応用力・創造力が育たない原因は「環境」と「遊び」?
今回のテーマは、これまた当事務所に相談が多い、柔軟な応用力・創造力を持った設計者や加工者がなかなか育たないといった問題についてです。
この点については、20年以上前に自分が経験してきた状況と、日々のコンサルティングの中で、多くの金型メーカーや部品加工業の皆さんの現状を比べると、「なるほど」と思うところが多々あります。
やはり徹底した効率化を目指すと、なかなか柔軟性が育ちにくいといった副作用があると思います。
例えば今現在は、CAMとマシニングセンターなどの段取り作業は分業化されていることが多く、単純なポケット形状や、直線的な逃がし形状などについても、CAM担当者からNCデータや段取り書と工具一覧表が提供されることが主流です。
ですが、こういったシンプルな形状の加工などを利用して、柔軟な応用力を伸ばしてあげる発想も大事かと思います。
例えば、手動ボタンとドライランなどを使って、自分で工具と条件を選んで加工させてみるなどが考えられます。
「おー、CAMでやると慎重な条件になってるけど結構条件上がるやん」とか、「切り込み量はこっちにした方が早く削れるやん」など、自分で発見することも出てきます。
と、このような話をすると出てくるのが、「いや、そんなに自由にやらせると機械をぶつけたり、ポカミス連発して材料オシャカにするのがどんどん出てくるやろうなぁ」といった意見です。
たしかにそのとおりだと思います。
環境を意識する
私は、人がどう育つかは「環境」によると思っていて、昔の子供と現代の子供に違いがあり、成人して大人になったときの感性に違いがあるのは、皆さん感じているのではないでしょうか。
多少のケガをするのは承知で公園や運動場で自由に遊ばせるのか、ケガしてばい菌でも入ったら危ないので家の中でゲームか勉強させておくのが安全なのか、それは親の判断一つです。
ただやはり、徹底した効率化を追求していくと、なかなか柔軟性を持った加工者が育っていかないといった弊害は出てくると思います。
一方、CAM側から見ると、CAMで作った加工データは、機械の無人手放し運転を基本としており、加工がはじまったマシニングセンターに、オーバーライドのダイヤルを機械オペレーターが常に握ったまま、加工中ずっと監視しているというスタンスは取らず、サイクルスタートボタンを押したら、次の段取りのために操作盤の前から離れることを想定しています。
そうなると、やはり安全重視の条件になるのは自然なことであり、あまり「攻めた」条件は使われない傾向になり、やむを得ない部分があります。
よく加工中にビビリが出てきたとか異音がしたなどの異常が起きた場面に、オーバーライドを調整したり、切り込み量を変えてみたりと、色々と条件を変化させる必要に迫られますが、「応用力を育成する」観点からはむしろ、シンプルな形状の時や複雑でもなく深くもない普通の加工の時こそ、色々と条件を変えてみて、肌感覚を身に付けるべきかと思います。
そうした経験を、有事の際(トラブルの予防処置や、いざ発生した際)に、自分の引き出しとして使うのが自然ですよね。
2つの要因
まとめると、柔軟な応用力・創造力を持った設計者や加工者が育つ要因としては、
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