金型・部品加工業専門コンサルティング

金型・部品加工業専門コンサルティング(加工コンサル)は、金型メーカーや、マシニングなどの機械加工業を専門とする経営コンサルタント事務所です。

TEL.0566-21-2054

事務所所在地: 愛知県刈谷市

エンドミル

FAQ

古い加工技術にこそ今使えるノウハウがある

 

私のクライアント企業の中には、加工寸法公差がプラスマイナス0.01ミリといった高精度の部品加工を要求される製造現場があり、それに対応しなくてはならない若手の皆さんは大変苦しんでいます。

 

ワイヤーカットによるセカンドカット、サードカットが使えれば、0.02ミリのレンジへの対応は難しくはないと思いますが(加工歪みの問題は別として)、エンドミルによる切削加工、さらに焼入れ処理された高硬度材が対象となると、非常に厳しいものがあります。

 

使用されている機械や、そもそもの加工形状にもよりますので、一概にバチッと「この手順で」というアドバイスが難しいのが現実なのですが、私のような今主流の超硬エンドミルではなく、ハイス製のエンドミルばかりで加工してた時代も長く経験しているという人間からしますと、それらの工具で泣く泣く加工してきた方法の中に、今こそ使えるノウハウがあると思っています。

 

例えば、先ほど話しに挙がったワイヤーカットですが、熱補正機能なども完備されている最近のマシンにおいては、放電ギャップや径補正、カット回数など、メーカー指定の条件を用いれば、0.02ミリレンジなどの高精度加工はユーザーの技術としてはさほど難易度は高くないものになりました。

 

しかし10年、20年を超える以前からワイヤーカットをやられている加工者の中には、下図にあるように、スタート穴から本来欲しい形状を切り出す反対側に、10ミリ角などのテストピースを切り出し、それをマイクロで測定し、その日の気温や機械の調子などによる精度誤差を確認したうえで、その誤差を補正して高精度の加工に対応するなどの手順を踏んでいました。

(もちろん今でも、厚板加工のタイコ形状確認などで使われています)

ワイヤーカットの事例

これは、ハイスのエンドミルを使った切削加工も同様で、超硬エンドミルが主流になった今でこそ、仕上げ代0.1や0.2ミリを付けた中仕上げ加工の状態から一気に仕上げ寸法を狙う手順が当たり前になっていますが、ハイスのエンドミルを使っていた加工では、どうしても下図のような倒れが出るため、一発で狙い寸法になることはほとんどありませんでした(もちろん狙いの寸法公差によります)。

細いエンドミルで深い立壁を切削加工

しかも、加工ビビリも出やすいため、突き出し長さが長いなど厳しい条件で一発仕上げを狙うと、食い込み寸法になることもありました。

 

そこで、仮で一旦仕上げてみて、その日、その時の傾向を掴み、それを加味したうえで仕上げるという手堅い手順を踏むわけです。

 

具体的には、0.1ミリなど仕上げ代と同じくらいの寸法を残したうえで、一旦「中仕上げ加工→仕上げ加工」のプロセスを踏み、仮の状態で仕上げます。

 

形状や深さによる加工負荷、機械の調子、エンドミルの径・摩耗具合など、そのとき出せる加工精度を認識し、エンドミルの倒れなどで余分に残る取り代を加味したうえで、再度「中仕上げ→仕上げ加工」の手順で仕上げます。

 

この手順は、現在においても、高硬度材をプラスマイナス0.01ミリ精度で仕上げるなど、一発で公差内に仕上げるには厳しいときに使えると思います。

 

こうした厳しい公差の加工は、切り込み深さやゼロカット回数などをパターン化しようとしても、その都度、加工形状や深さ、機械剛性、そのときのエンドミルの状態などにより、加工後寸法の傾向は変わってくるためです。

 

どの方法がベストだと一概には決められませんが、一発で公差内まで狙えない厳しい加工においては、こうした手順もあるということです。

 

もちろん、プラスマイナス0.02ミリの加工公差のときなど、0.04ミリ以上のレンジがあるという加工であれば、剛性のある超硬エンドミルのメリットをフルに活かし、一発で公差内に入れる工程を考えても良いと思います。

 

私も含め、かつて今ほど良くない工具や機械を使っていた現場加工者の皆さんは、何とかあるもので精度を出そうと創意工夫していました。

今の高度になったツールでは必要が無くなったノウハウもあると思いますが、今の若手の皆さんにおいては、こうした経験ができなくなったのも、応用力を育てる観点からは少し物足りない感もあります。

 

社内で加工者の育成カリキュラムを作られている企業におかれましては、あえて整い過ぎた最新の環境ではなく、少し古く精度の出しにくい道具や機械で加工に取り組んでみるというカリキュラムを一部取り入れてみるのはいかがでしょうか。

応用力や危機対応能力の育成につながると思います。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

 

このホームページの技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

3D加工における等高線加工と走査線加工、エンドミル条件を使い分けていますか?

 

今回は、CAD/CAMを使った3D加工において、主に仕上げ加工で使われる等高線加工と走査線加工について、同じ工具であっても、それぞれの主軸回転速度(S値)と、送り速度(F値)を別々に使い分けていますか?というテーマです。

 

これは、とあるCAMが等高線加工と走査線加工、同じ工具を使っていても自動で、それぞれ異なるS値とF値が設定されるのを見て、「たしかにそうだよな」と気づいてからは、クライアント企業にこの設定をするよう推奨しております。

 

では、具体的に見ていきます。

 

まず今回のテーマ、等高線加工と走査線加工でのエンドミル条件の使い分けは、主に仕上げ加工を対象としております。

 

そもそも、等高線加工と走査線加工は、下図のように、加工する形状の傾斜部において、それぞれ得意とする角度エリアだけを加工するために使い分けされます。

ちなみに、私は30度~40度あたりで分割するのを推奨しています。

等高線の加工エリア

走査線の加工エリア

逆に、それぞれで加工しない側の角度エリアは、次のように送りピッチに支障がでるため、通常は除外します。

  1. 等高線加工の場合、走査線加工で行うエリアのように角度が緩くなると、どれだけZピッチを細かくしても、加工表面を沿う送りピッチは広くなってしまうため、緩い角度エリアは走査線加工で行うことになる。
  2. 走査線加工の場合、等高線加工で行うエリアのように角度が立ってくると、どれだけXYピッチを細かくしても、加工表面を沿うZピッチは広くなってしまうため、立っている角度エリアは等高線加工で行うことになる。

 

最近のCAMは、等高線加工と走査線加工を一緒にした加工パターンも用意されていて、そういった機能を使うと、上記の1.と2.は気にしなくてもよくなるのですが、原則はこのように形状に応じて、それぞれの加工を使い分けします。

 

さてここから本題ですが、等高線加工と走査線加工、同じボールエンドミルを使う場合、それぞれのS値とF値は同じで良いでしょうか。

 

実は前述したように、加工するエリアを角度で分割した場合は、下図のようにそれぞれの加工でワークに接触するボールエンドミルの箇所が異なります(図は30度で分割した例)。

工具の接触点

この図におけるそれぞれの接触点は、等高線加工と走査線加工、それぞれの加工において、ボールエンドミルの最外周が接触する点を表しています。

 

等高線加工であれば、90度の立ち壁が接触する点、走査線加工であれば、最も角度が立っている30度の部位が接触する点になります。

 

工具の加工条件であるS値は、毎分あたりの主軸の回転数であり、その数値は工具の周速値(毎分あたり可能な切削距離)から計算されます。

S値の計算

この計算によると、分母であるD(工具直径)が小さいほど、主軸の回転速さであるS値が大きくなります。

 

したがって、前述した工具の接触点の図を見ると、等高線加工よりも、走査線加工の方が小さい直径で接触するため、等高線加工よりも走査線加工の方が速いS値で加工できるということになります。

 

最後に、具体的な計算方法ですが、もう一度、先ほどの図を見ると、

A部の計算

赤い線で示した長さは、ボールエンドミルの半径になります。

したがってこの図から、ボールエンドミルの半径R値にSin計算をすれば、Aの長さ、つまり走査線加工で使用する工具半径値が計算できます。

 

また、F値ですが、計算は次のようになります。

F値の計算

この計算式を見ると、S値が大きくなれば、比例してF値、つまり送り速度が速くなり、加工が早くなります。

 

このことによれば、緩い角度しか加工しない走査線加工については、接触する最外周の工具径でS値を計算し、できる限り速い送り速度で加工した方が効率が上がるということになります。

 

そういった意味では、最近のCAMで等高線加工と走査線加工が一緒になった加工設定ができる機能があったとしても、あえて等高線加工と走査線加工を別々に分け、走査線加工を速い送り速度で加工するという意義はあると思います。

 

最後になりますが、私が見てきたCAMオペレーターの中で、腕の良いオペレーターは、下図のようなCAMの加工設定の中で、同じ工具を使っていても、パスの形状や今回のような工具の使われ方によっては、エンドミル条件(S値、F値)を使い分けています。

CAMの加工設定

 

恥ずかしながら、私は現役でCAM作業をしていたときは、この使い分けをしていませんでした。

ぜひ今現役のオペレーターの方々には使っていただきたいと思います。もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

このホームページの技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?

 

さて今回は、私自身が普段のコンサルティングでよく感じる、マシニングセンターの精度についてオペレーターの方々に感じることを取り上げました。

題して「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

テーブルの送り速度について

まずテーブル又は、主軸の送り速度についてです。

 

これは、マシニングセンターにて、CAMデータによる3次元加工を行う際に、感じることです。

 

最近の工具カタログには、ありがたいことにエンドミルの種類ごとほとんどの工具について加工条件が記載されています。

 

これにより、CAMオペレーターは、悩まずにCAMに主軸の回転と送り速度を入力することができます。

ここで私が感じることは、その条件を何の気なしに使っている点です。特に問題と感じるのは、狭いエリアでカクカクと曲がる軌跡で加工している場合です。

 

コーティング超硬エンドミルによる切削加工が主流になり、送り速度がF1,000やF3,000を超えるような高速な送り速度も当たり前になってきました。

しかし、3D加工における下図のような角部や狭い凹溝部を加工する場合、四角や円形状の狭い穴の内側を加工するような場合においては、最も早い送り速度が出せる、長い直線距離がほとんどありません。

狭小部位のパス

このような加工パスで、カタログの推奨条件値をそのまま使っても大丈夫でしょうか。

 

最近のマシニングセンターであれば、自動加減速機能が働くので、こうした部位を加工しているときは、プログラムの数行先読み機能により、曲がり角になる前にスピードを落としてくれます。

 

結果、こうした狭い部位は、ほとんどトップスピードが出ずに、機械が出せる送り速度に調整されながら加工されていると思います。これは加工中に、マシニングセンターの制御パネルに表示されている送り速度をながめているとわかります。

 

しかし、古いマシニングセンターでこうした機能がない場合は、速い設定の送り速度に追従できず、機械がガクガクと振動したこともありますし、そもそも自動車に例えると、急なヘアピンコーナーをトップスピードのまま走ろうとしているようなものです。

 

±0.02ミリを下回る公差など、高精度な3D加工を行う場合には、こういった狭い凹部位と、逆に緩やかな凸形状部位は分けて加工条件を考慮すべきと考えます。

 

つまり、自動車レースのサーキットでいうところの、急なヘアピンコーナーを正確にトレースしていくには低速ギアを使い、トップスピードが出せる直線コースは高速ギアを使うといったように、加工エリアを分けて加工パスを作ると、非常に高精度な3D加工ができると思います。

 

ただし荒取り加工や、さほど精度が要求されない部品まで、こうした配慮をする必要はないと思っています。あくまで高精度な仕上げ加工で必要になる考えです。

 

一般的にマシニングセンターでは、パンフレットやPR資料などで、真円の輪郭精度などを紹介していますが、狭い部位を正確にトレースさせて高精度を狙いたい場合、私はこの送り速度を参考にしています。

 

実際、私が見てきた上手い加工パスを作るCAMオペレーターは、同じエンドミルを使っていても、加工部位によって加工条件を変えています。こうしたCAMオペレーターは、マシニングセンターの動作特性を良く知っている人だと思います。

 

逆にそうでない加工パスは、どのような加工であっても、同じエンドミルでは一律にカタログ推奨条件をそのまま使っています。

 

いかがでしょう、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますでしょうか?」

 

端面基準について

次は、マシニングセンターの加工原点の取り方についてです。

 

立形マシニングセンターであれば、加工原点の設定は、①平面的なXY基準と、②高さ方向のZ基準がありますが、今回はXY基準についてです。

 

先日、クライアント先企業でこのようなミスが発生しました。

 

金型の修正追加工で、すでに意匠面が削り出されているワークに、マシニングセンターで追加工を行うため、ワークの平行出しなどの段取りを行った後、CAMデータで設定したXY原点に合うよう、意匠面形状にタッチセンサーを当てて基準をとろうとしました。

 

そこで、段取り図面に意匠面形状の片側からの寸法が書かれていたので、いわゆる端面基準ということで、意匠面の片側からとった位置から、図面寸法分だけ移動し、それをX原点としました。

片側だけから基準をとろうとしたミス

※クライアント企業との守秘義務のため、図は別途、仮のモデルを使用しております。

 

しかし実は、その部品は、0.5ミリマイナスオフセットされて加工されていた部品でしたので、残念ながらX原点は、マイナスオフセットされていた分の0.5ミリずれてしまったというミスなのですが、今回取り上げたいことは、この0.5ミリのずれを見逃してしまったことではありません。

 

今回のテーマは、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

問題は、このミスのことではなく、端面基準でX原点を決めようとした、その判断についてです。

 

片側から測定した位置から、図面に記載されている、ちょうど100ミリ分を移動し、そこをX原点にしようとしたということですが、そもそも、切削加工されているワークが、100ミリちょうどピッタリで加工されていると思っていること自体が問題です。

まさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

切削加工には加工公差というものがあり、皆さん、その公差内に入るよう、限られた工数の中で努力していますが、1ミクロンの誤差もなく、100.000ミリの寸法で加工することは、全く不可能とは言いませんが現実的ではありません。

 

通常、金型のような硬い材料であれば、工具は逃げるものであり、0.01ミリや0.02~3ミリは大きくなることが多く、それを工具径補正機能など使って追い込んだりしていると思います。

 

したがって、加工誤差があるという認識があれば、片側から基準をとることはせずに、まず現状の実測値を測ったのち、センター振り分けなどで基準をとるのが一般的だと思います。

 

こうした認識不足のミスは、段取り作業だけを行う若手オペレーターに多く発生しております。

 

ぜひ、今後の製造現場を担う若手加工者に、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」を意識していただきたいと思います。

 

バイスの精度について

これも、クライアント先企業であった話です。

 

マシニングオペレーターの上司の方が、自社の仕事内容を紹介してくれた際、「うちのオペレーターは、極めて精密な部品を扱っているので倍以上の手間をかけて段取りをします」と紹介してくれました。

 

そこで、マシニングオペレーターが小物部品のワークをバイスにセットする際の作業の一部始終を見ていたのですが、少しおかしなことに気づきました。

 

樹脂製ハンマーで、前後左右、何度も何度もワークを叩き、平行直角になるよう調整していたのですが、その中で、下図にあるように、バイスの開閉方向にも叩いていることに気づきました。

バイスを開閉方向に叩く

当然バイスの構造上、このような叩き方はよくありません。

 

なぜ、このように叩くのか聞いてみたところ、これだけいろんな方向から時間をかけて叩かないと、平行直角が出ないとのことでした。

こうなると理由は次の2つです。

  • 元々のワークの6面フライスの状態が悪い
  • バイスの口金の直角が出ていない

ワーク素材の6面フライスの状態を確認したところ、問題が無かったので、バイスの口金をダイヤルゲージで確認したところ、バイスの口金及び、パラレルブロックを置くバイスの底面も、傾きが出ていました。

 

バイスの口金は研削加工で修正できますが、バイスの底面は長く使っているうちに、早送りで工具をぶつけるなどの事故により、歪みが出てしまったと思われます。

 

このように、高精度な段取りをしているつもりが、インフラ部分、そもそものツールや機械、冶具の状態が良くないということがあります。

 

これもまさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

機械や道具自体に誤差があり得ることを認識したうえで、段取りをする必要があります。

 

テーブルの精度について

これも、前述のテーマと同様のケースですが、あるクライアント先企業にあった8番の立形マシニングセンターの加工精度が出ないとのことで、テーブル上面をダイヤルゲージで走ってもらいました。

 

そうしたところ、最大で、0.2ミリ(!)も、傾きが出ていました。

 

メンテナンス状況を確認してみたところ、水平器による機械自体の傾きの確認は、10年近くやっていないとのことでした。

 

これは、前述したバイスが歪んでいたという加工メーカーも同様で、やはり機械のレベル確認を10年近くやっていないとのことでした。

 

水平器により確認したところ、テーブル自体の平行度は大きく傾いていました。

 

こちらについても、確認だけでも年1回は行ったり、地震などの後は確認するなどの配慮が必要かと思います。

 

これもまさに、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

機械は導入したら、永遠に精度が維持されるわけではありません。

 

ミーリングチャックと振れ精度

最後に、ミーリングチャックと振れ精度についてですが、高精度をうたっているミーリングチャックについても、傷んだコレットを使っていたり、長年使っていると精度が悪くなってきます。

 

主軸に工具のついたミーリングチャックを取り付けてみて、ゆっくりと主軸を回転させた状態で、ダイヤルゲージを使って振れを確認してみたことがありますでしょうか。

 

最近では機上でのレーザー計測による非接触で振れ精度を確認することもできますが、このようなアナログ式の方法でも確認ができます。

 

実際には、0.01や0.02ミリなど、振れが出ることがあります。

 

このとき、ミーリングチャックを緩めて再度締め直すか、主軸から取り外し、180度回して取り付けるなどを行うと、振れ傾向が変わることもあります。

 

もし振れ精度が良くない状態で、工具径補正を使って高精度に追い込み加工をする、直角精度を出す、などを行っても結構辛いと思います。

 

この点についても、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」です。

 

 

単調作業的に、ミーリングチャックに工具を締め付け、CAMデータを読み込んで加工すれば、その他の機械や工具、ツーリングなどの精度などは、勝手に保証されているわけではありません。

 

もちろん、全てが新品のとき管理は少なくても済むかもしれませんが、早送りでぶつけたことがあるなど、長くマシニングセンターを使っていれば、何らかの軽い事故はつきもので、こうしたことがあったりすると、色々な箇所で精度には気を配らないといけなくなってきます。

 

おわりに

今回のテーマは、「マシニングセンターの現実の精度と向き合っていますか?」でしたが、とかく短納期やコスト競争に追われている中で分業化も進み、加工オペレーターは段取りだけの単調な作業になりがちです。

 

そうした中でも加工技術者としては、加工精度や機械精度は勝手に保証されているものではなく、人間の管理の結果、どうとでも変わってくるものだと認識するべきだと思います。

 

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

プレス金型設計者の人材育成手順と日程管理について

【プロローグ】設計人材の育成について

 

今回のFAQコラムは相談を受ける機会がとても多い、プレス金型製造における設計人材の育成についてです。

 

その理由の一つに、既存のベテラン設計者と同等の能力を持った設計者をなかなか育てることができないと問題があります。

今回は、そんな悩みの多い「金型設計者の育成手順と日程管理の方法」についてみていきたいと思います。

 

まずは、育成の順番からみていきます。

これは、下図に示す(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計という設計工程のうち、最後の工程から順番をさかのぼっていく形で経験を積ませます。

3つの設計工程

 

つまり、設計人材の育成の手順としては、まず使用するCAD操作を習得したのち、設計工程の一番後である、(3)の部品設計から経験を積ませ、能力を向上させていくということになります。

 

具体的には、次のような対応が考えられます。

  • 2次元設計であれば、ベテラン設計者が作成した金型組図から部品バラシ図や、3D加工用の部品モデルをモデリングする。
  • 3次元設計であれば、ベテラン設計者の構想図面から、3D金型モデルをモデリングする。

 

なお、部品設計の経験を積む際には、心理学にある、①符号化、②貯蔵、③検索というモノを思い出すときの脳の思考プロセスを踏まえ、意識することが望ましいです。

 

人間の記憶には、短期記憶と長期記憶がありますが、特に長期記憶は、体系化した言語や図など、わかりやすくなった情報ほど頭の中に長く貯蔵され、また思い出しやすくなります(検索性)。

 

その記憶の中から必要なときに情報を取り出して(検索して)、目の前の行動に使われるということになります。

 

つまり、物覚えの良い人とは、ズバリ!この①の符号化の効率が高い人ということが言えます。

 

例えば、一度見たこと・聞いたことを、後で思い出しやすい状態で記憶していくということです。

 

私は、これを中小企業診断士の勉強の際に意識しました。

 

具体的には、モノを記憶する際、必ず相対的に覚えるということです。

 

例えば、初めて見るタイプのエンドミルがあれば、これと対になるものを必ずイメージします。

従来使っていたエンドミルを思い浮かべ価格の違いをイメージしたり、刃数の違うエンドミルをイメージして加工効率の違いをイメージしたりなどです。

 

つまり、それ単体をシャカリキになって覚えようとせず(単なる暗記)、何と何の枠組みの中でそれが存在し、それぞれにどういった違いがあるのか、対になるものの違いと共に一緒に覚えていく。これがいわゆる体系的にモノを覚えるということです。

 

ちなみに、私は本を読むときには、他との比較や体系図などをメモしながら読んだりします。

 

したがって、設計者育成のスタートとしては、まず(3)の部品設計の見習いから始め、金型部品の必要な機能や形状、材質などを体系的に覚えることを意識しながら場数を踏み、いずれ担当する(2)の構造設計のための知識を、経験と共に蓄えていきます。

 

ちなみに、この体系化の考えは、金型設計標準書でも使う考え方です。

単純に、市販部品やプレート類の指定だけを記載するよりも、各部品や形状の選択肢とその選定基準が決められて記載されている設計標準書は、かなりレベルの高い標準書です。

 

このような標準書が整備されているメーカーは、ノウハウや情報の統一・共有化のレベルが高いです。

 

なお、こうした設計工程をさかのぼった経験を踏まず、①符号化、②貯蔵、③検索という思考プロセスが使えずに行う設計作業は、いわゆる試行錯誤による設計ということになります。

 

心理学にある試行錯誤とは、目の前に起きた問題解決のため、根拠のある無しは関係なく、思いつく方法を順番に試し、偶発的に問題が解決するまで続ける方法を指します。

 

いわゆる、なかなか満足のいく設計ができない、ベテラン設計者よりもかなり多く時間がかかってしまう、何度も手戻りを繰り返すといった、設計者の育成が進まない原因となります。

 

さて、設計者の育成手順に戻りますが、(3)の部品設計を一定期間担当した次は、(2)の構造設計の見習いから経験させます。

 

この工程での能力向上の狙いは、(1)の工程設計に必要となる、何工程のプレス加工によれば安定的に製品を作れるか、ブランク工程をどうすれば品質の良い製品が作れるかなど、プレス成形性・加工性などを考慮できる能力を養うということになります。

 

また、品質の良い製品ができる工程で設計できたとしても、量産がはじまると金型は何年にも渡り継続的に使うものであり、金型部品は摩耗・消耗するため、そのとき製品寸法はどうなるかなど、他にも考慮することが多くあります。

 

したがって、単純に、金型組図を製図するだけでなく、「なぜそういった構造にしているのか」「なぜそういったプレスの工程分割をしているのか」などを考えつつ、自分の頭の中のフローチャートに落とし込んでいく必要があります。

 

このフローチャート化が、①符号化、②貯蔵、③検索ができる脳への仕込みになります。

 

設計人材育成の最後の手順が、(1)の工程設計の見習いを始めるということになります。

 

この工程を担当するということは、社内の量産部門や顧客担当者など、自部門以外の関係者とも接することになり、このときには、プレス加工や後工程である機械加工、トライ作業の知識など、幅広い知識が必要になるため、やはり浅くとも体系的な知識が必要になることは言うまでもありません。

 

さて最後に、設計の日程管理についてですが、よく金型の大日程計画に記載されている設計工程そのものの進捗が、若手設計者ほど遅れていく傾向がありますが、これをどうするかという視点でみていきたいと思います。

 

設計工程の日程管理を遅れなく進めていくためには、設計工程をできる限り細分化して進捗管理することが重要です。

まず前述した、(1)工程設計、(2)構造設計、(3)部品設計の3つに分けて日程計画を立てることは最低限必要ですが、さらにそれぞれの工程で細分化します。

 

例えば、(1)工程設計であれば、①曲げ・絞り工程の分割、②工程ごとの製品図作成、③展開ブランク図作成、④順送であればストリップレイアウト図作成、⑤寸法を入れて工程図を完成させるなど、個々の工程に細分化し、それぞれに期限を付けます。

 

こうして細分化された個々の目標地点のことをマイルストーンと言います。

 

このマイルストーンの設定により、精度の高い工数の見積もりができます。作業をざっくりと大きくまとめるほど、日程計画は大まかになり、計画日数は安全をみて増えていきます。

 

逆に、②の「工程ごとの製品図作成」や、⑤の「寸法を入れて工程図を完成させる」など、クリエイティブ性は高くない作業を洗い出すほど、工数は正確に見積もりしやすくなります。

このように設計工程を細分化し、それぞれ期限を付けたマイルストーンで上司や先輩設計者がフォローをすれば、先ほど挙げた若手設計者が抱える「何度も手戻りを繰り返す」といった問題に対処することができます。

 

この問題の抱えるロスとして、間違った設計にわざわざ時間をかけて作図・モデリングをし、その時間をかけた図やモデルをまた時間をかけて修正するということがありますが、経営者が最も嫌がるこの悪循環を最小化することができます。

 

つまり、個々のマイルストーンに期限を付けることで、正しい設計の順番を踏みながら、大きな方向性の違いやミスによる大規模修正のリスクを避けた進捗管理ができるというわけです。

 

最後に、こうした人材育成を自社で行うか、私のようなコンサルタントを活用するかという視点ですが、そもそも人材に必要な知識・技能は、下図のような体系図になっていると考えています。

金型設計に必要なスキル

実務で使っている知識・技能は、実はそれぞれの専門分野が重ね合わさったうえの限定されたものであり、企業ごとにベテラン社員さんが積み重ねて作ってきたものです。

しかしながら、たまたま上の図では、均一に重なっていますが、私が多くの企業を見た経験から言いますと、大抵かたよっているケースが多いです。

 

設計実務で経験を積ませて育てるとこれまで書いてきましたが、上図の重なっているところ(実務で使っている知識)を何回も経験しなければならないため、よく一人前になるには最低3年かかるとか、5年はかかるなど、抽象的な表現がされますが、企業ごとに扱っている金型種類の数も影響します。

毎回大きく異なる構造の金型を扱っていると、金型設計者の育成の観点では、反復効果が薄くなり、前述した、①符号化、②貯蔵、③検索の中の、①符号化と②貯蔵はなかなか進みません。

 

さて、コンサルタントは、上図で言うところのそれぞれの分野を体系的に順序よく教育していくためのカリキュラムを作るプロということになります。

これにより、多品種に対応できる(振り幅がある)応用力を身に付けることができます。

もちろん自社でカリキュラムを作ることができれば申し分ありません。それが本来あるべき姿です。

 

私の金型基礎セミナーもそのように、各専門分野を習得していただくような内容で構成しております。

金型基礎セミナー内容

 

私も金型設計に携わる一人の技術者として、あるべき手順で教育された金型エンジニアが一人でも多く育っていくことを願ってやみません。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方

 

今回は、CAMを使い、ボールエンドミルを使って自由曲面などの3次元加工を行う際に、工数を少なくすることに配慮したパスの作り方についてみていきたいと思います。

 

なお、自由曲面などの3次元加工というのは、例えば、下図のようなボールエンドミルでないと加工できない形状を指します。

 

では、さっそく手順をみていきたいと思いますが、当事務所のクライアント先には、5軸マシニングを使っている事業者もみえるので、下記のそれぞれに分けてみていきたいと思います。

  • 3軸加工の場合
  • 5軸加工の場合

 

ポイントは、次の2点です。

  1. 形状に深い部位があり、ホルダー干渉を避けるため、工具突き出し長さが長くなっても、1本で全ての部位を加工しない。1本で加工すると、工具のカタログ加工条件よりも何割か下げた送り速度で加工せざるを得なくなる。
  2. 工具突き出し長さが長くなる場合は、工具のカタログ加工条件が出せる突き出し長さまでの工具と、送り速度を下げざるを得ない長い突き出し長さの工具とを分けること。

 

① 3軸加工の場合

  1. 目安として突き出し長さ4D以内で加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。
    φ10ボールエンドミルにおける工具突き出し長さ等高線加工における加工エリア

  2. 次に、突き出し長さ6Dを目安に、この長さで加工できる部位・エリアを抽出して加工する。

    理由:ステップ1.の送り速度の10~20%減ていどで加工できるエリアを確保するため。
    工具突き出し長さ6Dの様子突き出し長さ6Dの加工エリア

  3. 突き出し長さ8D以上で加工する部位を抽出する。

    理由:残った部位を、やむなくステップ1.の30~50%以上減の速度で加工するため、出来る限り少ない範囲にしたい。
    工具突き出し長さ8Dの様子

 

② 5軸加工の場合

  1. 3軸加工と同じく突き出し長さ4D以内で加工できる部位を抽出し、まず5軸機能は使わず、3軸加工における「等高線加工」を行う。

    理由①:5軸加工は便利である反面、主軸やテーブルなど、精度や各軸同期速度のベースとなる旋回軸・傾斜軸が同時駆動する加工であるため、寸法確保・加工時間への影響が大きい。そこでまずは、出来る限り動かす軸が少ない加工を行い、加工品質・送り速度の安定を優先する(特に金型部品など)。

     

    理由②:3軸加工の仕上げ工法については、一般的に「等高線加工」と「走査線加工」があるが、品質優先のために「等高線加工」をまずは採用する。

     

    「走査線加工」はXYZ、3つの軸が同時に動くことが多いが、「等高線加工」は基本的にZ軸位置を固定したあと、XY軸のみで軌跡をつくる。そのため「走査線加工」よりも「等高線加工」の方が寸法精度を確保しやすいため。
    理由③:突き出し長さ4Dまでであれば、最もカタログ値に近い送り速度が出せるため。

  2. 突き出し長さ4Dで加工できる部位を抽出し、5軸機能は使わず、3軸加工における「走査線加工」を行う。

    なお、「等高線加工」と「走査線加工」では、「等高線加工」が先で「走査線加工」は後に行う。これは「走査線加工」における壁面付近に接近した際の安全を確保するためであり、必ず「等高線加工」を先に行っておく。

  3. 突き出し長さ4Dと同じ工具のまま、5軸機能を使って干渉回避機能を使った加工を行う。

    5軸加工よりも3軸加工の方が加工精度を出しやすいため、まず4D以内の工具突き出し長さで加工できるエリアを3軸加工で先に加工しておき、次にその工具で届かないエリアを5軸加工で行う。
    5軸加工を使った加工エリア

  4. 突き出し長さ4D以内の同じ工具で加工できても、狭い凹部が存在すれば、そこを抽出し、広く開けたエリアを加工する際の1/3くらいの送り速度まで下げた加工を行う。

    3次元加工の狭小部位
    なおそれにあたり、前述した手順①~手順③において、当該エリアの加工パスは除外しておくことで、手順①~手順③ではカタログ値の送り速度を出せるようにする。

    理由①:最もカタログ値に近い送り速度が出せるエリアを出来るだけ多く確保するため(あらかじめ狭い凹部を除外しておく)。

    理由②:狭い凹部は加工負荷が高く、ゼロカットによる再仕上げ加工の頻度が高くなる。そういった部位の加工パスをあらかじめ分けておくため。

 

以上、CAMを使った3D加工における工数に配慮したパスの作り方をまとめてみました。

加工目に配慮した加工パスの演算ができるようになった次は、やはりビジネスとして、加工時間に配慮したパスが出せるようステップアップしてみてはいかがでしょうか。

 

もし実際の加工モデルを見ながら、具体的なアドバイスが欲しいという場合は、お気軽にお問い合わせください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

【マシニング加工のいまさら聞けないシリーズ】リーマの下穴加工について

 

普段当たり前に加工されているリーマの下穴加工ですが、いろんな会社さんを回っておりますと、実は皆さんバラバラな方法をとっていることが多いです。

 

そこで、今回は、リーマの下穴加工についてまとめてみたいと思います。

 

私の拠点であります、ここ中部地方の加工屋さんでは、主に下記の4つ、いずれかの方法で、リーマの下穴加工を行っているようです。

 

例えば、φ10リーマの下穴加工を例にとってみると、

 

  1. φ9.8ハイスドリル→φ10リーマ
  2. φ8ハイスドリル→φ9.8ハイスドリル→φ10リーマ
  3. φ8ハイスドリル→φ9.8エンドミル縦突き加工→φ10リーマ
  4. φ8ハイスドリル→φ9.8仕上げ狙いエンドミル輪郭加工→φ10リーマ

 

上記4.の方法までやっているところは稀ですが、何とか高い位置精度を出したいとき、苦肉の策で何とか対応している加工メーカーを見たことがあります。

 

やはり最も多いのは、上記1.のパターンではないでしょうか。

 

この方法で怖いのは、ハンドリーマよりも切削性の良いブローチリーマを使ったとき、しかも下穴ドリルの穴が曲がって加工されているときに、それに倣いリーマの位置精度がズレて加工されてしまうことです。

 

そのドリル穴の曲がりを矯正するために、上記2.や3.の方法がとられています。

実際に、それを行っている方から、そうした意図だと聞いたこともあります。

 

特に上記3.は、上記2.のように、矯正するためのφ9.8の穴加工を続けてドリルで行ってしまうと、曲がった穴がまっすぐ矯正されず、追従して曲がったまま追加工をするだけになってしまうことを懸念し、切削機能を持つエンドミルの方で追加工するという意図があります。

 

では、下穴の矯正加工をドリルとエンドミルで行うことに違いはあるのでしょうか。

 

近所の公設試に確認したところ、ほとんど違いはないとのことでした。

ただし、ドリルよりもエンドミルの方が、芯の太さが太い分だけ、径方向の加工負荷による工具たわみが少なく、下穴曲がりが少なくなるのではないか、とのことでした。

 

実際には、ハイスドリルの場合118°の先端角があり、軸方向と径方向の負荷をバランスしているドリルと、フラットエンドミルで縦突きして行う穴加工の場合では、切削負荷のかかり方も異なります。

 

直進的な穴加工について、フラットエンドミルによる穴加工は、ドリルよりも直進方向の切削機能は劣ると思いますが、下穴曲がりの矯正という点においては、ドリルよりも縦方向(軸方向)の負荷(背分力)を中心に加工する分、先に加工されている下穴の曲がりに追従していくことは少なくなると思われます。

 

これは、旋盤の内径の中ぐり加工においては、ワークの軸方向に直角な刃先形状で切削したほうが、バイトの倒れ・ビビリが少ないことと同様の考え方だと思います。

(外形旋削のように、45°形状の刃を使うと、背分力が大きくなり、ワークやバイトのビビリが起きやすくなる)

 

 

できるだけ位置精度に配慮したリーマの下穴加工はどのように行うと良いのか、まとめてみますと、

 

  • まず、リーマ径よりも1ミリほど小さい径で、ドリル加工を行う。
  • 次に行う下穴曲がりの矯正のための追加工は、できるだけ芯の太いフラットエンドミルで穴加工を行う。この場合の工具径は、使用するリーマが推奨するものを使う(通常は直径でマイナス0.2~0.5ミリ)。

 

ここで使っているフラットエンドミルは、2枚刃よりも4枚刃のエンドミルの方が、芯は太いので、切りくずの出方、刃が多くなることによる過度な切削抵抗の問題がなければ、下穴曲がりの矯正の点では、優れているということになります。

 

しかし、超硬のドリルがよく使用されるようになった現在、上記2.の工程は、超硬ドリルを使用することで、上記1.の工程に集約できると考えられます。

超硬ドリルのヤング率、巧折力を考えると、ハイスドリルと比較して、圧倒的に下穴曲がりが少なくなると考えられるためです。

 

いきなり上記1.の加工で済ませるということですので、φ10リーマの下穴ということなら、φ9.7もしくはφ9.8の超硬ドリル一発で済むということになります。

 

複数の工具を使わない分、加工時間、段取り時間、マシニングセンターのマガジン数の制約などについて、多くのメリットがあります。

 

 

リーマ加工の品質は、下穴で8割決まると言った工具メーカーの方もおられましたが、実際、特に位置精度については、下穴加工の影響は大きいと思われます。

 

そもそもリーマは、バニッシュ効果や、穴をきれいな形で仕上げる機能を重視しており、下穴の曲がりを切削で直しながら、ガシガシ切削していくものではないと思われます。

ですので、下穴の加工の段階で、しっかり位置精度と穴形状を出しておくことは重要だと思います。

 

もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

【CAM活用で起こる疑問】エンドミル仕上げの際のZ切り込み量はどう考えるべきか

 

ここ最近、マシニング加工においては、CAMや対話システムが当たり前のように使えるようになり、かつてGコードプログラムや手動操作では、わずらわしかった立壁加工が、今では不自由なく加工できるようになりました。

 

垂直な立壁をエンドミルで仕上げる際、Z切り込み量を細かく分割して切削する手法があります。

Z切り込みのイメージ

 

例えば、工具径の2倍を超えるような、そこそこ深い立壁の仕上げ加工の場合、一回のZ深さで加工してしまうと、切削抵抗のため、下図のように工具がたわみ、切削面の直角度が確保できないことがあります。

細いエンドミルで深い立壁を切削加工

そこで、手動のハンドル送りで加工したり、Gコードプログラムで加工する場合は、Z切り込み量を細かくし、Z深さを何回かに分けて最終深さまで切削するわけですが、

 

同じ動作のプログラムを何度もコピーしたり、サブプロを使った場合は念入りなチェックが必要になったりと、何かと面倒なこともあり、結局送り速度を下げ、一回か2回くらいに分け、倒れを最小限にするよう送りを下げながら、何とか無理やり加工するといったことがよくありました。

 

しかし、CAMを使ったり、マシニングに付属している対話システムを使うことが当たり前になってきた今現在、Z切り込み量を細かく分割して、切削負荷をかけない立壁の仕上げ加工が簡単にできるようになりました。

 

さて、ここで出てくる疑問が、

「じゃあ、何ミリずつ切り込むのが正しいの?」です。

 

立ち壁を細かなZ切り込み量で切削加工

 

結論から申しますと、使う工具の種類ごとに異なります。

 

その「工具の種類」とは、工具径や刃数、リード角などによる違いです。

 

では、今回のテーマであるエンドミル側面を使った立壁を仕上げる際、Z切り込み量を何ミリずつにするかを検討するにあたり、何を考慮すべきか。

 

考慮すべきこととして、切削抵抗に影響を与える「同時切削刃数」があります。

 

同時切削刃数とは、2枚刃、4枚刃、6枚刃など、複数の刃を持つエンドミルを使い、壁の側面を仕上げる際、同時に接触するエンドミルの刃の枚数のことです。

 

ストレート刃でない限り、一般的に使われるエンドミルの多くは、下図のように、刃にリード角があるものです。

リード角とは、エンドミルの側面刃にある「ねじれ」のことです。これによって、切削抵抗が分散される効果があります。

エンドミルの刃のねじれ

 

下図のエンドミルによる切削加工時の模倣図を見ると、切削面には同時に2枚の刃が、当たっているように見えます。

同時切削刃になっている状態

 

これが、側面仕上げ加工時に発生する「同時切削刃」です。

 

ざっくり言えば、この同時切削刃が多いほど、切削抵抗は大きくなり、ビビリなどの振動、エンドミルの倒れなどが起こりやすくなります。

 

ですから、せっかくCAMや対話システムを使って、簡単にZ切り込み量を細かく分割できるのであれば、

  • 同時切削刃をできるだけ少なくする。
  • Z切り込み量を細かくし過ぎて加工時間が長くならないようにする。

この2つが両立する、Z切り込み量を選定すべきです。

加工時間を短くしたいために、Z切り込み量を多くとれば、同時に接触する刃の数が多くなるのは、容易に想像できると思います。

 

では、同時切削刃が起こらない、つまり1枚の刃で切削できる最大のZ深さは、どのように計算すればよいのでしょうか。

 

その計算は、エンドミルの直径1周分を1枚の平面に引き伸ばして考えます。

まずは、1枚の刃だけで考えてみますが、リード角がありますので、φ10のエンドミルの場合、その平面の状態は下図のようになります。

エンドミルの周長とリード角

 

これを、2枚刃と4枚刃、それぞれの状態で見てみると、下図のようになります。

2枚刃・4枚刃のエンドミルの周長とリード角による平面図

最近使われることも多い、不等分割エンドミルではなく、等分割エンドミルの場合の図になりますが、前述した1枚刃の状態の図と比較して、図の中に同じ角度の線がそれぞれ、刃の枚数に応じて追加されています。

 

この追加された斜めの線が、2枚刃・4枚刃、それぞれ増えた分の刃の線になります。

1枚刃の図にあった斜めの線のすぐ右隣にある線が、エンドミルが回転している際、次に切削面に接触する刃になるわけですが、例えば、上図(左)の2枚刃の場合、27.19ミリよりも深いZ切り込み量で立壁の仕上げ切削を行うと、縦の一点鎖線が示すように、同時に2枚の刃が接触することになります。

 

上図(右)の4枚刃の方は、2枚刃に比べると4枚の刃の間隔が狭いため、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が浅くなり、13.6ミリよりも深くなると、同時に2枚の刃が接触します。

 

ここから読み取れることは、例えば、

  • ワークやクランプの剛性により、切削振動が起こりやすい。
  • BT30のツールホルダーを使用しているなど、機械剛性があまり強くない。
  • ±01公差などかなり高精度な仕上げ加工を行いたい。

といったような場合において、よりデリケートに切削したい場合には、同時切削刃が起こるZ切り込み量よりも浅く切削した方がよく、また4枚刃よりも2枚刃の方が、同時切削刃が起こるまでのZ切り込み量は深くとれるということです。

ただし逆に、4枚刃や6枚刃など多刃エンドミルは、

  • 芯厚が太い。
  • 送り速度を上げられる。

といった理由により、加工生産性を高めることができますので、仕上げ加工においては積極的に使っていきたいところです。

 

さて、では次に工具径の違いによる、Z切り込み量の違いを見た場合の状態が、下図のようになります。

上図のそれぞれを見てみると、φ10よりも、φ6エンドミルの方が、同時切削になるまでのZ切り込み量が浅いです。

 

ここから読み取れることとして、

  • 工具径が大きい方が、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が深い。

ということですから、そもそも工具径が太い方が切削負荷による倒れに対しての剛性が強いということもあり、加工生産性の点からも太い工具を使った方が送り速度を上げることができ、精度・工数削減、いずれの観点からも良い結果が得られます。

 

参考として下図に、φ10とφ20ミリでの違いも掲載しておきます。

太い工具の方が同時切削刃までのZ切り込み量は深くとれる

 

 

最後に、エンドミルのリード角の違いによる、同時切削刃までのZ切り込み量の違いを見ていきたいと思います。

エンドミルのリード角の違いによる同時切削刃までのZ切り込み量の違い

これを見ると、まず上図の真ん中と左の図の違いとして、同じ径のエンドミルでも、リード角の違いによって、同時切削刃になるZ切り込み量が異なってきます。

ここから読み取れることとして、

  • リード角が大きい方が、同時切削刃になりやすく、許容されるZ切り込み量が浅くなってしまう。

ということになります。

同じ工具径であってもリード角が大きくなると、同時切削刃までのZ切り込み量は浅くなりZ切り込み回数は多くなってしまいますが、そもそもリード角を大きくすることは加工負荷を低減することを目的としていますので、その分、リード角の小さい工具よりも送り速度を上げることができ、切り込み回数が増えるデメリットは相殺できるとも考えられます。

 

したがって、デリケートに立壁を仕上げたいときは、

  • リード角の大きい工具を選ぶ。
  • 同時切削刃にならないZ切り込み量を選ぶ。

という方向性がよろしいのではないでしょうか。

 

さらに、上図の真ん中と右の図を比較すると、リード角が大きくても、やはり刃の数が多い4枚刃の方が、同時切削刃になるまでのZ切り込み量が浅くなります。

 

この件も踏まえ、デリケートな立壁仕上げを行うときには、

  1. 切削抵抗の少ないリード角の大きなエンドミルを使う。
  2. 送り速度が上げられる刃数の多いエンドミルを積極的に使う。
  3. 同時切削刃にならないZ切り込み量を選定する。
  4. Z切り込み量が細かくなり過ぎると、Z切り込み回数が増え、加工時間が伸びるため、その際の工具選定は慎重に行う。

という順で考えるのがよろしいのではないでしょうか。

 

ただし、あくまでも加工品質と加工工数は、相反するものですので、過剰品質にならないよう、充分にお気を付けください。

 

一段上の加工技術者を目指す皆さんには、一つひとつの加工条件に根拠を持って取り組んでいただきたいと思っております。もしよろしければ、参考にしてみてください。

 

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

【今さら聞けないシリーズ】エンドミル加工における「中仕上げ」の送り条件について

 

今回の技術コラムは、マシニングセンターなど、エンドミルを使った切削加工における、「中仕上げ」加工の送り条件(F値)の決め方についてです。

 

荒取り加工や最終仕上げの送り条件については、これまでこのコラムでも取り扱ってきました。

 

荒取り加工については体積ベースで計算する、最終仕上げについては、エンドミルの側面切削であれば、狙う仕上げ面粗さによって、1回転ごとの送り長さを計算するというものでした。

 

 

では、荒取り加工ほど大きな体積を削るわけでもなく、また最終仕上げ加工のように、仕上がり面粗さを考慮する必要のない「中仕上げ」の送り条件はどのように考えればよいのでしょうか。

 

当事務所では、下図にあるような、「平均切りくず厚さ」をベースに考えることをオススメしています。

平均切りくず厚さの計算

西嶢祐 著(初版発行: 2004年9月)「現場で役立つ切削加工の勘どころ」より

 

その理由として、

  • 荒取り加工ほど切削体積がなく、強い切削抵抗がかからないので、本来、中仕上げ加工は、工具カタログにおける、仕上げ用の条件並みに送りを速くすることができる。
  • かといって、最終仕上げ加工のように、仕上げ面粗さを考慮した送り条件まで下げる必要はない。

 

この「仕上げ面粗さを考慮した送り条件まで下げる必要はない」というのが、この「中仕上げ」の送り条件を決めるうえでは重要です。

 

なぜならば、工具の「回転あたりの送り量」が少ないことは、エンドミルの摩耗を促進させてしまうという弊害があるためです。

 

稀に「機械の稼働率はそれほど高くないので、工具費を抑えるため、できるだけ送り速度を下げて無人加工させている」という人にお会いしますが、大きな間違いです。

 

コスリ摩耗といって、送り速度を必要以上に下げていると、一定距離を削る間に、必要以上に工具の回転が多く当たることになり、特に「逃げ面」と呼ばれる部分の摩耗が進みます。

 

下図の表をみてください。

平均切りくず厚さと1刃あたり送りの対応表

西嶢祐 著(初版発行: 2004年9月)「現場で役立つ切削加工の勘どころ」より

 

これは、前述の表を引用した本で推奨されている「平均切りくず厚さ」を決める際の目安の表です。

 

前述で引用した図にあるように、この「平均切りくず厚さ」は次のような計算式で計算できます。すなわち、必要以上工具を摩耗させないあたりの切りくず厚さを前提に計算をすると、通常のカタログ値よりも、送り条件は高くなってくると思います。

平均切りくず厚さの計算式

 

このように「中仕上げ」加工においては、仕上がり面粗さまで狙う必要もないのに、最終仕上げの送り条件を使っていると、場合によっては「平均切りくず厚さ」が必要以上に薄くなり、その結果、逃げ面のコスリ摩耗を促進してしまう可能性が高くなります。

 

一度、御社の送り条件と見合わせてみてはいかがでしょうか。

 

最終的には、御社でお使いの工具や機械に適した「平均切りくず厚さ」に合わせていくことになると思います。

 

荒取り加工条件の標準化でも書きましたが、企業として重要なのは、適正な加工条件を会社・部門で統一して使えるかどうかです。

 

それには、納得して使える指標が重要になります。

 

もしよろしければ、一度試してみてください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

 

参考文献

西嶢祐 著(初版発行: 2004年9月)「現場で役立つ切削加工の勘どころ」日刊工業新聞社

 

マシニング加工における荒取り加工条件の標準化の重要性

荒取り加工条件の標準化

当事務所のコンサルティングにおいては、特に標準化という点を重要視しております。

 

その標準化を行ううえで、特に多いのが、マシニング加工における荒取り加工条件の設定があります。

 

なぜ、このテーマにおいて、標準化が必要になるかというと、例えば、スローアウェイの工具を使って荒取りを行う際、そこで必要になるS値・F値について、多くの方が使用する工具カタログに記載されている推奨条件をそのまま使用しているという理由があるからです。

 

しかし、この推奨条件は万能でしょうか?

 

 

例えば、下図のように、荒取りする前提が異なる場合、それでも、推奨値としてS値・F値は同じでしょうか?

マシニングの荒取り加工の断面積

 

実際のところ、変えることはなく毎回同じ設定にしているオペレーターも多いと思います。

 

しかしながら「削り屋」としては、下図のように、少なくとも「送り速度」については、変えたいところです。

マシニング切削の断面積の小さいとき

マシニング切削の断面積の大きいとき

その目安は何になるのでしょうか。

これは、上の2つの図に記載されている面積×工具の進行距離(長さ)、つまり切削する体積になります。具体的には、工具が1回転するときに切削する体積です。

 

マシニング加工における切削体積

 

この考え方を使って、切削体積から工具の送り速度に換算する条件式に当てはめるといった標準化を行うと、効率的かつオペレーターごとの個人差がない荒取り加工ができるようになります。

 

当事務所では、そのベースとなる計算式をご提供して、マシニング加工条件の標準化をサポートしております。

 

ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

 

エンドミル加工の仕上げ送り速度をどこまで上げてよいかわかりません。どう考えたらよいですか?

底面仕上げの加工条件についての指導会

 

「エンドミル加工の仕上げ送り速度をどこまで上げてよいかわかりません」

 

先日、クライアントの金型メーカーさんから、このような質問を受けました。

マシニング加工を担当している加工者さんからです。

 

そのときの状況を細かく説明しますと、そのクライアント企業さんでは、CAMでNCデータを作成する人と、マシニングのオペレーターさんは、きっちりと分かれていて、マシニングのオペレーターさんは、機械に材料と工具、プログラムをセットする段取りが主な仕事です。

 

その弊害として、単なるドリルの穴あけ加工や、エンドミルによるフェース面加工においても、CAM専任者がNCデータと指示書や段取り図を作っているため、間接コストが大きくなっているばかりか、CAM専任者は機械から離れているいため、工具のカタログどうりでしか加工条件を設定することができない状態になっていました。

 

しかし、加工に詳しい方でしたら、お気づきかと思いますが、実際にエンドミル加工を行う際には、取りしろがガッツリと多い荒取り加工から、サラサラとしか削らない仕上げ加工など、加工の状況は多岐にわたります。

しかし、工具のカタログに書いてある条件表は、被削材(ワーク)の種類と、加工深さ(ap)・加工幅(ae)を前提条件とした、1種類もしくは2種類の主軸回転数とテーブル送り速さしか記載されていない場合が多いです。

 

まさにそのクライアント企業さんでは、荒取りも仕上げも、カタログ記載の加工条件でしか使っていませんでした。

当事務所の現場診断により、その点に気づき、これはまず、マシニングのオペレーターさんに、しかるべきスキルを持ってもらう必要があるということで、テスト加工する題材を取り上げ、切削加工をしてもらっていたところ、タイトルの質問を受けたというわけです。

 

具体的には、被削材(ワーク)材種はS50C、加工する深さは35ミリ、取りしろとなる加工幅は0.1ミリ(ae)であり、φ16の超硬フラットエンドミルによる側面切削の仕上げを行っている最中でした。

 

深さ方向の加工は、7回に分けてスライスしていましたので、1回あたりの切り込み深さ(ap)は、5ミリでした。

使っているOSG社のフラットエンドミルのカタログ条件値は、主軸回転数は、S800、テーブル送り速さは、F200でした。

 

仕上げ加工中の様子を見ていたところ、機械の振動もなく、主軸のロードメーターもほとんど振れていない様子でしたので、加工時間の短縮は、製造コストの削減につながると、オペレーターの方に説明し、送り速度を上げるよう助言しました。

 

しかし、カタログ推奨条件は、S800とF200となっており、これまで、この条件以外で加工したことがないとのことで、どこまで条件を上げられてよいかわからないといった相談を受けました。

 

そこで私は、逆に質問しました。

そもそも図面には、今加工している部位の加工面粗さは、▽▽となっているが、今の加工条件だと、どのレベルを狙っているのかと。

 

それについてもわからない状態でした。

そこで、次の簡易計算式を紹介し、実際に使用している工具と加工条件で、切削しているワーク側面の理論仕上げ面粗さ(下図におけるRy部)を算定してもらいました。

エンドミルによる理論仕上げ面粗さ

エンドミル加工による理論仕上げ面粗さ

西 嶢祐 (著)  (2006/11/1)「続 現場で役立つ切削加工の勘どころ―「削り屋」からのモノづくり提言」より

 

簡易計算式

理論仕上げ面粗さ(山の高さ(Ry)、単位ミリ)の簡易計算式③

 =(①工具1回転あたりの送り量(ミリ)の2乗÷②8×工具半径)

 

①計算式の分子:「工具1回転あたりの送り量(ミリ)の2乗」について

テーブル送り速さは、F200ということで1分間に200ミリ進み、主軸回転速さは、S800ということで1分間に800回転します。

したがって、同じ1分間に工具は、800回転まわり、200ミリ進むので、この200ミリを800で割ってあげれば、工具が1回転まわるとき、何ミリ進むのかが決まります。

200÷800=0.25ミリ

ということで、工具が1回まわるごとに、0.25ミリ進んでおり、ちょっと乱暴な表現ですが、これが理論的な切りくずの厚みのようなものです(実際は他の要因も影響します)。

この数字を2乗したものが、0.0625となり、今回の加工条件における、分子側の計算結果です。

 

②計算式の分母:「8×工具半径」について

今回使用している工具は、φ16でしたので、計算式には、下記のように代入されます。

8×(16÷2)=64

 

③計算結果:「理論仕上げ面粗さ(山の高さ(Ry)、単位ミリ)」について

①の結果:0.0625÷②の結果:64≒0.00097

ということで、計算結果は、0.00097ミリ (=0.97ミクロン)となります。

 

ということで、現在の加工条件では、計算によるRy部の高さは、0.97ミクロンでした

 

ここで、▽▽相当の仕上げ面粗さとは、どの程度を指すのでしょうか。

下の表の「算術平均粗さ(Ra)と従来の表記の関係」を見ますと、▽▽に該当する「最大高さRy」は、12.5s~25sとなっています。

 

算術平均粗さ(Ra)と従来の表記の関係

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/30.html

「 〔技術データ〕表面粗さ| 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年5月1日)

 

 

これは、▽▽相当の仕上げ面粗さ(最大高さRy)は、12.5ミクロンから25ミクロン相当だということを表しています。

 

代表的な表面粗さの求め方(最大高さ(Ry))

http://jp.misumi-ec.com/maker/misumi/fs/tech/30.html

「 〔技術データ〕表面粗さ| 株式会社ミスミ」サイトより (最終閲覧日:2016年5月1日)

 

 

今回、OSG社のφ16エンドミルで使用した加工条件で計算した理論仕上げ面粗さ(Ry)は、0.97ミクロンでしたので、12.5ミクロンから25ミクロンと比較すると、かなり過剰品質となってしまう条件だったことがわかります。

 

前述したように、工具メーカーのカタログに記載している加工条件は、ある意味、工具のセールスポイントである、「どこまで過酷な条件に耐えうるか」といった、主に荒取り加工の限界条件を記載していると考えられます。

ですので、仕上げ時の加工条件としては、むしろ遅い条件になってしまう場合があります。

 

そこで、先ほどの簡易計算式を変形して、どこまで送り速度を上げられるかを計算してもらいました。

 

先ほどの簡易式

③理論仕上げ面粗さ(Ry、単位ミリ)の簡易計算式

 =(①工具1回転あたりの送り量(ミリ)の2乗÷②8×工具半径)

 

変形式

①工具1回転あたりの送り量(ミリ)

 =√(ルート)(②8×工具半径×③理論仕上げ面粗さ(Ry、単位ミリ))

 

ポイントは、③の理論仕上げ面粗さ(Ry)に、新たな狙い値となる、12.5s相当の12.5ミクロン(=0.0125ミリ)を代入することです。

早速計算してみると、

8×(16÷2)×0.0125=0.8

となり、これをルート計算すると、工具1回転あたりの送り量(ミリ)が計算されます。

√(ルート)0.8≒0.894ミリ

 

今回のφ16フラットエンドミルの1分間あたりの工具回転数は、S800なので、先ほどの0.894×800を計算すると、1分間あたりにテーブルが何ミリ進むかといった、「テーブル送り速さ」が計算できます。

0.894ミリ×800≒715ミリ

 

この計算により、今回使用した工具において、工具の回転速さを変えずに、必要な仕上げ面粗さを▽▽までで良いということであれば、テーブル送り速さF値は、F715まで上げてよいということがわかります。

削りしろであるae値は、0.1ミリ程度と、ほとんど切削負荷のない状態の加工なので、2倍の送り速度であるF400で加工しても、加工後の寸法値と面粗さには、全く問題ありませんでした。

なお、F715まで上げた場合に、切削負荷がどこまで上がってしまうかという問題は別で考慮する必要はあります。

 

このように、実際の加工においては、荒取りと仕上げなど、さまざまなケースがあるので、画一的にカタログ記載の条件値だけで加工してしまうと、本来上げられる条件値まで上げられず、無駄に加工工数を増やしてしまうことになります。

 

今回のような理論仕上げ面粗さの計算は、それほど難しくないので、ぜひ使ってみて、根拠のある送り速度を実現してください。

 

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

 

技術コラムが本になりました!

金型メーカー・機械加工業の管理・改善の教科書

 

設計部署や製造現場、管理部署にぜひ一冊。

経営者や部長などマネージャー職の方々から、悩める現場リーダーへのプレゼントにも最適です。

くわしくはこちらのページからどうぞ。

 

 

【期間限定】専門プロによる無料の現場診断サービス

「うちもいっぺん見てもらおうか」

御社の製造現場を、金型・部品加工業専門のプロ・コンサルタントの目線から一度、無料の健康診断を受けてみませんか?

詳しくは、こちらのご案内ページからご確認ください。

 

 

コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング

代表:村上 英樹(中小企業診断士)

愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054