10年遅れてしまった金型・部品加工業の現場を変えるには

「評価」は上司の唯一の特権?
目次

10年遅れてしまった金型・部品加工業の現場を変えるには

はじめに

私は金型・部品加工業専門のコンサルタントとして、多くの企業の現場を見てきました。

その中で、残念ながら「御社の現場はこの業界では、10年遅れてしまっています」という評価をしなければならないケースに出くわすことがあります。

これは、どういうことかと言いますと、例えば、設計のやり方が、進んでいる同業他社よりも大きく遅れているとか、マシニングセンターの加工で使っている工具や削り方が大きく遅れてしまっているとか、そういうことになります。

これらの問題は、技術的な問題だけではなく、組織的な問題でもあります。

なぜなら、こういった会社は全体最適よりも部分最適の発想になりがちで、各々が自分の工程の作業だけが早く終わればよいと考えてしまっていることが、原因として多いからです。

そうではなく、工程全体の最短リードタイムや最適原価のためには、全体最適の発想で、必要であれば自分の工程で必要な工数と手間をかけるべきです。

では、このような「10年遅れた状況」になってしまう根本原因とその解決方法は何でしょうか。以下の二つの切り口から考えてみたいと思います。

階層ごとの役割別の取り組み

一つ目は「階層ごとの役割別」という切り口です。

こうした事態に陥っている会社の部門長や現場班長、一般の現場作業者はそれぞれどんな役割を果たすべきでしょうか。

まず、部門長は、自分の部門だけではなく、常に会社全体の将来ビジョンや戦略を理解し、それに沿った目標や計画を立てることが重要です。

また、部門内の人材育成や技術革新にも積極的に取り組み、現場に必要なリソースやサポートを提供することも求められます。

次に、現場班長や主任は、部門長から与えられた、将来に向けての目標や計画を具体的に実行することが役割となります。

そのためには、自分の班のメンバーの能力や特性を把握し、それぞれに合った指導や励ましを行うことが大切です。また、現場の問題点や改善案を積極的に取り上げ、部門長と協力して解決策を探っていくことも必要です。

最後に、一般の現場作業者は、自分の担当する工程を高いレベルで遂行することが役割です。そのためには、自分の仕事内容や手順を正しく理解し、常に品質や安全性に注意することが求められます。

また、自分の工程だけではなく、前後工程や他部門とも連携し、情報共有や協力(多能工・マルチスキル)を行うことも重要になります。

さらに、実務担当者として、業界の技術動向は常にキャッチすることが必要で、自らの技術と知識について、社内だけにとどまらず、業界としてどの位置(レベル)にいるのか、自分の市場価値はどのくらいなのかを意識するべきでしょう。

組織全体での取り組み

二つ目は「組織全体での取り組み」という切り口です。

10年遅れてしまった現場では、部分最適に陥った役割分担に固執し、組織全体での能力やアイデアを活かしきれていないことも多くみられます。

そこで、組織全体で改革に取り組む際のポイントとして、次の2つが考えられます。

横断的なコミュニケーションを促進する

金型の現場では、設計・加工・組立・トライなど、さまざまな工程が連携するべきですが、10年遅れてしまった現場では、工程ごとの情報伝達や協力が不十分になっていることがあり、特に設計と製造現場が分断されていることが多くみられます。

そこで、横断的なコミュニケーションを促進することが重要となり、各工程のスタッフが定期的に情報交換や意見交流を行うことで、互いの状況やニーズを理解し、協力し合うことが必要となります。

また、横断的なコミュニケーションを通じて、新たなアイデアや知見が生まれることもあります。

トップダウンとボトムアップのバランスを取る

組織全体での取り組みとはトップダウンの指示や管理が不要という意味ではありません。トップダウンとボトムアップのバランスを取ることが重要になります。

トップダウンでは、経営者や管理者が組織のビジョンや目標を明確に示し、方向性や方針を示すこと、ボトムアップでは、現場のスタッフが自律的に改善活動やコミュニケーションを行うことが必要となります。

おわりに

以上が私の考える、10年遅れてしまった、金型メーカーや部品加工メーカーの現場改善についての根本原因と解決方法です。

金型や部品加工業は、製品開発や生産性向上などに欠かせない重要な役割を担っています。

しかし、その一方で、市場環境や技術革新などの変化に対応するためには、常に自分たちの現場を見直し、改善し続ける必要があります。

そのためには、個人だけではなく、組織としても成長し続けることが求められます。

私は、皆さんがそれぞれの役割を果たし、現場改善に取り組むことで、この業界の発展に貢献していけることを期待しております。

これを読んでくださっている御社の状況はいかがでしょうか。

参考になれば幸いです。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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