができるがゆえに、これが同社の加工プログラミング能力を高めることの阻害要因になっていた。

 

技術面の課題をどのような方策で改善したか

 そこで同社は、筆者も使用している2次元CAD/CAMの「キャメスト」を導入し、創業から3代目として次期経営者になる予定の、伊藤社長のご子息である佳浩氏が、このソフトの習得から手がけていくことになった。

 

元々、同社は価格が800万円ほどの3次元CAD/CAMを機械商社に薦められていたが、費用対効果などの問題から、導入には躊躇をしていた。

 

しかし、筆者がよく相談を受けるテーマであるが、何でもかんでも高価な3次元システムを使えば効果が出るというわけではない。

 

旋盤加工は基本的にXZ座標で加工されるため、基本的には2次元システムで充分対応が可能である。

 

旋盤加工において3次元CADCAMが必要になるケースは、①Y軸方向で穴や切削加工が多い、②5軸や4軸加工ができる複合旋盤を使用している、③複数の刃物台を使った複雑な工程の加工を行うため切削タイミングや周辺装置との干渉チェックを綿密に行いたい場合などである。

 

いずれにせよ、普通に運用できるまでに至るには、ある程度の準備期間を要するため、慎重な投資判断が必要である。

 

この点、2次元システムで充分な加工であれば、3次元システムの導入と比較し、操作の習得など、運用するまでの期間を短くすることができるため、今回、同社はキャメストの導入を選択した。

 

CAD/CAMの効果

 同社は、新たにCAD/CAMを活用することによって、新規の見込み顧客からの試作対応などにおいて、複雑な形状であっても、迅速な対応ができる体制を作ることができた。

 

また同社はこれまで、保有する2スピンドル仕様のNC旋盤2台について、他の単軸NC旋盤と比較して加工プログラムが複雑になるため、担当オペレーターがなかなか育たないという課題に悩んでいた。

 

しかし今後は、佳浩氏が同社にあるNC旋盤全ての加工プログラムを統括して作成し供給していくことで、機械オペレーターは複雑な加工プログラムの作成を行わなくてもよくなり、こうした外段取り化が進むことで、機械稼働率を高めていくことができる。

 

今後の同社の取り組み

今後同社は、積極的な販路拡大を図ると共に、生産能力の維持・拡大を図っていくための採用活動を強化していく必要がある。

 

他の加工メーカーにおいても、若手人材の確保は大変難しくなっており、同社のように職人技術を要するメーカーにとっては、益々厳しい状況が続くと思われる。

 

そうした中で、今回のようなCAD/CAM導入によって、従来の職人技術に依存した体制ではなく、生産技術と加工現場の分離を図っていくことで、それぞれの業務に適した人材を適材適所に採用していき、今の時代に合わせた進め方で、同社の技術を継承していくことができる。

 

また、同社のようなロット生産でありながら多くの品種を扱うメーカーは、生産管理を高度化していく必要もある。量産加工を行うほとんどの下請けメーカーが持つ課題である、日々の出荷に間に合わすための自転車操業生産になってしまう問題を、徐々にでも解決していかなければ、企業風土の面でも良くはなっていかないであろう。

 

創業から2代目の現・社長である久夫氏から、新たな変革に取り組もうとする次期3代目後継者の佳浩氏の今後の取り組みに、筆者は大きな期待をしている。

 

 

ユーアイ精機株式会社のコンサルティング事例(2017年3月号掲載)

 

本号で取り上げる金型メーカーは、本連載にて最初(第2回目)にご登場いただいたユーアイ精機株式会社(愛知県尾張旭市 TEL0561-53-7159)である。

 

これまで同社は、高い職人技術で、金型製作から試作板金、部品加工まで幅広く手がけてきたが、今後はその職人技術の継承を確実に行っていくため、応用力を持つエンジニアを採用し育てていかなくてはならない必要性を感じている。

 

そこで筆者は、昨年の新卒者である守山竜平氏、ベトナム研修生であるグエン・ヴァン・ビン氏、チュオン・タイン・トゥン氏の3名の教育の機会を通じて、同社の教育カリキュラムを構築するお手伝いをした。

写真1 ベトナム研修生にSolidworksを指導する様子

今回、この取り組みを紹介するので、ぜひ参考にしていただきたい。

 

中小企業が活用できる支援制度

今回の支援においては一部、国や県の専門家派遣制度を利用している。この制度は、筆者のような中小企業診断士や他の士業など、色々な方面の専門家が国や県の機関から派遣され、その費用は国や県が支払ってくれるというもの。

 

これは、中小企業を支援するための制度なので、何か相談したいことや、同社のように何か取り組みたいテーマがあれば、ぜひ活用してみると良い。

 

筆者は拠点とする愛知県や、ミラサポといった中小企業庁の専門家派遣制度に登録しており、遠方の県外企業から申請をいただくこともある。こうした制度は、取引金融機関や地元商工会議所から詳しい情報を聞くことができる。

 

最近の金型業界の人材の課題

さて、金型業界や機械加工業では今、多能工や応用力のある若手人材が減っている。この点について筆者は、採用後のスタート教育が原因だと考えている。

 

例えば、多くの金型メーカーにて新規採用者は、設備償却費が高く、なるべく稼働率を高めたいマシニングセンターや、工具を選ぶ作業がなく、また年々操作が優しくなっているワイヤー放電加工機の担当者になることが多い。

 

そこではまた、早期に機械稼動率を高めるため、手順ありきの教育になってしまう場合が多い。こうした教育は、いかにその「手順」を早く多く覚えるかといったものになり、暗記的な意味合いが強くなる。学生時代の勉強のやり方の延長に近い。また、こうした定型的な勉強は今の若手は得意だ。

 

しかし、こうした仕事のままでは、本人の付加価値の上がる要素が少なく、本人にとっても会社にとっても不幸になりかねない。

 

技術者の付加価値とは

仕事でも勉強でも、単語(手順)をたくさん覚えることが重要なのではなく、覚えた知識をどう活かすかを考えられる能力を持つことが重要である。

 

それこそ、今は細かな知識を覚えていなくても、インターネットで簡単に調べられる時代であり、ちょっとした調べモノは、本で調べたり先輩・上司に質問しなくても、インターネットですぐに情報が手に入る。

 

だからこそ、技術者として、本当の価値の出し方が問われる時代になった。多くの経験をしてきたベテランも、それだけでは部下や後輩に尊敬してもらえる時代ではなくなった。知識だけでもいけない。知識と技能、両方を合わせ持った技術者が価値を持つ時代である。

 

また、かつては多く存在した勘コツの優れた技術者も、高齢化に伴い減少している。勘コツの基礎となるような、あれこれ試せる時間や予算の余裕が無くなったことも原因だ。このような時代だからこそ、きちんと根拠や理由から説明できる教育が必要である。

 

そうした事態になっていることを、水野社長は気づき、いつか自社の強みを継承していくエンジニアが減ってしまうことを危惧している。

 

そこで計画的に、金型エンジニアを育成していける自社なりの教育カリキュラムを作るため、筆者に声をかけたというわけである。

 

金型メーカー・機械加工業の人材教育方法

筆者は、金型メーカーや機械加工メーカーの教育のあり方について、3つで整理している。それは①知識、②技能、③手順の3つであり、これらは、それぞれ教育方法が異なるため、扱いに注意を要する。

 

①の「知識」は、③の「手順」と明確に扱いを分けることが重要で、「知識」は、「手順」のように作業の順番ではなく、加工技術の理屈についてしっかりと教える必要がある。

 

例えば、マシニング作業において、エンドミルの刃数の意義とそれをどう使い分けるのかなどが「知識」にあたる。ミーリングチャックへのエンドミルの取り付け方やその注意点などは、「手順」にあたる。

 

また②の「技能」は、手順を知ったとして急に出来るものではない作業を指す。いわゆる経験が必要になる技術で、例えば、マシニング作業においては、平行出しや基準位置決め、ドリル研ぎなどの作業が該当する。

 

ただし「知識」にあたる、正しい道具の使い方や操作方法など指導を受けなければ、自己流として間違った方法で覚えてしまう場合もある。「技能」を効果的に習得するコツは、正しい「知識」を覚えた後、いかに「反復効果」を効かせた練習ができるかに尽きる。

 

よく、この技能を覚えるには5年かかるとか、10年かかるといった比喩を聞くが、こと金型製作の技能においては、その限りではないと考えている。

 

結局、通常業務の中で習得していこうとすると、覚えようとする技能について、反復効果が表れるほど繰り返し実施する機会に恵まれず、5年や10年以上、会社で仕事をしていると、ようやく習得できるくらいその技能に触れる機会が出てくるという話であって、意図的に反復効果の効く練習方法をとれば、もっと効率的に習得することは充分に可能である。

 

こうしたトレーニングに有効なのが、昔、学校の勉強で使った「ドリル」である。ゴルフの練習でも、よくこの表現が使われる。ある体の動きを短期間で強制的に体に覚え込ませたいときに使われるトレーニングで、「この動きをこの順番で続けて行えば頭や体に覚えさせることができる」といったトレーニング方法を、作業ごとに作ることが有効である。

 

このようなポイントを押さえながら、今回、同社では、①CADの操作、②板金展開、③金型部品の作図、④SolidWorksを使った3次元モデリングなどの項目について、3名の教育を実施した。

 

今回の取り組みをきっかけに、今後同社の技術者が習得していくべき技術について、①知識、②技能、③手順の切り口に分け、教育カリキュラムを作っていくことができる。

 

今後の同社の取り組み

同社は、高い応用力を持つ金型エンジニアを増やしてくため、採用活動を強化している。多くの中小製造業で課題になっている人材の定着については、同社も重く受け止め、性別や年齢層を超えた、一体感のある社内の雰囲気づくりを心がけている。

 

昨今の短納期化・低コスト化により、殺伐とした雰囲気になりかけている金型業界であるが、それを払拭するべく、同社では水野社長を中心として、若者からベテランまで満足して働きやすい職場を作る取り組みを日々実践している。

 

その水野社長については、企業の新たな付加価値創出のため、継続した技術開発に余念がない。

写真2 韓国セチャン社と共同受賞した自動車向けマグネシウム合金ファン

写真は「平成28年度 名古屋市工業技術グランプリ」で「公益財団法人名古屋産業振興公社 奨励賞」を受賞したもの

 

国境を越えた金型エンジニア育成に意欲を燃やす同社の未来に、筆者は大きな期待をしている。