無料診断サービス編⑨
今月も引き続き、筆者が金型メーカー向けに行っている無料診断サービスの内容について解説する。無料診断サービスは金型メーカーで行われる作業工程の流れに合わせ、下記の項目に分けて行っている。前号から会社全般としての管理項目の診断内容を解説している。
- 設計工程
- CAM工程
- マシニング加工工程
- 機械加工全般
- 組み立て工程
- トライ工程(主にプラスチック金型)
- 原価管理
- 会社全般
- 購買
- 5Sの状況(効率性の観点で)
会社全般としての管理項目(続き)
管理者ごとに役割と責任は設定できているか
この診断項目では管理者の階層ごとに役割と責任が設定されているか確認をしており、まず加工現場でプレーイングマネージャーとして働く班長や主任が担うべき役割と責任項目からだが、筆者は次のような役割を担うことが望ましいと考えている。
(1)管理対象となる機械は全て扱えることが望ましい
(2)常に最善の状態で扱えるよう機械の保守点検をルール化する
(3)最善のリードタイムで仕事ができるよう差し立てを行う
(4)自分が最も得意とする機械については模範オペレーターになる
(5)自社にある最も高度な最先端設備については自主的に担当する
(6)最善な5Sの状態を維持する
(7)部下のトラブルに対応する
以降それぞれの項目内容について具体的に解説する。
(1)管理対象となる機械は全て扱えることが望ましい
まず自分やその部下が扱う工作機械、例えばマシニングセンターやワイヤーカット、ラジアルボール盤など、管理対象となる機械について、全て自分が扱えることが望ましい。
理由としては、次の点が挙げられる。
- 部下に欠勤が出た場合にいつでも応援に入れる
- 保守点検を行う際、機械操作と保守内容は密接に関係しているため
- 後述する差し立てを行うため、各機械の工数を正確に見積もりするため
- 難易度の高い加工品を部下にやらせる際、指示に説得力を持たせるため
- その他
これらの理由のため自分が管理対象とする機械は、全て自分が操作できることが前提となる。
(2)常に最善の状態で扱えるよう機械の保守点検をルール化する
これも班長や主任の仕事であり、まずは機械ごとの取扱説明書を元に、定期点検を行う内容を精査することから始まる。
特に冷却ファンや潤滑油供給関係など、故障に直結する点検項目は、優先的に管理を行う。
また毎日の点検項目や、週に一回、月に一回など、内容によって点検頻度は異なるが、いかに抜け漏れなく部下に定期点検させるか、仕組みを整えることがリーダーの仕事である。
「気がついたときにやってます」では仕組みが機能しているとは言えない。ルールを整備し仕組み化するべきである。
(3)最善のリードタイムで仕事ができるよう差し立てを行う
この差し立てがどのくらいできるかが、最も班長や主任の力量が問われるスキルだと考えている。
自分の管理対象の機械や作業者について、下図の事例のように毎日のスケジューリングを行う。

これを正確に行うためには、図面を見て、各工程に必要な工数を見積もりできなければならない。
見積もりする工数は、①段取り工数と、②加工に要する工数であり、この差し立てにより人と機械が、最善の稼働率と出来高を実現できるスケジュールを立てる。
(4)自分が最も得意とする機械については模範オペレーターになる
部下に対し指示だけ与えても生産性はすぐに上がるというものではない。
自社にある全ての機械で、誰よりも早く正確に作業できるということは難しいが、自分が担当し最も得意とする機械については、部下の手本となるオペレーションができるようにしておきたいところである。
(5)自社にある最も高度な最先端設備については自主的に担当する
これも班長や主任の重要な業務の一つだと思っている。私の現役時代では、5軸マシニングが該当した。
自社で最も高度な最先端設備について自分でやっておかないと、例えばこれまで自社では経験のない高度な仕事の引き合いを受けた際、もしスキルがまだ未熟な社員が高度な最新設備を担当していた場合、その未熟なレベルがイコール自社の技術レベルの水準になってしまうためである。
もちろん自分の技術者としての市場価値を高めることにもなるため、会社の最も進んだ最先端設備については、自ら率先して担当するべきである。
(6)最善な5Sの状態を維持する
金型メーカーや機械加工メーカーに限らず、全ての業種で必要となる5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)の管理である。
特に我々の業種においては、①安全面、②品質面、③効率性、④客観性という順番で着手するのが望ましいと考えている。

「ウチの5Sは自信ありますから、ぜひ工場見学に来てください」と自ら言えるくらい客観性に配慮した5Sが出来れば本物である。
(7)部下のトラブルに対応する
金型製造や機械加工の仕事は、常にトラブルと隣り合わせである。
空いているはずの穴が空いていない、来ているはずの材料が来ていない、CAMデータとおりにかけたはずの加工品がなぜか図面と違っているなどなど、毎日のように何らかのトラブルが発生する。
班長や主任になったら、自分だけでなく部下からのこうした問い合わせに対応していかなければならない。
班長や主任という立場であれば、ほとんどの方が自分も何らかの機械を受け持つプレーイングマネージャーだと思われる。
したがって、自分のその日のスケジュールをこなしながら、部下のトラブルにも対応していかないければならないということになる。
一定以上のスキルがなければ務まらないということであり、そうした意識を持って日々自分の技術を磨いておきたいものである。
以上が、筆者が推奨している加工現場でプレーイングマネージャーとして働く班長や主任が担うべき7つの役割と責任項目である。無料診断の際には、これらの項目に対し、それらが実行できているかどうかを確認している。
班長・主任編としてはここまで。次回は引き続き会社全般としての管理面として、さらに上位の管理職である工場長や部長などが扱うべき日々の管理の成果を見える化する「管理指標」について解説する。
その項目は、次の4つである。
① 労働分配率
② 社員一人あたりの付加価値額
③ 時間あたりの付加価値額
④ 損益分岐点の確認
日々の製造現場において一般社員からは、「人が足りない」「設備が足りない」「古い機械ばかりで能率が悪い」など、様々な不平不満が日常的に出てくる。
しかし工場全体を管理する立場としては、見える化した数値指標に常に配慮しながら、バランスよく製造現場をまわしていく役割がある。
それで用いる①~④の数値指標について次号で詳しく解説する。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054