【続編】売値単価に左右されないモチベーション管理
さて、今回は以前ご紹介したコラム「売値単価に左右されないモチベーション管理」の続編として、前回お伝えしきれなかった内容をお話しいたします。
前回お伝えした内容は、下図のような表を使って主に機械加工を行う現場を管理するものでした。この管理を行うことで、個人別にどれだけ付加価値額を上げることができたかを集計することができます。この図の例では、1か月間の集計結果が示されています。

そして、この管理のポイントは、タイトルにもあるとおり、実際に作業した工数に売値で使うチャージ金額を掛け算することで、営業がいつもより高値で取ってきた場合やその逆の影響を受けない付加価値額を算出できる点です。これにより、会社の営業戦略に左右されず、現場で作業する人のモチベーション向上につながると考えています。

また、計算に使用する1か月間集計した工数は、実際の作業工数そのものではなく、ベテランやリーダーが作業した場合の「あるべき時間」を予定工数として設定し、その時間を基に集計します。これにより、効率が悪い場合は、かけた時間に対して実績を多く積み上げることが難しくなります。この点も、頑張って正確かつ効率よく作業しようとする人のモチベーションを高める管理だと考えています。
こちらの内容をまだご覧になっていない方は、ぜひ改めて前回のコラムをご覧いただけると幸いです。
さて、この管理の表では、マシニングセンターやワイヤーカット放電加工など、長時間無人で加工を行う機械を担当する人がとても有利になる場合があります。
例えば、自分でCAMデータを作成し、自ら機械で段取りして作業を進める現場であれば、そのCAMデータの加工の効率性も、べき働率や付加価値額の良し悪しに影響してきます。しかし、CAMと機械の段取りオペレーターが分業している昨今の一般的な現場では、熟練者が作成したNCデータを使用し、無人加工を行うのみの段取りオペレーターは、実務作業時間に対して容易に予定工数を増やすことができます。
これは私自身が現役でマシニングセンターのオペレーターやCAMオペレーターをしていたときから、ずっと疑問に思っていたことです。私がいた機械加工現場では、試作金型が多く扱われていたため、細かな部品をたくさん製作して組み上げる構造よりも、一つの大きな意匠面を持つ凹凸型を長時間無人で3次元加工する部品が多かったのです。
そのため、私が作成したCAMデータを使用して、若手の機械オペレーターがマシニングセンターの段取りを行い、昼間や夜間などに無人加工を行う作業体制になっていました。
この体制の中で先ほどの付加価値を計算すると、無人加工を仕掛けた機械オペレーターの工数がどんどん積み上がっていき、結果的に1か月の付加価値額は若手の機械オペレーターほど多くなります。
一方、ハンドワーク作業を行うベテラン作業者や、私のように設計やCAMを担当する作業者が付加価値額を増やすのは不利となり、少なくとも夜間の無人加工がある分については、機械段取りオペレーターよりも絶対に少なく集計されます。
さらに、機械段取りオペレーターが複数の機械を掛け持ちし、無人加工を次々と仕掛けていくと、自分のタイムカード時間よりも多くの実績工数を容易に稼ぎ出すことができます。
前述の集計表は、個人別の貢献度を可視化するものです。そのため、効率よく工数を稼げる作業を担当する人とそうでない人の間に、どうしても差が出てしまいます。
これって何だかちょっとモヤモヤしませんか?
とはいえ、若手の機械オペレーターが頑張っていないわけではなく、実際、私が現場にいたときには、こういった数値の成果を見て、より一層頑張ってくれていました。
ですが、私を含め、自動機械専任でない作業者の付加価値額は、自動機の担当者ほど伸ばすのは容易ではなく、何となく不公平感を感じていたのは事実です。
そこで、前置きが長くなりましたが、今のようなケースで不公平なくこの集計表を管理するにはどうしたら良いか、というのが今回のテーマです。
まず、先ほどまでお話しした夜間無人加工を行う現場のケースで、機械段取りオペレーターがそのまま実績を自分の工数として集計表に入力した場合、下図のような結果になると考えられます。
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