ものづくりの現場で「センスが良いとされる人」を考察してみます
この業界には、物覚えが早いと言うか、比較的現場で一人前に仕事ができるまでの期間が短く、人よりも成長が早い人がいますよね。
割と早く仕事ができるようになる人。今回は、この要因について私なりに考えてみたいと思います。
仕事を早く覚える人の特徴とは?~「動的イメージ」の力~
私はこれについて、そういう人というのは頭の中で「物が動く」イメージが容易に想像できる人なのではないか、と思っています。
この話をするときにいつも例に出すのが、硬い材料や無理な条件で切削加工をしているときに、エンドミルがぐにゃっと曲がっているイメージです。

これは、上図のような極端なイメージであるほど良いと考えています。
もう一つ切削で言えば、ポケット加工で中身をゴソッと掘ったとき等に、ワークがひどく歪むイメージも同様です。
実際にそんなひどい変形を見たわけではなくても、頭の中で想像できる。これは一つの能力ではないかと思っています。
バイスで強く締めすぎたときにワークが歪むのも同じで、実際に曲がるところを直接見れるわけではありません。
しかし、ベテランの作業者になると、こういったことを瞬時にイメージして、問題に気づくことがあります。これもやはり、頭の中にワークが大きく歪んだイメージがあるからではないでしょうか。
一方で、こういったワークや治具が歪む問題をどれだけ言葉で説明しても、なかなかピンとこない人もいます。これは、その人の頭の中に具体的なイメージができていないからではないかと思っています。
そうなるとやはり、どれだけ言葉や数字で説明しても、伝えるのは厳しいものがあります。
この場合は、例えばきつく締めたワークの上面を、ダイヤルゲージにつけたピックテスターで走らせるなどして、物理的な現象を実際に見てもらうしかないと思います。
先ほどのエンドミルの曲がりの例で言えば、加工後の切削面を上下に測定して、削り残りが下にいくほど多くなっている現象を目の当たりにしてもらうとかです。
こういった結果としての事象を都度見ていくことが、その人の経験値となっていくのだろうと思います。
ただ、こういった経験をある程度積んでいく過程で、頭の中でイメージできるようになるわけですが、それには早い段階でできるようになる人と、何年も経験しないとなかなかできない人がいます。
残念ながら、この差は非常に大きいと感じます。
この頭の中の図としての「動的イメージ」は、加工現場だけでなく、設計や組み立て、検査など、ものづくりのあらゆる場面で有効だと思われます。
したがって、冒頭でお話ししたように、ものづくりの現場において効率よく仕事を習得していく上で、この動的イメージができるかできないかは、非常に大きな意味を持つと言えるでしょう。
見えないものを見る力をどう育てるか?
では、この動的イメージを掴むのが苦手な人は、どうしたら良いのでしょうか。
教育の際には、先ほど挙げた「結果としての物理的な事象を見せること」、そして「極端なイメージ図を描いて本人に見せてあげること」、この両方をやることが大切だと考えています。
なぜこの両方が必要になるのか。
まず、「結果としての物理的な事象を見ること」についてですが、仮に動的イメージができる人であっても、実際に何十ミクロンくらいの変形が起こるのか、といった具体的な数値を把握することは絶対に必要です。
また、頭の中のイメージ図はあくまで極端な変形であり、それはシンプルな挙動で表現されることが多いですが、実際はもっと複雑な歪みや変形が起こり得ます。それを実測して知っておくためです。
一方、「合わせて極端なイメージ図も見ておいた方がいい理由」ですが、実際に歪んだり変形したりしたワークや治具は、ものによっては百ミクロンを超える単位の変形もありますが、数十ミクロンや数ミクロンといった、目ではっきりと変形している形状が掴みにくいものも多いです。
そこで、絵に描いて変形した形状を頭に焼き付けるという目的があります。
分野を超えて求められる「想像するチカラ」
いかがでしょうか。
実は私は、この「動的イメージ」ができる能力というのは、金型や加工の世界だけでなく、あらゆる分野で必要とされ、その得手不得手が仕事の能力を左右する大きな要因になりうるのではないかと思っています。
例えば、料理の世界においてもそうではないかと。
調味料を料理に目分量でかける際にも、粉末状のものが料理に混ざり込んでいく過程というのは、実際に詳細に目で見えるものではなく(すみません、これはあくまで素人の想像です)、やはり頭の中のイメージで捉えている部分があるのではないでしょうか。
そして、そういった動的イメージを元にして、より美味しくなる調理の仕方や材料の組み合わせを考え出していくにおいては、この動的イメージが得意かどうかが大きな意味を持つと思っているのです。
挙げだしたらキリがありませんが、「仕事」という上では、ぜひこの能力を鍛えていきたいものです。
今回は全くの持論ですが、何かの参考になれば幸いです。
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金型・部品加工業 専門コンサルティング
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