金型メーカーにおける設計者の教育は、やっぱり工程の逆を辿って

設計者の教育は工程の逆を辿る

金型メーカーにおける設計者の教育は、やっぱり工程の逆を辿って

私が金型メーカーのコンサルティングを行う際、設計者の教育がテーマになると、まずセオリーとして「設計工程の逆順を辿って教育を行ってください」と話しています。

ちょうどこのコラムの執筆時、とあるプレスメーカーの金型内製部門にて、以前は測定担当者だったAさんに、次の設計者になってもらうための教育をサポートしていました。

そのプレスメーカーでは、持ち前の量産の製造能力の高さから、新規製品の引き合いはどんどん来ているのですが、いかんせん金型の社内で内製するキャパが不足しており、外注の売り型メーカーから金型調達すると、とたんに利益率が悪くなってしまうという問題を抱えており、金型内製率を引き上げることは喫緊の課題となっていました。

そこでやはり、金型製作のスタートとなる設計工程のキャパ能力を増やさないと、そこがボトルネックとなってしまうため、次の設計者を育てる計画をたてました。

本来であれば、金型構造や現場の加工を良く知る経験者から設計部門に異動を行い、CAD操作の習得と共に、設計ノウハウを会得してもらい、短期間での実戦投入を図るのが理想ではあるのですが、元々製造キャパが不足している同社にとって、各工程に余剰な戦力はなく、現有の金型の製造工程以外から候補者を連れてくるしかありませんでした。

そうなると理想であった金型を良く知る者とは少し異なり、ほとんど未経験の状態から教育をスタートしなければいけません。

幸い同社のAさんは測定担当者とはいえ、金型部品の測定担当者であって、リバースエンジニアリングも担当していたため、金型をバラす作業も日常的に行っており、全くの金型初心者というわけではなく、ある程度複雑な金型についても、自分で分解と再組み付けまではできる技量は持っていました。

今回は、その方について、設計者になるための教育計画を作ることになったというわけです。

とは言え、CAD/CAMを触ったこともない状態からのスタートです。ここは出来るだけ短期間で習得してもらうために、設計に関わる知識を色々と一気に覚えてもらいたいところではありましたが、急がば回れの精神で、きちんと順番を守り、計画的に進めないと、そもそも「一人前になれなかった(適正がなかったという判断)」ということも、起こり得てしまいます。

これは金型メーカー「あるある」なのですが、今、金型メーカーで設計をされている方の多くに、会社が立てた計画に沿って設計者を予定どおりに育成できたというケースは実は少なくて、判断力があって要領も良く元々設計に向いていた方が「自力で設計ができるようになっていた」というケースが多いのが事実です。これを読んでいただいている方も、自社で思い当たることがあるのではないでしょうか。

この場合は、会社の設計部門を支える強力な設計者が育つ反面、「しばらくやらせてみたが、やっぱり設計には向かなかった・目が出なかった」という人を同時に生んでしまうリスクも抱えています。

ですが、今回のプレスメーカーの事例のように、会社が人選した人を、確実にリタイヤさせることなく、きっちり育成しなければならないという場合においては、どのような教育方針が望ましいのか、それが今回のテーマです。

それでは前置きが長くなりましたが、本題に入っていきたいと思います。

設計工程を逆順に辿る教育とは

以前のコラムにも書いたことがあるのですが、この「設計工程を逆順に辿る教育」というのは、設計工程をさらに分割した、次のように細分化されたものが前提になっています。

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