【改訂版】金型メーカー・部品加工メーカーにおける、最小限で済まそうとする人と最大限全てを会得しようとする人の違いとは?
金型メーカーや部品加工メーカーのコンサルティングの現場では、大きく分けて2種類のスタンスの人に出会います。
それは「最大限全てを会得しようとする人」と「(今必要な)最小限で済まそうとする人」です。
近年の「働き方改革」の流れを汲むと、限られた勤務時間を有効活用し、適切なアウトプット(仕事の成果)に見合う「最小限のインプット(学習や練習)」で済ませるべきだ、という考え方もあるでしょう。
以前、ある経営者が「会社は学校ではない。社員が学びに来るところではなく、皆で利益を創出し、それを分け合い、働く場を維持発展させていくところだ」と仰っていました。私も全く同感です。
そう考えると、今回のテーマである「最小限で済まそうとする人」を問題視し、「最大限会得しようとする人」を良しとする考え方は、もしかしたら適切ではないのかもしれません。
「今」必要かどうかで判断する人々
現場での具体例を挙げてみたいと思います。
例えば、工作機械やCAD/CAMなどの操作について、今まさに必要となる機能だけを最小限で覚えて日々の仕事にあたるスタンスの人。
対して、今すぐには使わない機能まで、導入教育の際に質問攻めしたり、業務の合間に調べたり、試してみたりするスタンスの人。
もちろん、両極端な人ばかりではなく、「時間があればやる」「指示があれば文句を言わずに調べる」という堅実な方も多くいらっしゃいます。
ただ今回は、あえて「最小限で済まそうとする人」が抱える問題点について考察してみたいと思います。
先ほど触れたように、彼らの判断基準において「今必要か、そうでないか」という点は大きいと思います。
たしかに、長い会社人としてのキャリアを考えれば、いつまで今の作業を続けるか分かりません。視野が長い人ほど、効率的に「最適なインプット」で済ませて成果を出そうと考えるのは、むしろ悪いことではないかもしれません。
「インプット」の履き違えと「Cタイプ」の存在
しかし、そういった考えの人は、ビジネスにおける「インプット」という言葉を少し履き違えてはいないでしょうか。
「最少のインプットで最大のアウトプットを出す」。これは経営の理想です。
ですが、ここで言う「インプット」とは、本来「作業工数」のことになります。つまり、会社や現場に対するインプット(=労働時間の投入)を指します。
最少の作業工数で、最大のアウトプット(=出来高)を上げることが理想です。
では、その「最小のインプット(=作業工数)」を実現するために、何をすべきか。ここで初めて「自分へのインプット」が必要になります。
自分へのインプットとは、すなわち学習時間や技能の練習です。
自分自身に知識や技術をインプットし、腕を磨き、まだ知らない機能を使ってみる。それによって、今よりもさらに業務効率を上げる(ここでいう効率化とは、既存の作業を今より短い時間で実現することです)。
その結果、変わらない、もしくはさらに多くの出来高(アウトプット)を生み出すことにつながります。
これこそが、「生産性を上げる」ことの本質です。
私が以前のコラムで分類した従業員のタイプで言えば、この「最小限で済まそうとする」傾向は、特に『Cタイプ』の人に顕著に見られます。

Cタイプとは、「仕事自体は好きではないが、お金や評価(生活のため)がモチベーションの源泉になっている」人たちを指します。
彼らはもともと仕事自体への知的好奇心が強いわけではないため、教育や学習(=自己投資)に対しても「今すぐ必要でなければ取り組まない」「必要最低限で済ませようとする」といった傾向が見られます。
その結果、技術的な知識や技能を要する実務での成果よりも、5S活動や間接業務での成果を強調しがちな点も特徴の一つです。
目的を理解させることがスタート
この関係性を踏まえると、「最大限全てを会得しようとする人」(先ほどのコラムの分類で言えば、AタイプやBタイプの人が近い)の姿が違って見えてきます。
彼らは単なる知的好奇心でやっているだけではなく、多くの場合、このインプットとアウトプットの関係性を本能的または論理的に理解していると思います。
「自分へのインプット」が、「会社や現場へのインプット(作業工数)」の最小化に繋がり、最終的に「会社へのアウトプット(成果)」を最大化させる。この流れをきちんと認識していると思います。
ざっくり「何のために勉強するのか?」を理解しているということですね。
したがって、もしあなたの周りや部下に「最小限で済まそうとする人」がいた場合、伝えるべきことがあるとすれば、「なぜ学ぶ必要があるのか」という「本来の目的」の共有となるのではないでしょうか。
「会社は学校ではない」からこそ、会社(現場)へのインプットである「作業工数」を最小限に抑え、会社へのアウトプット(生産性)を最大化するために、「自分へのインプット(学習)」が必要なのだということです。
そして、その生産性の向上が、彼らの目的である「評価や報酬」に直結するのだと、明確に教えて理解させることが、全てのスタートになるのではないでしょうか。
これを読んでくださっている読者の方々の現場に、「最小限で済まそうとする人」はいらっしゃるでしょうか。
もしよろしければ、参考にしていただけますと幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054
