【第2回】「VB使い」なら、もうあなたの隣にいます
前回のコラムでは、私が温めていた「F値最適化」のネタを、AIで形にする実験レポをお届けしました。

第2弾となる今回は、以前クライアント先で「これ、自動化できたら楽だよね」と話題に上がった、現場の課題がテーマです。些細な違いではありますが、前回とは異なるアプローチでのAI活用例をご紹介します。
現場の視点:その「手作業」、本当に必要ですか?
今回のテーマは、「加工開始前の工具長測定の自動化」です。
これは以前、あるクライアント企業様と「内段取り時間をどう短縮するか」を議論していた際に上がった課題です。マシニングセンターで複数の工具(ATC)を使う際、加工プログラムを動かす前に、マガジンにセットしたすべての工具の長さを測る必要があります。
もちろん、現場によっては、機内のテーブルに設置するタイプの手動式基準位置測定器などを使い、刃先を当てては制御画面の座標値を目視で確認し、手作業で補正値を入力するという工程になるかもしれません。しかし、今回のコラムでは、機内に設置された自動測定器(レーザーやタッチ式)を活用していることを前提としています。
手動での計測を余儀なくされるのであれば別ですが、せっかく機内に自動測定器が備わっているのなら、人間がつきっきりにならずに全工具を「連続で自動計測」させたいところです。
しかし、実際にはなかなかその「連続実行」に踏み切るのが難しいという声もよく伺います。その背景にあるのは、「もし一本でもイレギュラーに長い工具が混ざっていたら、測定器と干渉(衝突)してしまうのではないか」という、安全面への非常に慎重な配慮です。この心配があるために、自動測定器という立派な道具がありながら、結局は一本ずつ人の目で確認しながら計測せざるを得ない……。そんなジレンマが、自動化の大きなハードルになっているケースもあります。
もちろん、CAMのポストプロセッサを編集し、出力されるNCデータに最初から測定指令を組み込んでいる先進的な会社もあります。しかし、すべての現場でCAMのポストを自由にいじれるわけではありません。
そこで、私が現役時代に取っていた手法が、「VBAを使って、既存のNCプログラムから測定用プログラムを自動抽出・編集する」という方法でした。
今回のAI活用方法:「ビフォー・アフター」で指示を出す
今回も、私がかつて手組みで作っていたようなVBAプログラムを、「AIを使って即時作成すること」にチャレンジしてみました。
今回は編集ロジックを細かくAIに説明するのではなく、「編集前の加工プログラム」と「出力したい測定用プログラム」のサンプルの両方を読み込ませ、「この差(ギャップ)を埋めるためのエクセルシートとVBAプログラムを作って」と指示を出しました。
するとAIからは、
「工具番号を抽出」というボタンをクリックすると、指定したNCデータからT番号を重複なくシートに書き出し、エクセル上に「測定工具リスト」を作成する。そして、リストが整ったら「測定用PGを作成」というボタンを押すだけで実機用のコードを出力する。
……という2つのアクションを軸にしたプログラムを、即時作成してくれました。





なお、このアプリには、以前あるクライアント企業から伺った課題を踏まえ、もう一つ機能を付け加えました。それは、まさに先ほど触れた「移動中の干渉(衝突)」という、自動化を阻む懸念を解消するための仕掛けです。
具体的には、エクセルのリストに「しるし(今回は*)」を一つ入れるだけで、「この工具は長いので、アプローチの開始位置を通常より高くする(Z200→Z300)」といった、物理的な干渉を回避する処理をついでに実装してみました。


測定器のマニュアルを参照し、専用のコマンド(Gコード)を正しく出力するように調整する作業も、AIと対話しながらであれば一瞬で済み、とても楽になります(マニュアルを読むのを最小限にできます)。
かつての私は、手組みでコードを書きながら試行錯誤を重ね、こうしたツールを作っていました。しかし今では、AIという相棒を得たことで、アイデアを思いついた瞬間に形にできてしまう。このスピード感こそが、今の時代の最大の武器になると感じています。
おわりに:可能性の「初歩」として
今回の試みは、「もともとの加工プログラムから測定用のプログラムを抽出・再編集する」というアプローチの一例です。
※補足:事例で使用している「G8915」などのコマンドは、特定の測定装置における一例です。実際の指令内容は機械やメーカーによって異なりますのでご注意ください。
実際には、測定位置への移動経路や途中の干渉物の考慮など、現場ごとにさらに作り込みが必要になると思います。
しかしまずは、「自動化の種」をサクッと作れてしまうこと自体に、大きな意味があると感じています。
やはり思うのは、「VB使い」を外に探す必要はないということです。
あなたの隣にいるAIに対して、「このように変更したい」という具体的な見本を提示すれば、現場で培った“業務上の不便を解消したい”という要望を、これまでとは比較にならない速さで形にできるようになります。
もし、まだこうしたAIの活用ができていないという企業様がいらっしゃれば、自社の「当たり前」を今日からアップデートしてみませんか。参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
