金型や機械加工メーカーでは作業者の力量をどのように評価するのが正しいのか
今回のコラムは、これも当事務所に多く相談をいただく、金型メーカーや機械加工メーカーにおいて、従業員の力量をどのように評価するのが正しいのかについてです。
一般的に多くの加工メーカーにおける従業員の能力開発については、OJTや外部研修などOFF-JTを中心とした研修などによって教育が行われ、スキルマップなどによりその力量は評価されています。
しかし実際に、計画通り進めてみても、実態としての日々の出来高になかなか現れてこないのが実状ではないでしょうか。
私はその原因として、先ほど挙げた、OFF-JTを中心とした教育とスキルマップを使った力量評価のやり方に問題があると思っています。
では、どのように金型や機械加工メーカーで働く社員さんの力量評価を行うことが成果につながるのでしょうか。
私は次の2つによって、評価を行うことが望ましいと考えております。
- 知識面:ペーパーテストにより社内で直接使う知識の確認
- 技能面:実際にどこまでのものが作れるのかの確認
では、具体的にそれぞれ見ていきたいと思います。
知識面:ペーパーテストにより社内で直接使う知識を確認
実際に、私が企業の中で研修をやらせていただくと、例えば、茶髪でピアスをしたような若者でも、後でペーパーテストを行うことを伝えると、かなり真剣に講義を聞いてくれます。
これについては、複数人で共通した指標を使い、点数という統一したもので評価されることに一定の危機感を感じるためだと思っています。
したがって、まずは社内で共通したペーパーテストを作って、知識面の評価を行うことをオススメします。
また、ポリテクセンターや工作機械メーカーなどで実施される基礎・応用研修についても、とても効果のある研修ではあるのですが、実際にそれを受けた社員さんのその後の仕事ぶりをみて見ると、その知識を活かしてバリバリものづくりができているかというと、必ずしもそうとは言えない状況があることも事実です。
これについては、外部研修で学んできたことを、自社の仕事の実務内容に、結び付けることが苦手な人が多いためだと思っています。
そこで、実際に自社のものづくりで使う知識について、ペーパーテストを作り、それを教育も兼ねて実施する方法がオススメです。
実際のテストの内容の事例としては、次のようなものがあります。
こちらの例は、プレス金型における曲げ型に使われる金型材料の種類を問うペーパーテストの事例です。
実際の金型の製造現場では、生産ロット数や製品の硬さだけでなく、機械加工の手順などによって、企業ごとに用いる金型材料が異なります。
外部研修で学ぶごとはあくまで基礎として、実際に本業で用いる知識はペーパーテストで補完するという一例です。
次の事例も同様です。
こちらについても、一般的な外部研修では成分や強度などの講義は受けますが、実際に社内ではどう使い分けをしているのか、例えば、SS400は構造部にCO2アーク溶接で部品を直接溶接する場合に用いる、S50Cは、SS400では切削加工で百分台の精度が出せない場合に代替えするなど、自社都合で材料を使いわける事例は多々あります。
OFF-JTの外部研修だけ行い、そこまでつっこんだ知識については個人任せになっているという企業が多いです。
御社はいかがでしょうか。
やはり、こういったペーパーテストを作り、自社に合った認識で業務を行っているのか、力量評価とその補正となる教育を行っていく必要があります。
その他、次のような確認テストも考えられます。
実際に金型部品が入ってくるプレート部品に対し、どのような手順で加工を行うか認識を問うペーパーテストです。
こうしたテストにより、表には出てこない認識の個人差を是正することにもつながってくると思います。
技能面:実際にどこまでのものが作れるのかを確認
次はスキル、技能面の評価方法ですが、加工現場でお仕事をする社員さんについては、「どこまでの難易度のものを加工できるか」で評価します。
例えば、次の図のような加工品があった場合、段取り方法や加工工程を考える能力、工具選定、NCプログラムを作れる能力によって、どこまでのものが作れるか、明確に差が出ると思います。
上図のサンプルは、私が使っているhyperMILLのトレーニング用モデルからお借りしたものですが、上から順に難易度が上がっています。
下のものになるにつれ、段取りや順番からして、どのように切削したらよいか難易度が上がっています。
このように、実際の加工現場においては、何の研修を受けてきたか、何年会社にいたかという情報は、力量評価においてあまり役に立たず、「実際のサンプルを元に、どこまでの難易度のものが正確に作れるのか」という評価の方が実務上役に立ちます。
もちろん、完成するまでの工数も評価対象になります。
これらのサンプルについては、部品加工メーカー寄りのサンプルになっておりますが、金型メーカーにおいても同様で、段階ごとの難易度に応じた評価用サンプルを用意することで、自社に合った力量評価を行うことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
私が日々、金型や機械加工メーカーでコンサルティングを行っていると、外部研修や社内教育は結構やってきたんだけど・・・なかなか仕事の成果に現れてこないといった言った悩みを多くお聞きします。
また、これは必須の前提となることですが、知識面で紹介したペーパーテストの内容についても、技能面で紹介したサンプルの加工方法にしても、社内で標準化し統一しておくことが望ましいです。
教える先輩ごとにやり方が異なるようでは、教えられる部下や後輩に個人差が出来てしまうことになるため、気をつけたいところです。
もしよろしければ、試してみてください。参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
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