株式会社タアフのコンサルティング事例(2018年4月号掲載)

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株式会社タアフのコンサルティング事例

本号で紹介する機械加工メーカーは、富山県にある株式会社タアフ(富山県富山市 TEL076-429-6225)である。

同社は、総従業員数1200名を超え、国内7社・海外4社からなる立山科学グループの機械加工部門としてその一翼を担い、グループが行う電子部品・精密機器、FAシステム、その他多くの製造販売事業の一端を支えている。

同社は、5軸、門型マシニングセンターや、5面加工機など、多くの工作機械を駆使し、鉄系材料やアルミ合金などの切削加工を主力事業としている。

同社は当初、グループ企業で製造される、FAシステム、電子部品実装装置等の部品加工に特化し事業を行ってきたが、現代表取締役である高村 元二氏の方針は、今後ますます厳しくなる外部環境に打ち勝っていける技術力を持つためには、グループ内に供給する部品加工だけでなく、グループ外メーカーからの需要を取り込み、その競争の中で他社を凌駕する技術を得ていく必要があるという考えであった。

その同社が今注力しているターゲット市場が、航空機部品の加工事業である。

2014年5月に航空機メーカーと取引を開始、2015年5月にJISQ9100を取得し、これまで同社が培ってきた軽金属をはじめとした精密部品の加工技術と、高度な品質管理といった同社の強みが発揮できる分野でもある。

同社は今、この事業を収益の柱とするべく、さまざまな取り組みを行っているところである。

その取り組みの中、同社はさらなる競争力を得るために、より精度の高い原価管理の仕組みが必要だと考えていた。そこで、同社の多品種生産に特化した原価管理の仕組み構築について、筆者がサポートすることになった。

今回は、この同社へのサポートを取り上げ、多品種生産特有の原価管理について解説していきたい。

同社の強み

同社の強みとして、立形・横形・5軸加工機など、多彩なマシニングセンターの最新機を豊富に設備している点がある。これらの設備を2直体制でまわしており、高い生産性を実現している。

タアフ 図1-1
タアフ 図1-2

また、製造現場は高い改善意欲を持っており、2011年より開始した改善提案制度では、現在700件を超えた提案があがっている。そうした提案の中で生まれ、徹底した外段取りの一つに、工具長までセッティングしたマシニング用ツールと加工素材をセットにしたワゴンを、機械横に配膳する仕組みがある。

タアフ 図2-1
タアフ 図2-2

同社のオペレーターの役割分担として、機械オペレーターと冶具設計・CAMオペレーターは切り分けて担当している。

同社には24パレットの横形マシニングがあるが、こうした設備を高い稼働率でまわすためには、信頼性の高いCAMデータが欠かせない。同社ではこうした特殊設備の稼働を専任のオペレーターが支えている。

コンサルティング前の課題

こうした強みを発揮し、航空機事業を進めている同社であるが、盛んに行われている現場改善の効果と、企業の収益性との関連がはっきりと見えてこないという課題があった。

これは多品種生産でありながら、大量生産向きの原価管理だったことが原因の一つであった。大量生産式の原価集計は、製品ごとにかかる人件費を計算する際、出来高に対し一定割合でかかった工数を案分することが多い。

例えば、200時間かかる機械工数の製品であれば、一律に20%や30%などの人件費を見込んで計算するというものである。

しかし、この方法は実際の「作業者」の実績や、取り組んだ改善効果が見えてこない弊害がある。また、新規受注する際にも、製造現場の余力がどれだけあるのか、わからなくなってしまう。

機械加工業においては、どれだけ機械が空いていたとしても、機械を仕掛けるのは人間であり、原価の大半は機械加工が占めていても、仕掛ける作業者の余力もなければ稼働率を高めることはできない。

この作業者の工数を適正に把握できていない点が、同社の課題であった。

コンサルティングの内容

筆者と共に、同社が見える化したい指標を洗い出した結果、次のものが挙がった。

  • 製品ごとの収益性
  • 機械ごとの生産性
  • 作業者ごとの生産性
  • 部門ごとの収益性
  • リアルタイムな企業損益

これらを見える化するためのデータを横断的に集計していく方法として「追番管理方式」がある。追番管理方式とは、仮に同じ製品であっても、生産ロットごとに連番を振り分け、都度別々に管理していく方法である。

この方式のうえで、作業者の工数を負担にならない方法で集計していくこととした。これにより、ロット数や加工状況に応じたリアルな工数を集計することができるようになる。

また、同社の課題であった、企業損益と改善効果をどう関連付けるかという問題であるが、これは機械加工における利益構造の複雑さが根本原因である。

そもそも機械加工における製品ごとの原価には、材料費・工賃・購入品費・外注費などがあるが、この中で「工賃」の扱いが難しい。

工賃とは、人の作業や、機械加工でかかったコストであり、例えば年間にかかる総人件費を、どう製品ごとに案分するかという問題がある。

これについては、通常、マンレートやマシンレートと呼ばれる一時間や一分あたりの人件費や機械償却費を、製品ごとにかかった工数を乗じて計算する。

ところが、日々の改善効果によって、製品ごとの作業や機械加工の時間を削減できても、企業損益における費用の大半を占める人件費や機械償却費、リース費用などは固定費であって、これが減るわけではない。

これが、企業損益と改善効果がうまくリンクしない原因である。

製造原価における材料費・工賃・購入品費・外注費などのうち、工賃以外のコスト削減は、決算数値に直接現れる。例えば、高額な工具を、同等の性能を持つ安価な工具に置き換える改善などは直接、工具購入品費の削減として利益の増加に寄与する。

ところが「工賃」の削減についてだけは、直接損益に直結しない。例えば、ある製品の作業工数を半分にしたからといって人件費、つまり給与を減らせるということにはならないためだ。

そこで、生産余力の管理というのが重要になる。

作業工数・機械加工工数の削減によって生まれるのは生産余力であり、その余力に(A)新たな受注を取り込むか、(B)外注に出ている仕事を社内に取り込むしか、利益アップさせる方法はない。

今回筆者は、原価集計の具体的方法と、改善を利益に反映させる方策をアドバイスした。そして今後は筆者と共に、前述した①~⑤の見える化と、生産余力を適正に管理できる仕組みを構築していく。

同社の今後の取り組み

今後同社は、とりまとめた原価管理の仕組みをITシステムとして構築する。同社の属する立山科学グループは、システムソフトの外販も手掛けているため、同社の管理システムについても、すでに高度なソフトで運用している。

これから取り組むことは、意欲の高い技術者の改善効果を適正に見える化できるITシステムの高度化である。

また今年度は、高度な自動システムを取り入れた新工場を立ち上げる計画もある。

技術者のノウハウや先端設備の性能、そして高度なITシステムといった様々な方面からの強みを磨きあげている同社に、筆者は大きな期待をしている。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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