【考察】図面が現場の加工効率や品質に影響を与えてしまった事例

【改訂版】10年遅れてしまった金型・部品加工業の現場を変えるには
目次

【考察】図面が現場の加工効率や品質に影響を与えてしまった事例

3次元CADと2次元図面の指示内容のギャップが招いた問題

今回は、とあるプレスメーカーの金型内製部門での事例です。

この内製部門での金型設計は、3次元CADを使って設計していますが、現場には、3次元モデルから三角法で投影し、そこに寸法を書き込んだ2次元の組図と部品図を作図して提供しています。

今回のテーマは、そこで起こった問題についてです。

具体的には、3次元でモデリングした金型部品について、インローのはめ合いになる部位や、摺動する部位の加工公差について、CADモデルでは正寸でモデリングし、必要に応じてマイナス側公差やプラス側の公差を、2次元図面の方で数値で指示していました。

例えば、50ミリ幅のインローはめ合いの部位であれば、中に入る部品の幅は50ミリとして、公差は-0.01~-0.02、部品が入ってくる側の部品の加工幅は同じく50ミリとして、公差を0~+0.02としていました。

このとき設計時のベースとなる3次元モデルの図形は、インローとして入る側入られる側、どちらのモデルも50ミリでモデリングし、入る側のマイナス公差及び、入られる側のプラス公差は、3次元設計後に作図する2次元図面の方に記入して指示していました。

加工公差の指示が現場に与える影響

さて、今回のコラムのテーマは、3次元設計における公差指示をどのように扱うかというものではなく、加工公差の指示の仕方によって、現場の加工プロセスに影響を与えていたという事例です。

この事例企業の現場では、例えば、前述したインローや摺動する部品を加工する際、ワイヤーカットでNC加工する方が効率的な形状やサイズであっても、ハンドワークによる研削仕上げに偏った作業工程になっていました。

そのときの現場の言い分としては、「研削ありきの図面になっている」というものでした。

実際に、ワイヤーカットやマシニングセンターでNC加工するため、CAMにかけようとすると、インローとして入る部品はマイナス公差を狙わなくてはならないため、狙い寸法として公差の中間値や、部品が入らないことを避けるため、公差の下限値一杯を狙うなどの対応がセオリーになりますが、この会社で設計された3次元モデルの寸法は、そうなっていませんでした。

この場合、CAMオペレーターは、3次元CAMを使うにしろ、2次元CAMを使うにしろ、一旦CADモデルを公差の中間値や下限値または上限値にモデリングし直すか、CAMでの取りしろ設定の入力値をマイナス(食い込ませる)にする、などの対応が必要になります。

しかしワイヤーカット加工で全周切りなどを行う場合、外周形状は正寸狙い、形状内に部分的にプラス公差やマイナス公差があるような形状においては、CADでのモデル編集は手間ですし、手修正に入力ミス・忘れの発生リスクもあります。

こうした背景からこの現場では、精密な組み合わせを要する部品ほど、ハンドワーク加工に偏ってしまい、慢性的にNC機械の稼働率が低くなっていました。

このように、一見当たり前とも思える図面の書き方をしていても、それが現場の生産プロセスに強い偏りを生んでしまうケースもあります。

特に昨今、高機能なNC機械やCADCAMシステムの活用が生産性に大きく影響を与える金型や機械加工の現場では、これは非常に重要なテーマであると言えます。

この事例企業の現場で実際に起きていた問題として、NC機械の稼働率低下だけでなく、ハンドワーク加工によるポカミスや、わずかな加工公差外れ、直角不良などが発生していました。

3次元モデルとCAMデータ活用による加工プロセスの見直し

その後、この事例企業の現場では、それらハンドワーク加工に偏っている加工プロセスを見直すため、3次元モデル→CAMデータ作成→NC加工というプロセスで加工する部品の比率を高めていくことにしました。

そのために、3次元CADモデルのあり方から見直していくことは必須の取り組みでした。

3次元モデルにおける精密公差の扱い方のポイント

3次元設計におけるインローのはめあい部や、摺動する部位などの精密公差の扱いは、中間値や上限下限値でモデリングしようが公差で指示しようが、結局のところ、狙い値をどうするかと、加工で許容されるレンジ(範囲)、この2つの要素をどのように表現するか、この2つの問題だと言えます。

したがって、寸法公差など言語による情報をいかに、3次元モデルによる「形状」でこれを表現するかがポイントになります。

とある事例企業とは別の金型メーカーの例ですが、加工で狙う中間値や上限下限値でモデリングし、加工で許容されるレンジはモデル表面の色で表現しています。例えば、黄色であれば±0.005ミリ、赤色であれば±0.01ミリなどです。

先ほどの50ミリ幅の事例では、以下のようにモデリングします。

  • インローに入る側:49.985でモデリングし、サーフェイスの色情報±0.005ミリ
  • 入られる側:50.01でモデリングし、サーフェイスの色情報±0.01ミリ

また別のある会社の事例では、インローに入る側を50でモデリングし(公差は±0.005)、入られる側は50.02(公差は±0.01)でモデリングしています。これは入る側の部品モデルの寸法を、小数点以下の半端な数字を使わず、きれいな数字にしたいという意図がうかがえます。

インローのはめ合い部だけでなく、摺動する部位の公差も、それぞれの企業で、同様の考え方でモデル化しています。

事例のハンドワークに偏っていた企業も、およそこのやり方に倣い、CAMを活用した寸法保証の体制を取り入れていくことにしました。

これであれば、現場のCAMオペレーターは、このCADモデルを使ってCAMデータを作ることは容易になります。

まとめ(潜む問題を見直すきっかけ)

今これを読んでくださっている読者企業の皆様の現場ではいかがでしょうか。

当たり前だと思っている設計のやり方、図面のあり方が、実は効率の低下や品質トラブルを招いていた、ということはありませんでしょうか。

参考になれば幸いです。

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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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