パンチ側のワイヤーカットにおけるつなぎ位置について

目次

ワイヤーカットにおけるパンチ側のつなぎ位置

当事務所では、ワイヤーカット加工におけるスタート穴と、それに伴う軌跡終りのつなぎ位置について、どこでつなぐのが良いのか、よく相談を受けます。

CAEによる確認

そこで、次は今話題のクラウド系低価格3次元CADであるFUSION360を使って、定量的に確認してみることにしました。

なお、ダイ側については、歪むであろう量を見込んで荒取りを行ったのち、2ndカットおよび3rdカットで仕上げるのが良いと思います。

したがって今回は、パンチ側の形状で確認してみることにしました。

とりあげた事例は、次の2パターンです。

パターン①として

ワイヤーカット歪みとつなぎ位置_1

パターン②はこちら

ワイヤーカット歪みとつなぎ位置_2

形状の前提条件として、テーブルにクランプする側は、35ミリの残り代をつけており、そうでない外周側は、最小5ミリの残り代をつけています。

板厚は、プレス抜きパンチに多い60ミリにしています。

パターン①のコンセプトとして、段取りの際、水流を出しながら、上部ノズル位置をスタート穴中心に手動で移動させる際、ワーク外から見やすいので、よくこの外側の位置にスタート穴を設けることがあります。それを再現しました。

パターン②のコンセプトとしては、パターン①の反対側に持ってくることで、どのように強度が変わるのか見るために、この位置にしました。

なお、スタート穴を対角にしていないのは、今回特に、歪みを再現した際、ある程度大げさに変位させるためです。

結果は次のようになりました。

まずパターン①

ワイヤーカット歪みの結果1

次にパターン②

ワイヤーカット歪みの結果2

これを見ると結果は明らかな違いが出ました。

切り出したパンチ形状に、同じ数値の応力をかけているにもかかわらず、

パターン①の方は、外周部の残り代が5ミリしかない部位の変形の影響もあり、最大0.048ミリの変位が出ています。

パターン②の方は、クランプしている側、残り代35ミリある側のみで受けているので、最大変位量はわずか7ミクロンで済んでいます。

切り出した際、それだけの応力変形があるのかどうかということもありますが、そもそもつなぎ位置の違いによって、これだけ違いが出るという傾向を、今回は見ることができました。

まとめ

今回の解析の結果から、もし高精度なパンチ形状を加工しなくてはならないときは、素材が応力変形の影響をうけない部位につなぎを、可能であれば複数個所設け、機械精度に応じて2ndカット、3rdカット、場合によっては、4thカットを行って仕上げるという手順が良いのではと思いました。

前回の検証でも書きましたが、素材の材種、板厚、熱処理の有無など、諸条件によって結果は異なってくると思います。

また、素材のサイズ、パンチの形状によっても、変形量は変わると思います。

ただ、金属の変形については、なかなか可視化できないため、イメージを持ちづらいとおっしゃる方が多いです。

世の中のツールが非常に早い速度で進化を遂げている昨今においては、今回のようにFUSION360などのソフトウェアを使って、傾向を確認してみるのもいいかもしれませんね。

※ 実際の加工においては、工具材種だけでなく、被削材の物性、機械剛性、工具の消耗状態、被削材のクランプ状態などの外的要因で、如何様にも状態は変化するため、実際の加工においては、自己責任のうえ、充分な確認・検証を行ったうえで、加工してください。

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