売値単価に影響されない現場のモチベーション管理(前編)(型技術2025年2月号掲載)
今回と次回の2回にわたり、筆者が実際にクライアント企業で行った、機械加工現場のモチベーションを管理するために作った数値指標をご紹介する。
最初に全体像をお見せすると下図のようになる。

一番左の列にあるのが、今回の事例企業の加工現場でお仕事をしている4名、AさんからDさんである。
今回は、この4名のお仕事の実績を管理するための数値情報を、左から右の列に向かって順に構築していることになる。
なお、この4名の立場を簡単に説明すると、Aさんはこの機械加工現場の班長/主任といった立場で、いわゆるプレイングマネージャーである。機械オペレーターとしての実務を受け持ちながら、チームメンバーへの仕事の割り振りや計画、社内や社外向けの書類仕事などの間接業務も、ある程度多く担当している。
Bさん・Cさん・Dさんは、Aさんの部下で一般社員という立場の機械オペレーターである。Bさんは一番社歴が長く経験年数が20年以上、ついでCさんが入社歴5年ほど、Dさんは入社1年に満たない比較的新しい社員である。
ではこれがどのように、機械加工現場で仕事をするオペレーター達のモチベーション管理になるのか、順を追ってみていきたいと思う。まず表の左の方から順に見ていく。
まずここは、4名のオペレーターの1か月のタイムカード上の総労働時間となっている。左から順に今月の1か月の就業日数で、Bさんは、2日の欠勤があったようである。次の列で1日の就業時間として8時間、次の列はそれぞれ4名の残業時間である。
その右の列が、「総タイムカード時間」で、それぞれのメンバーの就業日数×1日の就業時間、それに残業時間を加えたものとなっている。
その隣が「実務割当時間」ということで、先ほどの「総タイムカード時間」に「直間比率」という列にあるパーセント数値を乗じたものである。
この「直間比率」とは、直接作業時間、つまり機械加工などお金を生む実務作業時間と、間接作業時間、直接お金を生まない管理作業などの間接業務の時間、このそれぞれの割合をAさんからDさんまでそれぞれ立場と役割に応じて設定した比率を入力している。
例えばAさんは、プレイングマネージャーなので、直接実務は60%、間接作業は40%と設定しており、表には60%と入力している。
なお、この「直間比率」は「計画」のものと、表の右の方にもう一つ「実績」での「直間比率」、表の中には2つ出てくる。
左側にある「計画」の「直間比率」は、このくらいは直接業務をやって欲しいと本人に会社から指示されている割合である。
Bさんの「計画」の「直間比率」は95%なので、新人さんへのOJTの時間など、直接お金を生まない業務は5%ほどあるだろうが、95%は直接実務をやっていて欲しいと指示をされているということになる。Cさんも95%なので同様である。
もう一つ、表の右側の方にある「実績」の「直間比率」は、実際に1か月作業をやってみて、工数を集計した結果の直間比率である。
例えば、Aさんの「計画」の「直間比率」は60%に対し、「実績」の「直間比率」は52%なので、想定以上に間接業務が多くなってしまったということになる。
次は、「1か月の理想目標」の列である。これはシンプルに、タイムカード上の総労働時間から導く、目指すべき目標値である。図にあるように「仮総付加価値」と「実務付加価値」の2つがある。
まず「1か月の理想目標」は、それぞれ4名の持ち時間と言える総タイムカード時間に、1時間のチャージ金額5,000円を乗じた場合、1か月にどれだけ粗利益を稼いでくれそうかという目安である。
この理想目標という表現は、会社ごとに呼び方があると思われ、自由に設定していただいて構わない。チャージ金額の5,000円というのも会社ごとに違うと思われるため、同じく自由に設定していただければと思う。実際にこの事例企業の場合は6,000円だったが、今回は使われることが多い5,000円で計算している。
「1か月の理想目標」の左下にある「仮総付加価値」だが、これが先ほどの「総タイムカード時間」にチャージ金額5,000円を乗じたものである。一方、「実務付加価値」は、「総タイムカード時間」に計画の「直間比率」を乗じた「実務割当時間」にチャージ金額5,000円を乗じたものになる。
本当は4名それぞれに「仮総付加価値」の金額を1か月で稼いでほしいのだが、実際にはそれぞれに間接業務もあるため、直接実務が可能な時間「実務割当時間」の中で稼げる「実務付加価値」が、今月4名それぞれに稼いでほしいと期待する金額になる。
では、ここから表の右側の方を順に見ていきたいと思う。こちらは、実際に今月集計された数値に基づく結果になる。
まずは「1か月の集計工数」である。これは読んで字のごとく、今月4名がそれぞれ作業した工数になる。
この表のキモは「予定工数」と「実績(実務)」の違いにある。
まず「予定工数」は、今月4名が作業した工数の合計になるが、このポイントは、作業した時間そのものではなく、事前に案件ごとに決めておいた予定の工数を合計したものになる。
この事例企業では、工数の見積もりができるAさんが、作業にかかる前に、日程計画を決めるため(差立てを行うため)、加工品の図面を見て、「これはこのくらいの作業時間がかかるだろう」と予定の工数を見積もり、EXCELの表に入れておく。
そして毎日の機械や人の作業計画は、この見積もった工数を元に決めていくことになる。例えば、ある図面の加工の見積もり工数が4時間、その後に1.5時間の加工、最後に2.5時間の加工を入れて、計8時間といった具合である。
そして、図の表の「予定工数」にある数値、例えばAさんであれば、130という数値は、今月いろいろな案件をやった結果、それらの事前に決められた工数の合計が130時間であったということで、これは早く効率的にやろうが130時間、手間取って長く余分に時間がかかろうが130時間である。
一方、「実績(実務)」の列にある数値が、事前に決められた予定の工数に関係なく、かかった時間そのものを合計した工数となる。例えば、Bさんであれば、今月は150時間ということになる。
その右の列、「実績(間接)」は、今月実際に間接業務に従事した時間である。例えば、Cさんであれば6時間、Dさんは0時間である。
次はまた「直間比率」だが、今度はその上に書いてある通り「実績」の直間比率である。
この数値は、その左にある実績工数における直接実務と間接業務の割合になる。実際の計算は、「実績(実務)」を「総タイムカード時間」の時間で除したパーセント数値になる。
例えば、Aさんは、「実績(実務)」が100時間のところ、「総タイムカード時間」が193時間であるため、100÷193≒52%ということで、計画の「直間比率」が60%であるところ、実績の「直間比率」が52%であり、プレイングマネージャーとして想定以上に間接業務に時間を取られてしまったということになる。これは何らかの改善が必要になる。
一方、Cさんの計画の「直間比率」は95%のところ、実績の「直間比率」は97%なので、業務に支障がなければ、必要最小限の時間の間接業務で済ますことができ、直接実務の時間を多くとれたことになる。
今回はここまでとさせていただき、続きは次回に紹介する。
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