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【今さら聞けない】使っていますか?「小ポケットの制御」

2020 4/25
【今さら聞けない】使っていますか?「小ポケットの制御」
目次

使っていますか?CAMの「小ポケットの制御」機能

今回は過去に取り上げたテーマ、小径エンドミルがどうしても折れてしまうといった課題について、実際に3次元CAMを使った対策を見ていきたいと思います。

問題となった形状は下図のとおりです。

事例のモデル形状
事例のモデル形状

正面から見た断面図でわかるように、底部に向かって幅の狭い円弧形状になっており、ここに入りこんでいくボールエンドミル加工が厳しそうです。

この形状部分の幅については、一番広いところで8ミリでした。

束のようになった軌跡の中から危険な動作を見つけ出すのは困難?

まずは問題となったNCプログラムの軌跡をビューワーでみてみます。その状態が下の図です。

工具はφ3ボールエンドミルです。

事例の形状の荒取りプログラム
事例形状を削る荒取りプログラム

底部が円弧状になっているところを荒取りするプログラムです。

この束のようになった軌跡の中に、工具を異常摩耗させてしまった問題となる軌跡が紛れています。

そこで、この細かな軌跡の束の中から、問題となる軌跡を取り出してみました。それが下図の軌跡です。

問題となった軌跡
問題となった軌跡

ここでもう一度、異常摩耗してしまったボールエンドミルを見てみたいと思います。

異常摩耗したボールエンドミルの先端
異常摩耗したボールエンドミルの先端

どうやら先ほど取りだした軌跡、工具中心がほとんど左右に動けないまま直進に近い状態で、底部に向かってアプローチした動きにより、このように先端のみが異常摩耗したのだとわかりました。


このように、加工する前、複雑で束のようになったNCプログラムの軌跡の中から、問題となる動作を見つけられず、工具が折れてしまったり、異常摩耗してしまうというトラブルが多く、よく私の方へ相談を受けます。

そこで今回のテーマ、「使っていますか?CAMの小ポケットの制御機能」に触れていきたいと思います。

CAMで再現

さっそく私もVISIというCAD/CAMを使って同じ作業をしてみます。

危険な動作軌跡
危険な動作軌跡を再現

出ました!

事例企業とは使っているCAMが違うので、全く同じ軌跡ではありませんが、ほとんど左右には動かずに底部に向かって直進アプローチしようとする動作は同じです。

これは非常に危険で、このまま加工したら、工具の送り条件にもよりますが、おそらく同じように異常摩耗してしまうかもしれません。

対策方法

それでは対策としてはどうしたらよいのでしょうか。

一般的な3次元CAMでしたら次のような機能があると思います。

小さなポケットの制御
「小さなポケットの制御」機能

この機能の用途としては色々あると思いますが、キャビティ側、今回のように狭い凹形状を加工する場合に、工具直径に対し、切削負荷の高くなりそうなところへ侵入していくことを防止する機能になります。

ボールエンドミルや底刃のあるスクエアエンドミルにおいては、直進して下方向へ加工することは可能ではありますが、送り速度をかなり下げるなど充分に注意しながら加工しなければなりませんが、ヘリカル加工や傾斜動作など、少しでも左右に動いて下降する方が安全です。

しかし、この「少しでも」の程度が重要で、今回の問題軌跡のように、ほとんど動けていない状態では、直進して下降していることと変わらない状態になります。

そこで、上図のパラメーター画面にもありますが、「ポケットサイズ」を指定し、どれだけ左右に動作できるのであれば、下降侵入しても良いかを指定することで、危険な動作を抑制することができます。

私は目安として、工具直径の80%としています。(使う工具や被削材などによって異なると思います)

それでは、侵入させないポケットサイズを指定し、もう一度パスを計算させてみます。

危険なアプローチ軌跡が消えた状態
危険なアプローチ軌跡が消えた状態

消えました。

ほとんど左右に動かず真下方向にアプローチしていく軌跡が抑制されました。

当然最後の底部は削れ残りになりますので、この後、もう一段小さい工具で、安全な軌跡でアプローチして加工できるパスを追加で出力する必要があります。

ここは削り忘れを起こさないよう、切削シミュレーション後のカラーマップ機能などを使って、確認をしっかりしておきましょう。

もう一つ対策方法として、トロコイド加工を使ってみたいと思います。

トロコイド加工の軌跡
トロコイド加工の軌跡

こちらも使用するボールエンドミルのサイズに応じて、設定した半径の軌跡が作れる深さまでのカッターパスが出ましたが、それ以上の深さのパスは出力されていません。

したがってトロコイド加工を使う事でも、危険なパスを予防することはできそうです。(こちらについても、この後、もう一段小さい径の工具で追加の荒取りパスを作る必要があります)

トロコイド加工については、もちろん正しい設定で使うことが前提になりますが、それについては過去のコラムでまとめておりますので、そちらをご覧ください。

まとめ

以上になりますが、小ポケットの制御機能については、私の現役時代も含め、当たり前のように使っているオペレーターは普通に使っておりますが、私が普段コンサルティングをさせていただく状況を見ていますと、使えていない方も多くおられます。

また、会社内で複数名おられるCAMオペレーターさんの間で、今回のような設定まで標準化しているという会社さんは私はほとんど見たことがありません。

個人のスキル任せになっているケースがほとんどです。

御社の状況はいかがでしょうか。

もしこうした狭い凹部の形状を扱っており、原因不明の工具欠損・異常摩耗が多いという加工現場は一度このあたりを疑ってみてはいかがでしょうか。

参考になれば幸いです。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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