御社に自社流は整備されていますか
自社流の欠如
最近、多くの会社で「たしかにね~」と皆さんが言われるエピソードがあります。
それは、主に機械加工や検査工程で聞かれるのですが、自社に○○流と言えるような、作業者共通のやり方が存在していないという問題です。
言い換えると、作業者それぞれでやり方が異なる、いわゆる「属人的なまま放置されている」ということです。
そもそもそうなった経緯には理由がありまして、一品物や小ロット品を扱っている加工メーカーや金型メーカーでは、試行錯誤しながら物を作り上げていくことが多く、結局 終わってみると、どういうやり方が最適で正解だったのか、あとで振り返らないまま、次の仕事に取り掛かっていくことが多いためです。
これを日々繰り返していくと、結果 作業者間で共通したセオリーを確立していくことなく、担当者ごとにやり方が異なったまま、現在に至っていくというわけです。
ここで対象となる「やり方」というのは2つあって、一つは機械やソフトなどを操作する手順や使い方のクセなど、もう一つは、加工や検査などの段取りの仕方や工程の考え方の違いなど、ノウハウ的なものです。
新人教育への影響
こういった標準化ができていないことは、新人教育の際にも悪影響が出ていまして、以前のコラムにも書いたのですが、そもそも過去問を新人さんにやらせていない原因にもなっています。
その理由として、答えが明確になっていない過去問を、一生懸命時間をかけてやっても、あまり得るものがないのではないかという認識になっていることが一つあると思います。
ましてや 一品ものを扱う現場では、過去問を振り返っても、また同じものが来るとは限らないため、なおさら過去問は意味がないのではという認識になっているようです。
OJTの解釈
ちなみに「OJT」、オン・ザ・ジョブ・トレーニングという言葉がありますが、この解釈がクセモノだと私は思っていまして、広い解釈をすると、外部に研修に出るのではなく、社内で先輩が後輩に現場で仕事を教える形式を表す言葉という認識があると思いますが、狭い意味で捉えると、オン・ザ・ジョブ、つまり実務仕事で教えるという解釈をしている現場もあります。お客さんからお金がもらえる本番仕事をやりながらの教育を行うことで、無駄のない教育活動を行うという解釈です。
したがって この解釈を踏まえると、お金にならないすでに終わった過去問を振り返る教育、OJTならぬ、ただの「T」、トレーニングをやっているよりも、機械やソフト、加工や検査の基本を覚えたのち、ゆっくりでもいいので、簡単な本番の仕事を選んで実務に入っていく現場が多い一因になっていると思っています。
さて、なかなか自社セオリーが整備されていないというテーマに話を戻しますが、新人社員さんが仕事を教えてもらう際、ソフトや機械の操作についてはメーカーサポートなどから講習を受けられるものの、自社セオリーが確立されていない現場では、加工や検査のやり方については、誰に教わったかに依存することになります。
したがって、その教えてもらう内容は、教えてもらったその先輩のやり方であって、それが自社にとって最適解であるかどうかはわかりません。
自社セオリーを確立しないままに教育を行った結果、のちに新人さんが「あれ?」と思うやり方をしていても、「誰々さんがこうやれと言ったから」という受け答えは、現場のあるある話です。
また、新人さんが次の案件を教えてもらう際、別の先輩に教えてもらう時、異なるやり方であった場合に、「どっちが正解なの?」と迷ってしまうのも、現場のあるある話です。
自社流の整備方法
では、どのように自社流(最適解)を整備していくかですが、フォーマットはどうあれ、基本の考え方は、フローチャートのような考え方が望ましいと思います。
その際の分かれ道(分岐点)をどうするか、そこに設定する選択肢をどうするかがポイントとなります。
例えば、直近でコンサルした、とある単品部品加工メーカーの検査部門での最適解の整備では、色々と整備したフローチャートの分かれ道の一例として、「図面内の検査箇所が何ポイントあるか」がありました。
何ポイント以下であれば自動検査表ソフトを使う、それを超えていたら 測定器から出力される測定値をEXCEL上で並べ、手動で検査表を作るといったものがありました。
もう一つの例として、検査する加工品に「リピート性があるかどうか」というもので、EXCELで作る検査表に、自動公差判定や図面数値とのギャップ計算などの仕掛けを、組み込むか組み込まないかという選択肢もありました。
これだけ見ると、ある程度当たり前の検査プロセスに聞こえるかもしれませんが、実際にこのレベルの「分かれ道」でも、こちらの現場では 検査のやり方や表の作り方に違いが出ていて、作業工数の個人差が著しく大きくなっていました。
実際に、この部署のリーダーにフローチャートの考え方を実践してもらい、最適解となるやり方で部下に仕事を行わせた結果、以前のコラムで紹介した可(べき)動率が90%を越える仕事が多くなり、効果を実感してもらえました。
さて、御社の現場に、自社流と言えるセオリーは確立していますでしょうか。参考になれば幸いです。
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金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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