株式会社 京都製作所のコンサルティング事例(型技術2022年2月号掲載)

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株式会社 京都製作所のコンサルティング事例(型技術2022年2月号掲載)

本号で紹介する部品加工メーカーは、(株)京都製作所(京都府京都市 TEL075-921-5354)である。
同社は、創業から119年と極めて長い歴史を持つ企業で、フィルム製造装置や医療器具の金型、産業機械用部品など、多岐に渡る分野の製品を取り扱っている。

図1 同社が扱っている製品の一例

マシニングセンター(以下、M/C)による切削加工や放電加工などの機械加工を主力とする同社は、溶接製缶品やインコネルなどの耐熱合金、熱処理された高硬度金型部品の切削加工など、幅広い形状・材質の加工品を扱っている点や、フィルム製造装置部品の鏡面磨きまで社内で行うなど、一貫生産対応ができる点に強みがある。

そのためM/Cの各担当者は、使用する工具やその加工条件、ワークのクランプ方法などについて、様々な製品を扱うための豊富な経験と知識を持っている。

図2 同社のマシニングセンター作業の様子

今後の事業拡大に向けた同社の新たな取り組み

こうした強みを持つ同社であるが、これまでの事業の中心であったフィルム製造装置の部品に加え、小型・中型・大型のM/Cを持ち様々な部品に対応できるため、新たに産業機械向けのアルミニウム合金などの素材部品の加工需要が増えてきている。

同社の機械加工、特にM/C部門の仕事のやり方の特徴として、6台のM/Cそれぞれに1人専任の作業者がつき、一つの部品に対し、加工プログラムから段取り、実際の加工まで、分業することなく1人で対応している。

過去には、加工プログラムと機上段取りを分業するスタイルをとっていたこともあったが、近年の様々な素材や形状への対応や、複雑な段取りを要するワークなど、加工プログラムと段取りを別々の作業者で対応することが困難となったため、現在の「1人一貫対応」のスタイルとなっている。

この1人一貫対応のスタイルは、筆者が提唱する下記の3段階の多能工化のうち、レベル②の効果を得ることができる長所がある。

  • レベル①:機械加工工程においては複数の機械を受け持つ多台持ちができており、設計者やCAMオペレーターにおいても複数ソフトが扱え、ハンドワーク部門においても複数の機械を扱うことができている。
  • レベル②:自分の受け持つ工程のすぐ後の工程の作業を「ついでに」行うことができる。主に指示書などの間接コストの削減に寄与している。
  • レベル③:CAM工程と仕上げ工程など、部門をまたいだ多能工化を実践している。

一方、1人一貫対応のスタイルのウィークポイントは、加工プログラムの準備など、機械を止めながら行う、内段取りが発生してしまう点である。

こうした背景から、特にM/C部門において、熟練のM/C担当者がいかに効率の良い技能を発揮しても、急速に増え続ける需要にM/C加工が追いついていかないといった課題が発生していた。

そこで同社は、加工プログラムの内段取り時間を外段取り化し、さらなるM/Cの稼働時間捻出を行うため、過去にとっていた分業化のスタイルを筆者と共に、より強化した形でチャレンジすることにした。

ただし部品加工メーカーでは、加工プログラム作成と機械段取りの分業化がよく採用検討されるが、これには留意点がある。

この分業化の効果は会社の状況によって真逆になり、例えば、機械よりも作業者数の方が多い場合は分業化を推進した方が効果を得られるが、逆に作業者よりも機械台数の方が多い場合は、分業しない方が機械稼働時間を増やせる場合がある。

その点で同社は、機械加工からハンドワーク、磨き加工などを社内一貫対応している強みとして、M/C部門以外に段取り専任者となる多能工要員がいるため、前述した「機械よりも作業者数の方が多い場合は分業化を推進する」を実践することができた。

そこで、MAZAK社のM/Cなど対話プログラム機能を持つ数台は、従来の1人一貫対応のスタイルを継続するとし、対話機能のないM/Cについては、加工プログラム担当と段取り担当者に分け、従来よりも高い機械稼働率を実現する取り組みを始めることとした。

今回M/C部門を中心に筆者と行う、事業拡大に向けたプロジェクトで取り組むテーマは、次の3つである。

  • (ア) 内段取り時間の極小化
  • (イ) 夜間無人加工時間のさらなる拡大
  • (ウ) 受注金額に応じた加工工数の実現

このうち、前述した分業化の取り組みは、(ア)の内段取り時間の極小化に直接寄与するが、(イ)の夜間無人加工時間のさらなる拡大にも寄与させることができる。

 この夜間無人加工について、筆者は多くの部品加工メーカーのM/Cの加工現場を見させていただいたが、長時間の3次元形状加工がある金型メーカーと異なり、一点一点の加工時間が短い部品加工を行うメーカーでは、毎日のように夜間の無人加工が行われているというわけではない。

また、少しずつプログラムを作りながら加工していく1人一貫対応スタイルの、日中昼間の加工が翌日まで持ち越す場合など、やはり長時間の夜間無人加工が仕掛けられないケースもある。

こうした背景はあるが、やはり加工の出来高を上げていくためには、30分でも夜間に仕掛けていくべきで、その分、翌日に次の加工を行うことができる。

また終業時刻の1時間や2時間前から、計画的に夜間無人加工の準備をはじめるためには、昼間及び、その夜間に仕掛けるワークの日程計画、差し立てが重要になる。

加工品ごとに表・裏など加工方向ごとの加工工数を見積もりし、その見積もり時間に応じて日中昼間に加工するか、夜間に加工するかを決める。昼間もできるだけ機械の稼働時間が埋まるように差し立てする。

さらに夜間の無人加工においては、多くの部品加工メーカーを見ていると、そのレベルに違いがある。
全く夜間無人加工をやっていないという会社もあれば、長時間の仕上げ加工がある場合だけ仕掛けているという会社もあり、またある程度ロットのある加工品がある時は、並べて仕掛けているという会社もあれば、最もレベルの高い会社は、全く別々の加工品であっても、M/Cのテーブル上に所狭しと並べて連続加工しているという会社もある。

これまで職人技術による1人一貫対応スタイルであった同社も、強化された分業スタイルを採用するからには、最もレベルの高い別々の加工品を並べる夜間無人加工を、筆者と共に最短距離で実現していく計画であり、それを実現するための日中・夜間の緻密な日程計画も運用していく。

このプロジェクトの終盤では、工場内の設備レイアウトも全面的に見直す計画であり、筆者が推奨する「自動機は対面」・「汎用機は1か所にまとめない」「加工前の材料や仕掛加工品は工場の真ん中に置く」「一度作業に入ったら4メートル四方から出ない」などを盛り込んだ最適効率を実現するレイアウトに移設する計画もある。

筆者と共に推進するプロジェクトは現在始まったばかりの段階であり、また機会があれば経過を紹介させていただきたい。

自社の持つ様々な強みを活かした変革への取り組みにより、事業拡大を進めていこうとする同社に筆者は大きな期待をしている。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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