今年は多能工ならぬマルチスキルに挑戦?

その力量評価、現場の実態を映せていますか?当事務所が提唱する『総合力』を可視化する方法
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今年は多能工ならぬマルチスキルに挑戦?

さて金型メーカーや部品加工メーカーでお仕事をされる皆さま、2023年、年が明けましたが、今年は多能工ならぬ、マルチスキルに取り組んでみてはいかがでしょうか(すいません、「もうすでにやってるよ」という方はスルーしてください)。

「え、何が違うの、同じ意味じゃない?」と思われた方もおられるかもしれませんが、私は別物として、普段のコンサルティングでとり扱っております。

どちらも当事務所オリジナルの定義として扱っております。重要なのはその違いと、その違いを踏まえ、実際何に取り組んでどのように業務で成果を出していくかだと思いますので、厳密な言葉の定義にはこだわってはおりません。ご理解いただければと思います。

まず「多能工」とはどういうものかを考えますと、実際に他の工程に入って作業ができて、はじめて「多能工」と言えるのではないでしょうか。例えば、自分の本業となる工程の仕事に加え、前後工程など、他の工程がオーバーフローしているときにヘルプに入るなど、実際に他工程の作業者に交じって作業をするといった、全体の工程管理者(上司など)の許可や指示を受けたうえで取り組むことだと思います。

一方「マルチスキル」の方は、実際に他工程で作業に入る入らないということではなく、今目の前の自分の仕事において、他工程のスキルも使って作業をすることだと考えています。例えば、マシニングセンターの段取りが主業務だとしたら、時折、加工条件や加工軌跡を変更したいと思ったとき、自分で3次元CAD/CAMを操作して編集するとか、型組付けや保全担当者でありながら、3次元CADを使ってモデル編集を行い、金型意匠面の調整を行うことなどが考えられます。

このような「マルチスキル」を発揮することで、業務にどのような違いが出てくるか、私が実際に関わっている企業の事例で見てみたいと思います。

成形メーカーA社の金型部門の事例

こちらの金型部門では、設計から加工、組み立てまでの全工程にわたり、CAD/CAMはVISIシリーズを使っており、全ての作業者がVISI CAD/CAMを扱うことが出来ています。

そのため、マシニング加工担当者は、別のCAMオペレーターが作ったNCプログラムに対し、仕掛ける前、加工条件や使用する工具など、何か自分の都合で変更したければ、自らVISI CAMを操作して変更し、加工後も寸法の追い込み等があれば、自分で必要な部分の加工データを作って仕掛けています。

また、トライ担当者も自らVISI CADを操作でき、金型意匠面のモデリング編集も自分で行えるため、トライ後に意匠面を調整する必要があれば、自分でモデルに肉付けしたりして、さらに自分でマシニング加工や放電加工をして調整追加工を行っています。

こうすることで、完全な分業体制をとる他社と比較すると、トライ工程から設計や加工部門へのフィードバック手続きの手間やタイムロスがなく、私から見ても、とても効率的なプロセスをとっています(もちろん変更後のモデル管理もしっかり行っています)。

このようにマルチスキルは、実際に他の工程の作業を手伝うかどうかという「多能工」の定義とは異なり、今行っている自分の作業に、他の工程の人が使っているスキルを活かして仕事をするということになります。

そして、その効果はこの事例企業のとおりです。次は対照的に「マルチスキル」を持っていない企業の事例を見ていきたいと思います。

成形メーカーB社の金型部門の事例

こちらの金型部門では、かなりきっちりした分業体制がとられており、それはそれで各工程の専任の担当者が専門知識を発揮して、ある程度高い出来高をあげています。

この会社の金型部門の特徴としては、同規模の売上の金型メーカー等と比較すると、在籍する人数は多くなっているものの、きっちりした分業体制により、新しい社員が入社してから一人立ちするまで短期間で済んでいるという特徴があります。

これは細かく工程を分業するほど効果が出ます。

例えば、マシニングセンターの段取りだけに特化し、NCデータは完全にCAM工程に任せる、段取り作業はマシニングセンターだけに特化し、放電加工機の段取りは行わない、といったように狭く狭く特化すると、一人工として立ち上がるまでが短期間で済みます。一方、短所としては、こちらの金型部門のように、同業他社よりも総人数が多くなりがちになる点でしょうか。

同社の金型部門では、細かく分業する長所を活かし、これまでそこそこ頻繁に機械オペレーターの入退社がありながらも、ほとんど出来高を落とさずにくることができました。これはこれできっちりした分業の効果の一つだと思います。

さて、こちらの会社は先ほどのA社よりも比較的大きな事業規模でもあるため、A社よりもきっちりした分業体制をとっており、基本的によほどの緊急時でもない限り、各工程の作業者は他の工程のヘルプに入ることはありません。作業エリアもきっちりと分かれています。

例えば、A社の加工現場では工作機械の自動加工時間の間に、金型の組み立てや分解作業なども掛け持ちしてたりしますが、B社の加工現場ではそういった掛け持ち作業は全く見られません。

また、B社のほとんどの作業者は「マルチスキル」を持っていません。

したがって、細かくB社の作業上での問題点を注視して見ると、例えばマシニングセンターの段取りオペレーターは、わずかでもNCプログラムを変更したいとか、プログラム内に間違いを発見して修正したいと思っていても、自分で直すことはできなくて、些細な編集であっても、CAMオペレーターのところへ歩いて行って修正してもらっています。

ミスを見つけたときだけでなく、もう少し加工条件を上げたいとか思ったときも同様です。したがってその煩わしさから、ほとんどそのようなポジティブなアクションがとられることもありません。

また同社の金型設計は、構造部も全て3次元で行っておりますが、組み立て担当者は全くCADの操作ができないため、構造を詳しく知りたいときや部品の詳細を知りたいときなどは、CAMオペレーターの手を止め、CAD画面を見せてもらっています。

こうした行動を見ていると、これは間接コストが発生しているというよりも、他工程を巻き込んだタイムロスだとも考えられます。

このように「マルチスキル」を持って仕事をしている会社とそうでない会社とでは、作業の効率性と質(レベル)に相当の違いが出ていると考えられます。

まとめ

このA社とB社との大きな違いは、同じ分業体制をとっていながら、それぞれの工程の作業者が「マルチスキル」を持って仕事をしているかそうでないかという点です。

私もマシニングセンターのオペレーターをやっていたときに、機械へのワークのセットを行うだけでなく、作業や加工をより効率化するため、VB(ビジュアルベーシック)を使い、ポスト出力されたNCプログラムを自動編集するアプリを作るなどの改善を行っていました。

使っていたCAMについても、ポストを自分でカスタマイズし、マシニングセンターの段取り時に、原点や工具補正などのチェック作業がしやすいNCプログラムが出力されるよう改善したりしていました。

このように、前後工程の作業スキルだけでなく、ソフトや工作機械の機能を深掘りしていくというマルチスキルもあります。

話を戻しますが、先ほど事例で見たB社のように、マルチスキルを持った作業者がほとんどいないといった状況において、ではどうやったらマルチスキルを持つように仕向けられるかと言うと、これは一朝一夕にはいなかいと思いますので、まずはモデルとなる人を選任して、そのメリットを社内で実感してもらうことから始めるべきかと思います。

B社のように今が当たり前と思って作業していると中々気づくことは難しいかもしれませんが、ベンチマークを行う、つまりA社のように、ほぼ全員がマルチスキルを持っている現場との違いに着眼していくことで、マルチスキルへのインセンティブが生まれることもあるかと思います。

多能工化に取り組む」と言うと、計画的なジョブローテーションが前提になったりして、実際には工程ごとの人が動かせないなどハードルが高くなりがちで、個人の取り組みとしては着手が難しい「多能工」ですが、「マルチスキル」については、実際に他工程に入って仕事をするわけではないので、やり方次第では多能工よりも着手がしやすいと思います。

御社はいかがでしょうか。参考になれば幸いです。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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