金型材の焼き戻しを2回行う必要性について

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金型材の焼き戻しを2回行う必要性について

まず、炭素鋼や合金鋼の焼き入れ処理のプロセスを見ていくと、
生材とか、なまくら材などと呼ばれる、焼き入れ前の状態は、フェライト素地と呼ばれ、炭素鋼や合金鋼であれば、素材に所定の炭素量が含まれています。

この材料を、材料種類に応じた温度で加熱すると、素地のフェライトは、オーステナイトと呼ばれる組織に変化します(この変化は「変態」と呼ばれます)。このとき、フェライト素地に含まれていた炭素は、オーステナイトに変態するときに微小化され、硬い炭化物として溶け出します。この炭化物が、焼き入れ後の材料硬度に影響します。

この後、焼き入れ処理として冷却すると、いわゆる「焼き」が入った状態になり、さきほどのオーステナイト組織は、硬いマルテンサイト組織に変態します。このとき、冷却する速さが速いことがポイントで、硬い炭化物もそのまま残ります(逆に遅いと、オーステナイトほど硬くないベイナイトという組織が出てきてしまったり、炭化物も組織内で適正に分布しなくなります。

炭化物の輪廻


炭化物の輪廻
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」より

通常、材料種類・特性に応じ、780~1200℃までの温度で加熱し焼き入れ処理を行い、目的に応じた硬度・特性に変化させるために120~700℃までの間で、焼き戻し処理を行います。

このとき、材料体積のうち、30%くらいまでの割合で、軟らかいまま硬化しない部分があります。この適正に焼入れ硬化されない部分、つまり適正なマルテンサイト化されない部分が「残留オーステナイト」です。

焼入れ鋼の顕微鏡組織


焼入れ鋼の顕微鏡組織
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」より

この残留オーステナイトを減少させるためには、2回の焼き戻しを行うか、サブゼロ処理と呼ばれる冷却処理を行います。

2回の焼き戻しを行う理由として、1回目の焼き戻しでは、実質、前述した残留オーステナイトをマルテンサイト化、つまり硬化させる処理になり、2回目の焼き戻しでようやく、その材料の応力除去や靭性の改善が行われます。つまり、2回目の焼き戻しで、本来の焼き戻しの効果がでます。

なお、サブゼロ処理とは、マイナス温度まで材料を冷却させることで、残留オーステナイトを分解させる処理のことです。冷却には、ドライアイス(約-78.5℃)や、液体窒素(約-196℃)が使われます。焼入れ加熱から急冷による焼入れ処理を行い、その後、サブゼロ処理を行ったあと、焼き戻し処理を行います。

残留オーステナイトの分解処理により、適正な焼入れ硬化と、下記のグラフに示すよう、材料の経年寸法変化を抑制することができます(完全ではない点に注意)。

SKD11の熱処理条件による経時寸法変化


SKD11の熱処理条件による経時寸法変化
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」より

なお、ワイヤーカット放電加工を行う材料については、500℃前後の高温戻しが必須です。以前は、冷間で使われるダイス鋼は特に、金型として使用する温度により、当たり前のように150℃前後の低温戻しが行われていましたが、ワイヤーカット加工後に、変形トラブルが多発しました。

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参考文献
田部博輔 著 (2006/07)「金型技術者のための型材入門」日刊工業新聞社

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