扱いがメッチャ難しい、金型・部品加工業における可動率の使い方について
今回のテーマは、金型メーカー、部品加工業の永遠のテーマ「教育」です。
そして、生産管理の書籍には必ず載っていますが、多くの会社で使われていない指標「可(べき)動率」の使い方についても触れていきたいと考えております。
私のコンサル先企業では、主に中途採用の日本人、もしくは多少の経験があったり未経験である外国人の方々を採用し、機械加工の現場に配属しています。
そうした中、多くの現場リーダーから聞くのが、「増えた人の分まで、なかなか出来高が上がらない」という悩みです。
それもそのはず、量産性の少ない一品加工品や、必ずCAD/CAMで長時間かけてデータ作成しないと加工できないような複雑な部品を扱っている現場では、新規に採用された人の見習い期間は長期間になったり、戦力になるまでの期間が見通せなかったりします。
そこで、経営者の方々が一番気になるのが、「じゃあ、いつまで待てばいいのか?」です。
現場リーダーの方々も、気長に放置しているわけではありませんが、自分自身も加工するプレイングマネージャーという場合、じっくり手取り足取り、時間を割いて教育する時間が取れないのも、また事実です。
いわゆる「わかっちゃいるけど・・・」というものです。
そこで私がクライアント先で、まず取りかかってもらうのが、ちょっとアレンジした「可(べき)動率」を出すことです。
本来の「可動率」は、稼働率と対比するもので、稼働率の分母は、勤務時間である8時間や1日の24時間などとして、そのうち何時間を人が作業できたか、機械を稼働させることができたか、その割合となりますが、現場に仕事が入っていない日も分母に加算されていると、働く作業者の立場としては、割合の数値を上げようにもどうしようもないということで、分母に入れるのは、やるべき仕事がある時間に限定し、そのやるべき時間に対して、どれだけ仕事を稼働させることができたかを数値化するのが、可(べき)動率となります。
なぜ「可動率」が金型・部品加工業で活用されないのか?
しかしながら、私の周りの金型メーカーや機械加工メーカーでは、ほとんどこの可動率は使われていません。また、お会いする方のほとんどが、この言葉自体ご存じありません。
理由は、とてつもなくハードルが高いためだと思います(もちろん、この業界でも きちんと使っている会社さんもあると思います)。
量産部品であれば、タクトタイムなどが設定されていて、分母になる、本来やるべき仕事の時間は、加工ロットなどを基準にすれば設定しやすいと思います。
ところが、毎回作るものが変わる金型部品や単品小ロット品は、分母に入れる一定期間のやるべき仕事の時間、つまり本来機械を動かすべき時間、人が作業するべき時間、これらを決めようとすると、対象となる部品について、工程ごとの加工時間や人の作業時間を見積もらなければなりません。
さらに、複数の部品が、複数の工程をまたぐので、後工程になるほど、前工程や外注業者から入ってくるタイミング待ちになるため、例えば1日の分母の時間は、単純な見積り工数の合計でもなくなってきます。
したがって、稼働率の方は単純に、作業者なら分母は8時間、機械なら8時間もしくは24時間とかにすればいいのに対して、金型・部品加工業における可動率については、あまりに複雑になってしまう「分母」の取り扱いを、膨大な労力をかけて管理するかというと、それは現実的ではないので、ほとんどの会社で着手できていないのだと思われます。
「可動率」を現場教育の指標として活用する
では、私はどのように扱っているかと言いますと、もっとシンプルに考え、稼働率と対比する考えとは、切り離して使っています。
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