隣の人への優越感が「井の中の蛙大海を知らず」を招く???
日々私が、金型メーカーや機械加工メーカーのコンサルティングをしていると、ある種の「あるある」に遭遇することがあります。
それは、ご自身の現状に満足し、改善の必要性を認識していない、残念ながら、いわゆる「井の中の蛙大海を知らず」の状態になってしまっているケースです。
例えば、プレスメーカーの金型内製部門の方の事例では、量産部門の作業者には出来ない工作機械のオペレーションやハンドワーク作業のスキルに、強すぎる自信を持ってしまい、納期や生産性といった業績への視点からの弱点に目を背けてしまっていることがあります。
また、売り型メーカーの事例では、金型を製作できるという技能に自信を持つあまり、納期までのリードタイムや月間生産型数の弱さに危機感を感じていないケースも散見されます。
しかし皆さんご存じのとおり、現実の世界は非常に厳しく、常に上には上がいて、競争相手は日々進化しています。
出来高が低い、業績の悪い会社にありがちな「病気」
皆さんご存じのとおり、「井の中の蛙大海を知らず」とは、自らの知識や経験に閉じこもってしまい、他にも広い世界があるのを知らないことを例えたものです。
社内での「優越感」が強いと、「井の中の蛙」になりやすい
金型や機械加工の技術に自信を持つことは悪いことではありません。
ですが、その自信が過剰になってしまうと、社内を飛び越えて、あたかも「自分たちは他社よりも優れている」という錯覚を生み出してしまい、新しい知識や情報、他社の優れた技術への関心を失ってしまう、心のバリアを生み出してしまうことがあります。
「井の中の蛙」の何が問題なのか?
「井の中の蛙」の最大の敵は、情報への無関心になります。例えば、私が見てきた中では、次のような状況が見受けられました。
- 外部の同業者との知識や技術の差を意識せず、現状に満足してしまう
- 新しい技術やノウハウを積極的に学ぶ姿勢が退化してしまう
- 競合他社の動向を把握しようとしない
「井の中の蛙」を克服するために
この状況を打破するためのポイントは、「よその会社はどこまでやっているんだろう」を常に意識することです。
具体的には、次のような行動をとることだと思います。
- 同業他社の技術力や生産性を聞いたり調査して、自社とのギャップを把握するようにする
- 業界誌などを定期的に読んだり、業界のネット記事を閲覧するなどして、業界動向や最新技術に関する情報収集を怠らない
- 外部セミナーや展示会に積極的に参加し、知識や人脈を広げる
まとめ
金型や機械加工メーカーが直面する競争は、日々激しさを増しています。技術の進歩は加速度的に進み、市場の要求は常に変化しています。
特にわかりやすい企業間の競争力の違いは、リードタイムと生産出来高にあると言えるでしょう。
つまり、「どれだけ早くか」と、「どれだけ多くの」の違いです。
今回テーマにした「井の中の蛙」症候群の有無によって、金型メーカーや機械加工メーカーには、特にこの2つに違いが生まれていると思っています。
このような環境下で、「井の中の蛙」症候群に陥らないためには、自社の技術力や生産性を客観的に評価し、常に改善点を探し、向上心を持つことが不可欠です。
謙虚な姿勢で外部からの情報やアドバイスを受け入れ、自己満足に陥らず、常に外の世界を意識し、新しい情報や技術を獲得する必要があります。
会社組織として考えても同様です。危機感を共有し、改善に取り組む文化を醸成すること、そして常に学び続ける姿勢を持ち、自社の成長を追求することが、金型・機械加工メーカーが市場で生き残っていくための鍵となります。
これらの取り組みを通じて、会社組織は競争力を高めることができ、持続的な成長を実現することにつながっていくと思います。
最後になりますが、あくまで「優越感」に浸ってはいけないということではありません。優越感に浸ることはむしろ、ある意味 そこまで頑張った自分へのご褒美とも言えるでしょう。
繰り返しになりますが、苦労して得た知識や技能による「自信」は、この業界で仕事をしていくうえで、むしろ必要なプライドや誇りであり、それを積み上げていくことで、もっと自分を高みに引き上げていこうとするインセンティブになります。
ただし、重要なのは、「優越感」に浸るまでのハードルを多少なり高くすることで、さらに理想を言えば、自分のパワーアップと共に、さらにそのハードルを引き上げていくことです。
結局は誰をライバルとして見るかの問題です。それによって自分の心持ちは大きく変わります。
金型を作れる人が金型を作れない人をライバル視して、ぬるま湯の優越感に浸り続けるか、それとも金型を作れる者同士をライバル視して、自分を切磋琢磨していくか。
機械が触れる人が機械を触れない人をライバルとして見るか、同じ機械を触れる熟練者をライバルとして見るか。
これらの違いによって完全に心持ちは変わります。
これを読んでくださっている方々はいかがでしょうか。
参考になれば幸いです。
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コラム投稿者
金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054