【技術ワンポイント】エンドミルのリード角の強弱の使い分けについて(ハイヘリカル・エンドミルなど)

目次

エンドミルのリード角の強弱の使い分けについて

エンドミル側面の刃のねじれの角度のことを、「ねじれ角」とか「リード角」と言います。

また、下図のように、ねじれ角度の強いエンドミルと、弱いエンドミルがあります。

エンドミルのねじれ

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/monoq/basic/detail/detail29.html

「ものづくりQ&A 基礎編 エンドミル加工 | 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

ねじれの強いエンドミルを、ハイヘリカル・エンドミルと呼ぶこともあります。

今回は、このねじれ角が違うことにどんな意味があり、どう使い分けるかに触れてみたいと思います。

まず、ねじれ角のあるエンドミルのねじれ角度は、30度くらいが一般的です。

そして、ねじれ角度が大きくなると(上の図で言う「強ねじれ」)、大工さんが使うカンナのように、切削の切れ味はどんどん良くなります。

その理由は、同じ切削送り量ならば、切りくずの厚みが薄くなることで、切削抵抗が下がるためです。

切削抵抗の影響要因の中で、切りくずの厚みの影響は非常に大きく、その厚みを薄くできることで切削時の抵抗が下がります。

横切れ刃角と切りくず厚みの関係

http://carbide.mmc.co.jp/technical_information/tec_turning_tools/tec_hsk-t/tec_turning_technical/tec_turning_cutting_edge

「横切れ刃角/前切れ刃角/切れ刃傾き角 | 三菱マテリアル株式会社」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

上図の一番左のケースが、ねじれ角度が0°の場合、一番右が30°の場合です。

着目したいのが、hで示されている切りくず厚さであり、0°よりも、30°の方が、hの切りくず厚さが薄くなっています(0.87hとなっているので、0°の場合の87%の厚さになっている)。

このねじれ角度がもっと大きくなれば、さらに切りくず厚さは薄くなります。

その最たる例が、数年前に一世を風靡した、下図のような「高送りカッター」です。

http://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/knowledge/milling/application_overview/face_milling/high_feed_milling

「切込角が小さなカッター | サンドビック株式会社」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

これら「高送りカッター」などと呼ばれる工具は、横方向の刃の角度を15°など、極端に寝かせ、同じ送り量であっても、ねじれ角度の少ない工具よりも、5倍以上、切りくず厚さを薄くできます。

言い換えると、同じ切りくず厚さであれば、ねじれ角度の少ない工具よりも、5倍以上、送り量を上げることができます。

もし興味があれば、図を描いてみると、よくわかります。

さて、エンドミルのねじれ角について、前述したように切れ味、切削性に影響があるわけですが、加工品質にどのような影響があるのでしょうか。

切削性にとても良い影響のある、強ねじれエンドミルですが、加工品質において、一つ注意点があります。

0°のものと、下図の「工具」のような、ねじれ角の強いものを比較すると、わかりやすいのですが、強ねじれのエンドミルは、下図のような「側面切削」において、各側面の刃が材料に接触するタイミングに、時間差が生じるので、ねじれが強いほど、うねりが生じやすくなります。

エンドミルの側面切削

http://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110600014060/

「XACシリーズ超硬ハイヘリカルエンドミル 高硬度鋼加工用・多刃・45°ネジレ/レギュラータイプ | 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/monoq/basic/detail/detail30.html

「ものづくりQ&A 基礎編 エンドミル加工 |  株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

まとめると、ねじれが強い工具は、切削性、切れ味は上がるので、仕上げ面粗さは良くなりますが、例えば、立ち壁の深いポケット切削などの場合、加工面にうねりが出やすくはなりますので、留意したいところです。

それと、もう一つ留意点があります。

薄板ワークの加工に使用すると、弱ねじれのエンドミルに比べて、ワークのビビリが発生する可能性があります。

下の右図のように、横方向の刃に角度がつくと、切削時に上下方向に力が分散します。

横切れ刃角による力の分散

http://carbide.mmc.co.jp/technical_information/tec_turning_tools/tec_hsk-t/tec_turning_technical/tec_turning_cutting_edge

「横切れ刃角による影響 | 三菱マテリアル株式会社」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

つまり、エンドミルを引き抜いたり、押し込んだり、はたまた、ワークを上下方向に押したり、引き込んだりする力が発生します。

昔、ハイス製の太いラフィング・エンドミルの重切削加工において、エンドミルが抜けるというのがよくありましたが、最近はそういった工具の使用も減ってきたので、工具が抜け落ちるというのは少なくなったようですが、ワークに対する影響は考慮しなくてはいけません。

まとめると、ハイヘリカル工具などの強ねじれのエンドミルを使用するにおいては、薄板ワークや、剛性の強いクランプの出来ないワークにおいては、ビビリの発生確率が高まります。

最後に、刃持ち、工具寿命の影響についてですが、強ねじれのエンドミルの特に、先端部においては、下図のような刃先の先端角度が鋭利になるため、欠損しやすくなります。

エンドミルのシャープコーナー部

http://nachi-tool.jp/blog/index.php?e=37

「ギャッシュランドとシャープコーナの比較 | 株式会社不二越」サイトより (最終閲覧日:2016年4月17日)

したがって、基本的には、ねじれの弱いエンドミルよりも、硬い材料には向かないと言えます。

ただし、最近では、靭性を改善し、高硬度用のハイヘリカルエンドミルも販売されているので、全てに当てはまるわけではありません。あくまで原理・原則です。

しかし、工具を使い分ける・使いこなすためには、原理・原則を知っておくことは重要です。

ここで、ねじれの強弱によるエンドミルの特性を、各評価指標ごとに比較するとこのようになります。

  • 送り方向の切削抵抗
    • 弱ねじれ<強ねじれ(良)
  • 上下方向の切削抵抗
    • 弱ねじれ(良)>強ねじれ
  • 仕上げ面粗さ
    • 弱ねじれ<強ねじれ(良)
  • 加工面のうねり
    • 弱ねじれ(良)>強ねじれ
  • 刃先先端の欠損リスク
    • 弱ねじれ(良)>強ねじれ

加工形状や求める精度、品質、コストなどを勘案し、使い分けたいものです。

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

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