金型メーカーにおける可動率(べき動率)の使い方について(型技術2024年11月号掲載)

金型メーカーにおける可動率の使い方について

金型メーカーにおける可動率(べき動率)の使い方について(型技術2024年11月号掲載)

今回は、金型メーカーの「教育」に関係するテーマについて見ていきたいと思う。

そして、生産管理の書籍には載っているが、多くの会社で使われていない指標「可(べき)動率」の使い方についても触れていきたいと思う。

筆者のコンサル先で、多くの現場リーダーから聞くのが、「増えた人の分まで、なかなか出来高が上がらない」という悩みである。

量産性の少ない一品加工品や、CAD/CAMで長時間かけてデータ作成しなければ加工できないような複雑な部品を扱っている現場では、新規に採用された人の見習い期間は長期間になったり、戦力になるまでの期間が見通せなかったりする。

そこで、経営者が一番気になるのが、「じゃあ、いつまで待てばいいのか?」である。

現場リーダーの方々も、気長に放置しているわけではない。自分自身も加工するプレイングマネージャーという場合、じっくり手取り足取り、時間を割いて教育する時間が取れないのもまた事実である。

そこで筆者がコンサル先で、取りかかってもらうのが、ちょっとアレンジした「可(べき)動率」である。

本来の「可動率」は、稼働率と対比するもので、稼働率の分母は、勤務時間である8時間や1日の24時間などとし、そのうち何時間を人が作業できたか、機械を稼働させることができたか、その割合となる。

ところが、現場に仕事が入っていない日も分母に加算されていると、働く作業者の立場としては、割合数値を上げようにもどうしようもないということで、分母に入れるのは、やるべき仕事がある時間に限定し、そのやるべき時間に対し、どれだけ仕事を稼働させることができたかを数値化するのが、可(べき)動率となる。

しかしながら、筆者の周りの金型メーカー等では、ほとんどこの可動率は使われていない。また、お会いする方のほとんどが、この言葉自体ご存じないことが多い。

理由は、扱うハードルが高いためだと思われる。

量産部品であれば、タクトタイムなどが設定され、分母になる、本来やるべき仕事の時間は、加工ロットなどを基準にすれば設定しやすい。

ところが、毎回作るものが変わる金型部品や単品小ロット品は、分母に入れる一定期間のやるべき仕事の時間、つまり本来機械を動かすべき時間、人が作業するべき時間、これらを決めようとすると、対象となる部品について、工程ごとの加工時間や人の作業時間を事前に見積もらなければならない。

さらに複数の部品が、複数の工程をまたぐので、後工程になるほど、前工程や外注業者から入ってくるタイミング待ちになるため、例えば1日の分母の時間は、単純な見積り工数の合計でもなくなる。

したがって、稼働率の方は単純に、作業者なら分母は8時間、機械なら8時間もしくは24時間などにすればいいのに対して、金型・部品加工業における可動率については、あまりに複雑になってしまう「分母」の取り扱いを、膨大な労力をかけて管理するかというと、それは現実的ではないため、ほとんどの会社で着手できていないのだと思われる。

では、筆者はどのように扱っているかと言うと、シンプルに考え、稼働率と対比する考えとは切り離し、少しアレンジして、現場リーダーが部下の技術技能の習熟度を測る指標として使ってもらっている。

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