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ワイヤーカットを行うプレートにおける端面からインロー形状までの適正な距離について

FAQ

ワイヤーカットを行うプレートにおける端面からインロー形状までの適正な距離について

ワイヤーカットの段取り状態

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ここ最近、ワイヤーカット加工のインロー形状があるプレートについて、端面からインロー形状までの距離をどれだけとれば良いのかという相談をよく受けます。

いわゆる下図の寸法部位のことになります。

ワイヤーカットの段取り状態

 

実際のところ、プレートの材種、板厚、前加工の状態、熱処理の有無など、多くの影響因子を受けるため、一概には言えませんが、

ワイヤーカット機への段取りの都合上、つまり下ノズルの可動範囲を考慮して、各金型メーカーさんの状況を見ると、20ミリ~40ミリの範囲が多いです。

 

20ミリ以下になると、ワイヤーカットの段取りの都合上、やりにくくなりますし、40ミリを超えると、加工後の変形に対して安心感は増しますが、歩留まりが悪くなるので、材料コストが気になります。

 

そういったところから、20ミリ~40ミリの範囲というところになっているんだと思います。

 

では実際、20ミリと40ミリでは、どれだけ加工後の変形に影響が出るのでしょうか。

そこで、今話題のFUSION360のシュミレーション機能を使い、確かめてみました。

 

パンチプレートでありがちな、25ミリの板厚の炭素鋼の設定で、下図のようなメッシュを作り調べてみました。

ワイヤーカット残り代の解析のメッシュ状態

プレートサイズは300×200ミリ、インロー形状は100×50ミリです。

 

検証内容は、端面からの距離を変えることで、どれだけ変形量が変わるかです。

手順は、次のように行いました。

  1. まず変形はほぼ少ないと思われる、端面から50ミリ付ける設定で、プレートの外側から、3ミクロン以内の変形に収まる圧力を設定しました。
  2. その圧力をもって、端面からの距離を35ミリ、20ミリにしたとき、同じように力を加えるとどれだけ変形が起こるかを検証しました。
  3. また、板厚を変えると変化量は変わるのかを検証するため、プレートの板厚を50ミリ、100ミリに変化させて検証しました。

 

手順1.の結果が下図の状態です。

 

ワイヤーカット残り代の解析による検証_1

FUSION360による結果表示は、見えた目にイメージしやすいようオーバーに変形されます。

最大に変形している箇所は、4ミクロン変形しています。

 

手順2.の結果が下図の状態です。端面からの距離を35ミリにしました。

35ミリを選択した理由は、以前読んだワイヤーカットの高精度加工に関する論文に出てくる実験で、加工変形させないための充分な距離として35ミリを設定していたので、今回35ミリで検証してみました。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_2

結果の最大変形量は、約 6ミクロンなので、±0.01ミリの加工公差であれば、充分に収まる変形量になりました。

また、50ミリにした時と、変形量はほとんど変わってないとも言えます。

 

次は、端面からの距離を20ミリにしました。

ワイヤーカット段取り、材料コスト、両方を重視する金型メーカーさんでよくとられている距離です。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_3

最大の変形量は、約 13ミクロンでした。

以前、クライアント企業のワイヤーカット担当者さんが、±0.01ミリの寸法公差を要するプレートで、端面からの距離が20ミリでは変形が公差内で収まらなかったというお話がありましたが、この結果からすると、その厳しい寸法公差で加工しなければならない場合、やはり20ミリでは難しかったのかもしれません。

 

さて、ついでに、端面からの距離を5ミリでもやってみました。下図がそれです。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_4

最大の変形量は、0.28ミリです。やはりこれだけ歪むんですね。この薄肉の中にどれだけの応力があるのかという話もありますが。

ただ、これがパンチプレートではなく、在庫材からパンチをとるような場合、端面からの距離は捨て側になるので、よく5ミリにしたりしますが、加工経路には気を付けたいものです。

 

ではプレートの板厚を変えることで、変形量は変わるのかどうかを検証した結果ですが、

下図は手順2.の端面からの距離20ミリのものを、プレート板厚25ミリから50ミリに変えた状態のものです。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_7

結果は、約 13ミクロンの最大変形量で、プレートの板厚25ミリのときと、ほとんど変わりませんでした。

 

プレートの板厚を100ミリにした結果が下図です。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_8

最大変形量は、約 13ミクロンと、やはりほとんど変わりません。

 

ということで、今回の検証ではプレート厚を変えることで、加工変形を抑えることの効果は見られませんでした。

つまり、パンチプレートの厚さを、例えば25ミリから40ミリに厚くすると、ワイヤーカットの加工変形は抑えることができるのか、というと効果はよくわからない、無いかもしれないということです。

 

しかしながら、丸パンチや異形パンチをインローでホールドするようなパンチプレートにおいて、無理に板厚を薄くしたりすると、パンチの直角性が悪くなったり、プレス抜きを行った際に振動によってパンチの刃持ちが悪くなる恐れがあります。したがって、出来るだけプレート厚さは確保したいものです。

 

ちなみに、端面からの距離は同じ25ミリにしたまま、プレート厚を10ミリにしたところ、下図のようになりましたが、最大変形量は、やはり約 13ミクロンでした。

ワイヤーカット残り代の解析による検証_9

 

 

今回私なりの結論ですが、以前読んだ論文の実験どおり、特に高精度に加工するのであれば、端面からの距離は35ミリあれば充分なのではないか、40ミリ以上は取り過ぎなのではないかと思いました。

 

ただし、前述したように、プレートの材種、板厚、前加工の状態、熱処理の有無など、諸条件によって結果は異なってくるはずです。

 

また、もちろんプレートのサイズ、インロー形状のサイズによっても、変形量は変わります。

設計の際には、今回のような方法で、一度検証してから決めるのもいいかもしれませんね。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

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