【今さら聞けない】金型メーカー・部品加工業のIOT、それ本当に必要ですか?

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【今さら聞けない】金型メーカー・部品加工業のIOT、それ本当に必要ですか?

先日、理論政策研修という中小企業診断士の資格を維持するために毎年一回必ず聴講しなければいけない研修を受けてきました。

その中で、製造業は生産性向上のためにIOTを積極的に導入していきましょうと、行政の人が声高に言っておりましたが、これは全ての製造業に当てはまるのでしょうか。

私は以前から金型メーカーと多品種少量・一品生産の部品加工業には、IOTはあまり意味がないと思っていました。違う言い方をすると、高いお金を払ってまで導入する意味はないということです。

先ほどの研修でも言っていましたが、よく製造業がIOTを導入する、つまり工作機械をネット環境に接続し、リアルタイムで稼働状況を見える化すると、その稼働率の低さに驚くという、いつもの決まり文句が出てきます。

ここで私は思うことがあります。

  1. 稼働率の高い低いは、そもそも計画(差し立て)の問題で、それが計画どおりいったか、そうでないかだけでしかない。
  2. そもそも稼働率は高くなくてはいけないのか?

この2点です。

それぞれどういうことなのか、個別具体的に見ていきたいと思います。

① 稼働率の高い低いは、計画(差し立て)の問題

実は私自身の経験として、IOTがないと稼働率が上がらず困ったということがありません。

私は、現役で金型メーカーの加工現場で仕事をしていたときは、係長という立場で、当日から1週間くらい先まで、差し立てにより全ての工作機械の予定を立てていました。

こうしてしまえば、後はそれが計画どおりうまくいったかどうかの進捗確認だけで、逆に、この計画を立てていない場合は、仮にIOTによる見える化により稼働率が高くなったという日があったとしても、それはたまたまであって、そもそも計画(差し立て)なくしては高い稼働率は実現できません。

したがって言い換えると、高い稼働率は、計画ありきであって、IOTが実現させてくれるわけではないということです。

また差し立て自体は、加工時間の見積もりスキルが必要で、同じものを作り続ける量産メーカーと違い、毎回違うものを作らなければならない金型メーカーや部品加工業においては、やはりこれは過去のデータに基づくものではなく、何らか人のスキルに基づくものが必要になります(もしくはCAMデータを作った後)。

改めて私が思うのは、IOTの結果をしげしげと分析している時間があるなら、隙間のない差し立ての方に時間を割く方が、よっぽど有意義であり、儲かるということです。

② そもそも稼働率は高くなくてはいけないのか?

あれ?以前言ってたことと違うぞという読者の方もおられるかもしれません。ですがウソやでまかせではありません。

私が金型メーカーや単品部品加工業における稼働率を高めたい場面は、あくまで瞬間最大風速を高くするということです。

もし私が経営者や営業担当者なら、「とにかく前に詰めて機械を空けてくれぃ」と言います。

そうなんです。今週とか来週とか、とにかく直近の予定については、できる限り隙間なく予定を詰めて、また以前のコラムでも書いたように、まだ先の予定の仕事であっても、隙間があれば直近の計画に入れて、すぐにやるよう予定を詰める(結果、稼働率が上がる)。

したがって、短期的には、詰めて詰めて稼働率を上げる。しかし1か月~3か月など長期的には、できる限り予定を空ける。

これが受注に波があり、また都度受注を確保していかなければならない金型メーカーや単品部品加工業の営業戦略も踏まえた稼働率のあり方です。

ビジネスモデルの違いによる稼働率の考え方

とは言え、量産メーカーも同じです。

私は中小企業診断士として、量産メーカーのコンサルティングを請ける場合もあるのですが、債務超過や業績の悪い会社で、このような良くない事例があります。

よくわかっていない中間管理職の方の指示で、とにかく現場は稼働率を上げるよう指示を受け、まだ出荷が先の分の製品在庫分もどんどん作り続け、結局、お金として入ってくるのがまだまだ先の分の製品まで、一生懸命残業して製造している例があります。

これはまさに間違った稼働率についての認識です。

また、何千万もする高価な機械を買ったので、とにかく動かすようにと指示を受けている会社もあります。

ですが、量産メーカーこそ、内示を受け、発注を受けた分しかお金がもらえないわけで、「できる限り儲ける!」という発想に立てば、入ってくるお金が変わらないなら、なるべく最小限しかモノは作らず、投入する人・機械は最小限にした方が儲かりますよね。

ここが金型メーカーや単品部品加工業とのビジネスモデルの違いだと思っています。

  • 量産メーカーは、納期に間に合うならなるべく低い稼働率で投入コストをできるだけ抑えて儲ける
  • 金型メーカー・単品部品加工業は、短期的な稼働率をできるだけ高くし、可能な限り仕事を追加受注して儲ける

恐怖のオーバーライド下げ

量産加工メーカーに話が行きましたが、金型メーカーや単品部品加工業においても、稼働率の認識について、悪い方に進んでしまった事例があります。

ある部品加工メーカーで起こった事例ですが、過度に稼働率を評価する方針をとってしまったため、空きができることを恐れた現場担当者がとった行動が、経営者や管理者にとって恐怖となる、加工送りのオーバーライドを下げることでした。

毎回違うものを作る金型メーカーや単品部品加工業にとっては、切削加工中のビビリなどを理由に、送りを下げる理由はいくらでもあり、凹コーナーでギッと厳しい音がしていた等と言えば、いくらでも送りを下げる理由になります。

したがってこちらの会社では、あたかも空きのない稼働率が実現したとして、優良な状態が出来上がってしまったのです。

もちろん出来高が上がらなかったのは、言うまでもありません。

結局、計画が全て

ここまで金型メーカーや単品部品加工業においての、IOTの有効性を問う内容を書いてきましたが、こうしたIT化を否定しているわけではありません。

ただ、私は金型や加工のわかる経営コンサルタントとして、財務面にメリットの出ないIT化は慎重になるべきかと思っています。

例えば、これまで人のやっていた手作業に対し、ロボットを導入した。ここまでは良いとして、導入後、そのロボットの横で、これまで手作業をやっていた人が、あくびをしながら箱詰め作業をやっている、という状況もよく見ます。

この状況は、人の手作業による品質・能率のばらつき、不良発生という問題は解決されますが、財務面でのメリットは何も出ていません。人件費は同じようにかかり、ロボットの減価償却費が追加されたということになっています。

例えば、これまでは職人仕事で、年収500万の人から、時給1,000円のパートさんに代わってもらえるようになった、これは正解だと思います。

したがって、IT化は財務面でどれだけメリットが出せるかも、きちんと踏まえて導入しないと、導入後はメリットどころか、先ほどのオーバーライド下げのように悪影響も出かねません。

話をIOTに戻しますが、サックリまとめると、金型メーカーや単品部品加工業における機械加工については、見積もった工数に対し、短い時間で終わってくれた方が、むしろありがたくないですか?

例えば、6時間かかると見積もった仕事を、エースが半日の4時間で終わらせてくれた。これによりできた「空き」は、稼働率の低下でしょうか?

むしろ、この「差」が加工者の醍醐味であり、評価されるべきところです。
これを「稼働率」優先で評価されてしまうと、むしろ送りを下げなければならないような・・・また先ほどの話に戻ってしまうので、ここまでとしますが、

量産加工のようにサイクルタイムが決まっているものと、毎回同じものを作るわけではない金型メーカーや単品部品加工業においては、どれだけ隙間のない計画を立てられるか、それに加え、その予定した部品が毎日計画したどおりに出来上がるか、その際、早くなる分にはむしろありがたい(評価につながる)、ということではないかと思っています。

冒頭に提起したテーマ「金型メーカー・部品加工業のIOT、それ本当に必要ですか?」、今一度、自社のビジネスモデルに照らし合わせて考えてみていただければと思います。

参考になれば幸いです。

(補足)今回のテーマは、あくまで「稼働率」を上げるためにIOTを活用する点について述べたものです。
IOTにより、機械の消耗状態や故障検知など、保全に活用する点などには言及しておりません。

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コラム投稿者

金型・部品加工業 専門コンサルティング
代表:村上 英樹(中小企業診断士)
愛知県刈谷市 TEL 0566-21-2054

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