金型メーカー・部品加工メーカーにおける一般オペレーターとスペシャリストの違いはどこにあるか?

一般オペレーターとスペシャリストの違いについて

金型メーカー・部品加工メーカーにおける一般オペレーターとスペシャリストの違いはどこにあるか?

今回のタイトルにある、一般オペレーターとスペシャリストですが、辞書での言葉の意味という点では違った解釈になると思います。本コラムでは、金型メーカーや部品加工メーカーにおいて、どのような違いがあると解釈すべきなのか、またどのようにスペシャリストを目指すべきなのかに触れていきたいと思います。

今回のテーマについて、先日ある金型メーカーにて、とあるやりとりがありました。

金型メーカーでの事例

その会社では自社の評価制度の見直しを行っており、その基準づくりのために、今実際に設計や加工、組み立ての現場で仕事をしている方々を対象に、持っているスキルの棚卸しなどを行っていました。

そこで、あるマシニングセンターの機械段取りを行うベテラン社員さんについて、「彼はスペシャリストと言えるのか、どうなのか?」という議論があり、コンサルタントである私にも問いかけがありました。

そこで私はこのように回答しました。

「こちらの会社は金型メーカーですので、彼の作業はスペシャリストではなく、一般オペレーターに分類されると思います。したがって、ベテランではあっても彼の位置づけはオペレーターになりますので、今後スペシャリストを目指していくのであれば、いかにベテランと言えどもそれに必要となるスキルを身に付けていかなければなりません。」

具体的にこの方は、マシニングセンターやNCフライスの作業においては20年の経験があり、若手に充分教えられるくらい実力があるのですが、金型構造に関する知識がなく、部品用途における必要な要求品質、つまり金型設計上、ここは精度が要る要らないの判断ができません。また前工程のCAMの操作ができないため、ちょっとした加工条件の変更や使用工具の変更、加工機械の変更のためのポスト再出力などの作業が一切できませんでした。

こうした点から、部品加工メーカーではなく、金型メーカーで加工をする者としては、スキル不足であるのは否めず、「金型構造がわかる・CAM操作ができる機械オペレーター」と比較すると、どうしても日々の出来高で負けてしまいます。

例えば、金型構造が分かれば、金型設計上、精度が必要ない部品と分かれば、段取りの平行出しなどを簡略化するとか、仕上げ加工を少し省いたり、送り速度を上げたりといった応用も可能です。しかもCAMを自分で操作できれば、CAMオペレーターにいちいち差し戻さなくても自分で変更作業ができます。

日々の生産の積み重ねからすると、こうしたスキルの違いは大きく出てくると思います。

したがって私は、「この方はベテランではありますが、金型エンジニアの視点から見ると、スペシャリストではなく一般オペレーターに位置づけられます。この人ほど加工経験があるわけではないですが、設計から異動されてきたAさんは、CAMも使えて設計もわかるので、むしろ、この人の方がスペシャリストにふさわしいと言えます」ともお伝えしました。

その後、この会社では、一般オペレーターからスペシャリストまでの評価軸を作ることができ、それによってそれぞれの定義を当てはめ、またスペシャリストを目指していくためのキャリアプランを作ることができました。

では、金型メーカーではなく、お客さんから図面やCADモデルをもらって部品を加工する単品部品加工メーカーでは、金型構造の理解という概念がないため、この一般オペレーターとスペシャリストという違いは無いのか?ですが、やはり存在すると思います。

もちろんお客さんの金型や機械設備の構造理解ができて、図面に指示されている寸法や幾何公差を超える部分で効率化ができれば、それに越したことはありませんが、そもそも先ほどの金型メーカーでの事例と同じように、前工程のCAM操作まで出来る人とそうでない人に出来高の違いが出てくると思います。

以前、とある県の専門家派遣の仕事をした際に、このような事例がありました。

単品部品加工メーカーでの事例

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