第11話 部下に持たせるべき目標は、納期か?出来高か?
今回は、特に加工現場などのリーダー職にある人が、その率いる部下に対し、日々持たせる目標は「納期」なのか、「出来高」なのか、どちらが望ましいのかというテーマです。
結論から言いますと、「出来高」を日々の目標としている加工現場の業績が良く、私の経験上「納期」を目標としている加工現場を持つ会社の業績はあまり良くないことが多いです。
これはどういうことなのか、詳しく見ていきたいと思います。
「納期」を日々の目標にしている加工現場
これは当たり前と言えば当たり前の話で、日々の現場の日程計画は、それぞれの仕事が納期に間に合うように設定されていると思います。
ただし!大前提となる話があります。
それは「お客さんは当社にちょうど良く利益が出るくらいに仕事量を調整して出してくれているわけではない」と言うことです。
したがって納期どおりに仕事をこなしていればその結果、会社が目標としている売上・利益の達成に結び付くかというと、そうではないということです。
これは特に、単品受注の部品加工メーカーなどが該当します。この業態の加工メーカーの営業担当者は、現場の空き状況・余力に合わせて仕事を取ってきます。
よくある事例では、現場の負荷状況としてはあまり仕事が詰まっていないとき、納期に間に合えさえすれば大丈夫といった具合に、加工スピードを緩めてしまうことがあり、営業担当者としては目標売上達成のために、もう少し仕事を現場に入れたいのだけども、加工スピードを緩めた現場はあたかも余力の無い状態に見えることで、次の仕事を入れられないという負のスパイラルが起こることがあります。
その結果、会社として採算ラインギリギリ、もしくは赤字と黒字を行ったり来たりしているといった厳しい経営状態になっている加工メーカーもあります。
これについては、やはり納期だけを目標としている結果がもたらす悪循環であり、現場リーダーとしては、次の見出しで扱うような「出来高」を目標として、日々の仕事をこなしていく必要があります。
「出来高」を日々の目標にしている加工現場
実際のオペレーションでは、前述したような「加工スピードの緩み」を防止するため、金型メーカーや部品加工メーカーにおける経営者や営業担当者は、120%の現場負荷になるよう仕事を詰めることで、対応しているケースが多々あります。
しかしながらマネジメント能力のある現場リーダーとしては、そういった受け身な対応ではなく、能動的に個々の仕事の納期にとらわれず、あくまで現場の「出来高」にこだわった生産計画を立てていくべきだと思います。
ここで一つ「稼働率」という考え方がありますが、これは扱いを間違うと危険です。
例えば、ある金型メーカーであった事例ですが、ここの加工現場では、プレート等の穴あけ加工で使うドリルはハイスの黒ドリルがメインで、しかも相当安全を見た回転・送り条件であったため、多くの現場を見てきた私の中ではとんでもなく遅い条件で加工していました。
ただし現場で働く皆さんは真面目な方が多く、数台のマシニングセンターは結構途切れなく段取りされて忙しく加工していました。
ですが前述したように、加工条件はとんでもなく遅いため、一見稼働率は高く見えなくもないですが、結果「出来高」は伴っていませんでした。
したがって、やはり現場リーダーが目標とするべきは、「稼働率」ではなく、加工枚数などの「出来高」となります。
具体的なオペレーション
ではこの「出来高」目標をどのように設定していくかですが、以前コンサルティングした事例では、会社運営に必要なマシニングセンター1台あたりの1日の目標売上額を算出し、そこから各機械オペレーターが目標とする「出来高」を設定しました。
ちなみに私は、従業員30名以下などの中小・小規模加工メーカーにおける、マシニングセンター1台あたりの1日の売上額の最低ラインは、4万円だと考えています。
最低これ以上は稼がないと、賞与を含めた人件費の支払い、間接スタッフのお給料、工場運営や保全などを行っていくうえで、正常な経営が厳しくなると思っています。
この場合、受注する仕事のチャージ金額を4千円とした場合、平均的に毎日10時間分をこなさないといけないわけで、これが日々の目標とする稼働時間となります。
もちろん10時間分の工数だと残業になってしまうので、足の出た2時間分は夜間無人加工などで対応することも検討します。
一方、短納期受注などの負荷価値により、もっと高いチャージ金額で受注することができれば、1日に稼げる金額は多くなりますし、もっと余裕のある生産計画でも構わないということになるでしょう。
また大型の機械や5軸マシニング等になると、必要となる目標金額や扱うチャージ金額も変わってきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
こう言っては何ですが、部下として働く機械オペレーターの方々には悪気はなく、特に上司からの指示がなければ、納期を守る・不良を出さない、この2大鉄則を守ることが最優先になります。
ところが、この2大鉄則は「守ろう・守ろう」と固執すればするほど作業は慎重になり、むしろ加工スピードは遅くなる方に作用します。
したがって、会社が必要とする売上と利益を確保していくためには、上司である現場リーダーの「出来高」目標が必要になるのです。
ですが「出来高」目標を現場に課すと、高い確率で反発が起こるでしょう。「そんな厳しい目標は達成できない」とか、「納期に間に合えばそれ以上にやる必要あるのか?」などの反発意見が出てきます。
それをなだめ、「出来高」目標に向かって部下を走らせる、それが上司の仕事となります。
なのに部下と一緒になって「納期に間に合っていれば充分」などと考えていたら、いつまでたっても会社の業績は上がっていきません。
1日もしくは週間売上に必要な「出来高」を、日々の日程計画として個々の作業者に仕事を割り振る。
そのような能動的な現場リーダーが一人でも増え、儲かる金型メーカー・部品加工メーカーがどんどん増えていくことを切に願っています。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
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