どうしても不具合が無くならないときに:金型・部品加工業における真のプロと一般のプロの違い
今回は、あまりに不具合が多く発生していたプレスメーカーの金型内製部門の現場にてお話しした内容を事例として取り上げ、このコラムの読者企業の皆様にもご紹介したいと思います。
どうしようもなく不具合が発生してしまっているときに考えるべき、基本中の基本について、ベテラン職人とセミプロ・アマチュア、プロ中のプロと一般のプロがとるべき手順の違いを、まずは料理の世界に例えて見ていきたいと思います。
なお、料理の世界の手順については、私は実際に見聞きをしたわけではなく想像で書いておりますので、そのあたりはご了承いただけますと幸いです。
ベテラン職人 vs. セミプロ・アマチュア:経験と勘の差
料理の世界で例えると、一般的な料理人は調味料を量りで計量して正確に量ると思いますが、ベテラン職人になると目分量で寸分たがわない量で調理することができるのではないでしょうか。
それは何百回、何千回と同じ作業を繰り返してきたからこそなせる業であり、金型メーカーや機械加工メーカーの機械加工現場での仕事も同じだと思っています。
経験豊富な職人は、一発で仕上げ寸法を出せる手順(工具選定や加工条件、取り代設定など)を知っている場合がありますが、そうでない場合はダミー形状で試し切り(ワイヤー放電加工)、試し削り(フライス加工)を行い、寸法精度を確認しながら仕上げるのがセオリーだと思います。
金型メーカーや一品加工品を扱うメーカーは、本加工前に入念な品質確認を行える量産部品の手順とは異なり、一発勝負だからといってギャンブル的な加工は許されません。
なお、ここで言うギャンブル的な加工とは、充分な経験と根拠がないまま、エイヤーで仕上げ寸法を狙うことを言います。
ベテラン職人の真髄:確実性を追求する姿勢
前述の通り、ギャンブル的な加工は、充分な経験と実績を積んだベテラン職人だけが許されるものです。そうでなければ、ベテラン職人より時間がかかってしまうとしても、一手間かけるのが本来の仕事の在り方だと思います。
かつてはマシニング加工においても、超硬エンドミルではなく、ハイスエンドミルが主流だったときは、工具剛性が超硬エンドミルほどないため、深い立壁加工などは狙った仕上げ寸法が安定せず、ダミーワークで確認しておくか、少し取り代を残して一旦仕上げ、マイナスオフセットする量を確認するなど、一手間かけた手順を踏んでいた人が多いと思います。
しかし近年は、以前よりは安価に超硬エンドミルが購入できるようになったため、いきなり仕上げ寸法を狙う手順が当たり前になっていると思います。
しかし、高硬度鋼の高精度仕上げ加工などでは、一発で狙った通りの寸法や面粗さにならないことが多く、最悪、仕上げ面が荒れてしまった場合など、作り直しになってしまうケースも見受けられます。
不具合を減らすための鉄則:試し切り・試し削り
このような難易度の高い加工に限らず、そもそもポカミスが多い人には、試し切り・試し削りを行うことが有効だと思っています。
製品に影響のないところで、とにかく試し加工を行い、確実に条件やプログラムなどが、大丈夫だと確認してから本加工に入る、ある意味、量産部品の加工でとるような手順です。
全ての加工品に適用できるとは限りませんが、基本的な考え方は、「心配なら一度他で試しておく」です。
試し加工の重要性:材料の価値と品質への影響
私が不具合が減らない現場でお話しする、「もし材料が一千万円したら、どうなりますか?どうしますか?」という質問があります。
私自身としては、材料の価格を考えると怖くなって、機械のスタートボタンが、手が震えて押せなくなると思いますが、それはさておき、少なくともそんなときこそ、試し加工は充分にやっておくべきです。
試し加工をやらなければならない期間ですが、経験を10回積むまでなのか20回までなのか、加工品や個人差によって異なると思います。
しかし、短期間でエースになれる人は、こういった勘コツを得るのが上手な人だと思います。一方、一般の人は確実になるまで「試し」をやればいいと思います。
「今の短納期対応でそんな時間取れないし」と思う方もいるかもしれませんが、品質的に作り直しが必要になった場合、「試し加工」どころでもない時間がさらにかかってしまうことになります。
もちろん、全ての加工者が試し加工をやっているわけではなく、やはり未熟だからやるわけで、一発で狙い寸法を出せるならそれに越したことはありません。それが熟練者であり、仕事の早い人だと言えるでしょう。
さいごに
もし読者企業の現場で、どうしても不具合が減らないという状況があれば、今回の内容を参考にしてみてはいかがでしょうか。
金型・部品加工業において、真のプロと一般のプロの大きな違いの一つは、経験と勘に基づいた確実性を追求する姿勢だと思います。
ベテラン職人と同じようにすぐに完璧になることは難しいかもしれませんが、試し切り・試し削りなど、確実性を高めるための取り組みを意識することで、不具合を減らし、品質向上に繋げていくことができると思います。
御社の現場はいかがでしょうか。参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
