【ショートコラム】危機感は「備え」となって表れる
当事務所のコンサル先では、「ヨソは出来ているのに、何でウチでは出来ないんだろう」という合言葉をよく使ってもらっています。
例えば、外注先では加工ができるのに、内製部門では加工できないといった場合などに使ってもらっています。また、機械加工メーカーにおける別の事例では、最新の5軸加工機や5軸加工に強いCAD/CAMソフトまで全て完備しているのに、実務で全く使えていないという実例もあります。
こういったケースで、加工が出来ているメーカーとそうでない内製部門との違いはどこにあるかと言いますと、素質や技術センスがあるかどうかの違いと言ってしまえばそれまでになってしまいますのでそれはさておき、考えられる根本の原因として、日々の「備え」をどれだけ意識しているかに違いがあると私は考えております。
つまり、「いざ本当にこういう仕事が来たら・・・」を常に考え、「備え」が出来ているかどうかです。具体的には、情報収集を定期的に行ったり、端材や廃材を使った試作を行うなどが考えられます。
やはりそれは、実際に加工をしなければならない当事者の立場として、いざ本当にその仕事が来たら、そのとき慌てる状況になるのは怖いので、出来る限り事前に準備しておこうという考えです。
逆にその危機意識がない現場では、いざとなったらベテランや外注メーカーに助けてもらえるとばかりに、どうしても日々の「備え」が甘くなってしまいがちです。
ですがこの業界で仕事をしている人はよくご存じかと思いますが、いざ納期が決まった状況になってから色々試したり、ネットや本などでやり方を調べても、ドンピシャな答えはそうそう簡単に見つかるものではありません（もちろん仕事の内容にもよりますが）。
普段から多種多様な仕事が来ることを想定し、「この治具は使えそうだ」とか、「この工具を使おう」とか、「一度試しておこう」というように自分の出来る範囲で事前に準備しておくことが大切です。
こうした「備え」を普段からしておき、自分で解決しようとすることが、ベテランや外注メーカーからの「甘え」を脱却する「自立」へと繋がります。
一方、「備え」ができている人、逆にできていない人が現場にどれだけいるかは、当事務所がいつも提唱している労働分配率にも表れてくると思います。
労働分配率の計算式の分母側にある売上については言うまでもなく、難しい案件に「備え」ができていれば、「備え」をしていない現場よりは受注につながりやすいと思います。ですが今回のテーマとしては外注費の方に、より強くスポットを当ててみたいと思います。
「備え」に対する行動が出来ていない現場では、営業がとってきた難しい案件について、現場がギブアップしたところで外注メーカーに頼ることになるかもしれませんし、加工メーカーあるあるとして、内製部門に加工してもらっていても、いざというときのため外注メーカーにも営業が保険をかけてお願いしているケースもあります。
こうした対応は外注費の増加となって、労働分配率の計算式における分母側の数値を引き下げる方に働き、また分母側が思うように増えないにも関わらず、分子側の人件費は「備え」が出来ている現場と変わらないか、もしくはもっと多いかもしれません。
それにより、労働分配率のパーセント数値はなるべく低い方が経営の安定のためには望ましいところ、逆に数値が上がってしまい経営を不安定にさせる方向になってしまいます。
ではもし内製部門が「備え」に対して意識が低く、そのための行動が出来ていないという場合どうするかですが、その対処の一例として、隙間時間を効率よく活用し、トップダウンによる「指示」によって対応していくことが考えられます。
ここが「自発」的に行動している外注メーカーとは異なり、見劣りする部分ではあるのですが、まずは「指示」として自発的ではないとしても「備え」のためのアクションを行っていくしかありません。
隙間時間の活用についても、「さて時間が空いたから何をしようか」では、まず行動できません。
先に細切れ時間に何をやるか、事前に決めておくことが必要です。
まずはこれをやる、次にこれをやる、といったように、先に先にタスクを決めておかないと隙間の時間はあっという間に経過してしまいます。
こういったことを考えて準備していくことも現場リーダーのとるべきマネジメントの一つです。
さて御社は日々の「備え」は出来ていますでしょうか。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表：村上 英樹（中小企業診断士）
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